労働契約の終了Q&A

更新日:平成23年3月31日

退職勧奨には冷静・慎重に対応しよう

  おたずねします。

 パートで働いています。昨日、売り場の責任者から「辞めて欲しい」と言われました。ショックで仕事に
行く気になれません。黙って“クビ”になるしかないのでしょうか。

 お答えします。

 発言は、退職を勧める退職勧奨ですが、売り場の責任者に人事権があるとは思えません。個人的に
辞めて欲しいと思っているだけではないでしょうか。使用者からの退職勧奨でも、応じるかどうかはあな
たの自由です。辞めたくなければ応じる必要はありません。売り場の責任者に真意を確かめましょう。

労働契約終了のパターンを理解しよう

 労働契約のトラブルでいちばん多いのは、解雇や退職勧奨などの労働契約の終了(労働者にとって
は失業に直面する問題)をめぐるものです。トラブルを防止するには、労使ともにそれらの法的な考え方
を正しく理解すること、特に、労働者のみなさんは、上司などからのあいまいな発言に冷静、慎重に対
処することが大切です。 

1 “期間に定めがない”労働契約の終了パターン 

  辞職
    労働者が、自らの意思に基づいて一方的に退職する場合です。法律では、労働者が退職届を提
   出するなど、使用者に労働契約の解約を申し入れた後、2週間を経過することで終了することが原
   則です【民法第627条第1項】
    労働者には「職業選択の自由【憲法第22条】」と「退職の自由【民法第627条】」があり、これを
   制限する法規定はありません。ただし、毎月1回払いの純然たる月給制(遅刻、欠勤による控除な
   し)の場合、労働契約の解約は、翌月以降に対してだけ行うことができ、当月の前半に予告をする
   ことが必要です【民法第627条第2項】
    なお、労働契約を結ぶ際に使用者から明示された労働条件と実際とが違っていた場合は、即時
   に辞職することができます【労働基準法第15条第2項】。 

  解雇
    使用者が労働契約を一方的に解除する場合です。法律は、解雇について、「客観的に合理的な
   理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効
   とする」と定めています【労働契約法第16条】。また、一定の状況下における解雇の禁止規定と
   ともに、手続要件として、解雇する場合には、少なくとも30日前に予告をすること、予告をしない即
   時解雇では、30日分以上の平均賃金を支払うことを定めています【労働基準法第20条】

  合意解約
    労働者と使用者とが労働契約の解除を合意する場合で、次の2つに大きく分かれます。
    ★ 使用者による退職勧奨と労働者の承諾=使用者が労働者に「辞めて欲しい」「辞めてくれな
       いか」などと合意解約を申し込み、あるいは申し込みの誘引を行い、労働者が応じるもの。
    ★ 労働者からの退職の願い出と使用者の承諾=労働者が使用者に「辞めさせてください」との
      『退職願』を提出するなど合意解約を申し込み、使用者が応じるもの。

    労働者と使用者との「合意解約」は、辞職や解雇とは異なり、原則自由なものとして法律上も尊
   重されます。そのため、使用者からの退職勧奨は解雇ではなく、法律に定める手続きもいりません。 

  定年制
    労働者が一定の年齢になったことを理由に労働契約を終了させる制度です。“期間に定めがない”
   労働契約でも、その年齢になると退職とするという特別な定めで、合理性があるものとして広く認め
   られています。法律では、「定年制」を設ける場合は、その年齢を60歳以上とすることが定められて
   おり【高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第8条】、60歳未満の「定年制」は、法的には
   定年制がないものとして取り扱われます。
    また、65歳未満の定年の定めをしている事業主に対し、原則として65歳までの雇用確保措置とし
   て、1)定年年齢の引き上げ、2)継続雇用制度の導入、3)定年制の廃止、のいずれかを措置すること
   が義務づけられています【高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条、同法附則第4条】
   なお、定年の定めについて男女で異なる取扱いをすることは禁止されています【男女雇用機会均
  等法第6条第4号】
。 

2 有期労働契約における終了パターン 

  期間満了、雇止め
    期間満了とは、労働者と使用者があらかじめ合意した契約期間が満了し、労働契約が終了する
   ことです。臨時工などに見られる契約期間が3ヵ月、6ヵ月というような場合では、その期間が満了
   すれば労働契約が終了します。
    一方、期間満了後も労働契約の更新を繰り返し、一定期間にわたって雇用が継続されたにもか
   かわらず、その期間の終了に伴い、使用者が契約の更新を拒絶することが雇止めです。
    雇止めでも、恒常的な業務で働き、形式的な手続きのみで繰り返し契約が更新されている、当
   初の契約締結時から雇用継続への合理的な期待が生じている、などの実態がある場合には、解
   雇権濫用法理が類推適用され、合理性のない雇止めが無効とされることもあります。また、男女
   いずれかを優先して雇止めすることなどは法律で禁止されています【男女雇用機会均等法第6
   条第4号】
。  

  辞職と解雇
    有期労働契約では、原則として、事業を継続することができなくなった(使用者側)、重大な傷病
   で労務不能な状態になった(労働者側)、などのやむを得ない事由がない限り、期間の途中で解
   雇することも、辞職することもできません。特に、解雇については、法律で「やむを得ない事由がな
   ければ契約期間が満了するまでは解雇することができない」と定められています【労働契約法第
   17条第1項】

    やむを得ない事由があり、期間の途中で一方的に契約を解除しても、それが過失によって生じた
   場合は、そのことで相手方が被る損害について賠償する責任が生じます【民法第628条】
    なお、労働契約を結ぶ際に使用者から明示された労働条件と実際とが違っていた場合【労働基
   準法第15条第2項】
や、あらかじめ定めた契約期間が1年を超えて3年以内の場合で、その契約
   が1年を経過した後【労働基準法第137条】(*)は、使用者に申し出ることによりいつでも辞職す
   ることができます。
   (*)一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約、高度の専門的知識等を有する者との有
      期労働契約、満60歳以上の者との間に締結される有期労働契約については、適用が除外さ
      れています。

