第6回みどりのまちづくり賞(愛称:大阪ランドスケープ賞)の受賞作品について

更新日:2016年12月20日

第6回みどりのまちづくり(愛称:大阪ランドスケープ賞)の受賞作品について

 1.ランドスケープデザイン部門 (まちが美しくなるみどりづくり)

  【大阪府知事賞】 新ダイビル 堂島の杜 (大阪市北区)

   事業主 ダイビル株式会社

   設計者 株式会社日建設計

   施工者 株式会社大林組、住友林業緑化株式会社、株式会社稲治造園工務所

       新ダイビルの写真その1       新 

●講評

 昭和39年の大規模屋上庭園整備当初の「人だけでなく生物にとってもやさしい森」の精神を継承し、大きく育ったケヤキやモミジ等の20本の樹木を地上部に移植し、新たな命として見事に甦らせている。これらの移植された樹木とともに大阪の河川後背低地の微高地を構成する郷土の樹木が人々の生活の中に息づいた杜として再現されている。
 四季を通じた生物調査も実施され、森の保育管理に生かされようとしている。1階のロビー空間は屋外のランドスケープが大きく進入し、水盤に反射した光とともにあたかも木立の中にいるような感覚を醸し出している。北側のオフィスロビーには石組みを中心に「森の源流」をイメージした空間も広がっている。また、この杜と堂島川とを隔てている堂島公園に手を入れることによって、川と連続したランドスケープも創出している。高木や低木、地被類、それぞれの「緑」にスポットを当てた照明により、森が美しく浮かび上がった新たなナイトスケープを生み出しており、すべての面で知事賞に相応しい。 (審査委員長 増田 昇)

  【公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞】 イオンモール堺鉄砲町 (堺市堺区)

   事業主 イオンモール株式会社
   設計者 株式会社竹中工務店
   施工者 株式会社竹中工務店

      イオンモール堺鉄砲町の写真その1      イオンモール 

●講評

 本ランドスケープの特徴は、アウターモール、せせらぎ水路など、生物多様性にも配慮した水とみどり豊かな外部環境を創出し、建築物の内部空間だけではなく、ショッピングモールを訪れる多くの人々がみどりと触れ合える機会を提供している点にある。
 また、「せせらぎ」には近接する三宝下水処理場の下水再生水を水源として利用するとともに、熱源としても利用し、人と環境との共生に取り組んでいる。加えて、日本の近代化を支えた貴重な産業遺産である、従前工場の創設時に建設された赤レンガ建築(堺鉄炮町赤レンガ建築)の保存再生にも取り組むなど、地域性を取り込んだデザインとなっている点も特徴的である。
 ステレオタイプではなく、地域性を考慮し、人と環境との共生に配慮した豊かなランドスケープを創出したショッピングモールの可能性を示した事例といえる。 (審査委員 嘉名 光市)

 

  【一般社団法人 ランドスケープコンサルタンツ協会関西支部長賞】 公益財団法人 浅香山病院 (一般科) (堺市堺区)

   事業主 公益財団法人 浅香山病院
   設計者 株式会社E-DESIGN、株式会社東畑建築事務所
   施工者 鹿島建設株式会社

     浅香山病院の写真その1     浅香山病院の写真その2

●講評

 歴史を重ねてきた病院の威厳ある存在感を、周辺地域と訪れる人の心にやわらかに開き親和する空間へ、緑のデザインによって導いている優れた作品である。時の蓄積の上に、新たに展開されているランドスケープが、病院の理念やビジョンをみごとに物語っており、その環境に身を置くことで、五感を通して癒しを感受することができる。
 第一のポイントである病院らしさを感じさせない1階のランドスケープデザインは、歩道を広げることでさりげなく設けられた憩い空間、ベンチをかねたダイナミックな自然石の彫刻、シンボルツリーのイチョウをはじめ、四季を彩る雑木の数々が織り成すアプローチは、あたたかな生命感とともに、来院者を包み込む。
 第二のポイントは、3階屋上に設けられたリハビリ庭園「希望の広場」である。回復期リハビリ病棟に併設され、リハビリスタッフ、医師、看護師、病院関係者との協働によって、運動機能を高める様々な舗装環境や勾配、歩行ルート設定、園芸療法に活用できる立上げ花壇や菜園、水盤と噴水の仕掛けなど、自然に心身の回復を促すことのできるリハビリプログラムが実に細やかに組み込まれ、美しく洗練された庭を生み出すことに成功している。 (審査委員 弘本 由香里)

