6.B事件(平成26年(不)第49号事件)命令要旨

更新日:平成29年4月10日

1 事件の概要

 本件は、学校法人が、(1)賃金引上げと夏季及び冬季一時金支給に関する団体交渉において、合同労組であることを理由に利害関係人ではないとして財産目録等の提出及び閲覧を拒否し、財務状況や財務諸表等の閲覧制度について誠実に説明を行わなかったこと、(2)財産目録等の閲覧を正職員に限定する等の閲覧規程を定め、組合らの閲覧を制限するとともに、当該閲覧制度に関する団交を拒否したこと、(3)未妥結であることを示すために給与明細書に記載していた「仮」の文字を外し、組合らと事前協議をすることなく組合員の昇給を行ったこと等、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)第1回及び第2回団交に係る申立てについて

ア 団交は、原則として、団交期日の都度完結する1回限りの行為と解される。
 
組合らは、第2回団交の後、ストを行っており、組合らと学校法人との交渉は、ストの実施により、一旦決裂したとみることができる。また、組合らと学校法人との間で、団交を続行して行うことについて、第2回団交で合意したとの疎明もなく、第2回団交で、一旦区切りがついたとみるのが相当である。

イ したがって、第1回及び第2回団交に係る申立ては、行為の日から1年を経過した後の申立てとして、却下する。

(2)団交申入れに対する学校法人の対応について

ア 団交申入れの団交議題は、組合員の賃金の5%引上げ等、組合員の労働条件に関するもので、義務的団交事項に当たることは明らかである。これに対し、学校法人は、回答書で各団交議題に係る回答は行っているものの、団交開催について一切記載せず、団交日時の再調整を求めることもなかったのであるから、団交に応じる姿勢を示したとはいえない。
 したがって、かかる学校法人の対応は、義務的団交事項であるにもかかわらず、組合らの団交申入れに応じていないといわざるを得ない。

イ 学校法人は、回答書に対し組合らからは返答もなく、団交拒否していない旨主張するが、組合らが団交申入れを撤回したものとみることはできず、回答書が団交に応じる姿勢を示したとはいえない以上、組合らが返答しなかったことをもって、団交申入れに誠実に応じるべき学校法人の義務が免除されるということはできない。

ウ 以上のことから、かかる学校法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

(3)平成25年9月及び同26年2月の回答書における財産目録等の提出及び閲覧に係る学校法人の対応について

ア 学校法人は、平成25年9月の回答書において、組合らが要求する財務諸表の提出について、応じられない理由を説明することなく、その提出を拒否しており、かかる学校法人の対応は、組合らへの組合員の信頼を損なわせる行為であるともいえ、組合らを弱体化させる支配介入に当たる。

イ 財産目録等の閲覧及びその写しの提出についての文書回答を求める組合らからの申入れに対し、学校法人が最終的に回答したのは、4か月以上経過した平成26年2月の回答書においてであり、学校法人は回答をいたずらに引き延ばしたといえる。また、その回答内容は、提出等を拒む理由として、組合らが合同労組であるからとするのみで、その理由には合理性がなく、かかる学校法人の対応は、組合らを弱体化させる支配介入に当たる。

(4)第3回団交における学校法人の対応について

ア 学校法人は、財産目録等を見たいとする組合らの要求に応じられない理由について、組合らが合同労組であり、利害関係人ではないこと以外に説明しておらず、組合らの理解を得る努力を怠ったといえる。また、学校法人が、財務情報の悪用や濫用のおそれから、組合らに財産目録等の開示を控えたことに合理的な理由があるとはいえない。
 
したがって、第3回団交における財産目録等の提出及び閲覧に係る学校法人の対応は、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為である。

イ 第3回団交において、組合らが、学校法人が赤字であることを確認するために財産目録等の提示を求めたのに対して、学校法人は、これらの資料そのものや、これに代わり得る資料を提示することなく、学校法人の財務状況に係る具体的説明も行っておらず、さらに、資料を提示できない理由も説明せず、個人としての閲覧手続があると述べるにとどまっている。かかる学校法人の対応は、組合らの求めに対し、誠実に具体的な説明を行ったとみることはできず、学校法人は、組合らの資料提示要求に応じられないとする理由についても、組合は利害関係人ではないとして部外者には見せられないとしか説明しておらず、組合らの理解を得る努力を怠ったといえる。
 
