高次脳機能障がい支援ハンドブック 第二編 福祉制度や種々のサービスについて

更新日:平成31年4月1日

第5章 就労支援

1.就労相談
2.新規就職支援、復職支援、就労定着支援
  ≪事例≫障がいを会社に伝えずに復職された方の支援
   ≪事例≫復職へ向けて 医療、地域活動支援センター、就労継続支援B型事業所、障害者就業・生活支援センターが連携した支援
  ≪事例≫新規就労に向けて就労移行支援事業所での支援について
  ≪事例≫自立訓練通所中から復職準備をし、会社との連携により安定して復職した事例

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就労支援フロー図

1.就労相談

 社会復帰の大きな目標として「働く」ということが挙げられる。しかし、「就職するにはどうしていけばいいのか?」「働きながらの生活ができるのか?」「復職するけども不安がある」など、就職活動や就労、または復職をされた時には様々な不安や疑問などが出てくる。そのような気持ちに寄り添い、相談ができる社会資源が地域にはある。 
 仕事を始める準備がどのくらいできているのか、出来ることは何かを整理し、その方に合った働き方や仕事を見つけるために、それらの社会資源はネットワーク機能を活かして「安心して働く・働き続ける」ために必要な支援を提供している。

 【就労に関する相談窓口】 
公共職業安定所(ハローワーク府内16か所) :求職者登録・職業相談・障がい者対象の就職面接会など
 障害者職業センター(府内2か所):職業相談・職業評価・職業準備支援・ジョブコーチ支援など
 障害者就業・生活支援センター(府内18か所):職業相談・就職支援・職場定着支援・生活に関する助言など
 市町村地域就労支援センター(府内61か所):職業相談・就職支援など

⇒連絡先などは『福祉のてびき(資料編)』に掲載

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2.新規就職支援、復帰支援、就労定着支援

元の仕事に戻る(復職)や新しい仕事に就くために必要な支援(訓練)などを一緒に考え、提供する機関がある。

障害者職業センター

【職業相談・職業評価】
 面談や職業能力・適性等の評価を通じて、就職や職場定着、職場復帰に向けた課題の整理を行い、就職や職場に適応するために必要な支援内容や支援方法等を含む個別の支援計画(職業リハビリテーション計画)を策定する。また、円滑な就職活動や適切な職業選択、職場で安定して働き続けることができるようになるための相談や助言等を行う。
【職業準備支援】
 職業リハビリテーション計画に基づき、センター内での作業や講座の受講を通して自己の特性について理解を深め、就職や復職に向けて必要な準備をしていただくための支援である。職業人としてのルール・マナー、作業遂行力、社会生活技能等の向上を支援し、企業への就職又は復職を目指す。
【ジョブコーチ支援】
 職業リハビリテーション計画及び事業主支援計画に基づき、障がい者が職場に定着し、また事業主が障がいの特性に応じた雇用管理ができるように、ジョブコーチが職場に出向き、職場適応や雇用管理面での課題の軽減や改善に向けた支援を行う。また、当該障がい者の家族に対しても職業生活の維持に関する家庭における協力等について、助言等を行う。
・ジョブコーチ支援は、一般的・抽象的なものではなく、対象障がい者がその仕事を遂行し、その職場に適応するため、具体的な目標と支援期間を定め、支援計画に基づいて実施されるものである。
・ジョブコーチ支援は、事業所の上司や同僚による支援(ナチュラルサポート)にスムーズに移行していくことを目指している。

障害者就業・生活支援センター

 就業支援員や生活支援員が「働き続けるためにどうしたらよいか」「採用されてもすぐに辞めてしまう」「自立して生活したい」などの悩みを持っている障がいのある方のため、就業面だけでなく生活面からも一体的に支援を行っている。 また、「採用するにはどうすれば良いか」「職場で不適応行動が出ている」「職場の人間関係が難しくなっている」など事業所からの相談にも応じている。 
【就労へ向けた相談】
 来所や家庭訪問等での相談や、就労準備として、センター内や協力事業所、関連施設等で基礎訓練や実習等を行う。 
【職場定着支援】
 就職してからも、安定した職業生活が送れるように必要に応じて職場や家庭などを訪問する。
【生活支援】
 働く上で、生活上の支援を必要とする方には、生活支援機関と協力しながら必要なサービスを提供する。

就労移行支援事業所(『3.就労移行支援』参照

 企業などへの一般就労を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じて適性にあった職場への就労が見込まれる65歳未満の人に対して、事業所内での作業訓練や、企業等での職場実習、就職後の職場定着支援などを行う。

<参考文献・参考資料>
 橋本圭司(監修)『なるほど高次脳機能障害 誰にもおきる見えない障害』朝日新聞厚生文化事業団
 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構ホームページ(外部サイト)