  【審査委員長特別賞】 YANMAR FLYING-Y BUILDING (大阪市北区)

   事業主 セイレイ興産株式会社
   設計者 株式会社日建設計
   施工者 株式会社竹中工務店、株式会社朝日興産、野崎造園土木株式会社

     ヤンマービルの写真その1            ヤンマービルの写真その2

●講評

 大阪都心部の喧騒のなか、道行く人たちの視線を一瞬釘付けにする緑のファサードがある。市街地の壁面緑化は、無機質で幾何学的なビルと、有機的で繊細な動きをみせる植物とが、ただ並存するだけのケースが少なくない。しかしこのYANMAR FLYING-Y BUILDINGでは、アルミルーバー材に人工土壌を不織布で包んだ植栽ユニットを挿入し一体化した「植栽ルーバー」の開発という最先端の技術により、両者が見事に融合し一体化している。植栽は、ビルの外観を特徴づける円形ルーバーの積層を壊すことなく蜜蜂の集蜜に寄与し、蜂たちはルーバーを辿ることで屋上ビーガーデンへと導かれて行く。
 私たちが目にするのは、幾何学と緑の新たな融合体であり、クールで柔らかな街への希望である。 (審査委員 井原 縁)

 2.ランドスケープマネジメント部門 (まちが笑顔になるみどりづくり)

 【大阪府知事賞】 泉大津緑化ボランティア協議会 (泉大津市)

   活動者 泉大津緑化ボランティア協議会
   所在地 泉大津市

     泉大津緑化ボランティア協議会の写真その1     泉大津緑化ボランティア協議会の写真その2

●講評

 本協議会は、市内の各地域で緑化に関わるボランティア団体が、スクラムを組んで花と緑のまちづくり活動をより広めようと市民自らの発意によって平成17年1月に発足し、平成25年4月に改組された協議会である。現在は7団体、合計152人から構成されている。
 各地域での日常的な緑化活動を継続しつつ、市役所に隣接する東雲公園のサンクンガーデンの花壇を共同で管理している。サンクンガーデン外周部はマツバボタンで縁どられ、中央のシンボル花壇では四季折々の花が咲き誇っている。共同で管理することによって、花と緑のまちづくりの夢を語り合い、人の輪を豊かにしている。さらに市民の輪を広げるためには市民参加の青空の下でのイベントが一番と「花と緑を楽しむ市民の集い」も毎年開催している。ここでは無料苗の配布が好評であるとともに平成26年からは「市民ガーデンコンクール」の表彰式も行われている。
 このコンクールも今年は3回目に当たり、50作品もの応募があった。それぞれ丁寧に審査し、活動の主旨を的確に表した素敵な賞の冠をつけ、50作品すべてを表彰している。生き生きと誇りをもって活動されており、知事賞にふさわしい活動であるとともにさらなる輪の広がりが大いに期待できよう。 (審査委員長 増田 昇)

  【公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞】 島本町緑と花いっぱいの会 (島本町)

   活動者 島本町緑と花いっぱいの会
   所在地 島本町

     島本町緑と花いっぱいの会の写真その1     島本町緑と花いっぱいの会の写真その2  

●講評

 本会は第1回みどりのまちづくり賞でも特別賞を受賞されている。その際は、30年以上にわたる長期継続、花壇づくり活動の幅の広がり、しっかりした組織運営が大きな評価ポイントであった。その後も着実に活動を継続し、30年記念誌を発行して設立当初の思いや取り組みを共有され、また毎年活動内容を紹介したお便りを島本町全戸に配布するなど、その組織運営には特筆すべき点が多い。
 またこれまでの花壇づくりの活動に加えて、新たに準絶滅危惧種となっている秋の七草フジバカマ野生種の保護にも取り組み始められた。この取り組みには、フジバカマなどを好物とする渡り蝶アサギマダラを呼び込もうとする地元のガールスカウトと協働でチャレンジされている。子供達とフジバカマを挿し芽から増やし、借り受けた町の遊休地の路地で、夏場も毎日潅水しながら大きく育て、秋には飛来するアサギマダラを、子供達と一緒に観察調査されている。活動の弛まぬ継続と環境への新たな取り組みは、花博の理念である「自然と人間の共生」に合致するものであり、今回も高く評価された。
 この賞の受賞により、会の活動のすばらしさが広く町に伝わり、高齢化が進む会へ新たな協力者が現れ、会がさらに継続していくことを期待する。 (審査委員 當内 匡)

