大阪府保険医協会 要望書

更新日:2020年9月11日

要望受理日令和2年7月17日(金曜日)
団体名大阪府保険医協会
取りまとめ担当課府民文化部 府政情報室広報広聴課
表題型コロナウイルス(COVID-19)感染症対策に関する大阪府への要望

要望書

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症対策に関する
大阪府への要望

2020年7月17日
大阪府保険医協会

 新型コロナウイルス(以下、COVID-19)の感染拡大は、4月に新規感染のピークを越えてからも日本全体に大きな影響を及ぼしています。5月には緊急事態宣言が解除され、「新しい生活様式」の中での日常生活を取り戻しつつあるものの、府民は終わりの見えない自粛と「コロナ不況」の不安のなかにあります。
 COVID-19の感染拡大は医療機関にも多大な影響を与えています。当会が複数回実施した医療機関への影響調査では、2月からのマスク不足がいまだに解消しきれていない事や、感染が広がるにつれて“受診控え”が深刻化し、保険診療収入の激減により医院経営が危機的状況であることなどが鮮明になりました。
 “受診控え”によって状態が悪化した患者の事例も報告されており、第2波を前に地域医療の立て直しとともに、府民の生活・健康を守るための取り組み強化も求められている局面となっています。大阪府保険医協会では、これまでも大阪府に対し要望書を提出してまいりましたが、秋ごろに懸念されている第2波に備える対策として、改めて以下のことを要望します。

(1)感染防護具(PPE)の確保・安定供給・備蓄について
 医療機関におけるマスクや消毒液等の感染防護具(以下、PPE)の不足が現在でも続いており、当会が複数回実施した会員医療機関へのアンケートでも、PPEの安定供給を求める意見が毎回多数寄せられています。インフルエンザ流行と同時期にCOVID-19の感染拡大が再度起きれば、PPEが不足した状況では開業医と医療機関スタッフの命が危険にさらされることになります。現に、第1波では大阪府内の診療所の医師2人が新型コロナウイルス感染症により亡くなっていたことが報道されました。必要なPPEが揃っていることは、熱発患者に必要な検査や治療を行うことや、COVID-19感染疑いの患者に安心して向き合うための必要最低限の条件であり、最前線で診察に向かう医師・スタッフのモチベーションにつながります。そこで、以下のことを要望します。
ア.通常の医療提供体制の確保のため、PPEを府の責任で確保・備蓄し、府内医療機関等に無償での安定供給をしてください。
イ.第1波では、国・府確保のサージカルマスク等が地域医師会等を通じて府内の医療機関に供給されましたが、医師会ごとに供給枚数が大きく異なるなどし、枚数が極端に少なかった地域ではサージカルマスクの確保が大きな負担となりました。また、医師会未加入の医療機関には全く供給されていない地域もあり、地域医療を支える立場は同じであるにも関わらず格差が生じるなどの問題がありました。第2波に備えて、地域や医師会に加入しているか否かに関わらず府内全医療機関に同等の供給が行われるような体制を構築してください。
ウ.6月19日に厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部より発出された事務連絡『今後を見据えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備について』(以下、『6月19日事務連絡』)で、「都道府県等は、医療機関が地域の流行状況を把握できるよう情報提供を行い、感染拡大時には、新型コロナウイルスの感染が疑われる患者に対して、医療機関が速やかに検査を実施できるよう、検査に必要な備品の確保も含め、院内感染対策が十分に講じられるよう支援すること。」とされていますが、大阪府の情報提供方法や支援策について具体的にお教えください。

(2)医療提供体制について
 多くの医療機関は出来る限りの感染対策を行いながら診療しているものの、PPEが不足する中、熱発患者については帰国者・接触者センターや感染症指定病院の受診を促さざるをえない状況にあります。一方、感染を懸念しての受診控えが深刻な問題となっており、受診しなかったことによる重症化や診断遅れの事例も報告されています。慢性疾患の方が今まで通り受診でき、新型コロナウイルス感染症(疑いも含む)以外の急性疾患症状の方が安心して受診できる医療体制の早急な構築が求められています。
 また、9月以降はインフルエンザが流行する時期でもあり、現在の体制では帰国者・接触者センターや感染症指定病院、発熱外来の混乱は必至で、地域の医療機関で役割分担することが重要です。そこで、以下のことを要望します。
ア.院内感染を防止し、従来の一般患者への医療提供との役割分担を明確にするためにも、府の責任で新型コロナウイルス感染疑いの発熱外来を各地域に設置してください。また、設置状況について府内全医療機関に情報提供をしてください。
イ.疑い患者の診察について、『6月19日事務連絡』で「ドライブスルー方式」、「テント設置によるウォークスルー方式」、「検査ボックス」等の活用が推進されています。府内の活用または検討状況についてお教えください。
ウ.新型コロナウイルス感染症の妊産婦・小児患者(疑い患者も含む)の受入れ医療機関の設置状況をお教えください。
エ.普段から入院の受入れ先の確保が困難な障害児者が、新型コロナウイルス感染症(疑いも含む)になった場合、更に受入れ医療機関が見つかりにくいのではないかとの不安が広がっています。府の責任において障害児者の入院医療提供体制を確保してください。また、『6月19日事務連絡』で示されている医療提供体制の内容を確実に実施してください。

