お金を払った後にキャンセルしたいが、お金は返金される?

更新日:平成28年1月26日

 あなたは、賃貸物件を探していて気に入った物件が見つかったので入居申込みをしようとしたら、不動産業者(仲介業者)から「預り金」や「申込金」などの支払いを求められたことはありませんか?多くは家賃の1ヶ月以内の金額であり、気軽に支払う借主さんが多いのですが、契約や申込みをキャンセルした場合に預かり金が返還されないということでトラブルとなる事例が後を絶ちません。

 ところで、あなたが賃貸物件の入居申込みをして預り金を支払った後に、他の不動産業者でもっといい物件が見つかったため当初の物件をキャンセルした場合、預り金は返還されると思いますか?答えは・・・返還される場合もあれば返還されない場合もあり、ケースバイケースです。では、どのような場合に預り金が返還されるのでしょうか?

 以下に、どのような場合に預り金が返還されるべきで、どのような場合に返還されないことがあるのか、トラブル事例を紹介しながらご説明しますので、トラブルを未然に防止するための一助にしていただけたら幸いです。

賃貸借契約の流れ

賃貸借契約の流れ

典型的なトラブル事例

 Aさんは不動産業者の店頭で気に入った賃貸物件を見つけたので、その不動産業者の仲介で入居の申込みをして、家賃の1ヶ月分のお金を預り金として支払った。翌日、別の広告でより条件の良い物件があったのでキャンセルを申し出たところ、解約には応じるが、契約は成立しているので返還できない、と不動産業者から言われた。

ポイントポイント1 重要事項説明は受けていますか?

→ 仲介業者は借主に対し、契約が成立するまでに宅地建物取引士による重要事項説明(※)を行うとともに重要事項説明書を交付する義務があります。もし、重要事項説明を受けていないにもかかわらず、仲介業者が「契約は成立したので手付金は返還できない」と言うのであれば、重要事項説明義務違反(宅地建物取引業法第35条違反)ではないか、と仲介業者に指摘しましょう。

 ※「重要事項説明」とは…仲介業者の宅地建物取引士が、これから物件を借りようとしている者に対し、負担する必要がある費用や取引条件など、契約を締結するかどうかを判断するうえで一定の重要な事項の説明を契約が成立するまでに行うことです。この重要事項説明は、契約が成立するまでの間に行うことが宅地建物取引業法で義務付けられています。

 参考 賃貸借契約のためのちょっとアドバイス[契約の前に必ず重要事項説明書をもらい、その説明を受けよう]

 ポイントポイント2 貸主の審査は通っていますか?

→ この事例では、既に借主(Aさん)の「借りる」という意思表示(入居申込み)がなされていますので、貸主の「貸す」という意思表示(審査承諾)がなされたときに賃貸借契約は成立すると考えられます。まずは、貸主の審査が通っているかどうか仲介業者に確認しましょう。なお、賃貸借契約は口頭でも成立しますので、契約書に判をついていないとか契約書がまだ作成されていないからといって、契約が成立していないというわけではありません。

参考 賃貸借契約のためのちょっとアドバイス[契約はどの時点で成立するか]

ポイントポイント3 「預り金」、「手付金」、どちらか?

→  借主が入居申込みの際に支払った「預り金」は、貸主の審査が通り、契約が成立したときに「手付金」となるのが一般的です。契約成立前にキャンセルになった場合、仲介業者は「預り金」を返還しなければなりませんが、いったん契約が成立して手付金になれば、契約を解除しても返還されるとは限りません。

参考 賃貸借契約のためのちょっとアドバイス[手付金を支払うことは、契約することと同じ]


 ここからは、大阪府に寄せられた相談・処分事例を紹介しながら、賃貸借契約における預り金についての注意点を見ていきましょう。

事例1:法人とその社員(個人)が借主となる賃貸契約において、借主(法人)の意思確認をせずに借主(個人)から預り金を受領し、借主(個人)が申し込みを撤回したにもかかわらず預り金の返還を拒否した事例

(相談内容)

 法人(Y)とその社員(X)が共同で借主となる予定で、Xが個人的に入居申込みをした。その際、仲介業者に「部屋をおさえるために必要」と言われ、Xは預り金5万円を支払い、重要事項説明書の交付を受けた。その後、法人がこの賃貸契約を承諾しなかったためXはキャンセルを申し出たが、仲介業者が預り金を返還してくれない。

(事情等)

 府が仲介業者に事情を聴いたところ、「5万円は手付金なのでキャンセルの場合は返還しない。そのことはXに対し何度も説明した。」と述べた。(仲介業者がXに交付した預り証には、「手付金としてお預りしました」と記載されている。)(*1) 

 Yの契約意思を確認したかどうかについては、「XはYの社員なので、XがYの代理権を有していると認識していた。」と述べたが、委任状による代理権限の確認は行っていなかった。(*2) 

