キャリア教育を推進するために

更新日:平成26年2月13日

キャリア教育を推進するために

平成17年4月

大阪府教育委員会


テキスト ボックス:
目 次

 
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1


大阪府のキャリア教育の推進について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

 
 1 キャリア教育が求められる背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

 (1)進路指導をめぐる諸課題

 (2)大阪府におけるキャリア教育の取組みと課題

 
 2 キャリア教育の理念と基本方向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

 (1)キャリア教育とは

 (2)これまでの学校教育とキャリア教育

 (3)各成長段階において育成すべき能力

 (4)大阪府におけるキャリア教育の基本方向

 
 3 キャリア教育の推進方策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

 (1)基礎基本の学習の徹底と「能力・態度」の育成

 (2)小・中・高等学校の連携による一貫した進路指導の充実と改善

 (3)将来の職業像を見すえた学習の意義づけ

 (4)社会や経済の仕組みなどについての現実的理解の促進

 (5)自立意識の涵養と豊かな人間性の育成

 (6)学校教育活動全体を通した取組みの推進

 (7)教職員の理解と実践の促進

 (8)保護者などの共通理解、協力の推進

 (9)企業や関係機関などとの連携

 
 4 キャリア教育を効果的に進めるために・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

 
参考1 職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)・・・・・・・・・・ 14

 
参考2 キャリア発達に必要な能力を育成するための取組みの例

と関連する教科・科目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

 
キャリア教育を推進するために(概要)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

 
は じ め に


大阪府では、これまで子どもたち一人ひとりに豊かな職業観・勤労観を育成するため、中学校
段階での職場体験学習や高等学校段階でのインターンシップの実施など、体験学習の推進に取組
むとともに、中・高等学校教員のスキルアップを図るため、産官学の連携による協議会の設置や
各種研修などに取組んできた。

しかしながら、これらの取組みは、それぞれが十分に系統性を持っているとは言い難く、とも
すれば、一過性のイベント的な体験活動に終始し、子どもたちが将来の生き方を自ら考え選択す
る力を育成するという本来の目的にまで達していない事例も見受けられた。

一方、不況等の影響により、若年者の就業をめぐる状況は厳しさを増し、フリーターや無業者
が急増しはじめたことから、子どもたちが将来社会の中で自立できる能力や態度を身につけるこ
とが喫緊の教育課題となってきた。

国においては、1970年代初頭からアメリカやイギリスにおいて実践されている「キャリア
教育」を、日本の教育にも取り入れるべく、平成16年1月には文部科学省においてキャリア教
育の指針として「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」が発表される
とともに、平成16年6月には5府省の関係閣僚による「若者自立・挑戦戦略会議」において、
「若者自立・挑戦プランの強化の基本方向」が取りまとめられた。さらに今年度は、文部科学省
の事業として新キャリア教育プラン推進事業やキャリア教育実践プロジェクトが実施されるな
ど、国をあげてキャリア教育を積極的に推進する姿勢が明確となっている。

このような状況のもと、本府においても、これまでの取組みをキャリア教育という観点から、
学校教育活動全体を通して系統性・継続性を持つよう再構築し、子どもたち一人ひとりに豊かな
職業観・勤労観を育むとともに、学校や家庭・地域社会などが共通認識を深め、キャリア教育に
社会全体で取組むため、関係機関などからいただいた幅広い意見を参考に本指針をまとめたもの
である。

本指針は、大阪という地域性やこれまでの府内各地におけるさまざまな取組みを踏まえ、今後
の本府におけるキャリア教育の基本的な方向性及び推進方策を示している。

各学校及び各市町村においては、本指針に基づき、子どもたちや地域社会の実態を踏まえ、学
習プログラムを作成するなど指導方法の改善を行うとともに、積極的に家庭や地域社会に働きか
け、学校のみならず、地域社会をあげて子どもたちの自ら考え選択する力を育成するなど、本指
針の趣旨を十分踏まえ、キャリア教育の一層の推進に取組まれることを心から願うものである。

 
平成17年4月

 
大阪府のキャリア教育の推進について

1 キャリア教育が求められる背景

(1)進路指導をめぐる諸課題

今日、明確な目的・目標を持たないままの進学やいわゆる不本意入学、あるいは義務教育段階
での不登校や高等学校での中途退学、さらには中・高等学校での進路未決定など、子どもたちの
進路をめぐるさまざまな課題が指摘されている。これらの現象の背景として、若者の職業観・勤
労観そのものが揺らいでいることや、高度経済成長時代から成熟した社会となる過程での産業・
就業構造の変化、少子・高齢化、都市化と核家族化の進展などに伴い、家庭や地域社会、企業の
中で個人の在り方、生き方が変わりつつあることも指摘されている。

豊かで成熟した現代社会の中で、多くの子どもたちは、インターネットや携帯電話の普及に代
表される消費文化を享受しながら育っている。一方、生活、社会活動などのあらゆる面で、子ど
もたちが直接的な体験をする機会や異年齢者と交流をする場が減少していることに加え、家庭や
地域社会においては、子どもたちの心身のすこやかな成長を促す教育力が発揮される場面が少な
くなっている。これらのことから、子どもたちが様々な活動・経験やさまざまな境遇や立場にあ
る人々との交流などを通じて豊かな人間関係を築くことや、集団生活に必要な社会性や規範意識、
道徳心、自律心を培うことが難しい状況にある。

