選挙運動の権利を守る大阪共同センター 要望書

更新日:2023年3月27日

要望受理日令和5年3月17日(金曜日)
団体名選挙運動の権利を守る大阪共同センター
取りまとめ担当課選挙管理委員会事務局
表題統一地方選挙において公正で自由な選挙の実現を求める要請書

要望書

統一地方選挙において公正で自由な選挙の実現を求める要請書

大阪府選挙管理委員会  御中  

2023年3月17日

選挙運動の権利を守る大阪共同センター
構成団体 全大阪労働組合総連合
自由法曹団大阪支部
日本国民救援会大阪府本部

 私たち「選挙運動の権利を守る大阪共同センター」は、統一地方選挙に際し、公正で自由な選挙の実現をめざし、貴庁に要請するものです。
 日本国憲法は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」(前文)と謳い、国民の権利として「公務員選定の権利」(15条1項)を定めています。選挙は主権者である国民が国政のあり方を決める重要な機会であり、憲法の定める公務員選定の権利は民主主義の過程において不可欠な重要な権利です。したがって、選挙に関する国民の権利は特に重く尊重されなければなりません。
 そして、選挙においては、国民が十全な判断のもとに投票を行うことができるように政党や候補者の政策などの情報が国民に十分に提供され、同時に、国民同士が政治について大いに議論し合うことが必要です。こうした活動は、まさに、民主主義の過程における重大な権利として、言論・表現の自由(憲法21条1項)により保障されています。
 ところが、現実には、選挙に関する言論・表現活動の自由は十分に保障されず、不当に厳しい制限が行われています。上記の重大な権利を侵害する行為は許されないことはもちろん、国際人権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約は、「参政権」「意見及び表現の自由」などの権利の享受を規定)にも反するものです。
 実際に、自由権規約委員会は、日本政府に対し、「表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである」(第5回日本政府審査での最終見解)と指摘し、さらに、法律を改正する前であっても「思想、良心及び宗教の自由あるいは表現の自由に対する権利へのいかなる制限を課すことを差し控えることを促す」と厳しい勧告を行っています(第6回日本政府審査での最終見解)。
 公職選挙法では、中央選挙管理会に対し、「常にあらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに、特に選挙に際しては投票の方法、選挙違反その他選挙に関し必要と認める事項を選挙人に周知」(6条)することを義務づけています。
 以上をふまえ、私たち「選挙運動の権利を守る共同センター」は、公正で自由な選挙の実現をめざし、貴会に要請するものです。

一 言論・表現活動の最大限の保障と、投票率の向上にむけたとりくみを強めること
1 選挙においては言論・表現活動の最大限保障を
 投票率の低下が指摘されています。前回2019年の参院選では48.8%と戦後2番目に低く、22年の参院選も52.1%にとどまっています。主権者国民がみずからの投票で政治のあり方を決定するという憲法の理念からみたときに、投票率の低下は重大な問題です。
 その大きな原因の1つは、選挙運動が厳しく制限されているため、国民が選挙において、政治を議論すること、そのための情報が十分に提供されないことにあります。そのため、主権者としての「政治常識の向上」(公職選挙法6条)がすすんでないのではないでしょうか。
 選挙において、言論・表現活動が最大限保障されるために、貴会が、その意義を広く市民に周知・徹底することを求めます。また、警察に対しては、言論・表現活動に不当に干渉・妨害しないよう申入れを行うよう求めます。

2 マンションへのビラ配りの権利の保障を
 いまマンションに住む人が増えていますが、選挙の際に、政党や候補者の政策を知らせるビラを国民に届けるという大切な活動に対して、マンションの管理人などがそれを拒否する事態が各地で起きています。自治体によっては、選挙公報を新聞折込していますが、新聞をとらない家庭も増えるなか、誰が候補者で、どのような政策を訴えているのか、十分知らないまま投票せざるをえない(そのため投票に行かない)のが実情です。
 なお、民主主義の過程におけるビラ配布は、その政治的主張を広め、また、その議論を行うための伝統的な手法です。インターネットが普及した現代においても、廉価で取り扱いが容易であることなどから、その手法の重要性はなお衰えていませんし、それが不当に制約されることがあってはなりません。この点、最高裁判所第2小法廷は、2021年1月22日、マンション敷地内の集合ポストにおいて、市議会報告のニュースを配布した件に関し、管理組合や住民による集合ポストへの投函を行わないよう求める掲示があったとしても、議員活動報告(政治活動のビラ)1枚を集合ポストに入れることで立ち入ることは建造物侵入罪にはあたらないとし、民事上の不法行為にも当たらないとする東京高等裁判所の判断を維持し、その判断を確定させました。いうまでもなく、仮にビラ配布のためのマンションへの立ち入りが刑事法に抵触する行為であれば、民事上も不法行為に該当し、結論が全く異なるものになるため、最高裁は判断を維持することはできません。最高裁が上記判断を維持したということは、最高裁が、ビラ配布のための敷地内立ち入りは合法であるという判断を是認したということができます(また、同趣旨の判決が同年11月11日に確定しています)。
 貴会が、選挙に際し、選挙公報はもちろん、政党など政策を伝えるビラの重要性を広く知らせ、関係者に配布を制限しないように周知するよう求めます。また、上記判決もふまえ、マンションの管理組合等に対し、選挙公報および選挙・政治活動にかかわるビラ(文書)の配布を保障するよう周知することを求めます。

