自治の窓 地方公務員の任用と要員管理に係る一考察 「第4章 地方公共団体の要員管理に係る考察」

更新日:平成27年5月1日

 第4章 地方公共団体の要員管理に係る考察

1.効率的な要員管理を目指して

(1)定数外職員の人件費について

 現在、多くの地方公共団体では、景気の停滞により税収が減少し、非常に厳しい財政状況にある。多くの地方公共団体では、限られた人的資源でいかに効率的に組織運営を行うかが重要となっている。
 多くの団体では、業務委託や指定管理者等のアウトソーシング等の行政改革を実施し、行政のスリム化を図ってきたが、外部化できない事務、つまり地方公共団体の職員が直接執行する事務についても、効率的に実施することが求められている。
 第2章では、府内職員数の推移について明らかにしたが、正職員が約7,400人減少したことに対して、定数外職員の増加が約6,200人増加しており、正職員の職の一部を定数外職員が担っていると推測した。
 府内市町村のこのような背景としては、厳しい財政状況によるものと推測する。以下参考として府内X市の任用根拠別職員の人件費を一覧にしている。一覧では、増加が顕著な再任用短時間勤務職員、任期付短時間勤務職員、一般職非常勤職員を記載している。

<X市の任用根拠別年間人件費>

項目

正職員
(H25平均)

再任用
短時間

勤務職員
(単一号給)

任期付
短時間

勤務職員
(職種A)
(単一号級)

任期付
短時間

勤務職員
(職種B)
(単一号給)

一般職

非常勤職員
(一般事務)
(単一報酬)

勤務
時間

週38.75h

週31h

週31h

週31h

週28h

人件費

7,200,000

3,500,000

3,100,000

3,300,000

2,700,000


 上記のように、正職員と比べ定数外職員の人件費が、勤務時間が常勤職員と比べ3/4から4/5と短いものの、年間人件費が1/2となっているため、財政的な事情から任期の定めのない職員の業務の一部を定数外職員に置き換えることで、支出を抑え、効率的な行政運営をすることができる。
 しかしながら、再任用短時間勤務職員はともかく、任期付短時間勤務職員は一定の従事する業務に係る要件が任用の際に必要であり、一般職非常勤職員は補助的な業務に従事することが想定されている等の理由から、単純に正職員が恒常的に従事していた職に定数外職員をそのまま置き換えることは、不適切であり、効率化の範囲を逸脱している。
 このため、正職員以外の任用根拠の職員が従事することが適している業務を、現在、正職員が業務の一部として担っている場合、最適な任用形態の職員配置という観点から、その業務を一般職非常勤職員等が担うように変更することによって、財政面での効率化を図ることになる。
 このような理由から、各市町村では、実際に正職員がこれまで従事していた職に関して業務単位で分解し、そのうちの補助的な業務、一時的な事業増加に伴う業務等を一定の業務ボリュームに取りまとめ、その業務を一般職非常勤職員や任期付職員が従事するように整理しているのではないかと考える。

(2)業務の性質に適した効率的な職員の配置について

 正職員以外の任用根拠の職員が従事することが適している業務を、現在、正職員が担っているかどうかを分析する際には、(第1章ではミクロ方式は容易に頻繁に実施することができず、コストがかかることを述べたが)、やはり職員が従事する職を更に細かい業務に細分化し、業務の棚卸しを実施することで個々の業務の量と質を明らかにし、整理する必要があると考える。
 まず、地方公共団体の業務の性質として、事務処理のパターンが決まっており、マニュアル化が比較的容易な「定型業務」と事務処理のパターンを出しにくく、その都度判断が求められマニュアル化が困難な「非定型業務」に分けられる。また、それらは更に繰り返し発生する「定常業務」と繰り返しのない比較的不意に又は不定期に発生する「非定常業務」に分けられる。このように区分けすると4つの区分にまず業務が分類され、以下の図のとおりになる。

