自治の窓 今こそ、公共施設等の老朽化に立ち向かうとき 【公共施設マネジメント手法を活用した一考察】 「はじめに」から「第1章」

更新日:平成26年4月1日

は じ め に (−公共施設等の老朽化対策にあたって−)

 近年、道路・橋りょう・上下水道などのインフラ施設や庁舎・学校・公営住宅などの公共施設の老朽化対策が注目を浴びている。これら公共施設等は、わが国では高度経済成長期の1960から70年代に集中して建設されており、すでに50年以上が経過している計算になる。
 2011(平成23)年3月に東日本大震災が発生し、防災・減災対策に取組みを始めた矢先、2012(平成24年)12月の中央自動車道笹子トンネルにおいて天井崩落事故が発生したことを契機にして公共施設等の老朽化対策にも世間の注目が集まり、国や地方公共団体(以下「団体」という。)における取組みが加速している。
 2013(平成25)年11月に開催された「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」において、国及び地方公共団体等が一丸となってインフラの戦略的な維持管理・更新等を推進するために『インフラ長寿命化基本計画』を決定し、団体においても『インフラ長寿命化計画(行動計画)』及び総務省の要請により『公共施設等総合管理計画(管理計画)』を策定することとなり、これまで対策が先送りになっていた公共施設等の老朽化対策に目を向けなければならなくなった。
 2014(平成26)年1月の月例経済報告では、「景気はゆるやかに回復している」とされ、また2014(平成26)年度の政府予算案は、経済再生・デフレ脱却と財政健全化を併せて目指す予算として、前年度予算を3兆2,700億円上回る95兆8,800億円となっており、地方財政はアベノミクス効果を反映して地方税収は増となる見込みがなされている。しかしながら団体では行財政改革において歳入確保や歳出削減に取組んでいるものの財政運営は、依然として厳しい状況が続くことも見込まれることから、管理計画(行動計画と一体的なものとして取扱う)の策定を機に所有する公共施設等の更新・統廃合・長寿命化を行うことで、老朽化対策への中長期的な取組みの方向性を明らかにし財政負担の軽減・平準化を図っていく必要がある。
 本稿では、府内市町村の現状を把握・分析し、国の取組みなどと併せ、公共施設マネジメントの活用に着目し、今後策定することになる管理計画において、いかに取組みを行うべきかを検討する。
 なお、文章中の意見に係る部分は筆者の私見であることを予めお断りしておく。

 ※以降の文章中、特に指定の無い場合、「府内市町村」とは大阪市を除く市町村をいう。 

 

第 1 章  現状の把握、分析

1.人口の推移
 国立社会保障・人口問題研究所の「日本将来推計人口(2012(平成24)年1月推計)」では、1970(昭和45)年の国勢調査で初めて1億人を突破し、2010(平成22)年には1億2,806万人に達した総人口は、これ以降減少に転じ、2048年には1億人を割り込み、2060年には8,674万人まで減少すると予測されている【図1】。
 大阪府においても同様に、同研究所の2013(平成25)年3月推計において2010(平成22)年の887万人をピークに2040年には745万人まで減少すると予測されている。
また、人口減少と合わせ少子高齢化の進展によって、年齢構成も大きく変化する。2010(平成22)年国勢調査と2040年予測の総人口で比較すると年少人口(0から14歳)は13.2%が9.7%に、生産人口(15から64歳)は64.4%が54.3%に、老年人口(65歳以上)は22.4%が36.0%で、3人に1人は65歳以上となる。
 人口減少及び年齢構成の変化の背景には出生率の低下が1つの要因と考えられる。「平成25年度版少子化社会対策白書」によると、第1次ベビーブーム期には、合計特殊出生率は4.3を超えていたが、1950(昭和25)年以降急激に低下し、第2次ベビーブーム期を含め、ほぼ2.1台で推移し、1975(昭和50)年に2.0を下回ってから再び低下傾向にある。1989(平成元)年には1.57を記録し、さらに、2005(平成17)年には過去最低である1.26まで落ち込んでいる【図2】。