したがって、第3回団交における財務状況の説明に係る学校法人の対応は、不誠実であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

ウ 学校法人が、その財務状況から、組合らの要求を大幅に下回る一時金を支給した状況において、組合らが財産目録等を閲覧できるかどうかは、組合らによる賃金交渉等の労働条件の交渉にも直結するといえ、財産目録等の閲覧制度に関する事項は、組合員の労働条件に関わる義務的団交事項に当たるといえる。
 
学校法人は、団交の場で、組合らに説明できないとの主張を繰り返すのみで、財産目録等の閲覧制度の内容や手続について説明しておらず、説明できない理由についても全く述べていない。また、説明を行わなかったことに合理的な理由があったとも認められない。
 
したがって、第3回団交における財産目録等の閲覧制度の説明に係る学校法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

(5)学校法人が、財産目録等の閲覧制度に係る団交申入れに応じなかったことについて

ア 学園は、組合らからの財産目録等の閲覧制度に係る団交申入れに対し、一貫して応じない旨回答し、団交を拒否していたことが認められる。

イ しかしながら、前記(4)ウ判断のとおり、財産目録等の閲覧制度に関する事項は、組合員の労働条件に関わる義務的団交事項に当たる。また、いわゆる経営権に属するとされるような事項であっても、組合員の労働条件に関する限りにおいては、義務的団交事項となる。

ウ したがって、学校法人は、組合員の労働条件に関わる義務的団交事項に該当する財産目録等の閲覧制度に係る団交申入れに対し、正当な理由なく応じておらず、かかる学校法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

(6)学校法人が、(ア)組合らと事前協議を行うことなく組合員の昇給を行ったこと、(イ)「仮」の文字を記載しない給与明細書を組合員に交付したことについて

ア 学校法人と組合Rとの間で締結された協定書は事前協議約款であるといえ、不利益変更の場合に限るとの限定もないことから、昇給の場合には事前協議の必要がないということはできない。そうすると、組合Rの組合員の昇給については、組合Rとの事前協議が必要であり、学校法人が組合Rと事前協議を行うことなく、組合Rの組合員の昇給を行ったことは、協定書に違反し、組合Rに対する支配介入といえ、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
 
次に、学校法人と組合Zとの間で締結された合意書には、組合員の労働条件について、学校法人と組合Zは、必要に応じて協議し決定する旨の記載があることから、全ての事項について事前協議をしなければならないと解することはできず、合意書は事前協議協定ということはできない。したがって、学校法人が、組合Zと事前協議を行うことなく組合Zの組合員の昇給を行ったことは、合意書に反しているとはいえず、組合Zに対する支配介入に当たるともいえず、この点に係る組合らの申立ては棄却する。

イ 学校法人が組合員に対する給与明細書から「仮」の文字を取ることは、昇給について、組合らの執行部が学校法人と妥結したとの誤解を組合員に与えかねず、学校法人は、組合らに対し、「仮」の文字を取ることとその理由を、事前に説明する責任があったといえる。したがって、学校法人が、組合らと事前協議を行うことなく、「仮」の文字を記載しない給与明細書を交付したことは、組合らに対する支配介入といえ、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に当たる。

(7)平成26年度の昇給並びに夏季及び冬季一時金に係る団交申入れに対する学校法人の対応及び第4回団交における学校法人の対応について

ア 平成26年度の昇給並びに夏季及び冬季一時金に係る団交申入れに対し、学園が回答書で団交拒否した旨組合らは主張するが、同回答の後、当事者間における文書のやり取りを経て、第4回団交が開催されたといえ、組合らの主張は採用できない。
 
そこで、次に、第4回団交における、平成26年度の昇給並びに夏季及び冬季一時金に係る学校法人の対応についてみることとするが、第4回団交は、昇給及び一時金の要求等を団交議題として申し入れられたもので、組合らは、第4回団交で、平成26年度の昇給額の根拠や一時金に関して、財務状況の説明を求めていたといえることから、財務状況の説明に係る学校法人の対応についても、併せて判断する。
 
