【自治大阪H30年5月号 相談室】条件付採用期間中の職員の分限免職について

更新日:平成30年5月22日

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【質問】

 X市で4月1日に採用されたAは、遅刻や欠勤はないものの、マニュアル等を参照すれば容易に習得することのできる基本的な業務について、単純なミスを繰り返し、上司から指摘されても一向に改善がみられない。また、業務の期限を遵守するために上司がAに時間外勤務命令を行っても、Aは命令に従わず定時に退庁するため、職場には相当の負担が生じている。
 まもなく採用から6ヵ月を経過するが、X市長はAに対して分限免職の処分を行うべきか。または、現時点では処分を見合わせ、条件付採用期間を延長すべきか。

【回答】

 Aの資質、能力、性格等からして職務遂行に適合せず、かつ、そのような不適合性が容易に矯正できないと判断される場合には、分限免職処分を行うべきであり、勤務日数不足によりAの能力実証ができない場合を除き、処分を行わず条件付採用期間を延長することは適当でない。

【解説】

1.条件付採用制度の趣旨

 地方公務員法(以下、「地公法」という。)第22条第1項では、職員の採用は、臨時的任用又は非常勤職員の任用の場合を除き、すべて条件付で採用を行い、採用後6ヵ月の間、その職務を良好な成績で遂行したときに、はじめて正式に採用を行う旨が定められています。
 
職員の採用は、地公法第17条の2により、競争試験又は選考による能力の実証を経て行われます。しかし、実証の程度には限界があるため、条件付で採用を行い、一定の期間、実地の勤務の中で職務遂行の能力を観察し、それが確認されたときに正式に採用を行うことになります。
 
このように、条件付採用制度は、一旦採用した職員の中に適格性を欠く者があるときは、その排除を容易にし、地公法第15条に定める成績主義の原則を貫徹しようとするものです。

2.条件付採用期間中の職員の身分取扱いについて

 条件付採用期間中の職員は、正式採用の職員とは異なり、分限による身分保障を与えられませんが、それ以外の身分の取扱いは、正式採用の職員とおおむね同じです。

(1)分限
 
条件付採用期間中の職員については、地公法第29条の21項により、同法第27条第2項及び第28条第1項から第3項までの規定は適用されません。このため、法令上の根拠、法令で定められた事由、さらに分限処分の手続および効果に関する条例によることなく、その意に反して降任、免職、休職または降給の処分を行うことができます。
 
条件付採用期間中の職員について分限処分に関する規定の一部が適用除外されている趣旨は、条件付採用期間中の職員は、職務遂行の能力を実証中であり、その間に勤務実績が不良で能力に欠けることが明らかになった場合、身分保障を与えることなく、いつでもその意に反して一方的に免職または降任等の処分をすることができるという点にあります。
 
しかし、条件付採用期間中の職員に対して、任命権者は勝手な処分ができるわけではなく、地公法第13条の平等取扱の原則や同法第27条第1項の公正の原則が適用されていることに留意する必要があります。

(2)服務及び懲戒
 
条件付採用期間中の職員については、正式採用の職員と同一の服務規律が適用され、その違反に対しては地公法第29条の規定により懲戒処分を行うことができます。

(3)不利益処分に関する不服申立て
 
条件付採用期間中の職員については、地公法第29条の21項により、行政不服審査法に基づく不利益処分に関する不服申立ての規定は適用されません。このため、分限処分又は懲戒処分を受けた時は、人事委員会又は公平委員会に対し、救済を求めることができません。
 
なお、処分を受けた条件付採用期間中の職員は、訴訟によって不利益処分の取消し又は無効を争う事になります。

(4)勤務条件に関する措置要求
 
条件付採用期間中の職員については、正式採用の職員と同一の勤務条件が適用され、その勤務条件について不満があるときは、人事委員会又は公平委員会に対し、勤務条件に関する措置要求を行うことができます。

(5)職員の職名、任用、給与等
 
条件付採用期間中の職員については、職名は正式採用の職員と変わるところはありません。
 
また、条件付採用期間中の職員が正式に採用されるためには、「その職において」6ヵ月を勤務することとされていますが、条件付採用期間中の転任、昇任及び降任を禁ずる趣旨ではないと解されています。
 
実地の勤務の中で能力の実証が行われている職員であっても、勤務の内容は正式採用の職員と同様であるため、給料の等級及び号給の決定についても正式採用の職員と同様に扱う必要があります。
 
しかし、一般的に、条件付採用期間中の職員は、その期間の満了までは勤務成績が良好であることの実証が完了していないので、運用としては、この期間中に昇任や昇給の対象となる余地はないと解されています。

