相談室 職員の懲戒処分について

更新日:平成26年7月31日

質 問

 X市において、平成24年9月から平成25年3月にかけて不正な職員採用を行っていた事実が平成26年5月に発覚し、現在調査中ですが、当時の人事課臨時的任用職員A、人事係長B、人事課長C、人事担当部長Dが関与している疑いがあります。関与の事実が確認された場合、懲戒処分を行うことを検討していますが、職員AからDは平成26年度において以下の状況である場合、懲戒処分をすることは可能ですか。

 【状況】
<職員A>
平成24年9月1日から平成25年8月31日の間、臨時的任用職員として勤務した後離職し、その後平成25年度に行われた採用試験に合格し、平成26年4月1日から任期の定めのない一般職の常勤職員としてX市に勤務している。

<職員B>
公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(以下、「公益法人等派遣法」という。)第10条に基づき、平成25年3月31日付けでX市を退職し、同年4月1日からX市が出資し、X市の施策の推進を図るために人的援助を行うことが必要であるものとして条例で定めた第3セクターで勤務し、平成26年4月1日付けでX市に復職している。

<職員C>
平成25年3月31日付けで定年退職し、同年4月1日からX市が構成団体である一部事務組合Yで再任用され勤務している。

<職員D>
平成26年3月31日付けで定年退職し、同年4月1日からX市の水道事業管理者に就任している。

回 答

職員A:処分できないと考える
職員B:処分できると考える。
職員C:処分できないと考える。
職員D:処分できないと考える。

解 説

1.懲戒処分の性質について

 地方公務員法(以下、「地公法」という。)第27条において、職員に対する不利益処分として、懲戒処分を規定しています。懲戒処分は、特定の当事者間における勤務関係の存在を前提として、任命権者が職員の一定の義務違反に対する道義的責任を問うことにより、公務における規律と秩序を維持することを目的として行われるものと考えられています。

 こうした懲戒処分の性質上、勤務関係が消滅したときは懲戒処分をすることはできないとされています。このため、「すでに退職した者については懲戒処分を行うことはできない」(行政実例 昭和26年5月15日地自公発第503号)、とされており、「一度退職した者が再び任用されたときは、前の在職中の義務違反について懲戒処分をすることはできないのが原則」(学陽書房 新版逐条地方公務員法第3次改訂版)です。

 ただし、「一度退職して再び任用された者が一定の要件を備える場合には、後の採用後においてもその退職前の行為を理由とする懲戒処分をすることができる」(学陽書房 新版逐条地方公務員法第3次改訂版)とされています(一定の要件については後述)。

 なお、過去の非違行為に対する懲戒処分に関しては、非違行為の時期、発覚までの経過年数及び非違行為の内容などを総合して、公務秩序の維持の観点から放置しておくことが許されないような場合は、懲戒処分をすることになると考えます。

 今回の質問では非違行為の詳細は不明ですが、重大な地公法違反があり、公務秩序維持の観点から懲戒処分をする必要があるものと仮定し、職員Aから職員Dまで懲戒処分が可能であるか検討します。

2.過去に臨時的任用職員であった者に対する懲戒処分について

 一般職職員の採用方法は地公法第17条に基づく正式任用や、地公法第22条に基づく臨時的任用等があります。地公法第22条第6項において臨時的任用は、正式任用に際して、いかなる優先権を与えるものではないことを規定しており、「臨時的任用は成績主義に基づく正式任用の特例」(行政実例昭和31年9月17日自丁公発第131号)とされています。

 このよう性質から、「地公法第17条に規定する正式任用とは切り離して考え、臨時的任用期間中の特別権力関係と正式任用後の特別権力関係とは、連続するものではなく、中断している」(ぎょうせい 公務員労働法質疑応答集)と考えられており、臨時的任用職員としての勤務関係とその後の正式任用された後の勤務関係は同一性を持たないと解することから、臨時的任用職員として任用されていた期間における非違行為を理由に正式任用後に懲戒処分をすることはできないと考えます。

3.公益法人等派遣法に基づき派遣された職員に対する懲戒処分について

 地公法第29条第2項では、職員が任命権者の要請に応じ特別職地方公務員等となるため退職し、引き続き特別職地方公務員等として在職した後、引き続いて当該退職を前提として職員として採用された場合において、当該退職までの引き続く職員としての在職期間中に地公法第29条第1項各号のいずれかに該当したときは、これに対し同項に規定する懲戒処分を行うことができると規定されています。

 この規定は「任用、給与、退職手当、共済長期給付等の処遇について、新規採用職員とは異なる取扱いがなされているなど、退職前と採用後の勤務の継続性があることに着目したもの」(地方公務員月報平成12年9月号)と考えられています。

 職員の採用については通常、地公法第17条に基づき、競争試験又は選考により能力の実証を経て任用されますが、公益法人等派遣法第10条第1項においては、任命権者の要請に応じて特定法人の業務に従事するために退職した者については、従事すべき期間が満了した場合、その者が退職した時就いていた職又はこれに相当する職に係る任命権者が、当該特定法人の役職員としての在職に引き続き、その者を職員として採用するものと規定されており、採用が義務付けられています。

 公益法人等派遣法第12条第2項では、地公法第29条第2項を読み替え、任命権者の要請に応じて特定法人の業務に従事するために退職し、従事すべき期間が満了し、当該特定法人の役職員としての在職に引き続き、職員として採用された者にも適用することとしています。