 学校教育に目を向けると、進路に関わるさまざまな取組みが行われているにもかかわらず、校
種間や教科間の連携などが不十分であるために、子どもたちが社会で自立していくために必要な
能力や態度を学校教育活動全体で育成することが難しい状況にある。また、子どもたちの生き方
にかかわり組織的・継続的な指導・援助を行う進路指導が、実際にはどの学校・企業等に入るか
の選択についての指導、いわゆる「出口指導」に重きがおかれがちなために、本来の目的が十分
に達成されなくなっている。

さらに、新規学卒者の職業生活への移行という観点からみると、新規高卒者や障害のある生徒
の就職率の低さ、新規学卒者の早期離職率の高さなどが課題としてあげられる。これは、就職・
就業をめぐる環境が激変していること、一部の企業などにおいてはノーマライゼーション理念の
浸透が十分でないことなどが原因と考えられ、このような状況の中で、若者が就職・就業を通じ
て自分の将来への展望を持ち、社会人・職業人としての生き方を考えることが困難になってきて
いる。

(2)大阪府におけるキャリア教育の取組みと課題

大阪府においては、上述したような子どもたちの進路をめぐる課題は極めて深刻であり、特に
卒業後に一時的な仕事に就く、いわゆるフリーターとなる者の比率が高い状況にある。このため、
府及び府教育委員会においては、豊かな職業観・勤労観の育成をめざして、平成12年度から「イ
ンターンシップ推進事業」、「大阪府キャリア体験学習等推進事業」、あるいは障害のある子ども
たちの社会的自立を支援して就労を目指すための教育を充実する「知的障害のある生徒の就業促
進事業」などの事業を展開してきた。また、府内公立小中学校及び府立学校においては、職場体
験学習、インターンシップをはじめ、ものづくりなどの参加体験型学習、外部講師を招いての講
演など、さまざまな取組みがなされている。

これらの取組みの結果、子どもたちが実際に仕事を体験することを通して、仕事の厳しさや仕
事に対する誇り、さらには仕事に就く人々の温かさを実感するとともに、自分が社会の一員であ
ることを認識し、自分自身の存在の大切さに気づくなど一定の成果を得ている。

しかし、小・中・高等学校段階を通して取組みに一貫性・系統性がないため、学習内容が重複
することや、目的やねらいが明確でないため、学習効果や評価があいまいであること、職場体験
やインターンシップの受入れ先の確保が難しいことなどの課題がある。

また、学校や家庭・地域社会において、キャリア教育の共通理解がなされていないため、とも
すれば、これらの取組みが単に就業するための能力の育成というような誤解を生んでいる現状が
ある。

子どもたちが将来の夢や希望をしっかりと描き、学ぶことや働くことへの意欲や目的意識をよ
り確かなものとして、社会での自立への道筋をより明確にしていくためには、子どもたち一人ひ
とりの内面の成長・発達を促し、将来、職業人・社会人としてよりよく自己を生かしていく基盤
となる能力や態度を育成する必要がある。

これらのことから、教職員をはじめ、さまざまな関係者がキャリア教育の目標や趣旨などにつ
いて理解・認識を共有し、学校の教育活動全体にわたってキャリア教育の視点を持った、創意・
工夫ある活動を進めるとともに、家庭、地域社会や企業など、社会全体でキャリア教育を推進す
ることが必要であり、そのための基本的な考え方を以下に示す。

2 キャリア教育の理念と基本方向

(1)キャリア教育とは

 「キャリア」とは、一般に、個人の経験や経歴、あるいは、特に専門的な技術や知識を要する
職業に就いていること、あるいは生涯の仕事などを示す用語として用いられている。このように
「キャリア」という言葉の意味は多様であるが、文部科学省の「キャリア教育の推進に関する総
合的調査研究協力者会議報告書」では、「キャリア」は「個々人が生涯にわたって遂行する様々
な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積」とと
らえられている。

また、上記の報告書では「初等中等教育段階では、キャリアが子どもたちの発達段階やその発
達課題の達成と深く関わりながら段階を追って発達していくこと、つまり『キャリア発達』を支
援していくことが重要となる。」とされ、「キャリア教育」を、「児童生徒一人一人のキャリア
発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を
育てる教育」と定義づけられている。

学校におけるキャリア教育は、上記の定義を踏まえるとともに、就職、進学などを問わず、ま
た性別、国籍、出身地、障害の有無、経済状況などの外的要因に関わらず、すべての子どもたち
を対象として行われなければならない。また、キャリア教育は子どもたちの卒業後の進路を決定
することが目標ではなく、社会人としての自己と働くこととの関わりという観点から生涯にわた
って行われるものであり、同時に固定的な性別役割分担意識にとらわれない考え方を持つなど、
人権尊重の意識を育む機会としても捉える必要がある。