 Yに対し重要事項説明を行ったかどうかについては、「当社では、法人契約の重要事項説明は契約後に行うこととしている(*3)」と述べ、Yに対しては重要事項説明をまだ行っていなかった。

 なお、預り金は仲介業者が預かっている状態であり、貸主の手に渡っていなかった。(*4)

(結果)

 仲介業者は、宅地建物取引業法第47条の2第3項違反(預り金の返還拒否)及び取引の公正を害する行為(手付金と記載した預り証の交付)があったとして指導を受けた。

 なお、預り金については相談者に返還された。

この事例の問題点(宅建業者さん向けアドバイス)

*1)契約が成立していない時点で受領する金銭は「手付金」ではなく単なる「預り金」です。本事例のように、預り証に「手付金」と記載するのは不適切です。また、受領した預り金が契約成立時に手付金となり契約成立後に解約の申出があっても返還できないのであれば、仲介業者が預かり金を受領するときにその旨を説明する必要があります。口頭での説明では、言った言わないのトラブルになりかねませんので、預り証や重要事項説明書にその旨を記載しましょう。

 また、どの時点で契約が成立し、預り金が手付金に変わるのかということについても一般的にあまり知られていません。契約書に署名していなくても貸主の承認をもって契約が成立することや契約成立の見込み時期についても、借主に説明しましょう。

*2)賃貸借契約は貸主と借主の双方の意思が一致することにより成立しますが、本事例のように借主が複数の場合、一人の借主が意思表示しただけでは借主の意思表示として不十分です。また、意思表示を代理人が行うということであれば、仲介業者は、代理権限が委任されているかどうかをきちんと確認する必要があります。

*3)借主が複数の場合、一人の借主だけに重要事項説明を行っただけでは重要事項説明義務を果たしたとはいえません。契約が成立するまでにすべての借主に対し重要事項説明を行う必要があります。

*4)預り金は貸主の手に渡るべき金銭です。本事例のように、仲介業者が預り続けている状態は不適切です。また、契約成立までにキャンセルになった場合、仲介業者は預り金を借主に返還しなければなりません。これを拒んだ場合には、宅地建物取引業法第47条の2第3項に違反することになり、行政からの指導監督の対象となりますのでご注意ください。

 事例2 重要事項説明をせずに預り金を受領し、借主が申し込みを撤回したにもかかわらず預り金の返還を拒否した事例

 (相談内容)

 賃貸物件を気に入ったので、借りるつもりで仲介業者に4万円を支払った。その際、「領収書 金四万円 (物件名・号室)の手付金として」等と裏側に手書きした名刺をもらった(*1)が、重要事項説明は受けていない。その後、仲介業者にキャンセルを申し出たが、預り金を返還してくれない。

(事情等)

 府が仲介業者から事情を聞いたところ、重要事項説明をしていないことについて「借主が入居を急いでおり、重要事項説明を行う時間的余裕がなかった。契約までに重要事項説明を行うつもりだった。」と述べた。(*2)

 また、預り金を返還しなかったことについては、「後日、借主に返金するつもりだった」と述べた。なお、預り金は仲介業者が預かっている状態であり、貸主の手に渡っていなかった。(*3)

(結果)

 仲介業者は、宅地建物取引業法第47条の2第3項違反(預り金の返還拒否)として指導を受けた。

 なお、預り金については相談者に返還された。

 この事例の問題点(宅建業者さん向けアドバイス)

*1)契約が成立していない時点で受領する金銭は「手付金」ではなく単なる「預り金」です。また、「預り金」は仲介業者が領収するものではありませんので、仲介業者が預り金の受領に際し、「手付金」の「領収書」を交付することは不適切です。

*2)仲介業者は、必ず契約が成立するまでの間に借主に対して宅地建物取引士に重要事項説明をさせ、重要事項説明書を借主に交付しなければなりません。たとえ借主が入居を急いでいても重要事項説明の義務は当然免れませんし、宅地建物取引士がたまたま不在であっても同様です。

*3)預り金は貸主の手に渡るべき金銭です。本事例のように、仲介業者が預り続けている状態は不適切です。また、契約成立までにキャンセルになった場合、仲介業者は預り金を借主に返還しなければなりません。

仲介業者さんへ その取引に「預り金」は必要ですか? 仲介業者が「預り金」の返還を拒否するというトラブルは後を絶ちません。借主が「預り金」を支払うことを貸主が入居審査の条件としているような場合を除き、そもそも仲介業者は借主から「預り金」を預かるべきではありません。ましてや、契約の申込みがキャンセルとなった場合に、「預り金」を仲介業者が没収するようなことはもってのほかです。トラブルを避けるためにも、借主から「預り金」を預かるのは、貸主からの審査条件であるなど必要性がある場合に限定すべきです。それでもなお「預り金」を預かる必要がある場合には、借主に交付する預り証に、「契約の申込みが撤回された場合は、預り金の全額を返還する」旨を明記しましょう。


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このページの作成所属
住宅まちづくり部 建築振興課 宅建業指導グループ

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