相談室 新地方公会計制度について

更新日:平成26年1月15日


質問

 新地方公会計制度の現状や国の動き、また固定資産台帳の整備など今後の取り組みについて教えてください。

解説

1.地方公会計の現状

 昨年6月に公表された総務省の調査(地方公共団体の平成23年度決算に係る財務書類の作成状況等)によると、地方公共団体(都道府県、市町村及び特別区)1,789団体のうち、約96%にあたる1,711団体において、平成23年度決算に係る財務書類を「作成済」又は「作成中」となっています。 

 一方で、固定資産台帳の整備状況は、財務書類の作成団体(1,711団体)のうち、「整備済」が307団体、「整備中」が613団体、「未整備」が791団体であり、府内市町村(政令市除く)では、「整備中」が8団体、「未整備」が33団体となっています。

 また、複式簿記の導入については、全国では「導入済」が258団体、「未導入」が1,453団体であり、府内市町村(政令市除く)では、いずれの団体にも導入されていません。これら未導入の団体においては、決算統計データ等を活用した財務書類が作成されています。

2.新地方公会計制度の意義

(1)複式簿記導入の必要性

 行政の会計制度である官庁会計は、国、地方ともに明治以来、1世紀にわたって単式簿記・現金主義会計による処理が行われてきました。新地方公会計は、現状の会計処理では見えにくい資産・負債等のストック情報や行政サービスにかかるコスト情報を、複式簿記・発生主義の導入により補完しようとする会計処理です。下記の表のように単式簿記では収入と支出のみに分類されるのに対して、複式簿記では様々な項目に分類されるため、財務状況に関する検証の可能性を高め、より正確な財務書類を作成することができます。

 単式簿記と複式簿記の違いについて

 地方公共団体の費用管理として、複式簿記により財務書類を作成することで、事業別・施設別といった、より細かい単位でフルコストの情報分析が可能となり、これまで以上にコストを正確に把握できるようになります。

 地方公共団体が所有するインフラ資産や公共施設(以下、公共施設等)は、税金を財源として建設され、有効に活用するという観点から、単年度で消費される経常経費のように支出したら終わりとはなりません。公共施設等が消滅するまでは税金が形を変えているだけであり、この部分の管理を続ける必要があります。単式簿記では現金支出以外の資産、負債の状況が見えにくいですが、複式簿記はこういった資産管理等に適しており、資産価値の減少等、現金支出以外のコストを把握することができます。

(2)固定資産台帳の整備

 総務省がまとめた、新地方公会計制度実務研究会報告書によると、貸借対照表に計上する固定資産について、資産単位毎に、勘定科目、名称、取得年月日、取得価格、減価償却費、帳簿価格等の項目を記帳することが必要とされています。

 これは、既存の公有財産台帳等には固定資産台帳を整備するために必要な情報が必ずしも網羅されているとは言えないため、必要情報を追加、補完することにより、効率的な台帳整備を可能にしようとするものです。 

 整備された台帳により、資産更新問題等に対応し得る情報を管理することが可能となり、耐用年数・更新費用の把握、建て替え・統廃合・長寿命化の判断等に活用できます。 例)資産老朽化比率= 減価償却累計額/(有形固定資産−土地+減価償却累計額)

 このように、自治体が所有する資産を有効に活用するためには、複式簿記によって資産の減価償却等を個別に管理することが有効であり、今後とも固定資産台帳の整備が求められます。 

(3)財務書類4表の関係

 複式簿記や固定資産台帳を活用した財務書類によって、一会計期間の経常的な費用がどの程度あり、それが税収等の財源によってどのように賄われ、固定資産の増減等を含め、将来に引き継ぐ純資産がどのように変動したか等が示されます。複式簿記によるコストに関する情報や、固定資産台帳による資産価値に関する情報は行政コスト計算書や純資産変動計算書に表され、結果として貸借対照表や資金収支計算書にも反映されます。こうして作成される財務書類は、既存の決算統計データ等を用いて作成される財務書類に比べ、財務状況に関する検証性が高くなります。

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 3.財務書類作成モデルの種類と新たな作成基準

 総務省より示されている地方公共団体での財務書類の作成方式には、「基準モデル」と「総務省方式改訂モデル」があります。地方公共団体における財務書類の作成状況をモデル別にみると、8割を超える団体において総務省方式改訂モデルが導入されています。

 また、これらの国モデルの他に、東京都や大阪府等で導入されている独自方式があります。大阪府では、既存の地方自治体の会計制度である単式簿記・現金主義会計の仕組みに、複式簿記・発生主義という企業会計の考え方を取り入れた新公会計制度を平成23年度から試験運用した上で、平成24年度から本格導入しています。 

◇国モデルの対比表◇        

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 平成25年8月、総務省の「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」において、公会計の推進に関する中間とりまとめが行われました。そのなかで、今後、地方公会計の推進を図るためには、その整備にあたっての標準的な考え方・方法を示す基準を設定することが必要とされています。

4.今後の課題と対応の方向性

 今後示される新たな基準の詳細部分や、固定資産台帳の具体的な整備方法等については、これからの実務的な検討の中で、より詳細に議論を進めることとされています。これらをより具体的に検討するために、総務省において以下の2つの作業部会が立ち上げられています。

 これに併い、各地方公共団体においては、公会計の推進に貢献する人材の育成・教育、新たな基準の導入にあたっての既存システムとの調整・コスト負担への配慮等が課題となります。

【地方公共団体における財務書類の作成基準に関する作業部会】

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/sakuseikijyun/index.html

【地方公共団体における固定資産台帳の整備等に関する作業部会】

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/koteisisandaichou-seibi/index.html

 また、新地方公会計の推進は、全国の自治体で喫緊の課題である公共施設等の老朽化対策との関連が重要となっています。高度経済成長期に整備した公共インフラが、相次いで更新時期を迎えるのに備え、自治体が所有する公共施設の老朽化の状況を早急に把握するとともに、それらの効率的、効果的な維持管理、更新のあり方について検討を行い、その内容について住民に対し分かりやすく情報提供をしていくことが求められています。

 昨年末に取りまとめられた、平成26年度地方財政対策において、国は平成26年度から公共施設等の現況や将来の見通し、管理に関する基本的な方針を定める「公共施設等総合管理計画」の策定を自治体に要請し、これに伴う地方財政措置を講じるとしています。この計画は、国の「インフラ長寿命化基本計画」に基づいて自治体が策定する行動計画と一体的に推進されることになります。

 こうした国の動きを受けて、地方公会計における複式簿記の導入、固定資産台帳の整備は、各自治体において継続的に対応していくことが求められています。今後、全国統一的な基準が確立されるなど、新たな取り組みが必要となることも想定しながら、引き続き新地方公会計の推進に取り組んでいく必要があります。 

 

 

 

 

 

 

このページの作成所属
総務部 市町村課 財政グループ

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