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障がいを会社に伝えずに復職された方の支援

  50歳代・男性
 症状記憶障がい・注意障がい・遂行機能障がい
 その他精神障がい者保健福祉手帳3級、運送会社勤務

 Jさんは運送会社で運転手をされており、休日に自宅で過ごされている時に倒れて発症しました。約6か月入院され、退院後は生活面・就労面の課題を整理し、訓練した上で復職を目指すために自立訓練施設(以下A施設)の生活訓練を利用されました。
 生活訓練中の様子としては、疲れやすさやメモを取る際の問題(聞き間違い・聞き落とし・誤字など)、見通しを持つことの困難さ、作業説明の時点では内容が理解出来ていても作業を始めようとするとその内容を忘れることなど、注意・記憶・遂行機能の面に課題が見られていました。そのため、認知面の向上と同時に、メモリーノートの活用(メモの取り方や参照の仕方についての訓練実施)(コラム『代償手段(外的補助手段)の代表例』参照)や事前準備を徹底すること(何をどうすれば良いか、誰に聞けば良いか等の確認)を中心的な目標としました。また、それらの課題があることを普段から意識してもらうようにお伝えしました。そして、約6か月の訓練終了後に復職されることとなりました。
 復職にあたって、「障がいがあると会社に言うと辞めないといけなくなる」「人目がつくので(支援者が)会社に出入りされると困る」という思いが強く、障がいをオープンにせず復職することを希望されていました。しかし、復職への不安はあったため、A施設より復職後の相談先として障害者就業・生活支援センターの情報提供を受け、家族・職員と一緒に相談に行かれました。相談時もやはり「障がいがあると伝えると仕事を続けられないのではないか」という思いが強く、結果、復職はクローズ(職場に障がいであるということを伝えない)でされました。しかし、その間も「周りの職員と上手くいくのか」「業務内容はどうなるのか」「苦手な業務が出てきたらどうすればいいのか」「自分の症状がどのような業務の時に支障がでそうなのか分からないという不安はある」ということも話されていました。そして、クローズで復職されているので、会社訪問などの支援は難しいが、「何かあれば相談をしよう」と感じた結果、障害者就業・生活支援センターに登録をされました。
 職場は病後の復帰であることや、Jさん自身が苦手になった点を一部伝えたことで一定の配慮は行ってくれており、現在は、簡単な車両の清掃業務で復帰されています。今後は業務内容の変更も考えられることから、Jさんと連絡を取りながら業務内容に変化がある時には、「業務を遂行するためにどんなことに気を付ければいいか」を相談しています。
*Jさんは会社の上司とは相談がしやすく、業務内容についてもJさんと相談をして決めていただいています。

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復職へ向けて 医療、地域活動支援センター、就労継続支援B型事業所、障害者就業・生活支援センターが連携した支援

  40歳代・男性
 症状記憶障がい・注意障がい・遂行機能障がい
 その他左半側空間無視、左下肢上肢機能障害(独歩可能)、精神障がい者保健福祉手帳2級、身体障がい者手帳3級

 Kさんは40歳代に営業の仕事中に脳出血で倒れ発症されました。
 復職希望で、3年間の休職期間がありました。復職へ向けて地域での生活が始まる前に、病院の作業療法士(巻末参照)と障害者就業・生活支援センターに相談に行ったところ、復職へ向けて「体力をつけること」「記憶障がいへの対応」が課題としてあがりました。まずは「体力をつける」ことを目標に、地域活動支援センターに週3回の通所を開始しました。道順が覚えられずに、家族と地域活動支援センターの職員が連絡を取りながら通所の支援を行いました。約1か月後には自力で通えるようになり、通所日も週5日に増えました(発症から約1年)。この頃からメモリーノート(コラム『代償手段(外的補助手段)の代表例』参照)の使用も始め「記憶障がいへの対応」に取り組みました。メモリーノートを「何か難しいもの」と捉えていたので、「自分が使い易いようにするもの」だと伝え、支援者と相談して自分に見やすく、記入しやすいものを作りました。 
 地域活動支援センターに通所して2か月経った時に、「もっと作業をしたい」と訴えがあったため、障害者就業・生活支援センターと相談し、さらに作業に取り組める作業所を探してもらい、作業所に週5日通所することとなりました。そこで、Kさん、家族、地域活動支援センター、作業所、病院、障害者就業・生活支援センターの担当者が集まりケース会議を行い、「作業能力の向上」と「メモリーノートをより実践的に利用する」訓練に取り組むこととなりました。時折「本当に復帰できるのか」と不安が強くなり、復帰への意欲が下がることもありましたが、都度ケース会議を行い、現状と目標の確認を行う中で意欲の維持に努めました。メモリーノートも定着し、作業所に通所して1年半ほど経過した時(発症から約3年)に会社に復帰をすることが決まりました。
 『正社員で営業』から『契約社員で事務補助』と雇用条件等の変化は大きかったのですが、「また正社員になれるように頑張るわ」と励まれています。現在は、障害者就業・生活支援センターが中心となり、会社や家族、医療機関と連携を取りながら就労定着支援を行っています。

