今月の事例解説(H27年4月分)

更新日:令和2年3月17日

今月の労働相談事例解説

Q1 妻から正社員の夫の長時間労働に関する相談

 夫の労働時間が長く、心配です。1日12時間以上働くこともよくあります。土日が休日のはずですが、実際は土日のいずれかは常に出勤しています。残業代は支払われていますが、精神的にかなり疲れているようです。長時間労働を制限するような法律はないのでしょうか。


  労働基準法では、休憩時間を除いて1週間に40時間、1日に8時間を超えて労働させてはいけないことが定められています【労働基準法第32条】。

  時間外または休日に労働させるためには、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者と労使協定(いわゆる36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません【労働基準法第36条】。

 しかし、36協定を結べば何時間でも残業させてよいというわけではなく、厚生労働省が「時間外労働の限度に関する基準」を設けています【平成21年厚生労働省告示第316号】。例えば、一般の労働者の場合は、1か月45時間を時間外労働の上限時間とし、それを超えて働かせることは臨時的に特別な事情がある場合に限られており、かつ、労使で「特別条項付き36協定」を結ばなければなりません。

 さらに、使用者は、法定時間外労働が1か月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者から申し出を受けた場合は、医師による面接指導を実施しなければなりません【労働安全衛生法第66条の8、労働安全衛生規則第52条の3】。

 したがって、どの程度の長時間労働になっているのか勤務実態を記録した上で、会社側に、労働関係法規を踏まえた対応や、労働時間を含めた勤務状況の改善を求めることになります。

 また、会社側の取扱いに違法性がある場合には、労働基準監督署に申告を行い、行政指導を求めることも検討されてはどうでしょうか。 

Q2 正社員から妊娠を理由とする減給に関する相談

 正社員として営業を担当しています。妊娠3か月となり、社長に妊娠したことを報告したところ、社長から「妊娠したことで仕事に影響は出るね。賃金月額29万円を27万円にします。」と言われました。その後、納得できないとメールでやりとりをしたところ、社長から「妊娠を理由とする減給は違法ではありません。」と書かれたメールが届きました。おかしいと思うのですが。


 男女雇用機会均等法※では、厚生労働省令で定められている事由を理由に、事業主が女性労働者に対し、不利益な取扱いをすることが禁止されています【男女雇用機会均等法第9条第3項】。

 この「厚生労働省令で定められている事由」には、妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業を取得したこと、母性健康管理措置を求め又は受けたこと、妊娠又は出産に起因するつわり等の症状により労務の提供ができなかったこと又は労働能率が低下したこと等が含まれています【男女雇用機会均等法施行規則第2条の2】。

 また、「不利益な取扱い」には、解雇、期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと、降格させること、減給すること、賞与等において不利益な算定を行うこと等が含まれています【労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示第614号)】。

 なお、最近の判例としては、妊娠中の軽易業務への転換を契機として行った降格は、原則男女雇用機会均等法の禁止する取扱いに当たるが、例外として、1)降格することなく軽易業務に転換させることに業務上の必要性から支障がある場合であって、男女雇用機会均等法の趣旨等に実質的に反しない特段の事情が存在するとき、又は 2)労働者の自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、禁止する取扱いに当たらないとされた最高裁判例があります【広島中央保健生協事件 最一小判平成26.10.23】。

 さらに、同判例を踏まえた男女雇用機会均等法解釈通達の一部改正においては、「妊娠・出産等の事由を契機として不利益取扱いが行われた場合は、原則として妊娠・出産等を理由として不利益取扱いがなされたと解されるものであること。」「『契機として』については、基本的に当該事由が発生している期間と時間的に近接して当該不利益取扱いが行われたか否かをもって判断すること。」と記載されています【「改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について」の一部改正について 平成27年1月23日雇児発0123第1号】。

 本件についてみると、「妊娠したこと」や「妊娠に起因するつわり等の症状による労働能率が低下したこと」による「減給」は上記のように禁止されていますので、事業主に対し、その旨説明されてはどうでしょうか。それでも問題が解決しないようであれば、社長からのメールを持参の上、労働局雇用均等室に相談されてはどうでしょうか。

  ※男女雇用機会均等法:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

   ※男女雇用機会均等法関係については、厚生労働省のホームページをご参照ください。
   →「雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために(外部サイト)

   ※妊娠・出産・育児に関する労働問題については、当所作成の啓発冊子「妊娠・出産・育児・介護etc.働く時・働き続けたい時に役立つ『マンガで読む女性のための働くルールBook』」をご参照ください。

Q3 使用者から妊娠中の契約社員の雇止めに関する相談

 今年の10月から3か月間の有期労働契約を結んでいる契約社員がいます。契約書には、「更新する場合がありうる。」と記載されており、勤務成績、態度、能力、会社の経営状況等により、更新の判断を行う旨が記載されています。2か月間の勤務状況から、遅刻・無断欠勤が多く、業務遂行能力にも問題があり、顧客からのクレームも多いため、契約更新は行わないこととしました。本人に告げたところ、「現在妊娠3か月です。妊娠中の雇止めは法的に問題があります。」と言われました。そうなのでしょうか。


 有期労働契約では、原則として、その期間が満了すれば自動的に労働契約が終了します。しかし、更新の可能性がある有期労働契約について、労働者が更新を希望したにもかかわらず、契約期間の満了に伴い、使用者が労働者に対して契約の更新をしないことを「雇止め」といいます。使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めが認められません。具体的には、1)過去に反復継続された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの、2)労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの、がこれに当たります【労働契約法第19条】。

 妊娠中の雇止めについては、妊娠を理由として雇止めを含む不利益取扱いを行うことは法律で禁止されています【男女雇用機会均等法第9条第3項等、上記Q2のAを参照】。

 ただし、その例外として、男女雇用機会均等法解釈通達の一部改正において「ただし、円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障があるため当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、その業務上の必要性の内容や程度が、男女雇用機会均等法第9条第3項の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在すると認められるとき」などは、この限りではないとされています【「改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について」の一部改正について 平成27年1月23日雇児発0123第1号】。

 以上の法的な考え方を元に、本件雇止めの理由に関し、その合理性や業務上の必要性について、整理されてはどうでしょうか。

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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