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更新日:2010年12月6日

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大阪府に寄せられた宅地建物取引に関する相談事例 No.9

賃貸借契約締結
関係図

経過

借主Aは、宅建業者Xの媒介で、Bを貸主とする戸建て住宅の賃貸借契約を締結した。物件案内時、AがXにテレビ放送の受信状況について質問したところ、「前の入居者はテレビを見ることができたので、配線をつなげば見ることができる。」との説明を受けた。しかし、入居後、アンテナを設置しなければテレビが視聴できなかったため、事前に受けていた説明と異なるとして、Aは府に苦情を申し立てた。

判明した違反事実

府がXから事情を聴いたところ、以下のとおり違反事実が確認された。

  1. 重要事項説明書に記載不備がある。業法第35条第1項違反
    • 当該建物に登記された権利の種類及び内容として「抵当権有り」と記載しただけで、その内容を記載していない。(同項第1号)
  2. 賃貸借契約書(いわゆる「37条書面」)に記載不備がある。業法第37条第2項違反
    • 建物の引渡しの時期を記載していない。(同項第1号)
  3. 取引の公正を害する行為
    • (1)テレビ放送の受信状況について、Aから質問があったにもかかわらず、十分に調査することを怠った。
    • (2)契約が成立していないにもかかわらず、Aに契約が成立したものと誤認させ、契約の成立前に媒介報酬を銀行振込により受領した。

違反が発生した事情(又は理由)

1及び2について

Xは、物件の登記簿の乙区に記載された抵当権(根抵当権)の具体的な内容を説明しなかったことを認めた。また、Xは重要事項説明書の記載不備について、ミスを認めた。また、賃貸借契約書の記載不備について、「賃貸借契約書の書式に建物の引渡しの時期に関する項目がないために、記載しなかった。」と述べ、ミスを認めた。

3(1)について

Xは、「Aに物件を案内した際に、Aからテレビ放送の受信状況について質問を受けたが、アンテナの差込口が見当たらなかったため、アンテナの設置やそれに伴う費用が必要になる可能性があることを説明した。」と述べた。
しかし、アナログ放送が受信できない状態であったか否かについては、Bや当該物件の管理会社に確認しなかったことを認めた。

3(2)について

Xは、「重要事項を説明する前に仲介手数料を含む諸費用の明細と銀行の振込先をAに示していた。借主に来店を求めていたが、借主が忙しくて来店できない状況が続き、契約が成立する前にAが当該諸費用を振り込んできた。先に仲介手数料を振り込むよう求めるようなことはしていない。」と述べ、仲介手数料をそのまま受領したことを認めた。

処分等

府は、次のとおり違反事実等を認定し、Xを文書勧告とした。

業法第35条第1項、第37条第2項違反及び取引の公正を害する行為(テレビ放送の受信状況の調査不足、契約成立前に媒介報酬を受領)

本事例のポイント

1 重要事項説明書について

宅地及び建物の上に存する登記された権利の種類及び内容を記載する必要があります。

  • 登記簿に記載された事項のうち、所有権以外の権利に関する事項(乙区)については、抵当権(根抵当権)などの種類のみならず、その具体的な内容も説明する必要があります。「抵当権有り」といった記載だけのものがよく見受けられますが、それでは不十分です。抵当権者や抵当権設定日等の具体的な内容を記載しましょう。重要事項説明書に記載しきれないような場合は、「別添登記簿参照」等として登記簿を添付していただいても構いません。

2 賃貸借契約書(いわゆる「37条書面」)について

契約期間だけでなく、宅地又は建物の引渡しの時期を明記する必要があります。

  • 契約期間の記載だけでは不十分です。賃貸借契約書が「37条書面」を兼ねる場合は、物件の「引渡しの時期」を明記することが必要です。使用している37条書面の書式に項目がないからといって、記載しなくてもいいということにはなりません。記載漏れがないかを確認してください。

3 テレビ放送の受信状況について

テレビ放送を受信することができない場合又はテレビ放送を受信するためには借主に費用負担が生じる場合には、その事実は借主の判断に重要な影響を与える事項に当たります。

  • 本件のように、テレビ放送を受信できるかどうか不明な物件で、借主からテレビ放送を受信できるかどうかについて質問があった場合、そのことは借主の契約の判断に影響を与える「重要な事項」に当たりますので、仲介業者は貸主や管理会社に確認する等調査を行い、テレビ放送を受信できるかどうか及び受信するために借主が負担する必要がある費用等について、借主に説明してください。その際には、説明内容を記載した重要事項説明書等の書面を交付するようにしてください。

4 契約成立前の媒介報酬の受領について

媒介報酬を契約が成立する前に受領することはできません。

  • 媒介報酬は、媒介の依頼を受けた業者が、依頼者のために奔走して売買等の契約締結を実現した場合、依頼者が業者に支払う成功報酬とされています。つまり、業者の媒介によって売買等の契約が成立した場合に、業者の依頼者に対する媒介報酬請求権が発生することになります。本件の場合、借主は契約が成立していない段階で契約が成立したと誤認して業者に報酬を支払っていますが、このようなことのないよう、業者は借主に対し、契約成立の時期や媒介報酬を支払う時期について十分に説明しておくべきです。

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