(と き)平成28年12月12日月曜日 午前10時から12時
(ところ)大阪府庁 新別館南館8階 大研修室
(議事)
1.大阪府の在日外国人施策について
2.基調報告「大阪府における『外国人の人権』の現状と課題」
報告者 大阪産業大学教養部教授 佐藤 潤一 委員
(出席委員)10名
河合 大輔(公益財団法人箕面市国際交流協会 事業課長)
佐藤 潤一(大阪産業大学教養部教授)
斎藤 ネリーサ(フィリピンコミュニティ連絡会 アドバイザー)
トラン ティ アン ホン(ベトナム語通訳)
中井 伊都子(甲南大学法学部教授)
野中 モニカ(天理大学国際学部准教授・ポルトガル語通訳案内士)
朴 君愛(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター 上席研究員)
ペエ 薫(弁護士)*ペエは、亠に裴の亠を取る
彭 飛(京都外国語大学外国語学部教授)
山ノ内 裕子(関西大学文学部教授)
(欠席委員)0名
(配付資料)
資料1-1 「大阪府在日外国人施策の実施状況(平成28年度版)」
・表紙 [Wordファイル/33KB]
・目次 [Wordファイル/47KB]
・関連施策一覧 [Wordファイル/163KB]
・資料1「大阪府の国籍別在留外国人数」 [Excelファイル/18KB]
・資料2「大阪府の市町村別在留外国人数」 [Excelファイル/15KB]
・資料3「大阪府の国籍別在留外国人数の推移」 [Excelファイル/21KB]
・資料4「全国の国籍別在留外国人数及び割合」、資料5「全国の国籍別在留外国人数の推移」 [Excelファイル/29KB]
・資料6「大阪府外国人相談コーナー実績集計」 [Excelファイル/14KB]
資料1-2 「大阪府における在日外国人施策の体系」 [Excelファイル/47KB]
資料1-3-1「朴委員からの質問及び回答(1)」 [Wordファイル/22KB]
資料1-3-2「朴委員からの質問及び回答(2)」 [Wordファイル/21KB]
資料1-3-3「河合委員からの質問及び回答(1)」 [Wordファイル/22KB]
資料1-3-3-1「(別紙1、2)平成27年度中国帰国生選抜及び帰国生選抜」 [Excelファイル/25KB]
資料1-3-3-2「(別紙3)「日本語指導が必要な帰国生徒等に対する配慮」を受けて合格した生徒数」 [Wordファイル/19KB]
資料2「大阪府における『外国人の人権』の現状と課題」 [Wordファイル/39KB]
参考資料1 「庁内出席所属一覧」 [Wordファイル/17KB]
(会議概要)
1.開会
2.人権局長挨拶
3.議事
(1)大阪府の在日外国人施策について
【主な発言内容】<●…委員(座長含む)、○…大阪府(事務局及び関係所属)>
○ 大阪府における在日外国人施策の体系について説明(資料1-2のとおり)
● 朴委員から質問の趣旨について説明(資料1-3-1のとおり)
○ 府民文化部男女参画・府民協働課から回答(同上)
● 朴委員から質問の趣旨について説明(資料1-3-2のとおり)
○ 教育庁教育振興室高等学校課及び市町村教育室小中学校課から回答(同上)
●男女共同参画事業について、直近の平成26年度府民意識調査報告書を見たが、対象者が選挙人名簿から抽出されており、日本国籍の方だけが対象になっている。「おおさか男女共同参画プラン」の基本方針の一つに「多文化共生をめざす」ということが書かれているのに、なぜ在日外国人が調査の対象にならなかったのか。5年前の調査では、選挙人名簿に加え、外国人登録名簿からも調査対象を抽出し、外国人住民の人口比率を考慮した調査をしていたので、後退しているように思う。
街頭では少し減ったが、ネット上での在日コリアンに対するヘイトスピーチは依然相当多く、それを見た児童・生徒が教室で真似をするという事実も聞いている。在日コリアンの児童・生徒の本名で通学する比率がかなり低い現状があるが、このような状況を放置すると、「本名で頑張れ」と言っても頑張ることができなくなる。こうした教育活動にも積極的に取り組んでいただきたい。