<業務の性質図>
業務の性質図
 次に、これらの区分で分けられる業務を、正職員が担う業務に位置付けられるか、補助的な業務に位置付けられるのかをさらに区分する。

 第2章では、臨時・非常勤職員は「臨時的・補助的な業務」に従事し、業務内容や業務に伴う責任の程度は正職員と異なる設定とされるべきものと述べた。この「補助的な業務」の反対の業務が正職員や再任用職員、任期付職員が従事することになるのだが、「地方公務員の短時間勤務の在り方に関する研究会報告書」によれば、それを「本格的業務」と位置付けている。この本格的業務と補助的業務の違いについて、個々の業務ケースでそれぞれ判断すべきものであり、画一的な基準を設定することは困難であるが、本格的業務は法律、条例、制度等を背景とした高度な判断を要する業務や地方税の徴収や許認可を行う事務などの権力的業務が典型的な例として想定され、補助的業務としては、データ入力、資料整理などの単純業務や、正職員が行う権力的業務の前段となる予備的な作業など専門性の低い業務がその典型と想定されていると考える。なお、「本格的業務」と「補助的業務」の分類においては、可能な限り職員が従事している事務を細分化し、全体としてみれば本格的業務であるが、その中に前述の許認可等の権力的業務の前段となる予備的な行為、資料整理等の補助的な業務が含まれていれば、それらを補助的な業務として位置づけ整理し、一定の業務ボリュームを体系的に確保できるのであれば、正職員が当該業務に従事することは効率的ではないので、一般職非常勤職員に当該業務を執行させる方が効率化を図ることができる。
 このように、地方公務員の業務においては、正職員が従事する「本格的業務」と非常勤職員が従事する「補助的業務」に基本的には大きく分けられ、前述の典型事例をベースに各市町村において判断する必要があると考えるが、本稿では筆者の私見に基づき、図のような整理を行い、それぞれの業務区分ごとの効率的な職員の配置方法について以下のとおり考察した。なお、例として挙げている業務については、その業務のすべてが区分の中に位置付けられるものとは言えず、例えば区分1の住民票交付申請の審査、決定においても、高度な判断を要するケースも勿論発生するであろうし、地方税の滞納整理等も例外的な処理を体系化することでマニュアル化をはかり、定型的な業務とされることも勿論ありうるため、あくまで参考として記載している。

<各区分に位置付けられる本格的業務・補助的業務例>

業務の性格本格的業務補助的業務
区分A定型・定常業務区分1

<例>
住民票の交付申請の審査、決定
区分2

<例>
住民票の申請受付・交付事務
区分B定型・非定常業務区分3

<例>
死亡叙勲等の栄典事務
区分4

<例>
調査集計事務
選挙事務補助(投票用紙の配布等)
区分C非定型・定常業務区分5

<例>
地方税の滞納整理、差し押さえや許認可を行う事務などの権力的業務
区分6

<例>
資料作成業務
区分D非定型・非定常業務区分7

企画・調整・改革・改善業務
DV支援措置相談・人権相談業務
区分8※補助的な業務ではない

<例>
学校医
弁護士相談

区分1、2 定型・定常業務

 繰り返し発生し、事務処理のパターンが一定決まっており、マニュアル化が容易な業務が想定される。この区分では、高度な判断が必要な場合でも、判断に必要な知識や技術の習得が比較的短時間で可能であるため、育成期間が短時間で済むと考える。また、区分1については、住民票の交付決定といった行政処分(権力的業務)を行うため、一般職非常勤職員のような補助的な業務に従事する職は適当ではなく、「正職員」が従事することが適当であると考える。また、正職員のなかでも、経験や専門的な判断力を有する職階の職員が従事するより若手の職員が従事することが望ましいのではないかと考える。
 なお、区分1に該当する業務において、行政処分等の行政が直接事務をすることが必ずしも必要とされないもの、例えば民間でも同様の業務がなされている事務については、業務委託、指定管理者制度等によりアウトソーシングを行うことが適していると考える。
区分2については、住民票の交付申請の受付等が該当すると考えるが、これらは権力的業務に付随する補助的な業務であり、マニュアル化が容易であるため、正職員が直接的な指揮命令をする必要がないのであれば、「外部委託」することも可能であると考える。一定、指示・命令等直接的な指揮が必要であるならば、地公法17条に基づく、「一般職非常勤職員」の配置が適当であると考えられる。
 なお、区分1、2については、一定の業務ボリュームまた、業務量の測定が比較的容易であるため、発生する業務の量に対応できる要員数が確保できるかどうかがポイントになる。


