今月の事例解説(R2.4)

更新日:令和2年5月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 労働者から、定年退職後の雇用についての相談

 現在、管理職として働いています。
 会社では定年(60歳)退職後の継続雇用制度が設けられていますが、いったん退職して再雇用されるもので、管理職でなくなり、給与も減額され、賞与も支給なしと言われました。できるだけ収入を減らすことなく働きたいのですが、どのようにすればよいのでしょうか。  


    事業主は、65歳以上の安定した雇用を確保するため、次のいずれかの措置を講じなければなりません【高年齢者雇用安定法(※)第9条】。

 ア 定年の引上げ

 イ 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)の導入

 ウ 定年の定めの廃止

(※)高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 
 

 上記の継続雇用には、次のような制度があります。

 ア 再雇用制度:定年でいったん退職とし、新たに労働契約を結ぶ制度

 イ 勤務延長制度:定年で退職とせず、引き続き雇用する制度

 継続雇用制度を導入する場合は、希望者全員を対象とすることとされていますが、継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で労働時間、賃金、待遇などに関して事業主と労働者の間で決めることができます。

 したがって、定年前の労働条件を維持するということまでは義務付けられていませんが、ご希望を会社に伝えて、継続雇用後の労働条件を交渉されてはどうでしょうか。 

 なお、雇用保険の制度として「高年齢雇用継続基本給付金」という制度がありますが、これは、雇用保険の基本手当(失業等給付)を受給していない方を対象とする給付金で、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の一般被保険者が、原則として60歳以降の賃金(上限あり)が60歳時点に比べて75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されるものです。

 支給額は、60歳時点の賃金の61%以下に低下した場合は、各月の賃金の15%相当額となり、61%超75%未満に低下した場合は、その低下率に応じて、各月の賃金の15%相当額未満の額となります。

 ただし、高年齢雇用継続給付と在職老齢年金を同時に受けられるときは、在職老齢年金の一部が支給停止される場合があります。

 賃金が60歳時点の75%未満に低下するようであれば、事業所の所在地を所管するハローワークに「高年齢雇用継続基本給付金」の申請をすることを検討されてはどうでしょうか【雇用保険法第61条第1項】。 

   以下のホームページもご参照ください。

    〇「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」(厚生労働省ホームページ)

    〇「Q&Aから高年齢雇用継続給付から」(厚生労働省ホームページ)。


 

Q2 契約社員から、雇止めについての相談

 契約期間を6か月とする有期労働契約で週3日働いてきました。3回の契約更新があり、もうすぐ2年が経過しようとしています。
 現在の契約期間満了日の1か月前になり、次の契約更新はしないと言い渡されました。
 その理由は聞かされていません。これまで、次回の契約を更新しないという話はなかったので、驚いています。契約更新を求めたいのですが、どうすればいいのでしょうか。

 有期労働契約では、原則として、その期間が満了すれば自動的に労働契約が終了します。しかし、更新の可能性がある有期労働契約について、労働者が更新を希望したにもかかわらず、契約期間の満了に伴い、使用者が労働者に対して契約の更新をしないことを「雇止め」といいます。使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件での契約を承諾したものとみなされます。

 具体的には、1)過去に反復継続された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの、2)労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるものがこれに当たります【労働契約法第19条】。

 また、契約更新を3回以上行い、または雇入れから1年を超えて継続して雇用されている方の労働契約を更新しない場合、契約期間満了の30日前までに予告をしなければならず、労働者から雇止め理由の理由について証明書を請求した場合は、使用者は遅滞なく交付しなければなりません【「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平成15年10月22日厚生労働省告示第357号。最終改正:平成24年10月26日】

 本件では、使用者に対し、雇止めの理由についての証明書を請求するなどして、雇止めの理由の明示を求めるとともに、これまでの契約更新が期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に変わらない状態であったのか、また、期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められるような言動がなかったのかを振り返り、使用者から示された理由が「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なもの」と考えられない場合は、労働契約法第19条の考え方をもとに契約更新を交渉されてはどうでしょうか。

 話合いで解決できない場合は、大阪府の個別労働紛争解決支援制度や大阪労働局の紛争解決援助制度の活用、労働審判の申立て、労働組合に相談し、団体交渉を申し入れてもらう等の方法が考えらえます。

Q3 使用者から、無期転換ルールについての相談

 当事業所で1年更新を繰り返しているアルバイトがいますが、次回の契約期間が終了すると通算5年を超え、無期転換申込権が発生します。そこで、次回の契約を更新するに当たって無期転換の申出をしない確約を取っておいてはどうかという意見がありますが、問題はないでしょうか。

 同一の使用者との間で締結された有期労働契約の契約期間が通算で5年を超えて反復更新された場合、その労働者が、現に締結している有期労働契約の期間が満了する日までの間に、期間の定めのない労働契約の締結(無期労働契約)の申込みをしたときは、使用者は承諾したものとみなされ、期間の定めのない労働契約に転換されます【労働契約法第18条】。

 無期転換申込権が発生するのは次の3つの要件がそろった場合になります。
  (1)同一の使用者との間で締結された2つ以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超えていること。

(※)通算契約期間は平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約から算定します。平成25年3月31日以前に開始した有期労働契約は、通算契約期間の算定の対象になりません。 また、同一の使用者との間で有期労働契約を締結していない期間が一定の長さ以上にわたる場合、この期間が無契約期間(クーリング期間)として扱われ、それ以前の契約期間は通算対象から除外されます。

   (2)契約更新が1回以上行われていること。

  (3)通算5年を超えて契約をしてきた使用者との間で、現時点で有期労働契約を締結していること。 

 無期転換申込み権が発生する有期労働契約の締結以前に、無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とする等、有期契約労働者にあらかじめ無期転換申込権を放棄させることを認めることは、雇止めによって雇用を失うことを恐れる労働者に対して使用者が無期転換申込権の放棄を強要する状況を招きかねず、公序良俗に反し無効とされます【平成30年12月28日 基発1228第17号 有期労働契約の無期労働契約への転換について】。 

 社員が有期労働契約から無期労働契約に転換することで、使用者にとっては、会社の実務や事情等に精通する無期労働契約の社員を比較的容易に確保することができ、意欲と能力のある労働力を安定的に確保しやすくなります。また、長期的な視点に立って社員育成を実施し、長期的な人材活用戦略を立てやすくなるというメリットがあります。

 一方、労働者にとっては、雇用の安定性に欠ける有期労働契約から無期労働契約へ転換することで、安定的かつ意欲的に働くことができるとともに、長期的なキャリア形成を図ることができると考えられます。 

 以上の考え方や労使のメリットも考え、会社として長期的な社員育成、人材活用を検討されてはいかがでしょうか。

  なお、無期転換申込権の発生後、労働者が会社に対して無期転換する旨を申し出た場合、会社は断ることができず、無期労働契約が成立しますが、後日、申込みをしたかどうかの争いが生じやすい問題がありますので、できるだけ書面で確認を行うことをお勧めします。

  以下のホームページもご参照ください。
  ○「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」(厚生労働省ホームページ)。

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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