(2)これまでの学校教育とキャリア教育

キャリア教育は新しい概念ではあるが、これまで学校教育で職業観・勤労観を育成するために
行われてきた取組みを否定して特定の時間にキャリアについて教えたり、新たな教育理念に基づ
いた取組みを導入したりするものではない。社会において自立していく能力・態度の育成こそ、
キャリア教育の目的に他ならない。

中学校学習指導要領においては、進路指導に関して「生徒が自らの生き方を考え主体的に進路
を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、計画的、組織的な進路指導を行うこ
と。」(第1章 総則 第6 指導計画の作成などに当たって配慮すべき事項 2(4))、「生
徒が学校や学級での生活によりよく適応するとともに、現在及び将来の生き方を考え行動する態
度や能力を育成することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、ガイダンスの機能の充実を
図ること。」(同(5))と記述され、特別活動に関しても「学ぶことの意義の理解、自主的な
学習態度の形成と学校図書館の利用、選択教科などの適切な選択、進路適性の吟味と進路情報の
活用、望ましい職業観・勤労観の形成、主体的な進路の選択と将来設計など」(第4章 特別活
動 第2 内容 A学級活動(3))と記述されている。同様の記述は高等学校学習指導要領に
もみられる。

つまり、進路指導はキャリア教育の中核であるが、小学校段階から子どもたち一人ひとりのキ
ャリア発達を支援するという観点や、子どもたちが将来自立した社会人として社会や集団へ適応
できるように幅広い能力の育成を重視するという観点は、従来の進路指導にはみられないもので
あり、その意味でキャリア教育はより包括的なものであると言える。

キャリア教育を学校の教育活動で実践するためには、小学校段階から高等学校段階までを見通
して系統的・継続的な教育を実施することや、すべての教職員がキャリア教育の共通理解をもつ
ことが必要となる。すなわち、キャリア教育を推進するためには、これまで行われてきた学校教
育活動全体を、子どもたちのキャリア発達の支援という観点から見直すことが求められるのであ
る。

(3)各成長段階において育成すべき能力

人間の成長・発達の過程には、いくつかの成長段階(節目)とそれぞれの段階で取組まなけれ
ばならない課題があり、キャリア発達の視点からみれば、小・中・高等学校及び盲・聾・養護学
校における成長段階別の課題は次のとおりである。

小学校段階では、生き方の基盤づくりの時期として、児童が将来の夢や希望を持ち、目標に向
かって努力する態度を培うとともに、環境の変化に対応する力を養う。また中学校段階では、自
分の生き方を考える時期として、生徒が自己の可能性に気づき、さまざまな職業の社会的意義を
理解するとともに、自らの体験を通して直接的に社会との接点を学ぶ。さらに高等学校段階では、
学校から社会へ移行する準備の時期として、生徒が自分の将来を描き、それぞれが豊かな職業
観・勤労観を身につけていくとともに、企業などにおける就業体験を通して、社会的な自立のた
めの能力や態度を培う。(以上表1参照)

これらの小学校低学年から高等学校の各段階におけるさまざまな発達課題を達成するため、系
統的・継続的なキャリア教育を実施するにあたっては、各成長段階において、表2に示す4つの
能力領域それぞれについて、子どもたちや地域社会の実情に応じた到達目標を定め、バランスよ
く育成する取組みが求められる。
 

表1 成長段階別に見た職業的(進路)発達段階、職業的(進路)発達課題

小学校段階

中学校段階

高等学校段階

<職業的(進路)発達段階>

進路の探索・選択にかかる基盤形成の時期

現実的探索と暫定的選択の時期

現実的探索・試行と社会的移行準備の時期

<職業的(進路)発達課題>

・自己及び他者への積極的関心の形成・発展

・身のまわりの仕事や環境への関心・意欲の向上

・夢や希望、憧れる自己イメージの獲得

・勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の形成

・肯定的自己理解と自己有用感の獲得

・興味・関心等に基づく職業観・勤労観の形成

・進路計画の立案と暫定的選択

・生き方や進路に関する現実的探索

・自己理解の深化と自己受容

・選択基準としての職業観・勤労観の確立

・将来設計の立案と社会的移行の準備

・進路の現実吟味と試行的参加


(国立教育政策研究所生徒指導研究センター「児童生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について」から)

 
 表2 キャリア発達に必要な4つの能力領域と8つの能力

能 力 領 域

能 力

人間関係

形成能力

他者の個性を尊重し、自己の個性を発揮しながら、様々な人々とコミュニケーションを図り、協力・共同してものごとに取組む。

自他の理解能力

コミュニケーション能力

情報活用能力

学ぶこと・働くことの意義や役割及びその多様性を理解し、幅広く情報を活用して、自己の進路や生き方の選択に生かす。

情報収集・探索能力

職業理解能力

将来設計能力

夢や希望を持って将来の生き方や生活を考え、社会の現実を踏まえながら、前向きに自己の将来を設計する。

役割把握・認識能力

計画実行能力

意思決定能力

自らの意志と責任でよりよい選択・決定を
行うとともに、その課程での課題や葛藤に積
極的に取り組み克服する。

選択能力

課題解決能力

(国立教育政策研究所生徒指導研究センター「児童生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について」から)