女性は一様ではなく、様々な立場の女性がいる。社会の中で不利益や差別を受けるマイノリティ女性―例えば、外国の国籍を持つ女性―の存在はこれまでなかなか見えなかった。当事者たちの声を聞く機会を設けることや、住民たちの理解が進むような取組をするなど、マイノリティ女性の見える化を進めていただきたい。
●国際結婚をして関西で暮らす女性の日本語教室について、池田市や豊中市、箕面市等ではボランティアの日本語教室があるが、大阪府ではこうした教室等への支援体制はどうなっているのか。学校での日本語の支援だけでなく、地域における日本語教育支援の課題についても調査していただきたい。
○男女共同参画プランを作るに当たって、5年に1度府民意識調査を行っており、今回は平成26年度に行っている。平成21年度までは、選挙人登録名簿から2,000名を無作為抽出し調査を行っていた。併せて外国人登録名簿からも同様に抽出し調査を行っていた。ただ、平成24年度に外国人登録制度が廃止されたため、平成26年度の調査では、民間のインターネットリサーチ会社に依頼し、府内在住の外国人を対象とした意識調査を行った。
●平成26年は、外国人登録制度から住民基本台帳制度への移行が終わっており、同時期に実施された他府県の調査では、住民基本台帳から対象を抽出している。そうした方法を考えなかったのか。
○住民基本台帳の利用については、当時の事実確認ができていない。
●外国人への調査は日本人と同じ調査を行ったのか。
○質問内容は同様で、府内在住の外国人に対し、別途インターネット上での調査を行った。
●外国籍住民の抽出は、どのようにして行ったのか。
○リサーチ会社に登録されている外国人を、地域偏在を考慮した上で府内全域から抽出した。
○河合委員から質問の趣旨について説明(資料1-3-3のとおり)
●教育庁教育振興室高等学校課から回答(同上)
(2)基調報告「大阪府における「外国人の人権」の現状と課題」
報告者 大阪産業大学 佐藤 潤一 委員
・外国人の人権に対するアプローチをするとき、形式的・一般論的に法律や憲法、国際人権保障の条約に書いてあることはもちろん大事だが、多文化共生という考え方をどのように浸透させていくのか、教育の中で保障していくのかが非常に重要。
・多文化共生は、お互いに相手のことを知りましょうといった段階で留まらず、相手を理解する、本当の意味で共生することが自然にできるようになって初めて意味がある。そのような理解を進めるには、母語が日本語ではない方に対する言語の教育保障が必要。日本社会、また大阪府の中で過ごしていくときに、広い意味での日本語教育をどれだけ保障していくことができるのかということは、非常に重要な視点。小・中・高あるいは大学において、児童・生徒あるいは学生に対して行うことは重要なことだが、現実の問題として、特に近年は、児童・生徒の親が、家庭において日本語を母語としていないことがあり、そういった場合の言語教育保障が重要。
・こうした言語の保障、あるいは言語の背後にある文化の理解ということに対して、従来行ってきた啓蒙というものが不十分だったのではないかということが問題となりつつあるのが、ヘイトスピーチの問題だと思われる。
・2010年4月から2011年3月まで家族同伴でオーストラリアへ在外研究に行き、娘2人を現地の学校に入学させた。ヘイトスピーチ規制を研究することが目的ではなかったが、結果としてこの問題を色々と考えるきっかけとなった。現地校であるため、入学当初はなかなか溶け込めなかったが、現地の学校では選択で学べる外国語として日本語が設定されており、「あなたは日本語ができるね」という形でフォローされた。特に小学校低学年の児童・生徒には、非常に自信につながる。
・日本でも先進的な高校や自由な小学校ではやっているかもしれないが、英語だけではなく、韓国語や中国語など他の言語を外国語選択科目として、生徒に自分の母語で発表等をさせると、「外国語が出来てすごい」ということで、生徒に自信を持たせることができる。これは彼らにとって非常に良い。