(6)給料以外の勤務条件等
 
条件付採用期間中の職員については、給料以外の勤務条件、各種手当、勤務時間、休日、休暇等も正式採用の職員と同一の取扱いとすることが適当です。
 
その期間は退職手当の算定基礎となる期間に算入されるものであり、また、地方職員の共済組合の組合員としての完全な資格を有しています。
 
また、条件付採用期間中の職員は、正式採用の職員と同一の労働基本権を有するため、その職種に応じて職員団体または労働組合を結成し、または加入することができます。

3.分限免職処分の留意点

 勤務実績不良やその職に必要な適格性の欠如等が認められる条件付採用期間中の職員が存在する場合、まず必要に応じて、担当職務の見直し、配置換え、集中的な特別研修等を行うことによって改善を図る努力が必要です。これらの取組みによって、勤務実績の不良の状態又は適格性に疑いを抱かせる状態が継続する場合には、分限免職処分を行う可能性がある旨の警告書を交付するなど、その職員に対する分限免職処分を考慮していく必要があります。
 
勤務実績不良や適格性欠如等に該当するかの判断にあたっては、その職員の勤務実績に関する資料を収集した上で行うことが非常に重要です。資料としては人事評価の結果をはじめ、職員の勤務実績記録、他の職員と比較して明らかに劣る事実を示す記録、職務上の過誤の記録、当該職員についての苦情等に関する記録、当該職員に対する指導に関する記録等が挙げられます。
 
2.(3)で述べたように、分限免職処分の妥当性については訴訟で争われることになります。過去の判例では、勤務実績不良やその職に必要な適格性の欠如等が認められる客観的で詳細な記録を残している場合、分限免職処分は妥当であったとされています。一方、それらの記録が不十分で客観的に判断できない場合には違法とされています。

4.条件付採用期間の延長について

 条件付採用の期間は、採用されてから原則6ヵ月間ですが、人事委員会(人事委員会がない団体にあっては任命権者)は、その期間を1年に至るまで延長することができます。
 
人事委員会規則「職員の条件付任用の期間の延長に関する規則」(準則)によれば、条件付採用の制度は、能力を実地に実証するものであり、この制度の原則である6ヵ月の約半分の90日に満たない勤務日数しかないときは、90日に至るまで能力の実証を行うこととしています。このことを踏まえると、勤務日数不足の場合以外に条件付採用期間を延長しなければならない事由は特にないと言えます。
 
質問のように、条件付採用期間中の職員について分限免職処分を見送るための期間延長は、ただ漠然と延長しているだけであり、職員の身分関係を不安定にすることになります。原則として、任命権者は6ヵ月間の条件付採用期間中に、勤務実績の評価を行い正式採用とするか、分限免職処分とするかを決めなければならず、任命権者が判断できないからという理由でむやみに延長することは許されません。
 
このことを踏まえると、条件付採用期間中の職員が分限免職処分の対象になるかの判断は早めに行わなければならず、人事担当課は、それらの職員の勤務状況を定期的に確認する等、より多くの情報を収集しておく必要があります。

5.本事例の検討

 本事例の場合、Aは基本的な業務のミスを繰り返し、上司の指摘に対しても改善がみられません。また、期限遵守のための上司からの時間外勤務命令を拒否しています。これらのことから、Aは公務員としての責任感に乏しく、能力面においても適格性が欠如していると考えられます。
 
Aの分限免職処分を行うにあたっては、前述のとおりAの勤務実績に関する詳細な記録を処分の裏付けとして収集しておく必要があります。事務処理上の過誤、職務遂行全般にわたる態度、上司の職務命令に対する態度など個別に記録し、評価するとともに、これらの要素を総合的に判断することが必要です。その上で、Aの資質、能力、性格等からいって職務遂行に適合せず、かつ、そのような不適合性が容易に矯正できないと判断される場合には、分限免職処分を行う必要があります。
 
また、条件付採用期間については、Aの勤務日数が90日に至らず能力の実証をする上で延長が必要であるとの合理的な理由がある場合に限って延長することができます。分限免職処分の判断を先送りにする理由での延長は許されないことに留意が必要です。

6.おわりに

 平成17年に総務省において策定された「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針(集中改革プラン)」以降、地方公共団体は職員を大幅に削減しています。一方で、行政サービスの増加や権限移譲等により地方公共団体の業務は増えています。地方自治法第2条第14項では「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」としており、今後とも各地方公共団体では最少の人数で最大の効果をあげていく必要があります。
 
このような中、行政サービスの質を確保する面からも十分な能力の実証を行うなど、より良い職員採用に努めることが求められます。

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総務部 市町村課 行政グループ

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