セアカゴケグモの形態、生態、毒性


タイトル(セアカゴケグモ)

セアカゴケグモは強い毒を持っています。
見つけたら素手で触らないようにしましょう

 

セアカゴケグモの形態(形)

セアカゴケグモのイラスト(メス・オス)




 成体のメスは体長15mmぐらいで、脚を広げると30mm程度になる。身体は黒色で、腹部背面によく目立つ赤色の模様がある。
腹部下面に「砂時計」の形をした薄赤色の斑紋があり、これがこのゴケグモ属の特徴である。成熟すると黒色から茶色がかり、赤い模様も薄くなる。
 オスの体長は、3から5mmくらいである。褐色がかり腹部背面には、白い斑紋がある。成熟すると、頭部から出ている触肢の先が丸く膨らんでくる。
 未成熟のクモは、メスはオスと似ているが、成長するにつけ腹部背面にある白い模様が赤くなってくる。

セアカゴケグモの生態(生活史)

<生活史>
 日本での生活は、不明な点が多い。オーストラリアの資料をみると、成熟したメスは、25から30日ごとに卵を産む。1回に9から10個の卵嚢を産卵し、1匹のメスは、5000個にのぼる卵を産む場合がある。
 卵は、産みつけられてから、13から15日で卵からかえる。
卵からかえったメスは、60から325日、平均で約4ヶ月で成熟する。
オスは、37から167日、平均で約90日で成熟する。メスは2から3年生き、オスは6から7ヶ月である。食物無しでクモは、平均して約100日生存し、一番早く死んだのは36日、もっとも長く生きたのは7ヶ月であった。

<住んでいるところ>

 クモの仲間は、巣を作る種類と巣を作らず歩き回っている種類があるが、このセアカゴケグモは、巣を作るタイプであり、ブロックなど穴の中に潜んでそこから糸を外側に向かって張り出し、餌となる小昆虫等を待ち伏せしている。
クモのすんでいるところのイラスト
大阪府泉南で発見された状況を見ると、花壇を作っているブロックの穴の中、墓石のすき間、集水桝の中、側溝蓋の下、空き缶の中などで発見されている。
 住むためには、日当たりが良くて、地面が残っている広い場所で、住みかとなる窪みや潜み場所があることが大切です。

<餌>
 クモは肉食であり、巣に引っ付いている食べかすからみると、アリ、ゴミムシ、ゴミムシダマシ、ワラジムシ、ハサミムシ、コガネムシ、カメムシなどで、特にアリやワラジムシが多かった。

セアカゴケグモの毒性

 ・ 毒性

 人に対して毒性を示すのは、α−ラトロトキシンという蛋白である。この毒素は神経毒で、ほ乳類に対し活性を示す、α−ラトロトキシンは神経系全般にわたって働き、神経末端よりアセチルコリン、カテコールアミン等の神経伝達物質の放出を促し、再流入を阻止することにより神経末端の神経伝達物質を枯渇させる。従って、人がセアカゴケグモに咬まれると、運動神経系、自律神経系が阻害され、種々の症状が現れる。

 ・ 症状
<咬まれた直後>
 セアカゴケグモに咬まれると、咬まれた直後は局所の痛みはほとんどなく、あっても咬まれた部位に軽い痛みを感じるだけである。刺し口が一つ、あるいは2つ見つかる場合もある。また、咬まれた部位の周辺に発疹を見ることもある。

<5から60分後>
 局所症状が現れ、しだいに痛みが増強する。

<30分から数時間>
 時間とともに痛みが咬まれた四肢全体に広がり、最終的には所属リンパ節におよぶ。局所の発汗も起こり、しばしば熱感、掻痒感も伴う。しかし、局所症状のもっとも大きな特徴は痛みである。

