相談室 営利企業等の従事制限について

更新日:平成29年3月1日

質問

 本市窓口部署に所属する職員Aが、趣味である旅行での経験を本として制作し、自費出版しようとしています。これを1,000部製作(経費200万円、1部あたり2,000円)し、うち500部を本屋の店頭にて販売(1部1,500円)することは、営利企業等の従事制限を受けますか。

回答

 任命権者より営利企業等に従事することの許可を得ることなく行うことは、地方公務員法第38条の営利企業等の従事制限に抵触するおそれがあります。また許可についても、営利企業等の従事制限の趣旨による裁量の範囲を逸脱しないように、判断することが求められます。

1.営利企業等への従事を制限する趣旨

 地方公務員法(以下、「地公法」という。)は第38条において、営利企業等への従事制限について次のとおり規定しています。

(営利企業等の従事制限)
第38条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。

 上記規定の趣旨としては、1.職務専念義務との関係、2.職務の公正の確保、3.職員の品質の維持があります。
 1.職務専念義務との関係について、「職員は、職務の遂行に当たっては全力をあげてこれに専念しなければならないものであり(地公法第30条)、また、その勤務時間および職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならないものである(地公法第35条)。」(『地方公務員月報 平成元年12月号』自治省公務員課編 15頁)とされています。
 2.職務の公正の確保について、「職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務するものであり(地公法第30条)、職務の遂行に当たっては特定の利益に偏することなく、常に中立かつ公正でなければならない。」(『地方公務員月報 平成元年12月号』自治省公務員課編 15から16頁)とされています。
 3.職員の品質の維持について、「職員は、職の信用を保持し、職全体の名誉を維持しなければならない(地公法第33条)。」(『地方公務員月報 平成元年12月号』自治省公務員課編 16頁)とされています。

2.任命権者の許可を受けなければならない行為について

 地公法第38条の規定により、1.営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ねること。2.自ら営利を目的とする私企業を営むこと。3.報酬を得て事業または事務に従事することとなっています。

 1.「「営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他団体」には、商法に基づいて設立される合名会社、合資会社及び株式会社をはじめ、有限会社法に基づく有限会社、その他営利行為を業とする社団も含まれる。しかし、農業協同組合、水産業協同組合、森林組合、消費生活協同組合等は、実質的には営利企業類似の行為も行っているが、それぞれを規制する法律で営利を目的とはしないとされているため、ここでいう「その他団体」には該当しないと解されている(行政実例昭和26年5月14日地自公発第203号)ので、報酬を受けないで、役員になることは差支えない。」(『地方公務員月報 平成元年12月号』自治省公務員課編16頁)とされています。 「「役員」とは、株式会社での取締役、監査役のような業務の執行または業務の監査について責任を有する地位にある者及び、これらの者と同等の権限または支配力を有する地位にあるものをいう。」(『地方公務員月報平成元年12月号』自治省公務員課編17頁)とされています。

 2.「「営利企業を目的とする私企業」とは、工業、商業、金融業等の業態のいかんを問わない。農業についても、営利を目的とする限り該当する(行政実例昭和26年5月14日地自公発第204号)。しかし、自家用の飯米や野菜を生産する程度の兼業農家などは、営利企業というよりも生業であると考えられるので該当しないであろう。職員の家族が営利を目的とする私企業を営むことは、職員本人の服務上の問題ではないので、地公法の関知するところではない。旧官吏服務規律第11号は、官吏の家族も許可を受けないで商業を営むことはできないとされていたが、個人の尊重(憲法13条)を基本とする現在の社会制度の下においてはこのような制限をすることができないことは当然である。」(『地方公務員月報 平成元年12月号』自治省公務員課編17頁)とされています。

