今月の事例解説(H27年5月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説

Q1 正社員の労働者から出向、転籍に関する相談

 正社員として勤務していますが、業績不振による事業所の統廃合の計画があります。そのため社内で、子会社への出向や転籍が行われるのではとの噂が広まり、不安になっています。出向や転籍が命じられる根拠についてどう考えたらいいのでしょうか。


  出向とは労働者が自己の雇用先の企業に従業員としての地位を有したまま、他企業において相当長期間にわたりその企業の業務に従事することで「在籍出向」と呼ばれることもあります。 

 出向命令が有効となるためには、労働契約上の根拠が必要であり、就業規則の中で単に「出向を命じうる」といった概括的な規定があってもそれでは足りず、採用時の説明、労働契約、就業規則、労働協約によって出向を命じることそのものが明確化されていること、出向先における労働条件が明示されていること等が必要であるとされています。

 判例では、就業規則での出向条項に加え、労働協約において、出向期間、出向中の地位、賃金、退職金、手当などの処遇について出向する労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられていることで当該出向命令の有効性を認めたものも示されています【新日本製鉄事件 最二小判 平15.4.18】。

 転籍とは、労務が提供されている転籍元企業(使用者)と労働者との労働契約を終了させ、新たな転籍先企業(使用者)との間に雇用関係を成立させる労働契約であり、転籍元企業との労働契約の終了、転籍先企業への雇用関係の成立のいずれについても労働者の同意が必要です。

 転籍を行うためには当該労働者の個別の同意が必要であり、就業規則や労働協約における単なる「転籍を命じうる」旨の規定では足りないとされています。

 出向でも転籍でも会社からの説明内容を根拠とともに確認するとともに、労働条件等を十分にチェックし、納得できるかを検討されてはどうでしょうか。

Q2 パート労働者から有給休暇と退職金に関する相談

 パートとして1日6時間勤務し、2年11か月を経過していますが、事情があり1か月先に退職することとなりました。勤務日数は当初は週4日でしたが、6か月前からは週3日になっています。これまで有給休暇は全く取得したことがありませんでしたが、退職までの期間中に取得したいと申し出たところ、社長から「パートには退職金も有給休暇もない」と言われました。どういうことでしょうか。


 年次有給休暇は労働基準法で定められているもので、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、使用者は付与しなければなりません。付与日数は、勤続年数に応じて加算され、パートタイム労働者も、週所定労働日数や労働時間に応じて、有給休暇が付与されます。請求権があるのは、取得が可能となった時点から2年間です【労働基準法第39条、同法第115条、労働基準法施行規則第24条の3】。また、付与日数は、年次有給休暇が付与される基準日における所定労働日数に応じて決まります【昭和63.3.14基発150号】。

 ご相談の場合では、勤務開始後、1年6か月経過の時点で、週所定労働日数が4日ですから8日の有給休暇が付与され、2年6か月経過の時点では、週所定労働日数が3日ですので6日の年次有給休暇が付与されます。したがって、併せて14日の有給休暇の取得を退職日までに請求できることになります。

 退職金については、法律上支給が義務づけられているものではありませんが、就業規則や労働協約、労働契約などで支給することが決まっている場合は賃金となります。また、規定がなかったとしてもこれまでに退職金が支払われていた慣行や支払うことに個別的な合意があれば請求できると考えられます。

 なお、法律は就業規則への記載事項の一つとして「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」【労働基準法第89条第3号の2】を規定しています。

有給休暇については労働基準法の規定を元に請求できることを主張するとともに、退職金については、社内規定の有無やこれまでに支払われていた慣行がなかったかについて確認されてはどうでしょうか。

 ※年次有給休暇については、次の当所労働相談Q&Aをご参照ください。
 →「28 年次有給休暇

Q3 使用者から業務指示に従わない従業員に対する処分に関する相談

 株式会社を経営しています。社内のある従業員が専務の指示に対して理不尽に反発するなど、勤務態度も悪化し、業務指示に従わなくなっています。今後、注意を与えても改善されない場合、何らかの処分を検討せざるを得ないと考えていますが、そのためには根拠が必要と聞きました。そうなのでしょうか。


 使用者が労働者に対し、職場の服務規律や企業秩序を維持するために行う「懲戒処分」については、就業規則に根拠があり、従業員に周知されることが必要です。

 法律は就業規則への記載事項の一つとして「表彰及び制裁の定めをする場合においてはその種類及び程度に関する事項」【労働基準準法第89条第9号】を規定しています。

 また、懲戒権の行使については、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておくことを要する」とした判例も示されています【フジ興産事件 最二小判 平15.10.10】。

 現在の従業員に周知された就業規則により対応できるかを検討するとともに、規則の整備を行う場合は、厚生労働省が示すモデル就業規則の例も参考とされ、労働基準法に則った改正手続を検討されてはどうでしょうか。

 なお、懲戒規定を設ける以前に行われた労働者の行為に対して、遡って懲戒処分をすることはできませんのでご注意ください。 

 ※「モデル就業規則(外部サイト)」については、厚生労働省のホームページをご参照ください。

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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