 
(4)大阪府におけるキャリア教育の基本方向

文部科学省の「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」において、キ
ャリア教育の基本方向として、(1)一人一人のキャリア発達への支援、(2)「働くこと」への関心・
意欲の高揚と学習意欲の向上、(3)職業人としての資質・能力を高める指導の充実、(4)自立意識の
涵養と豊かな人間性の育成、の4点があげられている。これらの基本方向を踏まえ、府内の学校
が直面している子どもたちの進路をめぐるさまざまな課題を解決することを目指して、大阪府と
してのキャリア教育の方向性を以下に示す。

第一は、小学校段階から高等学校段階まで一貫した系統的・継続的な取組みによってキャリア
教育を推進することである。従来の知・徳・体というバランスの取れた人間形成に加え、子ども
たち一人ひとりが豊かな勤労観・職業観を身につけ、培った能力や態度を活用して自らの責任で
生き方を選択し決定していくためには、子どもたちのキャリア発達の支援という視点から、異な
る校種間で系統的・継続的な教育を進めるとともに、各学校において、従来の教育課程編成のあ
り方を見直し、体系化することが必要となる。

第二は、学校の進路ガイダンス機能を充実して、子どもたちに対して適切なガイダンスを実施
すること、すなわち進路指導の充実である。ここでいう進路指導とは、学習指導要領に掲げられ
ている子どもたちが将来を見据えて主体的に進路選択できる能力や態度を育成するための指導
であり、小学校段階から高等学校段階までの12年間を見通して、計画的かつ子どもたち一人ひ
とりのキャリア発達に配慮して行われなければならない。そのためには、すべての教職員の理解
とスキルアップの促進を図るとともに、子どもたちが進路に関する現実的な認識を深めるために、
さまざまな体験活動を活用することが特に重要である。

第三は学校、家庭、地域社会、企業などがキャリア教育の有用性を共に理解し、それぞれの立
場で参画することにより、社会全体で子どもたちを育てる気運の醸成を図ることである。子ども
たちのキャリア発達が、学校生活、家庭生活、そして地域社会での活動など、あらゆる場面で促
されることを社会全体が認識し、互いに連携しながらキャリア教育を推進するための協力体制を
構築することが必要である。

3 キャリア教育の推進方策

 キャリア教育を推進するためには、上述したように、小学校入学から高等学校卒業に至るまで
系統的・継続的な取組みが必要であり、学校教育活動全体を通して、子どもたちのキャリア発達
を支援していくことが重要である。特に、支援を必要とする子どもたちについては、その子ども
たちが豊かな職業観・勤労観を身につけるために必要な支援方策を的確に把握しながらキャリア
教育を推進することが必要である。このような観点に立ったキャリア教育の推進方策は次のとお
りである。

(1)基礎基本の学習の徹底と「能力・態度」の育成

キャリア教育を進めるにあたっては、子どもたちが将来の社会人として必要な資質や能力を高
めていく力となる基礎基本の学習を充実・徹底することが重要である。

合わせて、教科指導においては、段階的に困難な課題に取組むように、キャリア教育において
も、子どもたちが将来社会で自立し、生きていくために必要な能力・態度を子どもたちの発達段
階に応じて系統的に育成する必要がある。そのため、小学校入学時から高等学校卒業時までの12年間という長期的視点を持ち、それぞれの段階における発達課題と育成すべき能力及び到達目
標を明確にし、系統的・継続的な取組みを基盤にしたキャリア教育の全体計画や具体的な指導計
画を作成することが重要である。また、子どもたちがすべての人の人権を尊重することができる
態度など、今後、社会・企業で一層必要となる知識とともに、それを活かす能力や態度を身につ
けることが求められる。そのため、「能力・態度」の育成を軸とし、効果的にキャリア教育を行
える学習プログラムを開発し普及することが必要である。

<留意点>

 日頃の教科の学習が、子どもたち一人ひとりの生き方や将来の進路と深く結びついているこ
とから、教科における指導とキャリア教育との相互補完性を教職員が意識し、子どもたちのキ
ャリア発達を支援するという視点に立った指導の工夫・改善を図ることが重要である。

 キャリア教育の指導計画を作成するにあたっては、各学校において地域社会の実情に応じ参
考1(14、15ページ)に示すような系統的な枠組みを策定する必要がある。そのうえで、
教育委員会が関係機関との連携により作成する学習プログラムなどを活用するとともに、創造
力を育成するため起業の精神を学ぶ取組みを導入するなど、大阪の地域性を活かした取組みを
推進することが求められる。

特に、これまで大阪の産業経済を支えてきた、いわゆる「ものづくり」に関しては、こども
たちがその大切さ、面白さ、奥の深さを身近に感じることにより、探究心や向上心などが涵養
されるような取組みが求められる。その際、「ものづくり」について年配者からさまざまな智恵
や工夫を聞き取る体験や、企画力・創造力を伸ばす課題研究などを通じて、子どもたちが目の
前にあるものを既成のものとしてそのまま受け止めるのではなく、その仕組みや製造過程での
工夫などについて自分なりに考察するなど、「ものづくり」の原点とも言える課題発見力や課題
解決力などを育成することが望ましい。