 3.「「報酬」とは、労務、労働の対価として支給あるいは給付されるものをいう。「労務、労働の対価」とは、職員が一定の労働を提供することに対して双務契約に基づき支払われる反対給付のすべてをいい、金銭のみでなく、現物給付、利益の供与についても「報酬」の対象となる。それが、経常的なものであるものと一時的なものであるものを問わない。ただし、謝金、実費弁償に当たるものは「報酬」に含まれない。たとえば講演料、原稿料、布施、車代等である。「いかなる事業若しくは事務」とは、それが営利を目的とするものであると否とを問わず、すべての事業及び事務を含むものである。報酬を得ないで非営利事業もしくは事務に従事することについては、地公法は規定していない。(『地方公務員月報平成元年12月号』自治省公務員課編17頁)とされています。

 3.印税の取扱いについて

 「地公法第38条の「報酬」とは、名称の如何を問わず、労務、労働の対価、すなわち一定の労働を給付することに対して双務契約に基づき支給あるいは給付されるものと解されているため、出版契約に基づき出版者から著作者に支払われる印税はこれに該当するものと考えられる。また、地公法第38条の「事業若しくは事務に従事すること」とは、職員が職務以外の事業又は事務に継続的又は定期的に従事することと解されるところである。

 したがって、雑誌に原稿を寄稿し、それをもととした出版を反復・継続的に行う場合は、報酬を得て事業又は事務に従事することに該当し、任命権者から許可を受ける必要がある。」(『地方公務員月報 平成7年11月号』自治省公務員課編 24頁から25頁)とされています。

4.本事例の検討

 以上検討した結果、本事例の窓口部署に所属する職員Aに対して地公法第38条で定める営利企業等の従事制限では、任命権者の許可を受けなければならない行為として、1.営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ねること。2.自ら営利を目的とする私企業を営むこと。3.報酬を得て事業または事務に従事することとなっています。今事例においては、2と3について考えるべきものであり、店頭販売の行為が営利を目的とする私企業といえるかどうかが問題となります。

 2について、自費出版1部2,000円に対し、店頭販売では1部1,500円ということで、実費以下となっており、営利を目的としたものではないといえなくもないが、500部を店頭で販売するということは、一定規模で不特定多数の者を相手に、自らが事業主体となって販売を行っていることにほかならないことから、店頭販売を実施している以上、たまたま利益が出ていないということのみをもって営利目的が皆無であるとは言い難いと考えられます。

 3について、原稿料に当たる場合は実費弁償として「報酬」に含まれません。今事例においては雑誌に原稿の寄稿を行い、報酬を受けるのではなく、自費出版ということから、3の観点からは任命権者の許可を受ける必要はないと考えられます。

 よって、2については、事前に任命権者から営利企業等に従事することの許可を得るべきであると考えられます。

 なお、任命権者は、職員から営利企業等従事許可申請があった場合、許可については地公法第38条第1項により裁量行為であると解されますが、営利企業等の従事制限の趣旨である「1.職務専念義務との関係」として、当該職員が営利企業等に従事しても、職務遂行上、能率の低下を来すおそれがないこと、「2.職務の公正の確保」として、当該営利企業と職員が属する地方公共団体との間に相反する利害関係を生じるおそれがないこと、かつ、「3.職員の品質の維持」として、その他職務の公正を妨げるおそれがないこと、ならびに職員および職務の品位を損ねるおそれがないことの3点を確認し、判断することが求められます。

 以上のことを踏まえると、本事例では、以下のような場合には許可をすべきでないと考えます。

・「1.職務専念義務との関係」として、休日に本の制作、出版に従事しているのであれば一般的には問題はないと考えられますが、この場合でも職員Aの職務への集中力の散漫が認められるなどの場合

・「2.職務の公正の確保」として、職員Aが職務において、当該本を購入するといった特別な利害関係が発生する場合

・「3.職員の品質の維持」として、本の内容が性風俗などの職員及び職務の品位を損なうような場合

 なお、許可に関する上記の事例は単なる一例であり、実際の許可に当たっては上記3つの基準に照らし、具体的に検討することが必要となります。

(大阪府総務部市町村課行政グループ)

このページの作成所属
総務部 市町村課 行政グループ

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