今月の事例解説(H27年1月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説

Q1 契約社員の方からの不利益な労働条件の変更に関する相談

 3年前から働きはじめ、半年毎の更新をしていますが、今まで就業規則を見せられたことはありません。先日、上司から「就業規則が変更になったから1日8時間勤務から5時間勤務になる。」と言われました。1日の勤務時間が減ると収入も減るので、困っているのですが、どうしたらよいのでしょうか。


  正社員、パートタイム労働者、アルバイト等を含めたすべての労働者の数が常時10人以上である事業場の使用者には、就業規則の作成と所轄の労働基準監督署への届出を行い【労働基準法89条】、労働者に対し周知しなければならないと法律で定められています【労働基準法第106条第1項】。

 また、就業規則の作成・変更にあたり、使用者には従業員(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者)からの意見聴取が義務づけられています【労働基準法第90条第1項】。

なお、労働契約法では、使用者は、労働者と合意することなく就業規則を変更することにより不利益に労働条件を変更することはできないと定められています【労働契約法第9条】。その上で、使用者が変更後の就業規則を労働者に周知させ、その変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の変更にかかる事情に照らして合理的なものであるときは、労働条件は、変更後の就業規則によるものとするという例外規定が定められています【労働契約法第10条】。

 以上を踏まえ、使用者に対し、就業規則が周知されていなかったことを説明し、変更の手続きはどのようにされたのか説明を求め、今後の対応について話し合われてはどうでしょうか。可能であれば、他の契約社員の方とともに使用者に話合いを求められてはいかがでしょうか。

Q2 契約社員の方からの退職に関する相談

 新たに保育事業を行う法人に、1年間の有期契約社員である保育士として採用されましたが、まだ子どもが一人も入所しておらず、入社後は保育士ではなく営業として働くように言われました。慣れない業務に就いているストレスからか、体調を崩してしまいました。できれば、すぐにでも退職をしたいと考えているのですが、可能でしょうか。


 雇用期間に定めがない労働者の場合は、いつでも解約の申入れをすることができ、たとえ使用者からの合意がなくても、原則として解約申入れの日から起算して2週間経過したときに労働契約は終了し、退職が成立します【民法第627条第1項】。

  一方、有期労働契約の場合には、労働者は、契約期間中労務を提供する義務があり、期間の途中で退職することはできません。ただし、重大な傷病で労務不能な状態になったなど、「やむを得ない事由」がある場合は、契約を解除することができます【民法第628条】。

また、使用者は労働契約を結ぶ際に、労働者に対して賃金、労働時間、仕事の内容、その他の労働条件を明示しなければならないと法律で定められています【労働基準法第15条第1項】。 

しかしながら、その明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、期間の定めの有無にかかわらず、即時に労働契約を解除することができると定められています【労働基準法第15条第2項】。

今回、労働条件として明示された仕事の内容が、保育士としての業務であったにもかかわらず、実際は営業であり、明示された労働条件と事実が異なることから、即時に退職することが可能であると考えます。

Q3 使用者の方からの内定者への入社前研修に関する相談

 会社では、4月1日入社予定の内定者(学生)に対して、3月に入社前の研修を予定しています。

 この研修への参加を強制することはできますか。。

 
 
 採用内定中の法律関係は、使用者と内定者の間に始期付・解約権留保付労働契約が成立するものと解されています【大日本印刷事件 最高裁昭和54.7.20、電電公社近畿電通局事件 最高裁昭和55.5.30】。

 使用者の側から見ると労務の提供を求める権利はすでに確保されているものの、その権利を行使できる時期がいまだ到来していない状態ということになります。

 したがって、研修開始日を入社日としない限り、入社前の研修については、対象者の同意を得て行うほかなく、研修に参加しなかった者について内定取消その他の不利益な取扱いをすることはできないと考えられています。

 また、使用者は、内定者の生活の本拠が学生生活等労働関係以外の場所に存している以上、これを尊重し、本来入社以後に行われるべき研修等によって学業等を阻害してはならないというべきであることから、いったん、同意したものの、学業への支障などの合理的な理由に基づき研修参加をとりやめたいと内定者が申し出た場合、使用者は、研修を免除すべき信義則上の義務を負っていると解するのが相当であると判示した裁判例があります【宣伝会議事件 東京地裁平成17.1.28判決】。

 本件についても、一方的に参加を強制したり、不参加者に対し不利益を課すことは適切ではありませんので、入社後に研修を行うか、入社前に研修を行う場合には、内定者が学生であることを十分配慮した上で、同意の下に行われてはどうでしょうか。

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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