<全身症状>
 セアカゴケグモに咬まれて全身症状を示すものはごく一部である。咬まれてから約1時間で全身症状を示すこともあるが、一般には徐々に進行し、12時間以上かかることが多い。
 重症になるのは小児、高齢者、虚弱体質の者である。主要な全身症状は痛みである。痛みは全身に及ぶこともあり、咬まれた部位の近くの躯幹だけに限局することもある。したがって、上肢を咬まれた場合、強い痛みは顔、首、胸部に生じ、胸部痛がしばしば心臓発作による痛みと間違われることがある。一方、下肢をかまれると、強い痛みは腹部に生じ、急性腹症とよく似た症状を示す。躯幹のどの部位を咬まれても腹痛は起こり得る。筋肉のけいれんが主として腹部に認められることがある。著しい発汗が全身に、あるいは咬まれた場所とまったく違った部位に限局して認められることがある。全身の筋肉の弛緩が起こるが、麻痺にまで至ることは希である。
他の主要な症状としては、嘔気、嘔吐、発熱、不眠症、めまい、頭痛、全身の発疹、高血圧、下痢、喀血、呼吸困難、排尿困難、重度の開口障害、食欲不振、眼瞼浮腫、全身の関節痛、全身の震え、不安感、羞明、流涙、精神異常、徐脈や頻脈、括約筋のけいれんに続いて起こる尿閉などである。
 乳幼児が咬まれると痛みのため泣き叫び、間欠的にけいれんし、症状の進行は早く、重症になりやすい。腹部の痛みと硬直はしばしば認められる。熱がないのに強い痛みが突然起こり、局所の発疹や著しい頻脈が乳幼児に認められれば、セアカゴケグモに咬まれたことを疑わなければならない。

<予後>
 セアカゴケグモに咬まれてもアナフィラキシーショックを起こすことがないので、適切な診断と治療を行えば死ぬことはない。
 ほとんどの患者は少量の毒素を注入されるだけで、全身症状を呈したため治療が必要となるのは約20%と少ない。これらの患者は、もし治療を行わなくても、多くは1週間以内に回復する。希に死亡することもあるが、これは16歳以下の子供、60歳以上の高齢者や何らかの基礎疾患を持ったものに起こる。オーストラリアでは、1956年に抗毒素が導入されてからは1名の死亡者も出ていない。オーストラリアの死亡例を見ると、咬まれてから死亡するまでの時間は6時間から30日までと幅があるが、24時間以内に死亡したのは、生後3か月の乳児に起こったこの6時間の1例(1933年)だけである。

<診断>
 治療を開始する前に、セアカゴケグモに咬まれたことを確認しなければならない。咬まれた後にセアカゴケグモを見つければ診断は容易であるが、小さな子供が腹痛を起こし、泣き叫んでいるだけの状況では診断は困難である。診断に役立つ検査はないので、臨床診断だけが頼りである。
 患者が全身に強い痛みを訴え、痛みの原因が他になければセアカゴケグモに咬まれたことを疑わなければならない。特に腹痛を起こし、圧痛が無いのに腹痛の硬直が認められれば疑わしく、急性腹症と間違ってはいけない。熱がないのに著しく発汗したり、他の症状と共に高血圧が認められれば診断に役立つ。

・ 処置
 咬まれた局所を包帯等で強く圧迫するのは、痛みを増強させるので勧められない。局所をアイスパックで冷やすのは、痛みをいくらか緩和するかもしれない。
 それぞれの症状に応じて対処療法を行っても、効果のないことが多い。痛みに対して鎮痛薬の服用はもちろん、モルヒネやペチジンの注射でも効果が認められない場合がしばしばある。すべての症状に対してもっとも有効なのは、抗毒素による治療である。

・ 治療
 局所症状だけに止まれば抗毒素は必要ないが、セアカゴケグモに咬まれたことが明らかで全身症状か現れてくれば、できるだけ早く抗毒素を注射する。しかし、最初は診断がつかなくて、症状がでてから時間が経った場合でも抗毒素は使うべきで、咬まれてから1週間経過しても有効である。筋肉内注射で投与し、通常1時間以内(しばし20分以内)に顕著な効果が現れる。オーストラリアのC L A社製のセアカゴケグモ抗毒素を1アンプル注射すれば大部分の患者が回復するが、それでも効果が現れない場合にはアンプルを追加する。5アンプル以上を注射することもある。小児にも成人と同じ量を使用する。
オーストラリア製の抗毒素も馬血清から作られているが、アナフィラキシーを起こすことはほとんどない。それは、この抗毒素が高度に精製されており、筋肉内に注射するためである。オーストラリアでの調査によると、セアカゴケグモに咬まれて抗毒素を注射された2062名中、アナフィラキシーを起こした者はわずか11名(0.54%)で、死亡した者はいなかった。11名中、5名は抗毒素の原液を静注した者で、これは禁忌である。もしどうしても静注が必要な時は、抗毒素を生理食塩水で約10倍に希釈して使用する。しかし、アナフィラキシーの危険は常につきまとうので、抗毒素の注射をする前に、これに対し準備を整えておくことが必要である。アドレナリンをすぐに注射できるように準備して、さらに蘇生装置を用意しておく。
 抗毒素は、大阪府立急性期総合医療センター(06-6692-1201)に保管されているので、必要な時は連絡すること。
 

このページの作成所属
健康医療部 四條畷保健所 

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