また、子どもたちがチャレンジ精神あふれた個性豊かな企業家を生んだ大阪の気質や、地場
産業などに直接触れることで、郷土を愛する心や地域社会に貢献する意識の醸成が期待できる。

なお、指導計画の作成の際には、「大阪府人権尊重の社会づくり条例」や「大阪府男女共同参
画推進条例」をはじめとする国や府の法律・条例、及び「人権教育推進プラン」や「第3次大
阪府障害者計画」などの推進計画の基本理念を踏まえることはもとより、特に、支援を要する
子どもたちに対しては、きめ細やかな指導ができるよう指導計画を工夫することが求められる。

(2)小・中・高等学校の連携による一貫した進路指導の充実と改善

子どもたちの将来を見すえた適切な進路指導は、キャリア教育において最も重要な要素である。
進路指導は、進学先や就職先の選定・紹介や合格可能性をよりどころにした指導ではなく、子ど
もたちの生き方にかかわる組織的・継続的な指導・援助活動である。

進路指導の取組みを進めるにあたっては、教職員全体が本来の進路指導についての理解・認識
を共有するとともに、進路ガイダンス機能を充実することにより、子どもたち一人ひとりに将来
の生き方を考えさせ、それに向けた進路の適切な選択・決定に関する支援を行なうなど、現在の
学習への意義付けを促すことが必要である。

進路指導の取組みが学校の教育活動全体で行えるよう、小・中・高等学校の各段階における基
本的・総合的な指導計画を策定する必要があるが、その際、学校内だけでなく、校種間の連携を
進めることが重要である。特に、進路指導の中心となる特別活動の学級活動(ホームルーム活動)
においては、指導目標を明確にした上で、どの時期にどのような内容で指導するかを十分検討し、
指導計画を策定する必要がある。

<留意点>

進路ガイダンスにおいては、子どもたち一人ひとりが自分の可能性を見出し、「やりたいこと」
や「できること」を広げるという観点から、進路に関する適切な情報提供、生き方や進路につ
いての悩みや迷いを受け止めるための相談機能の充実が求められる。

指導計画の策定にあたっては、子どもたちが主体的に進路の学習や活動に取り組むことがで
きるよう、自発性を促す仕組みづくりを行うとともに、特に、学級活動(ホームルーム活動)
に関する指導計画の立案にあたっては、題材の体系化など進路指導の構造化を図り、それを系
統図などにまとめて、教職員の共通理解を促すことが必要である。

また、これらの取組みの実効性を一層高めるために、子どもたちの実態や学習ニーズを的確
に捉え、常に指導計画、内容、方法などを点検し、見直すことが必要である。

(3)将来の職業像を見すえた学習の意義付け

 子どもたち自身が、なぜ学習しなくてはいけないのか、今の学習が将来どのように役立つかと
いうことなどに気づき、理解し、考えることが、日頃の学習の必要性、有用性の認識、さらには
確かな学力向上にもつながることから、夢や希望の源となるような直接的体験などを通じて、自
己の将来の職業像を具体化することや、自分自身を見つめる機会を確保することが重要である。

小学校段階における調べ学習や勤労・生産体験活動、中学校段階におけるさまざまな社会体験
や職場体験活動、高等学校段階におけるインターンシップや職業実習など、職業や進路について
の体験活動には、職業や仕事についての具体的・現実的理解の促進、職業観・勤労観の育成、学
ぶことの意義の理解と学習意欲の向上などの効果が認められる。また、ボランティア体験などに
は、社会の一員としての自分の存在意義の認識、互いが支えあう社会の仕組みの考察などの意義
が認められる。これらの体験活動の取組みは、子どもたちに現実に立脚した確かな認識を育む上
で欠かすことができないものであり、各学校においては積極的に推進することが求められる。ま
た、体験活動の取組みが一過性の行事とならないよう、事前・事後指導の充実・改善を図ること
が必要である。

<留意点>

 インターンシップをはじめとする体験活動をより円滑に実施し普及していくためには、校種
間の連携のもとに、関係機関が一体となって取組むことが重要であり、体験活動推進のための
協議会を組織するなど、地域社会におけるシステムづくりに努める必要がある。その際、学校
と地域社会との信頼関係を土台にして、開かれた学校教育の推進に努めることが重要である。

なお、「ものづくり」などの体験は、学校の授業で学んだ知識や理論を実際に手に触れながら
理解するとともに、作る喜びや完成の達成感を味わうことにより、創造性や主体性、集中力や
忍耐力、そして協調性などの豊かな人間性が養われることから、積極的に活用することが望ま
れる。

 また、進学を希望する生徒が希望する進学先の具体的な認識を深め、主体的に選択できるよ
うに、中高連携や高大連携などを推進し、学校見学や出前授業などの取組みを充実することが
重要である。特に府立高等学校においては特色づくり・再編整備が進展していることから、中
学生が進学先を選択するにあたっては、体験入学や合同学校説明会などの機会を活用し、きめ
細やかな進路指導を行う必要がある。

(4)社会や経済の仕組みなどについての現実的理解の促進

社会の仕組みや経済の構造とその働きについての基本的理解は、キャリア発達を促す重要な要
素であることから、小学校段階の早い時期から具体的・現実的理解を深める指導を行うとともに、
社会人としての権利や義務、職業生活に関するさまざまな知識や情報についての学習を、指導計
画の中に位置づけることが必要である。