(3)保健所体制やPCR検査、ワクチンなど公衆衛生事業について
 当会が4月に実施した調査では、新型コロナウイルス感染疑いの患者さんが「来院した」とした491医療機関のうち、約半数が「保健所に患者を紹介したが断られた」と回答し、「電話がつながらなかった」とした医療機関も26.1%ありました。
 PCR検査については医師が必要と判断した人に対しては実施する方針が出されていますが、当会には「医師が必要と判断したにもかかわらずPCR検査につながらなかった」との事例が寄せられています。また、院内感染防止策として医療従事者や医療機関のスタッフ、出入り業者への早期のPCR検査を求める声が多数寄せられています。検体採取については、行政と契約をした上で診療所等でも実施できるようになるなど、体制が整えられつつありますが、検査結果が出るまでに4から5日かかるなどスピードの問題も指摘されています。
 こういった事態の背景には保健所数や人員が削減されてきた経緯があると指摘されています。そこで、以下のことを要望します。
ア.今回の感染拡大を教訓に、大阪府として府内自治体の公衆衛生事業に責任をもち、府民の健康と暮らしを支えるためにも保健師の確保と保健所の体制を拡充してください。
イ.第2波・第3波の感染拡大がインフルエンザの流行時期と重なることが懸念されます。毎年、麻疹やMRワクチン、インフルエンザワクチン不足が問題になりますが、医療体制の維持のためにも、ワクチンの確保については医療機関任せにするのでなく、自治体として必要数(前年度実績に見合った)の確保と、迅速に医療機関に提供できる体制に努めてください。また、COVID-19感染拡大対策として、全世代を対象にインフルエンザワクチン接種の公費助成を行ってください。
ウ.政府は、令和2年度第2次補正予算で、地域外来・検査センターの設置と行政検査としてPCR・抗原検査の実施に366億円、PCR試薬と抗原キットの確保に179億円を計上しましたが、個々の医療機関や企業への予算計上はありませんでした。第2波の感染拡大に備え、大阪府としてPCR検査への財源と人材の確保を行ってください。また、PCR検査センターの増設や民間検査会社、大学等の積極的な活用などにより、保健所の業務過多による対応の遅れが生じない様な検査体制を確立してください。
エ.医療機関や高齢者施設等で感染が疑われる患者・入所者・職員等が発生した場合には、早急に検査を実施して感染者を特定し、院内・施設内感染拡大防止に努めることが重要です。こうした目的の場合、医師が感染の疑いがあると判断した際は迅速にPCR検査等を実施してください。
オ.PCR検査の検体採取などを行う「帰国者・接触者外来」、「地域外来・検査センター」の府内の設置状況をお教えください。
カ.唾液によるPCR検査が保険適用され、行政の委託を受けた診療所でも検体採取ができるようになりましたが、委託契約に関する問い合わせ・相談窓口の情報がありません。府内自治体に対し、情報公開するよう指導してください。