第4回団交において、夏季一時金について組合差別がないかを確認するために貸借対照表の賞与引当金を見たいとの組合らの要求に対し、学校法人は、賞与引当金の存否については直接答えず、組合らが、平成26年度の昇給や夏季一時金の金額についての説明を求め、昇給や夏季一時金の根拠資料として貸借対照表等の提示を求めたのに対しても、学校法人は、何ら説明も資料の提示も行っていない。また、学校法人は、こうした組合らの資料提示要求に応じられないとする対応について、その理由も説明しておらず、組合らの理解を得る努力もしていない。
 
以上のことを総合的に判断すると、平成26年度の昇給並びに夏季及び冬季一時金に係る団交申入れに対し、学校法人は回答書で団交を拒否したとはいえないものの、第4回団交における、平成26年度の昇給、夏季及び冬季一時金並びに財務状況の説明に係る学校法人の対応は不誠実といえ、かかる学校法人の対応は労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

イ 学校法人は、財務諸表等を見たいとする組合らの要求に応じられない理由について、組合らが合同労組であり、利害関係人ではないこと以外に説明しておらず、かかる学校法人の対応は、第3回団交の時と何ら変わっておらず、組合らの理解を得る努力を怠ったといえ、また、学校法人が、財務情報の悪用や濫用のおそれから、組合らに財務諸表等の開示を控えたことに合理的な理由があるとはいえない。
 
したがって、第4回団交における財産目録等の提出及び閲覧に係る学校法人の対応は、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為である。

ウ 第4回団交において、財産目録等の閲覧制度の利害関係人の範囲に係るやり取りが行われたが、その中で、学校法人が、組合らに対し、閲覧規程等の閲覧制度に係る資料を提示したとの事実の疎明はない。かかる閲覧制度に係る学校法人の姿勢は、第3回団交の時と何ら変わっておらず、誠実とはいえない。
 
したがって、第4回団交における財産目録等の閲覧制度の説明に係る学校法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

(8)学校法人が、(ア)財産目録等の閲覧規程において、閲覧申請できる職員を正職員と規定していること及び閲覧を申請できる者として労働組合を規定していないこと、(イ)その他、財産目録等の閲覧に当たり、条件を付していることについて

ア 財産目録等の閲覧規程において、閲覧申請できる利害関係人の範囲をどのように規定するかについては、学校法人の合理的な裁量に委ねられた事項であり、学校法人が閲覧規程において、閲覧申請できる職員として正職員と規定し、労働組合を独立の閲覧申請者として規定していないことが、直ちに、組合らに対する支配介入に当たるとはいえず、この点に係る組合らの申立ては棄却する。

イ 財産目録等の閲覧に当たり、学校法人がどのような条件を付すかは、学校法人の裁量に委ねられた事項であったとしても、その内容等によっては、合理的な裁量の範囲を超えて正当な組合活動を阻害し、不当労働行為となる可能性がある。
 
組合員は、組合らが団交において学校法人から財産目録等の提示を受けられなかったため、団交での学校法人の回答を受け、法人本部において、職員個人として閲覧申請を行おうとしたところ、第三者に情報漏洩をした場合は損害賠償金を支払うとの誓約書の提出を求められ、組合らによる賃金交渉等での活用という、当初の目的を果たせなくなることから、閲覧申請の手続を進めることを躊躇したとみるのが相当である。そうすると、組合員が手続に必要な書面を提出しなかったのは、学校法人が財産目録等の閲覧に当たり、外部漏洩の防止を理由に、労働条件の交渉に財産目録等を利用できなくする過重な条件を付していたからであり、学校法人が、かかる条件を付していることによって、組合らの組合員の労働条件に関わる活動が妨害されたといえる。
 
したがって、学校法人が財産目録等の閲覧に当たり、組合らの利用を制限する条件を付していることは、組合らに対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

3 命令内容

(1)第1回及び第2回団交に係る申立ての却下

(2)誠実団交応諾

(3)誓約文の手交

(4)その他の申立ての棄却

※ なお、本件命令に対して、学校法人は、大阪地方裁判所に取消訴訟を提起した。

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労働委員会事務局 労働委員会事務局審査課 運用グループ

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