<留意点>

 社会や経済の仕組みなどについての理解を促進するために、地域の企業や経済団体などとの
連携により学校外の社会資源を有効に活用することが重要である。また、キャリア発達につい
て専門的な知識や情報を持っている人々を、キャリア・アドバイザーなどの外部講師として学
校に招き、講演やワークショップなどを実施することが求められる。

(5)自立意識の涵養と豊かな人間性の育成

 キャリア発達の過程において、「働くこと」とは生計を維持するということにとどまらず、社
会に参画し支える活動であるということを、子どもたちが体験などを通じて理解することが必要
である。そのために、小学校段階から、子どもたちが社会の仕組みや自己と社会の関係を理解で
きるような取組みを積極的に導入することが求められる。また、さまざまな人々とコミュニケー
ションをとるなどにより、他者への思いやりやその人の苦労、誇りや心の痛みなどを自らのもの
とするとともに、さまざまな経験を通して自尊感情を育み、豊かな人間性を培うことが重要であ
る。

 <留意点>

 これまでの大阪における人権教育の取組みを踏まえ、キャリア教育の推進にあたっても、す
べての子どもたちの人権が尊重される集団づくりに努めるとともに、子どもたち一人ひとりに
社会を支える一員であるという自覚を促すことにより、人権を尊重する態度や集団と自己との
調和を図ることができる態度を育成することが必要である。そのためには、体験活動やさまざ
まな立場の人々との交流などを通して「多様で幅広い他者」と積極的に人間関係を持ち、自尊
感情、共生意識や他者に対する思いやりの心を育むことができるよう、学校が家庭、地域社会
などと連携しながらさまざまな場や機会を設けることが重要である。

(6)学校教育活動全体を通した取組みの推進

各学校がキャリア発達の支援という観点から、これまで行われてきた個々の学校教育活動を有
機的に関連づけ、体系的に自校の教育課程に位置づけることが必要である。すなわち職業や進路
などのキャリア教育の中核をなす学習と、教科・科目の学習を相互補完的な関係に位置づけるこ
とにより、子どもたちの働くことへの関心・意欲を引き出すとともに、学習意欲の向上を図るこ
とが必要である。

また、各学校における子どもたちの実態を踏まえ、異なる校種間の連携や家庭・地域社会・企
業などとの連携を考慮した具体的な活動計画を立て、体系的な取組みを展開することが求められ
る。なお、活動計画の策定にあたっては、地域社会の実情に合わせて課題を設定し、到達目標を
明示してその成果について検証を行う必要がある。

<留意点>

学習指導要領に示されているねらい,内容,配慮事項のうち,キャリア教育にかかわる事項
(抜粋)を表3に示す。また、小・中・高等学校段階におけるキャリア教育の取組みの例と関
連する教科・科目について、職業理解能力の育成に着目した例を参考2(16、17ページ)
に示す。

各学校においては、成長段階に応じた系統的・継続的な指導に合わせ、各教科、道徳、特別
活動、総合的な学習の時間等すべての教育活動を有機的に関連づけた横断的な取組みを行う必
要がある。

すなわち、教科学習だけでなく、個別面談や体験活動など、学校内外の活動や集団・個別学
習も含め、総合的な見地からそれぞれ関連性をもたせ系統的に実施することで、キャリア発達
について高い学習効果が得られるよう留意する必要がある。

また、高等学校などにおいては、教科選択科目などが、生徒の実態や進路、学習ニーズなど
に応じたものとして、生徒が自己の将来を見通すことができるよう工夫することが必要である。

(7)教職員の理解と実践の促進

キャリア教育を実効あるものとするためには、教職員一人ひとりがキャリア教育の基本理念を
理解するなど資質の向上が不可欠なことから、校内外の研修を充実させ、キャリア教育推進の中
核的役割を担う教職員を養成するとともに、個々の学校教育活動がキャリア教育の観点から見る
と、どのように位置づけられ、どのような役割を果たすものかについて、すべての教職員が十分
理解する必要がある。

 また、キャリア発達は、自己の新たな可能性を発見するなど、自己理解の深化といった内面の
成長と深くかかわっていることから、教職員が子どもたち一人ひとりの状況を的確に捉え、きめ
細やかな指導に努めるとともに、キャリア発達を促がすカウンセリングを行う機会の確保と質の
向上に努めることが重要である。特に障害のある子どもたちなど、支援を要する子どもたちにつ
いては、キャリア・カウンセリングを通じて一人ひとりに必要な支援方策を的確に把握する必要
がある。

 <留意点>

 キャリア教育を学校の教育活動全体を通して推進するためには、すべての教職員がその取組
みについて共通認識を持ち、実践に必要な知識や指導方法、子どもたちの発達段階に応じた適
切な目標を設定する能力などを習得することが必要である。そのためには、それぞれの学校に
おいてキャリア教育に関する校内研修などを充実させるとともに、学年・教科・分掌などの垣
根を越えて具体的な指導方法などに関して協議する機会を設けることが求められる。また、初
任者・新任採用教職員研修、管理職研修、教職経験者研修などの校外研修において、教職員が
キャリア教育についての理解と認識を深める研修内容を積極的に取り入れること?重要である。
特に民間企業などでの中・長期間の研修は、教職員が子どもたちに対して生きた進路情報や助
言を提供できるなど、キャリア教育に対する意識の改革や自信につながるとともに、そのノウ
ハウの学校全体へのフィードバックも期待できる。