  【奨励賞】 環境とフラワーロード、すみれ・花フレンズ、城北川花いっぱいプロジェクト (大阪市城東区)

   活動者 城東区ゆめ〜まち〜未来会議(環境とフラワーロード、城北川花いっぱいプロジェクト)及びすみれ・花フレンズ
   所在地 大阪市城東区

     環境とフラワーロードの写真  すみれ花フレンズの写真    城北川花いっぱいプロジェクトの写真    

●講評

 “花づくりを通して、癒しの心・命を大切にする心を育て、思いやりあふれる地域にしたい”
 すみれ・花フレンズは設立して5年を迎える地域密着の「花づくり」・「花育」の団体である。何もないところから、自ら活動場所を確保し、助成金を各所に申請して活動資金を調達し、活動の規模を広げてこられた。大阪府や大阪市の花壇づくりや園芸療法の講習会で技術を習得したメンバーが中心となり、種から花苗を育て地域への配布、地元花壇の植え付け管理、さらに小学校と連携して、花育授業を行なっている。
 また地元の川や道路を花いっぱいにしようとする「城北川花いっぱいプロジュエクト」やフラワーロードの活動にも精力的な支援を行っている。自発的な思いで生き生きと活動する姿はバイタリティに溢れており、今後の取り組みに大いに期待する。 (審査委員 當内 匡)

  【みどりのまちづくり活動賞】 城東区はなびとコスモスタッフの会」の花と緑のまちづくり活動 (大阪市城東区)

   活動者 城東区はなびとコスモスタッフの会
   所在地 大阪市城東区

     城東区はなびとコスモスタッフの会の写真その1     城東区はなびとコスモスタッフの会の写真その2

●講評

 花好き10人で平成16年の春より始めた緑化活動を、平成17年7月には城東区の支援を受けて本会の発足へと繋げ、現在では55名の会員にまで発展させている。大阪市のグリーンコーディネーターの認定を受けた10名が活動のまとめ役を担い、地域の公園の一角にふれあい花壇を設けるとともに、平成19年3月からは「種から育てる地域の花づくり支援事業」にも取り組み、長年に渡って区内30箇所、1万2千株にも及ぶ四季の花を毎年供給している。
 大阪市とともに地元の城東区との緊密な連携の下で、10年余りの期間、活動を継続させるばかりでなく、新たな人材育成や緑化技術の向上に努められており、「みどりのまちづくり活動賞」に相応しい活動である。 (審査委員長 増田 昇)

  【みどりのまちづくり活動賞】 希望の開拓 菊サロン (富田林市)

   活動者 希望の開拓 菊サロン
   所在地 富田林市

     希望の開拓菊サロンの写真その1    希望の開拓菊サロンの写真その2    

●講評

 閑静な住宅街の一角に佇むお宅の庭が、ご主人の菊づくりに対する取り組みを軸に、まちの人々が集い、かつそこからまちへと発信する貴重なサロンになっている。
 毎年11月、このサロンを舞台に開催される菊花展には、ご主人に菊づくりを学んだ老人会の方々や地域の小学校の子供たちの育てた大小様々の菊が並ぶ。経験と学びに裏打ちされた、菊づくりのノウハウを伝えるための手作りの指南書は、大きな紙に非常に丁寧な図解と言葉で判りやすく示され、何パターンも存在する。
 一人の人間が、植物と真摯に向き合い、そのシンプルで熱い心性が多くの人々に繋がっていく、ランドスケープマネジメントの「原点」がここにある。 (審査委員 井原 縁)

このページの作成所属
都市整備部 公園課 企画推進グループ

ここまで本文です。


ホーム > 都市魅力・観光・文化 > スポーツ・公園 > 事業紹介 > 第6回みどりのまちづくり賞(愛称:大阪ランドスケープ賞)の受賞作品について