   合意解約
     有期労働契約においても、労働者と使用者との合意解約は、原則として自由です。やむを得な
    い事由がなくても、期間の途中で使用者が労働者に退職勧奨を行うことや、労働者が使用者に
    『退職願』を提出するなどして合意解約を申し込むことは、当然に可能です。ただし、解約が成立
    するには、あくまでも相手方の合意が必要です。 

退職(解雇)の『ほのめかし』や退職勧奨には冷静・慎重に対応しよう

 法的な知識を知らない労働者が、上司から突然「辞めてくれ」と言われたら、ショックを受けて「クビに
なった」と思い込んでも仕方ないかも知れません。しかし、法的な知識を持ち、そのときに冷静かつ慎重
に対処すれば、その後の動きが大きく違ってきます。直属の上司が「辞めて欲しい」と言ってきたような
場合、まず、「本当に会社としての意思なのか」、「発言の真意は退職勧奨なのか、解雇通告なのか、
それとも単なる『ほのめかし』なのか」を確認することが必要です。

  解雇とは、一般に、社長、人事部長など、権限と責任がある人から、日付を特定するなどして、明確
に労働者に対して労働契約の解除が通告されることです。直属の上司からの「君はもう必要ない」など
のあいまいな発言は、単に退職の『ほのめかし』であることが考えられます。

1 「辞めて欲しい」は『退職勧奨』、応じるかどうかは労働者の自由

 一般に、使用者が労働者に退職を勧めることを退職勧奨と言います。退職勧奨は、あくまでも退職を
“勧める”ものであり、それに応じるかどうかは、労働者の自由な判断です。たとえ、社長から「辞めて
欲しい」と言われても、退職勧奨である限り、退職する意思がなければ応じる必要はありません。

  退職勧奨を受けた労働者が、何も意思表示をしないままに翌日から欠勤してしまうと、そのことで使
用者が「労働者が退職勧奨に合意して退職した(黙認による合意解約)」と取り扱う可能性が高くなり
ます。また、労働者が退職勧奨を受けたときに「考えさせて欲しい」などとあいまいな返答をすると、そ
れをもって使用者が「承諾した」と受け止めてしまうかも知れません。

  労働者が退職勧奨に応じる意思がなければ、そのことを使用者に書面などで確実に意思表示する
ことが重要です。なお、男女いずれかを優先して退職勧奨を行うこと、退職勧奨にあたっての条件を男
女で異なるものとすることなどは法律で禁止されています【男女雇用機会均等法第6条第4号】

 退職勧奨の手段・方法において、それが勧奨を受ける労働者の自由な意思決定を妨げ、社会通念
上の相当性を欠く場合(たとえば、労働者が退職を拒否しているにもかかわらず、数人で取り囲んで
繰り返し勧奨するなど)は、違法な退職勧奨(退職強要)となり、行為そのものが不法行為として損害
賠償請求の対象となります。

2 意に反して『退職願』を出してしまった場合

 「上司から退職願を出すようにと強く言われ、本意ではないが出してしまった」ということもあるかも知
れませんが、退職願を提出することは、退職勧奨に応じるという意思表示であるため、退職する意思が
なければ、提出すべきではありません。

 一度提出してしまった退職願を撤回しようとする場合、これまでの判例等からは、「人事部長など、使
用者側で承諾する権限のある者が退職を承諾し、その意思が労働者に到達するまでの間は、原則とし
て撤回することができる」と考えられていますので、早急かつ確実な方法(書面など)でその意思を伝え
なければなりません。

  また、退職の意思表示に瑕疵(かし=法律や当事者の予期するような状態や性質が欠けていること)
があった場合は、法律により、その取消や無効が主張できるとされています。これらについては、●心裡
留保(しんりりゅうほ=意思表示をする者が自分の真意と異なる意味で理解されることを知りながらする
意思表示)【民法第93条】、●錯誤(さくご=あやまり、まちがい)【民法第95条】、●詐欺(さぎ)・強迫
(きょうはく)【民法第96条】などにより、労働者が行った退職の意思表示について取消しや無効が認め
られた判例があります。

 『退職願』と『退職届』『辞表』について

 “期間に定めがない”労働契約における労働者からの退職の意思表示は、辞職という“一方的に解約
(退職)の意思を通告する”ものと、合意解約という“使用者の承諾を前提条件として解約を申し込む”も
のに区別できます。
 形式的には、『退職届』『辞表』が「一方的に解約(退職)の意思を通告する文書」であり、『退職願』が
「合意解約を申し込む文書」であると言えます。

  これまでの判例では、わが国の労使関係風土から、「使用者の承諾の有無にかかわらず、労働者が
一方的に労働契約を終了させる」という明確なケースが少ないことなどを考慮し、一般に、労働者からの
退職の意思表示は、「使用者への合意解約の申し込み」と解釈される傾向にあり、実務上、表題に『退
職届』や『辞表』と書かれていても、その内容が一方的な解約意思の通告とはなっていない場合が見ら
れます。

 労働者に「断固として退職する」という意思が強ければ、合意解約の申し込みと解釈できるような表現
ではなく、その意思を明確に記載した『退職届』を提出することが必要であると言えます。

 《参考》労働契約終了のパターンの整理

■”期間に定めがない”労働契約の場合
期間に定めがない労働契約パターン

■有期労働契約の場合
有期労働契約終了パターン

このページの作成所属
商工労働部 総合労働事務所 相談課

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