(*作業所=就労継続支援B型事業所)

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新規就労に向けて就労移行支援事業所での支援について

  30歳代・男性
 症状記憶障がい・注意障がい・遂行機能障がい
 その他易疲労性

 Lさんは30歳代に脳出血(小脳出血)の診断を受けました。当時、営業職で勤めていましたが発症により退職しています。医療機関でリハビリを行った後、1年ほど在宅生活を送っていました。退院当初、Lさんは訓練の必要性はないと考えていましたが、生活をする中で訓練の必要性を感じ医療機関より紹介されていた自立訓練施設(以下A施設)へ通所することとなりました。A施設利用時、障がい者枠での就労を希望していました。A施設での訓練が概ね進んだところで、就労移行支援事業所(以下B事業所)を見学しました。週5日の通所の生活リズムに対応していくため、A施設とB事業所を並行して利用しました。A施設で高次脳機能障がいに対する代償手段の獲得と同時に自己認識を深めていく訓練を実施し、B事業所へスムーズに移行していきました。
 B事業所では、代償手段に対する訓練を継続的に行い、自己の気づきを深め、利用開始3か月後に企業実習に挑戦。実習では易疲労性を考慮し、短時間からフルタイムと就労時間を増やしていき耐久性を確認しました。企業評価ではコミュニケーション能力があること、脳疲労に対する対策を行うこと、障がいをオープンにして働くことで就労は可能との評価を得ました。その後、疲労性や注意障がいに対する訓練を行い、就労へのステップアップとして契約期間が定められた職場(C社)へと就職しました。
 C社では週4日勤務(10時から16時)で入力業務に従事しました。疲労に対する対処として1時間に5分程度の休憩を取り対応しましたが、就労2か月目より疲労感が顕著に出現してきました。契約期間満了により退社となりましたが、入力ミスも見受けられたことからB事業所で訓練を再度おこないました。
 Lさんの希望職種は事務職のため、再度企業実習で職種の見極めを行いました。入力ミスに対して様々な工夫や努力をしましたが、身体で覚える業務の方が適しているのではないかとLさん自身も気づきました。
 職種の方向転換をおこない再訓練から3か月後、D社で梱包作業の雇用が決まりました。業務内容が複雑だったためジョブコーチ支援を受けて就労しました。就職して2年経過しますが、疲労度も軽減し自分の時間を持てるようになってきたこと、長く勤められるようにしたいと話されています。

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自立訓練通所中から復職準備をし、会社との連携により安定して復職した事例

  40歳代・男性
 症状記憶障がい
 その他

 家庭機器メーカー開発部門の管理職のMさんは、40歳代で脳梗塞を発症し救急病院へ搬送され、身体障がいは残らなかったものの、聞いたことが覚えられないなどの記憶障がいが残りました。病前とは何か違う、特に人の話を覚えられないことに気付いていましたが、人一倍責任感が強いMさんは、入院中に低下した体力を取り戻して一日でも早く復職したいと焦っていました。
 リハビリテーション病院からの紹介で自立訓練施設に通い始めた当初は「自分にリハビリは必要なのか?」と障がい受容に苦労したこともありましたが、スポーツや認知リハビリを通して徐々に自分の障がいと向き合うことができ、精神状態も安定していきました。
 復職に向けた検討を始めた頃会社より「復職は完全な状態で戻ってきて欲しい。そのためにリハビリ計画を立てたい。」と話があり、自立訓練施設の職員が所属部署や人事担当の方へ障がい説明を行い、その後のリハビリ勤務計画の立案などを連携して行いました。その間、病気休職の手続きなどについても支援コーディネーター(巻末参照)が家族、医療機関間の調整など支援を行い、Mさんの周囲全てが十分なリハビリを経て復職するための長期に渡る計画的プログラムを行う体制ができました。
 Mさんは発症後4か月目には休職期間中のリハビリ出勤を開始し、2か月間のリハビリ出勤後、時間短縮勤務、発症後7か月を経て、残業禁止のフルタイム勤務を行うまでになりました。リハビリ勤務期間中には、障がい特性から社内連絡を電話と併せてメールを多用することの提案や、他部署会議への模擬的出席の中で議事録を取る練習などを行いました。自立訓練施設では、会社訪問や週1回の定期面談を設け業務ノートやスケジュール帳の書き方指導などフォローアップを行いました。現在では、残業も一部解禁となり本来の管理職としての職責を果たせるようになりました。しかし、業務が忙しくなると気分の落ち込みもみられるため、完全復職後も発症後1年間は、月1回の状況報告を兼ねたカウンセリングやストレスチェックの心理テストなどを会社承認のもと実施しています。

パソコンで仕事をしている絵

このページの作成所属
福祉部 障がい者自立相談支援センター 身体障がい者支援課

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