さらに、すべての教職員が、基本的なキャリア・カウンセリングを行って子どもたち一人ひ

表3 小・中・高等学校学習指導要領におけるキャリア教育関連事項 ( )は参考

小学校特別活動

学級活動・児童会活動・学校行事等では、学級や学校における生活上の諸問題の解決、学級内
の組織づくりや仕事の分担処理などの活動や学校生活の充実と向上のための協力などの活
動、勤労生産・奉仕的行事における勤労・生産体験やボランティア活動など

(飼育栽培活動、校内美化活動、地域社会や公共施設の清掃活動、福祉施設との交流活動な
ど)

道 徳

働くことの大切さを知り,進んで働くことや働くことの意義を理解し,社会に奉仕する喜びを知って公共のために役立つことをすることなど

(各教科等で実施されるボランティア活動などの体験活動との関連させた道徳の時間の指導など)

総合的な学習の時間

学び方やものの考え方を身につけ,問題の解決や探求活動に主体的,創造的に取り組む態度
を育て,自己の生き方を考えることやボランティア活動などの社会体験,見学や調査,発表
や討論,ものづくりや生産活動などの体験的な学習など

(福祉体験活動、国際交流活動、環境ボランティア活動、仕事一日体験活動など)

各教科

生活科や家庭科における家庭での仕事の理解と役割分担に関する学習や社会科における地
域の人々の生産や販売,我が国の産業について調査・見学や資料を活用した調べ学習や学習
課題や活動の選択,自らの将来について考えたりする機会の設定など

(飼育栽培活動、おてつだい、学校・地域探検、社会見学、伝統工業・地域産業調べ、制作活動など)

中学校特別活動

学級活動・生徒会活動・学校行事等では、個人及び社会の一員としての在り方に関することや
青年期の不安や悩みとその解決,自己及び他者の個性の理解と尊重,社会の一員としての自
覚と責任,男女相互の理解と協力,望ましい人間関係の確立,ボランティア活動の意義の理
解など

(福祉体験活動、職業調査・職業見学・職場体験活動、社会人の講演、先輩の体験談など)

道 徳

自己が属する様々な集団の意義についての理解を深め,役割と責任を自覚し,集団生活の向
上に努めることや勤労の尊さや意義を理解するとともに,奉仕の精神をもって,公共の福祉
と社会の発展に努めることなど

(各教科等で実施されるボランティア活動などの体験活動との関連させた道徳の時間の指導など)

総合的な学習の時間

学び方やものの考え方を身につけ,問題の解決や探求活動に主体的,創造的に取り組む態度
を育て,自己の生き方を考えることやボランティア活動などの社会体験,見学や調査,発表
や討論,ものづくりや生産活動などの体験的な学習など

(福祉体験活動、職業調査・職業見学・職場体験活動、国際交流活動など)

各教科

技術・家庭科,社会科の公民的分野や選択教科における関連分野での学習、保健体育科,国語科,外国語科における学習など

(国民生活と経済、生活の自立、技術とものづくり、情報とコンピュータなど)

その他

集団生活への適応と選択教科や進路の選択にかかるガイダンスの機能の充実

(進路学習)

高等学校特別活動

ホームルーム活動・生徒会活動・学校行事等では、自己の生き方や自覚、社会生活における役
割と自己責任などに関すること、青年期の不安や悩みや課題とその解決,コミュニケーショ
ン能力の育成と人間関係の確立,ボランティア活動の意義の理解,国際理解と国際交流など

(福祉体験、職業体験・見学、社会人からの講演会、先輩就職活動体験談、ハローワーク見学など)

総合的な学習の時間

学び方やものの考え方を身につけ,問題の解決や探求活動に主体的,創造的に取り組む態度
を育て,自己の生き方を考えること、ものづくりや生産活動などの体験的な学習など

(福祉体験,職業調査や発表・討論、自己課題学習、国際交流活動、資格指導など)

各教科

保健体育科,国語科,外国語科,公民科における学習、職業に関する各教科・科目における
実習をはじめとした学習、学校設定教科・科目での学習など

(産業社会と人間、課題研究、職業科等の実習、国際理解教育、職業学科等の農業クラブ・家庭クラブの活動など)

その他

集団生活への適応と教科・科目や進路の選択にかかるガイダンスの機能の充実、キャリアに
関するコースや類型及び選択科目の設置,総合学科における系列の提示と多様な選択科目の
設置など

(文化祭等の企画立案、大学・就職等の進路ガイダンス、キャリア教育係る学校外における
単位認定など)

※ 養護学級や盲・聾・養護学校に在籍する子どもたちについては、上記の内容を踏まえつつ、個別の教
育支援計画を活用するなど、子どもたちの発達段階に応じた教育を講じることが必要。