 以上から、職員Bについては、公益法人等派遣法第12条第2項および地公法第29条第2項の当該退職前に行った非違行為に対して懲戒処分を可能とする懲戒制度の特例により懲戒処分をすることができると考えます。

 4.再任用職員に対する懲戒処分について

 「再任用制度は、退職まで長期にわたって勤務してきた地方公共団体の職員について、その培われた知識及び経験を引続き公務において広く活用することを目的とするものであり、長年公務に従事してきた職員に対する信頼を基礎としている側面が強く、退職前の良好な勤務の事実を基礎とするものです。このような性格から、定年退職前の任用関係との実質的な継続性が強くなっているものと考えられ」(ぎょうせい 質疑応答地方公務員法)、地公法第29条第3項において、地公法第28条の4第1項又は第28条の5第1項の規定により採用された場合、定年退職者等となった日までの引続く職員としての在職期間又はこれらの規定によりかつて採用されて職員として在職していた期間中に地公法第29条第1項各号に掲げる場合に該当したときに懲戒処分をすることができることとされています。

 以上を踏まえて質問について検討すると、市を定年退職した職員Cが、仮にX市に再任用された場合には、地公法第29条第3項の規定により、従前のX市職員としての勤務の際の非違行為を捉えて懲戒処分をすることが可能です。

 しかし今回のケースは、職員Cが、地公法第28条の6第1項又は第2項の規定により、当該市が構成団体となる一部事務組合に採用されており、この場合職員Cは退職前の団体とは異なる団体において勤務することとなります。「懲戒処分は、地方公共団体における公務秩序を図る観点から、任命権者が行う制裁措置であるため、異なる団体と任用関係にある時点における非違行為は、再任用後の任命権者の懲戒権の範囲外にあることとなり、懲戒処分の対象とはならない」(ぎょうせい 質疑応答地方公務員法)と考えます。

 なお、この場合においても、職員Cが当該市の身分を持つこととなる場合には、地公法第29条第3項の規定により、懲戒処分をすることができることとなります。

5.特別職に対する懲戒処分について

 地方公営企業法(以下、「地公企法」という。)第7条の2第3項において、管理者は常勤の職員と兼ねることができないと規定されていることから、一般職の職員を特別職である管理者に任用する場合、一般職の職員は退職することになります。

 管理者の懲戒処分に関して、地公企法第7条の2第8項において、地方公共団体の長は、管理者に職務上の義務違反その他管理者たるに適しない非行があると認める場合には、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができると規定されていますが、「文言上からは従前の勤務関係における非行に対する懲戒処分を行えると解することは無理があるように思われる」(ぎょうせい 公務員労働法質疑応答集)と考えられています。

 また、特別職の懲戒処分をする場合には、特別職の身分取扱いを定めている地方自治法施行規程の規定に基づいて行われ、職務上の義務に違反し又は職務を怠ったとき、職務の内外を問わず公職上の信用を失うべき行為があったときに懲戒処分をすることになりますが、この文言については、「当該特別職在職中における義務違反等あるいは信用失墜行為に対する懲戒処分を想定したもの」(ぎょうせい 公務員労働法質疑応答集)と考えられています。

 なお、一度退職して再び任用された者が一定の要件を備える場合には、後の採用後においてもその退職前の行為を理由とする懲戒処分を行うことができると記載しましたが、地公法第29条に定められる一定の要件とは、「第一の要件としては、職員が退職して就任する職が特別職地方公務員等に該当すること」、「第二の要件は、職員が任命権者の要請に応じて特別職地方公務員等となるために退職したこと」、「第三の要件は、特別職地方公務員等として在職した後、任命権者の要請に応じて特別職地方公務員となるために退職したことを前提とし、または公益法人等派遣法第10条第1項に基づいて、職員として採用されたこと」、「第四の要件は、地公法第29条第1項各号に該当する事由が、職員としての在職期間中に生じたものであること」(学陽書房 新版逐条地方公務員法第3次改訂版)とされており、今回のケースはこの要件を満たしていません。

 このように、一般職から特別職となった場合、以前の勤務関係における非違行為を理由として「現在の特別職に対する懲戒に関する規定を根拠として懲戒処分をすることは、そもそも適用される根拠法令が異にするので、懲戒処分は行い得ないのではないかと考えられ」(ぎょうせい 公務員労働法質疑応答集)、今回のケースにおいて、地公法第29条に定められる一定の要件も満たしていないことから、一般職の非違行為を理由として懲戒処分を行うことはできないと考えます。

6.終わりに

 本問では、退職、離職後の職員の状況によって、同一地方公共団体に勤務している場合でも、懲戒処分をすることができる場合とできない場合があることを説明しました。

 私見になりますが、同一の非違行為に対して、懲戒処分をする職員と懲戒処分をしない職員が同一地方公共団体内で勤務している状況は、公務における規律と秩序の維持という点でバランスを欠いていると思われ、住民には理解されにくいと考えます。

 非違行為をした職員A、Dに対して、現状の法制度に基づいて懲戒処分をすることができないと考えますが、職員に対して反省を促し、自主的に給与の一部を返納することを求めることなどは可能と考えられますので、このような対応も検討し、住民の信頼を回復するために、住民に対して、法制度を正しく理解したうえで本問にかかる懲戒処分についての説明責任を果たし、なお一層の服務規律を確保する必要があると考えます。 

このページの作成所属
総務部 市町村課 行政グループ

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