・このような経験からオーストラリアの人権保障状況について論文にまとめたが、それをきっかけに国際人権法学会でオーストラリアのヘイトスピーチ規制についての報告を依頼され、研究を始めた。
・ヘイトスピーチについて、大規模なデモ行進で反対(カウンター)するのを何度も目撃した。クイーンズランドでは1年で7回くらい、メルボルンでは2週間で3回デモに直面したが、ヘイトスピーチを推進するような団体は、ヘイトスピーチを行おうとすると、直ちに捕まって表を歩けない状態が普通。
・諸外国を調べた限りでは、日本は残念ながら悪い意味で例外。ヘイトスピーチに関して罰則を伴わない法律がようやくできたが、自由民主主義の国の中で、ここまで規制が少ない国は日本だけといっても良い。
・以前は、フランスやアメリカなどでは表現の自由が重視され、ヘイトスピーチがあまり規制されないと言われていたが、必ずしもそうではない。アメリカでは「ヘイトクライム」という形で認識されている。例えば日本でいう名誉毀損罪や侮辱罪の問題では、過度の罵詈雑言・侮辱はスピーチではなく、初めから「クライム」と見なされることが通常である。
・ヨーロッパでは原則、刑事罰で対応をしている国が多い。フランスは原則論が根強いところだが、民事の損害賠償は比較的認められている。イギリスやブリティッシュ・コモンウェルス(英連邦)では民事賠償の併用が非常に強い。
・オーストラリアには、連邦の人権委員会がシドニーに置かれており、国家規模で啓蒙活動を実施している。ヘイトスピーチについての啓蒙スピーチを行うだけではなく、ホームページから音声データ等を入手できるようにしている。人口が少ないが、領域海外領を含めると非常に広く、多くの人種がいるために啓蒙が盛んだと考えられる。
・オーストラリアでは、州によって刑事規制だけ行っているところ、刑事規制と民事規制の両方を行っているところ、損害賠償のみのところに分かれている。もともと差別の激しかったタスマニアは民事規制。その他のところの対応は様々である。
・オーストラリアには、「人権及び機会均等委員会法」があり、特にヘイトスピーチなど人種差別の禁止事項に違反をすると、最高で自然人は1,000ドル、法人は5,000ドルの罰金が科される。法人にとっては安すぎるという批判が強いが、自然人にとって1,000ドルは決して安くなく、それなりに意義のある制度である(ただしこの制度については刑事規制であるという捉え方以外に、実質的に行政罰に過ぎないという批判もある)。
・先ほどの大阪府(教育庁)の回答にもあったとおり、日本語の問題を抱える児童・生徒を担当する非常勤の講師などの加配等については、少しずつ進んでいると思う。オーストラリアの場合は、州レベルでも(基礎)自治体レベルでも法律(条例)はほとんどないが、政策決定に基づいて予算の確保が可能。ただ、オーストラリアの手法は臨機応変に対応できるが、トップが変わると政策が大きく変わる。日本の自治体においては、条例である程度の枠組みを作っていくことが必要と考えるが、現状では条例も規則も不十分なところがある。
・日本の場合、オーストラリアとは異なり、DV(ドメスティック・バイオレンス)、女性差別、労働差別等についての法律は充実しつつあるが、人種差別の禁止について法律は不十分で、罰則を設けることはかなり難しいと考えられる。
・オーストラリアは、コモン・ロー(慣習法、判例法)の伝統から人権教育・啓蒙が充実している。公教育の中で人権教育自体が独立した科目として教科書のような冊子が作られ、中学・高校でもその冊子を活用した教育を絶対に行わなければいけない。このように人権保障を十分に啓蒙しているので、憲法を改正してまで人権について規定することについても、必要がないかもしれない。
・州レベルの人権法の中には、先住民の末裔であるビクトリア州のアボリジニの人々やトレス海峡諸島等についても記載がある。それに比べて日本の場合は、法律や条例での対応は難しいのが現状。
