今月の事例解説(R2年5月分)

更新日:令和2年6月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 労働者から、新型コロナウイルス感染症に関連する休業についての相談

 観光業の会社で働く者です。今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により需要が激減し、会社から、「当分の間、仕事はない。休業してもらうこととなるが、給与の支払いはない」と言われました。休業補償などは受けられないのでしょうか。
 

 労働基準法第26条において、使用者の責に帰するべき事由により労働者を休業させる場合には、当該休業期間中、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないと規定されています。
 ただし、不可抗力による休業の場合は「使用者の責に帰するべき事由」には該当せず、休業手当の支払義務はありません。ここでいう「不可抗力」とは、その原因が事業の外部により発生した事故であること、および事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす必要があると解されており、新型コロナウイルス感染症に関連する休業について、厚生労働省は、例えば自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合においてこれを十分検討するなど、最善の努力を尽くしていないと認められる場合には、「使用者の責に帰すべき事由」に該当し、休業手当を支払うべき場合があるとしています。

 また、新型コロナウイルス感染症により事業の休止などを余儀なくされた場合に、労働者を休業させるときは、労使でよく話し合い、労働者の不利益を回避するよう努力すべきとされています。
 具体的には、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案して判断する必要があると考えられます。
 
 さらに、新型コロナウイルス感染症に関連して休業し、法的には休業手当の支払いが不要な場合であっても、労使で話し合い、休業させたことに対する手当を支払うことや有休の特別休暇制度を設けることが望ましいとされています。
 雇用の維持を図るため休業手当を支払った事業主に対しては、特例措置により、国の雇用調整助成金が受給できることとなっています。また、一般的に、現在、新型コロナウイルス感染症の拡大防止が強く求められる中で、事業主が自主的に休業し労働者を休業させ、休業手当を支払った場合については、経済上の理由により事業の縮小を余儀なくされたものとして雇用調整助成金の助成対象となるとされています。

 上記のことを踏まえ、休業中の手当等について、労使でよく話し合われてはいかがでしょうか。

(注:上記の記載内容は、令和2年4月時点のものであり、以降、制度が変更となる場合があります)

       

Q2 労働者から、傷病手当金についての相談

 私は、このたび病気療養のため入院することとなり、そのことを会社に報告したところ、就業規則の規定により「6か月間は無給の休職となり、休職期間終了後は退職となる」と言われました。
 休職中は「傷病手当金」が受けられると聞いたのですが、どのような制度なのでしょうか。
 また、万一、休職期間が6か月間を超えてしまった場合は、退職せざるを得ないのでしょうか。
 
 

 休職とは、疾病・負傷等により労働者を労務に従事させることができない場合に、使用者が労働契約関係を維持しながら、労務への従事を免除または禁止することをいい、休職制度を設ける場合は、就業規則等でその期間や賃金の支払いの有無などについて定めることが必要です。
 業務上の負傷・疾病(=労働災害)が原因で休業する場合は労災保険から給付を受けることができますが、私傷病を原因とする休職については、労災保険の対象とはなりません。また、会社が休職期間中の給与を無給と定めることは、「ノーワーク・ノーペイの原則」から認められています。

 このような場合、健康保険(原則として国民健康保険を除く)の被保険者であれば、「傷病手当金」を受給することができます。受給要件は下記アからウのいずれにも該当する場合で、3日以上連続して休職したときの4日目の休業から、1日につき平均標準報酬日額の4分の3相当額が、最長1年6か月間受給できます。
    ア 私傷病のため労務不能であること
    イ 療養のため会社を休んだ連続する3日間(待機)を含み、4日以上就業できなかったこと
        ※この期間には土日祝日を含み、その間の給与支給の有無は問いません。
    ウ 休業期間中、給与を受けられないこと
      ※ただし、給与が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。

 万一、休職期間終了後も傷病が治癒せず就労できない場合は、労働者が債務の本旨に従った労務の提供をできないことから、債務不履行により、就業規則の定めにより労働契約は自然退職、または解雇となります。
 このとき、健康保険被保険者の資格喪失日の前日(退職日等)まで被保険者期間(任意継続被保険者の期間を除く)が継続して1年以上あり、当該資格喪失日の前日に現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態(上記の要件を満たしていること)であれば、退職(資格喪失)後も1年6か月に達するまでは、引き続き傷病手当金の支給を受けることができます。
   
 なお、私傷病により業務に耐えられないことを理由として離職した場合は、ハローワークにおいて、正当な理由のある自己都合退職(特定理由離職者)と認定されれば、雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)の3か月間の給付制限がなくなるほか、年齢や勤務年数によっては所定給付日数が増える場合があります(ただし、療養期間中は求職活動ができないため、給付は受けられません)。 
 

Q3 使用者から、定期健康診断についての相談

 会社を設立するに当たり、就業規則を作成しています。
 会社は従業員に定期健康診断を受けさせる義務があると聞きましたが、その内容や費用負担について教えてください。


 

 労働安全衛生法第66条第1項において、業種・規模を問わず、事業主には、その常時使用する労働者(1年以上雇用する労働者で、週の所定労働時間が正社員の4分の3以上である短時間労働者を含む)に健康診断を実施することが義務付けられており、その費用は会社が負担すべきものとされています。
 
 具体的には、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を実施しなければなりません。
 ア 既往歴および業務歴の調査、イ 自覚症状および他覚症状の有無の検査、ウ 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査、エ 胸部エックス線検査及び喀痰検査、オ 血圧の測定、カ 貧血検査、キ 肝機能検査、ク 血中脂質検査、ケ 血糖検査、コ 尿検査、サ 心電図検査
 (※一部の検査項目については、年齢等の基準に該当し、医師が必要でないと認めた場合には省略可能)
 
 行政解釈において、定期健康診断の受診に要した時間に係る賃金の支払いについては、当然に事業者が負担すべきものではなく、労使協議して定めるべきものとされていますが、労働者の健康の確保は事業の円滑な運営に不可欠であることから、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいとされています。
 なお、深夜業等の特定の有害な業務に従事する労働者に対しては、特殊健康診断を実施する必要があり、これについては原則として所定労働時間内に行い、時間外に行われた場合には労働時間として割増賃金の支払いも必要とされています。

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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