今月の事例解説(H26年6月分)

更新日:令和2年4月1日

今月の労働相談事例解説

Q1 正社員の方からの配置転換に関する相談

 東京に本社がある会社の大阪支社に長年勤務しています。次回の異動で、東京本社へ異動することを打診されています。

   しかし、現在、精神疾患で通院中の長男の面倒を私が見ており、大阪から離れることは難しい状況です。また、他の子も通学中のため、家族で引越しすることも困難です。異動そのものを拒否するわけではなく、家庭状況が落ち着くまでの猶予をお願いしようかと思っていますが、何かアドバイスはありますか。


  勤務地や仕事内容について、特別に限定した労働契約がある場合、労働者の合意なく、その契約内容を変更するような配置転換はできません。しかし、そのような労働契約でなければ、通常、配置転換については、就業規則上の規定を根拠に、使用者に裁量権が認められていると考えられています。

    とは言え、業務上の必要性がない場合や、他の不当な動機や目的をもってなされる場合、通常労働者が甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるような場合等は、その配転命令は、権利の濫用になると考えられます【東亜ペイント事件 最二小判 昭61.7.14】。        

   個々のケースにより判断されることになりますが、「長女がうつ病であり両親が体調不良で家業(農業)の面倒をみていた」ケースで、配置転換が権利の濫用であり無効とされた裁判例もあります【北海道コカ・コーラボトリング事件 札幌地判 平9.7.23】。               

   判例等を踏まえ、個別の家庭事情を訴え、当面の猶予を求めてはいかがでしょうか。

  *配置転換については、次の当所労働相談Q&Aをご参照ください。
 →「配置転換、出向、転籍

Q2 労働組合の方からの使用者の支配介入に関する相談

 賃上げの団体交渉の際、使用者から「賃上げ交渉をするより、組合費を半減して、可処分所得を増やせば良い。」と言われました。さらに、「上部団体を脱退したら、組合費も減らせるのではないか。」等の発言もありました。                                                                                   

   今後の労使関係のことも考えて、あまり事を荒立てたくはないと思っていますが、どのように対応すればよろしいでしょうか。


 労働組合法では、労働組合の結成もしくは運営に対し支配若しくは介入すること(支配介入)を、不当労働行為として禁止しています【労働組合法第7条第3号】。                                                                                    

    具体的に何が支配介入にあたるかはケースバイケースですが、使用者の意見表明と支配介入発言の内容、それがなされた状況、組合の運営や活動に与えた影響、推認される使用者の意図などを総合的に勘案して判断されることになります。  

 一般的に、組合の自治に属する問題に使用者が指示したり、口出しすることは支配介入にあたると考えられ、組合費について使用者が介入することは、不当労働行為と判断される可能性が高いといえます。使用者に対し、明確に抗議の意思を示し、発言の撤回を求めてはいかがでしょうか。

* 労働組合と使用者との集団的労使関係については、次の当所啓発冊子「あすへの対話」をご参照ください。      

Q3 使用者の方からの損害賠償に関する相談

 運送会社ですが、アルバイトの運転手を雇用するにあたり、事故を起こした時は、その損害について労働者が賠償責任を負うとの旨の労働契約書を締結しました。                                                                          この労働者が事故を起こし、トラックの修理を要しました。                                                                       当初の労働契約どおり修繕費について、全額労働者に請求する予定ですが、問題はないでしょうか。

 
 
労働基準法では、使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならないと定めています【労働基準法第16条】。これは、労働者が違約金又は賠償予定額を支払わさせることをおそれて、心ならずも労働関係の継続を強いられること等を防止しようとする趣旨と解されます。

  しかし、これは、現実に生じた損害について賠償請求することを禁止するものではなく、労働契約の締結時に、労働者の債務不履行によって損害を被った場合にその実損額に応じて賠償を請求する旨を記載しても差し支えはありません。

   とは言え、業務遂行上発生した損害の全てを労働者が負担することは公平性の観点から問題があると考えられ、また、労使の経済力の格差、使用者は保険等で損失の分散を図ることができることなどから、一定労働者の負担は緩和されるべきものと考えられます。

    個別のケースで判断されることになりますが、その事業の性格、規模、業務内容、行為の態様等の諸般の事情を考慮し、損害の公平な分担との見地から、使用者の労働者に対する賠償請求及び求償権は制限されるとしています。

    本件の賠償予定の契約自体は有効と思われますが、実際に生じた損害について労働者に全額を負担させられるかどうかは、慎重な検討が必要と思われます。

*賠償予定の禁止については、次の当所労働相談Q&Aをご参照ください。
 → 「労働契約の締結にあたっての禁止事項

*損害賠償については、次の当所労働相談Q&Aをご参照ください。
 → 「業務上の損害賠償

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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