3 投票率を上げるためにキャンペーンなど対策を
 投票率を上げるためには、選挙の意義を国民に知らせ、理解を広がることが大切です。同時に、投票する機会を保障する物理的な工夫も必要です。
 投票しなかった理由として、「忙しくて投票に行けない」「投票所が遠い」などの声があがっているもとで、近年、デパートや大学構内に期日前投票所をしている自治体や車で移動期日前投票所を設置するなどのとりくみがされています。他方、投票締め切り時間(午後8時)前に投票箱を締める投票所もみられました。これは投票する権利を制限するものです。
 貴会においては、投票がすすむ環境づくりをすすめるよう、財政的な援助を含めた国などへの働きかけをすすめることを求めます。とくに若者に対しては、教育の場での学習の推進やSNSなどを利用し、選挙の意義を理解してもらい、「選挙に行こう」とのキャンペーンをいっそうはかるよう求めます。

4 選挙運動への制限の撤廃を
 憲法および前記の自由権規約委員会の勧告をふまえ、主権者国民がのびのびと選挙に参加できるように、選挙運動への制限を撤廃するなど公職選挙法の改正を、担当官庁として政府に対し意見を出すことを求めます。

二 買収こそ厳しく取り締まること
 買収は、「公明且つ適正」な選挙を妨げる最たるものです。
 ○○衆議院議員と□□参議院議員の買収事件に関連して、多くの首長や議員などがみずから金銭を受けたと証言していますが、全員が不起訴になるなど見逃されました。しかしその後、検察審査会が「起訴すべき」との議決をうけて、検察が一部の人について起訴しました。
 買収行為を放置せず、告発するなど厳しく対応するよう求めます。

三 選挙期間中の要求活動の保障を
 公職選挙法は、選挙期間中においても、政党その他の政治活動を行う団体以外による表現活動を規制していません。この規制は表現の自由を制限する規定であり、その範囲が拡張されてはなりません。
 個人の政治活動が制限されないことはもちろんのこと、市民団体や労働組合は、選挙期間中であっても、各団体の取り組み・要求の実現に向けて街頭での宣伝や集会、演説等をすることは、公職選挙法には抵触せず、これらを規制・干渉することは表現の自由の侵害にあたり得る行為です。
 憲法で保障された言論・表現活動への規制・干渉を行わないよう求めます。

四 「公明且つ適正」な選挙を妨げる「企業・団体ぐるみ」選挙を許さないこと 
 企業や団体などが、その構成員等に対し、利益誘導と強要を交えて特定候補者や政党への投票や選挙運動を強いる「企業・団体ぐるみ選挙」は、憲法が定めた「投票の自由」、個人の「思想・信条の自由」を侵害する行為であり、「利益誘導罪」(公選法第221条)にあたる可能性がある行為です。
 貴会が、「公明かつ適正」な選挙を妨げるこのような行為を行わないよう、広く周知・徹底すること、とりわけ企業などの関係機関に対して周知することを求めます。

五 「公明且つ適正」な選挙を妨げる謀略ビラや暴力による選挙の妨害を許さないこと
 過去の選挙で、特定の政党や候補者・団体を誹謗・中傷する出所不明の謀略ビラ(怪文書)が、投票日の前夜などに全戸配布されるような悪質な行為が発生しています。また、候補者に暴力をふるったり、法定ビラの配布や選挙カーの宣伝活動を妨害する行為も発生しています。
 こうした行為は、「公明かつ適正」な選挙を妨げるものであり、公職選挙法の「虚偽事項の公表罪」(235条)、「選挙の自由妨害罪」(225条)にあたる犯罪行為です。
 貴会が、このような行為が犯罪であり、行われないよう周知・徹底するとともに、悪質な選挙妨害などについては告発も含め、厳正に対処するよう求めます。

六 国連機関からの勧告をふまえて自由な選挙の実現を
 国際人権規約および前記の自由権規約委員会からの勧告をふまえ、不当な制限が行われず、自由な選挙の実現にむけて、貴会が役割を果たされるよう要請します。

〈関連法令など〉
日本国憲法
 前文 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。(以下略)
 第15条1項 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。                                     
 同条4項 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
 第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
 第21条1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
 第93条2項 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

公職選挙法
 第1条 この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。
 第6条 総務大臣、中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙管理委員会、都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会は、選挙が公明かつ適正に行われるように、常にあらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに、特に選挙に際しては投票の方法、選挙違反その他選挙に関し必要と認める事項を選挙人に周知させなければならない。
 第221条 次の各号に掲げる行為をした者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
 一 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。
 第225条 選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
 一 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人に対し暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき。
 二 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。
 三 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者若しくは当選人又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人を威迫したとき。
 第235条 当選を得又は得させる目的をもつて公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、その者に係る候補者届出政党の候補者の届出、その者に係る参議院名簿届出政党等の届出又はその者に対する人若しくは政党その他の団体の推薦若しくは支持に関し虚偽の事項を公にした者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
 2 当選を得させない目的をもつて公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者に関し虚偽の事項を公にし、又は事実をゆがめて公にした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。

国連からの勧告
・2008年10月、自由権規約委員会の日本政府の第5回報告審査での最終見解での勧告より
 「委員会は、公職選挙法の下での戸別訪問の禁止、選挙運動期間前に配布可能な文書図画への制限などの表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約につき懸念を有する。委員会は、政治活動家と公務員が、私人の郵便箱に政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで、不法侵入についての法律や国家公務員法の下で逮捕、起訴されたとの報告についても懸念する(第19条及び第25条)。
 締約国は、規約第19条及び第25条の下で保護されている政治活動及び他の活動を、警察、検察官及び裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである。」
・2014年8月、自由権規約委員会の日本政府の第6回報告審査での最終見解での勧告より
 「委員会は、前回の最終見解を想起し、締約国に対し、…思想、良心及び宗教の自由あるいは表現の自由に対する権利への如何なる制限を課すことを差し控えることを促す。」

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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