区分3、4 定型・非定常業務

 この業務は、発生すれば定型的な手順に従って業務を遂行すればよいのであるが、発生時期が不定期であるものや、政策的な事情により業務が一定期間増加する事務が該当すると考える。たとえば、区分3の本格的業務に関しては、図記載のとおり死亡叙勲等の栄典事務はまさに典型的な事例であり、この種類の業務は経験者がいれば、業務を効率的に実行できると考えるため、経験者管理が重要であると考える。このため、当該事務経験、知識が豊富な「再任用職員(再任用短時間勤務職員含む)」は、このような業務に適していると考える。その他に例えばマイナンバー制度導入に伴う個人番号カードの発行業務等は平成28年1月から3年程度、一時的に増加する業務であると考える。この業務について、増加前のベースとなる業務については、「任期の定めない職員」が従事することになるが、増加分に関して、業務が増加する期間の終了後も任用が継続する職員を配置することが人事管理上効率的ではない場合、第2章の各任用根拠の特徴から、本格的業務に従事することが想定される任期付職員のうち、「4条任期付職員」「任期付短時間勤務職員」の配置が適当と考える。
 なお、この場合、地公法17条の任用の手続をとるいとまがなく、緊急に職員を採用する必要がある条件が加われば、「臨時的任用職員」により対応することになると考える。
 区分4については、区分2と同様一般職非常勤職員が適当であると考えるが、緊急に職員を採用する必要がある条件が加われば、「臨時的任用職員」により対応することになる。

区分5、6 非定型的・定常業務

 日常的に繰り返される定常的業務であるが、個別にそれぞれ例外的な対応が必要な業務であるため、適切な判断が可能な経験者を確保すると同時に、その判断業務に必要なスキルを把握して、研修等の対応が十分必要な業務であると考える。この業務は、非常に高度な判断が求められるのではなく、同種の業務の経験を通じて、その経験に基づく判断をすることになると考える。このような業務については、正職員の他に区分3と同様、行政経験と知識が豊富な「再任用職員(再任用短時間勤務職員含む)」の配置し、スキル管理、若手職員に対するトレーニングを行うことで、効率的な業務の執行が可能になると考える。
 区分6については、やり方は定まっていないが、繰り返し発生する業務であるため、資料作成、データ入力等の事務が想定される。この業務は、地公法17条の任用の手続をとるいとまがなく、緊急に職員を採用する必要があるケースは基本的に想定されないため、「一般職非常勤職員」を配置することが適当である。

区分7、8 非定型・非定常業務

 この業務は、あらかじめ何が発生するか想定することが難しく、その都度例外処理、新しい判断を行う事務が想定され、汎用的な対応能力が必要となり、正職員が基本的に配置される。企画業務や調整業務、行政改革業務等が代表的なものとして挙げられ、基本的にこのような性質の補助的な業務は少なく、企画業務等の前段となる予備的な作業等の行為などが該当すると考えられる。
 なお、このような業務において、特に特定の専門分野における高い専門性や実務を通じて得た経験と、社会的にも評価されるような創造的、先見的な判断力が必要であり、団体内部でそれを有した職員が得難い場合は、「特定任期付職員」を任用することがすることが効率的である。
 また、任期の定めのない職員と同様の専門的な知識経験を有する職員が必要であるが、人材の確保・育成に時間をかけることができない場合や、専門性が必要な業務が一定期間に限られる場合は、「一般任期付職員」を任用することが効率的であると考える。
 区分8については、図における例外であり、高い専門性を必要とする業務であるが、担当する職務が厳格な指揮命令系統の中で行うことが予定されておらず、当該公務の他に職務を有していたり、公務のために使用する時間が短時間であったり、その期間が短い勤務態様である労働者性の低い業務であるため、これらについては「特別職非常勤職員」として任用することが適当である。