【図1】(平成24年度国土交通白書 我が国人口推移より)

平成24年度国土交通白書 我が国人口推移

 注)総務省「国勢調査」、「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来人口(2012.1月推計)」より国土交通省が作成したもの

【図2】(出生数及び合計特殊出生率の年次推移)

出生数及び合計特殊出生率の年次推移
 注)内閣府「平成25年度版少子化社会対策白書」より

2.財政状況
 地方財政状況調査(決算統計)によると、府内市町村の2012(平成24)年度の普通会計決算の決算総額は、歳入2兆1,480億円、歳出2兆1,176億円である。
(1)歳入
 2004(平成16)年度決算において2兆円を割り込み、2009(平成21)年度決算で再び2兆円台に戻したものの、歳入における一般財源の割合は、三位一体改革による地方財政総額の抑制や景気低迷による税収の減などの影響もあり、平成10年度の74.7%のピーク後、2009(平成21)年度には65.9%となった以降は70%超には至っていない【図3】。

(2)歳出
 人件費は人員削減等により減少しているものの、少子高齢化の影響等による社会保障関係経費の増により扶助費の伸びが顕著である【図4】。平成5年度までは人件費に次ぐ割合を占めていた普通建設事業費も以降減少し、平成13年度には扶助費と逆転しており、2012(平成24)年度決算ではわずか8.8%にすぎず、扶助費の増加傾向に対して投資的経費は大幅な抑制を余儀なくされている。

(3)普通建設事業費
 普通建設事業費の内訳にも変化が見てとれる。昭和46から49年が第2次ベビーブームであり、児童の増により相次いで学校施設が建設されたため、教育費が大きな割合を占めていたものの、一定量の施設整備が完了し昭和59年度に土木費と教育費の割合が逆転。決算総額に占める普通建設事業費は少ないものの、土木費がほぼ半分の割合を占めている状況は現在も変わっていない。
 前述のように近年の団体財政では投資的経費に比べ、扶助費など経常的な経費の占める割合が増加している。府内市町村における2012(平成24)年度決算の経常収支比率は95.2%(都市95.1%、町村91.7%)となっており、全国平均(90.7%)と比べ高い水準にあり、追加的な新規事業を実施する余力が、1割にも満たない状況にあることがわかる【図5】。

【図3】(歳入内訳(大阪市除く))

歳入内訳

 注)地方財政状況調査より。地方交付税には臨時財政対策債含む。過去のデータを分析にあたり、2006(平成18)年度に政令市となった堺市を含めている。

【図4】(性質別歳出内訳(大阪市除く))

性質別歳出内訳

 注)地方財政状況調査より。

【図5】(普通建設事業費と経常収支比率(大阪市除く))

普通建設事業費と経常収支比率

 注)地方財政状況調査より。

3.公共施設の状況
 冒頭でも述べたように、わが国の公共施設等は、1960から70年代の高度成長期に多く建設されている。
 道路及び橋りょうなどインフラ施設について国土交通省がまとめた資料でみると、建設後50年を経過する施設の割合が今後加速的に増加する【表1】。
 府内市町村(政令市含む)の道路においても、延長は毎年2%程度の緩やかな伸びであるものの、道路面積及び舗装改良は昭和40年代後半から50年代後半まで約15%前後の伸びを示している。橋りょうにおいても、昭和50年代後半に大きな伸びを示しており、国の想定のように今後10年程度で50年を経過するものが大量に発生するものと考えられる【図6、7】。

【表1】(建設後50年以上経過する施設の割合の例)

 

平成24年3月

10年後

20年後

道路橋(橋長2m以上)

約16%

約40%

約65%

トンネル

約18%

約30%

約65%

 注)国土交通省「社会資本の維持管理・更新に関し当面講ずべき措置」より抜粋

【図6】(府内市町村(政令市含む)道路実延長及び面積)