(4)入院医療体制について
 COVID-19感染拡大にともない、新型コロナウイルス感染症患者の受入れをした病院もそうでない病院も手術の延期や健診事業の停止などで大きく収入が減少しました。低診療報酬政策のもと、赤字経営を余儀なくされている民間病院では、新興感染症や災害などイレギュラーに普段から備えることは非常に困難であることが改めて浮き彫りになりました。
 そうしたなか、COVID-19対応では公立・公的病院が中核的な役割を担ってきました。また、大阪府下では十三市民病院が酸素吸入などを必要とする中等症患者のための専門病院とされましたが、もともとは地域の医療を支える総合病院です。今後は、平常時の医療提供体制とともに、新興感染症拡大時や災害時にも備えた医療提供体制の整備が必要と考えます。地域医療を守るため、感染拡大や災害に備えた公立・公的病院の体制維持・拡充が重要と考えます。そこで、以下のことを要望します。
ア.府内2次医療圏での医療・病床懇話会の議論でも疑問が出されている急性期病床を減らす内容の地域医療構想を見直し、新興感染症の感染拡大時などイレギュラーな事態を想定した医療提供体制の構築をしてください。
イ.2019年9月に厚生労働省「地域医療構想に関するワーキンググループ」が示した「再検証対象医療機関」について、大阪では10病院が対象として示されました。府内2次医療圏での医療・病床懇話会の議論では病院の廃止の方向性は示されていませんが、新興感染症への対策拡充も踏まえ、今後も10病院を維持・存続する方針を示してください。
ウ.十三市民病院は大阪市立の病院ではありますが、府が府内全体の医療提供体制に責任を持つという立場であることを鑑み、十三市民病院が新型コロナ専門病院とされたことに対し、大阪府としての見解をお聞かせください。また、十三市民病院がこれまで担っていた役割を、今後地域でどのように継続していくのか見通しを示してください。

(5)第2波に備えた医療機関への補償や情報提供について
 当会が5月に行った調査では、9割の回答医療機関が「保険診療収入減」と回答し、医院経営の存続に関わる問題になっています。6月から支払われる診療報酬は大幅に減り、この状態が数か月続くと、資金ショートも懸念される状況です。地域医療は病院・診療所の役割分担のなかで支えられており、診療所の閉院が増えれば病院に更なる負荷がかかるなど、医療崩壊につながりかねません。国民の命と健康を守るという点で、全ての医療機関が公的な役割を果たしているため、新型コロナウイルス感染症の患者を診察したか否かに関わらず医院経営継続のための財政的支援が必要です。また、アンケートには、情報不足による不安を訴える声が多く寄せられました。そこで、以下のことを要望します。
ア.地域医療崩壊を食い止めるためにも新型コロナウイルス感染症の患者を診察する医療機関だけでなく、全ての医療機関が活用できる補償制度を早急に創設して下さい。
イ.各医療機関が迅速に感染予防対策を講じる為にも、大阪府下のきめ細かい感染発生動向の公表をしてください。
ウ.各医療機関が適切に感染予防対策を講じることができる様、対策方法などの情報発信をしてください。

(6)すべての人が安心して受けられる医療制度を
 COVID-19感染拡大により国内の経済・雇用状況が大きく悪化し、戦後最悪と言われたリーマンショック時よりも更に悪化することなどが指摘されています。また、4月の生活保護申請件数は前年と比べて約3割増加しており、今後も申請件数が増加する可能性も指摘されるなど、苦しい経済状況に追い込まれている府民が多くいることが推測されます。府民のいのちとくらしを守ることを最優先に考えた施策が今こそ必要です。そこで以下のことを要望します。
ア.医療を必要としている生活保護申請相談者について、受診遅れが生じないよう出来るだけ速やかに保護を開始してください。
イ.無保険状態となっている方が医療を受けられるように、無料低額診療を実施している医療機関を積極的に広報するなど対策を取ってください。また、無料低額診療を実施している医療機関への財政補助の拡充・強化をしてください。
ウ.国民健康保険料加入者について、国民健康保険料の減免制度、一部負担金の減免制度の周知徹底をし、対象者については全て適用となるよう推進してください。
エ.解雇等により社会保険から国民健康保険への切り替えが必要な人が期限内に手続き出来なかった場合であっても、外出自粛要請などの影響が考えられるため社会保険の資格を喪失した日に遡って国民健康保険の資格適用として下さい。
オ.大阪社会保障推進協議会が2019年に実施した「大阪府民の生活実態調査」では、回答者の30%近くが「病院へ行くことを先延ばしにしたことがある」と回答しました。未受診・受診抑制は症状の重篤化をうみ、保険財政にも影響します。国民健康保険加入者の実態調査を実施してください。特に、現役世代と独居老人の生活実態を大阪府として把握してください。
カ.大阪府の乳幼児医療費助成制度を見直し、対象年齢の拡大と無償化をしてください。
キ.2018年の制度見直しでは「子ども・ひとり親」は「現状維持」としていたにも関わらず、精神病床の入院について対象外となりました。その際、2021年3月31日までの経過措置が設けられていますが、それ以降も「子ども・ひとり親」について精神病床の入院についての助成制度の対象としてください。
                                                                                                                                                                                  

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