とりのキャリア発達を支援できるよう、カウンセリングに係る基礎的・基本的な知識や理解が
得られる機会を設けることが必要である。

また、子どもたちに対するきめ細やかな支援体制の構築という観点から、招へいしたキャリ
ア・アドバイザーなどとともに、学校の指導体制、相談体制やキャリア教育の取組みについて
工夫すべき点がないか見直すことが望ましい。

(8)保護者などの共通理解、協力の促進

 子どもたちのキャリア発達は、最も身近な大人である保護者の考え方や態度の影響を強く受け
ることから、保護者などとの共通理解を図ることが重要である。保護者がキャリア教育の取組み
を理解できるように、学校がキャリア教育の理念や基本方針などについて適切に情報発信などを
行うとともに、保護者が学校の取組みに積極的に参画できるようにするなど、学校と家庭との連
携を深めることが必要である。

 <留意点>

家庭の養育のあり方、働くことに対する保護者などの考え方や態度は、子どもたちのキャリ
ア発達に極めて大きな影響を与える。したがって、各学校においては家庭の役割やその影響の
大きさを常に念頭におき、保護者などとの共通理解を図ることが重要である。

一方、家庭においても、子どもたちのキャリア発達において保護者などが重要な役割を果た
していることを理解し、子どもたちの発達段階に応じて家事を分担させたり、自らの体験など
を通じて仕事には苦労もあるが大きなやりがいや達成感があることを伝えるなど、子どもたち
に自分の役割を意識させることや働くことの意義を理解させることにより、学校でのキャリア
教育がより現実的・効果的なものとなる。

とりわけ、障害のある子どもたちについては、保護者などが子どもの可能性を信じ、身近な
家事手伝いを分担させることで家庭内における役割意識、やりがい、達成感などを育んでいく
ことが重要である。

(9)企業や関係機関などとの連携

キャリア教育の推進にあたっては、企業や関係機関などとの連携・協力が不可欠である。教育
界と産業・経済界が同じテーブルにつく機会を設けることや、効率的に職場体験、インターンシ
ップなどが実施できる協力体制を構築することが重要である。

 <留意点>

職場体験、インターンシップの実施にあたっては、受入れ企業などの理解と協力が不可欠で
あることから、各企業などにおいては、次代を担う子どもたちを社会全体で育成するという観
点に立ち、キャリア教育への理解の促進が求められる。特に支援を要する子どもたちが社会で
自立していくためには、企業などがノーマライゼーションの理念などを理解して、積極的な支
援と協力を行なうことが必要である。

また、教育界、産業・経済界が設置する情報の交換や課題の解決に向けた協議の場を通じて、
産業・経済界が中心となったキャリア教育の支援拠点を整備し、自らの資源である受入れ企業
のコーディネートや、キャリア育成に関して専門的な知識や情報を持つ民間企業出身者を学校
へ派遣するなど、教育界・産業・経済界が一体となって人材育成に取組むことが重要である。

4 キャリア教育を効果的に進めるために

 キャリア教育の全体計画を策定するにあたっては、学校ごとの全体目標や各学年の到達目標を
明確にした上で、具体的な取組みにつなげていくことが必要である。目標レベルについては、子
どもたちの実態を踏まえ、さらに前年度の取組みの評価に基づいて、毎年きめ細かく設定するこ
とが望ましい。加えて、これらの取組に対する評価を行うことも必要である。指導計画に基づい
た取組みを実践して、子どもたちがどのように変化し、どのような効果があったのかを検証する
とともに、取組みが不十分であった点については、次年度の指導計画や指導体制の改善を検討す
るなど、キャリア教育の質的な向上を継続して行うことが求められる。

また、キャリア教育は学校教育だけでなく、生涯学習の観点から進められなければならない。
学校卒業後に就労支援が必要となった場合には、既に国や府が実施しているさまざまな就労支援
事業が実施されていることや、就職に向けてスキルアップを希望する場合には、さまざまな職業
訓練メニューが提供されていることを、学校の進路指導などにおいて子どもたちに周知する必要
がある。合わせて、学校が卒業者からの要請があれば、必要に応じて就労支援に関する情報を提
供するなど、学校から社会生活への接続が円滑になるよう支援することが求められる。

最後に、キャリア教育を進める上で最も重要なことは、子どもたち一人ひとりのキャリア発達
をきめ細かく支援していくことである。そのためには、キャリア・カウンセリングなどを指導計
画に明確に位置付けるなど、個別の指導・援助を充実させ、子どもたちの実態とその置かれてい
る状況を的確に把握するとともに、子どもたち自身が自己の良さや可能性に気付き、それぞれが
夢や希望を持ち、その実現に向けて努力していく過程を、学校、家庭、地域社会、関係機関など
が有機的に連携し、それぞれの立場で系統的、継続的に支援していくことが大切である。

 

教育委員会教育振興室 平成17年4月発行

〒540-8571 大阪市中央区大手前2丁目 電話06(6941)0351(代表)
 

 この冊子は3,000部作成し、1冊あたりの単価は31円です。

このページの作成所属
教育庁 教育振興室高等学校課 生徒指導グループ

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