道路実延長及び面積

 注)公共施設状況調査より(H15年以降、舗装済延長は調査対象外となった)

【図7】(府内市町村(政令市含む)橋りょう箇所数及び面積)

橋りょう箇所数及び面積

 注)公共施設状況調査より(H15から調査対象外となった)

 またインフラ施設を除く公共施設は、公共施設状況調査や総務省消防庁が実施した「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査報告書」では、公共施設の約42%(全国約37%)は学校施設が占めている【図8】。文部科学省の資料では、小中学校は昭和40年代後半から50年代にかけて児童・生徒数の急増期に多く整備されており、うち約58%が1981(昭和56)年以前に建築されている。大阪府においても小学校は昭和40年代後半から50年代にかけて、中学校も生徒の年齢経過に伴ってその後整備されている状況が見てとれる【図9】。しかし、昭和50年代後半以降の児童・生徒減少期に学校数の減少は見られない。

【図8】(全国及び府内市町村(政令市含む)の公共施設等の状況(インフラ施設を除く))

公共施設等の状況

 注)〔左〕防災拠点となる公共施設等の耐震化状況調査報告書(H24.11)、〔右〕公共施設状況調査より

【図9】(府内市町村立(政令市含む)小中学校校舎面積及び児童数)

小中学校校舎面積及び児童・生徒数

 注)公共施設状況調査より(平成15年度以降は「学校基本調査」より)

4.公共施設マネジメントの取組み状況
 2013(平成25)年9月に総務省が実施した「公共施設マネジメントに係る取組み状況調査」による府内市町村の取組み状況は【図10】のとおりで、2014(平成26)年度までに公共施設マネジメントの取組みを実施する又は実施する予定の市町村は41団体中28団体であり、既に半数の団体が取組みを始めることになる。また、保有資産の実態把握を行った上で、公共施設白書を作成している又は作成予定団体も6団体ある。
 一方で、公共施設マネジメントの取組みへの障害として、「マンパワー不足34団体」、「ノウハウ不足29団体」、「財源不足24団体」などが挙げられており、この背景には、財源の確保や実施体制の整備が不十分であること、専門的知識や具体的な手法が提示・確立されていなかったこと、保有する公共施設等の詳細な情報管理が行われていないことが原因と言える。
【図10】(府内市町村の公共施設マネジメントに係る取組み状況(政令市除く))

公共施設マネジメント取組み状況

 ・その他の設問
  公共施設マネジメント主管課の決定状況:決定済14団体
  公共施設白書の策定状況  :策定(予定)7団体
  公共施設基本計画の策定状況:策定(予定)15団体
  公共施設実施計画の策定状況:策定(予定)8団体
   注)総務省「公共施設マネジメントに係る取組み状況調査」より

5.現状把握とこれからに向けて
 高度成長期は人口増に伴う公共施設等の需要があったため、急速に建設が進められた。しかし、近年は人口減少及び少子高齢化により年齢構成の変化によって住民ニーズも質や量が変化している。税収など一般財源等の減少によって臨時的な財源への依存度が高まり、扶助費等の増高などは地方財政の硬直化を招く要因ともなりえる。このままでは老朽化した公共施設等の更新費用はおろか維持管理費用でさえ捻出することが困難になる可能性もある。もはや団体が自由に使えるお金には限りがあるのだ。
 公共施設等は住民生活に密接している。道路や橋りょうなどのインフラ施設は地域交通のみならず、地域間交通を担っており一団体内の問題では済まない。学校や市民会館などの公共施設も災害時などは避難所として使用される。こういった施設を単に財源がないからといって更新の先送りや廃止することはできない。今こそ限りある財源と今ある施設をうまく利活用して、公共施設等の現状と将来に向き合うときではないか。

 第2章はこちらから

このページの作成所属
総務部 市町村課 振興・分権グループ

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