2.効果的な職員配置を目指して

(1)「適正要員数」の判断について

 前項では、効率的な職員配置について検討したが、定数外職員を含めた要員管理は、第1章でも述べたように、地方公共団体の事務事業を行政需要の変化に対応して効果的、効率的に遂行するために、全体及び個々の部門の業務遂行に必要な人員を検討し、行政需要の効果的充足と、業務量と人員の適正化を目的としており、効果的な要員管理を行うためには、予算編成と有機的に関連付けし、既存事務事業の整理改廃、新規事務事業の合理的かつ適正な選択をまず行うことが必要である。
このとき、「適正」という概念をどのように捉え、目安をつけるのかというと、おおまかに、必要とされている業務を実施できるだけの要員数であること、行政需要に対応できるだけの人件費水準であること(人件費水準が高いため行政需要に対応できないことは適正ではないということ)、これまで以上の公共の福祉の増進、住民サービスの向上への取組みといった投資的な活動ができる要員数、人件費を確保できること、以上3点が考えられる。
 そして、これら3点は、極めて政策に決定されるものであると考えられる。つまり、地方公共団体の長の政策判断によって大きく変化するものであると考える。
 第三章の1は、現在の行政需要を達成するための職員の配置をいかに効率的なものにするかということに着目して、人件費の削減や定数削減などを中心とする「量の改善」について考察したが、この「適正」という概念の目安では、量の改善だけでは不十分であり、これまで以上の公共の福祉の増進、住民サービスの向上といった「質の改善」が不可欠である。なぜなら、人口減少化時代にあって、各市町村は人口減少をいかに食い止め、人口増加と定住促進を目指していくことが、これからの地方公共団体の経営に不可欠であり、住民に「住みたい、住み続けたい」と思ってもらえるような政策が必要だからであり、その政策の実現のためには、その原動力となる「考え、新たな住民サービスを生み出すことのできる職員」と地方公共団体の「政策形成能力」が必要となる。この項では、これまで以上の公共の福祉の増進、住民サービスの向上といった「質の改善」をするためにどのような職員配置を行うべきか考察する。

(2)効果的な要員管理を目指して

 地方公共団体の政策判断は、戦略そのものであり、人口増加と定住促進を目指す政策は現在の行政需要の達成には直接には結びつきにくい種類のものであるが、中長期的なスパンで将来的な公共の福祉の増進、住民サービスの向上を達成するために必要なものであり、その政策の実現のための課題解決の業務を今現在実施する必要がある。
 このような業務に従事する職員を「投資的職員」と位置づけ、その投資的職員に関わる人件費を投資的人件費と整理する。新規事業の立ち上げのための人材、プロジェクトメンバー、外部の有識者等がこれに該当すると考える。対照的に、現在の行政需要に対応する職員は「基幹職員」と位置づけ、明確に区別する。
 基幹職員については、第3章の2において、区分1から6の職員が該当し、投資的職員は区分7の一部であると考えられる。基幹職員の要員管理については、業務の性質と量をベースに最小の経費で最大の効果をあげるという効率性という点に焦点がある。反対に、投資的職員の要員管理については、何を課題にどういう業務が発生し、何人必要なのかということが仮説の域を超えない場合が多くなるが、可能な限り予測し、地方公共団体の長の政策判断により具体的に業務内容、要員数、コストを定めたうえで、基幹職員と異なり、無駄な支出は避けるとしても、むしろ充分に時間と予算を有効に使うことに焦点があると考える。このような点で基幹職員と投資的職員のマネジメントは大きく異なるが、要員管理において明確に区別すべきである。
 各地方公共団体においては、非常に厳しい財政状況にあり、限られた人的資源で効率的に組織運営を行うことは重要ではあるが、一方で同時に、効果的な政策の実現ための投資的職員が必要になることから、効率性のみを追求するのではなく、投資的職員を生み出すという視点をもって、3章の1−(2)で述べた効率的な職員配置を実践することが今後の地方公共団体の要員管理において、非常に重要である。

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総務部 市町村課 行政グループ

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