・しかし、(地方自治体が)できることはあるはず。特に外国籍住民の多い大阪府が実施すべきことは、他の地域と比べて必要な対応が何かということを、条例あるいは規則で対応していくことだろう。
・多文化共生や多文化主義の問題、ヘイトスピーチ解消の問題は、すべて言語の問題であり、単一の施策を実施してもあまり意味はない。このような問題への対応が十分か不十分かについて、他国での取組を参考にしつつ、CSRの観点からの人権促進が、府で容易に取り組める1つだと思われる。最近では国際人権法の領域においても、会社・企業における人権推進がかなり強く進められている状況。
・例えば、課外教育活動を推進するための研修を行うこと、また、児童・生徒の親を抱える企業等の人権推進活動をどのように進めていくのかについては、研修をするだけではなく、研修をしている企業に対して褒賞制度等を推奨すること。これはすぐにでも取り組むことができる。
・実際に条例や規則で何ができるのかということについて、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」の中では、努力義務ではあるが、「地域の実情に応じた施策を講ずるように努める」と地方自治体の責務について書かれているので、枠組条例でも構わないので、少なくとも予算措置できるための条例が重要。
・罰則を設けることについては、国の法律がある以上、自治体の取組として許される罰則がどこまで可能かどうかは、現在、各自治体が国に方針を問い合わせて、返答を待っている段階だと思う。今は企業に対してインセンティブを与えること、褒賞、支援の仕組み、あるいは入札の取り決めの際に、人種差別の撤廃に対する取組の実施状況をある程度点数化するなどして条件にするといったことが必要。
・条例による取組が難しいのであれば、知事・首長の規則を制定することによって、このような褒賞を推進することも、一つの方針として考えられるのではないか。
【質疑応答等】<●…委員(座長含む)、○…大阪府(事務局及び関係所属)>
●前回も少し申し上げたが、どうしても外国人施策を推進していく主体と客体というスタンスを強く感じる。このスタンスのままでは相互理解も難しいし、ヘイトスピーチも無くなりにくいと思う。
2つ検討していただきたいことがあるが、まず、大阪府での外国人職員の採用を真剣に考えていただきたい。留学生はたくさんおり、既に企業等は相当数の外国人を採用している。それなりの能力と視点でもって、行政においても十分活躍していただけると思う。大阪府にどのくらいの外国人職員が採用されているかが、一つのメルクマールになるのではないか。
もう1つは、外国人の抱える様々な問題は、その外国人自身が抱える問題でもあるが、外国人と日本人との関係の問題でもあるので、日本人側でも勉強していかなければならないところもある。歴史認識という大げさな言葉ではなく、なぜ、その外国人が大阪に住むことになったのかを、事実をそのまま教えなければ、根本的な解決はない。小学校が適切なのか中学校が適切なのか、意見が分かれるかもしれないが、子どもたちや教員への教育を推進していただきたい。
●大阪市のヘイトスピーチ条例について、今年の7月に審査会も立ち上がって、具体的に動き出しているが、どのような形で審査会が動き、どのような申し立てを行うかは、半年が経ったところで、一度総括して検討しないといけないと思っている。一方で、府内の2、3の市町村からヘイトスピーチ条例の制定について相談がある。このように各自治体が、それぞれ抱える特殊な問題に対して、ピンポイントで条例を作っても何もできない。例えば、大阪市として定義を作り「それはいけないことだ。なぜならそれはヘイトスピーチだからだ」ということを表明し、インターネット等に出していくというような形しかできない。それでも自治体が個別に動いていこうとする中で、大阪府が自治体に対して何か支援を行う。それがインセンティブであっても規制であっても、それを後押しをすることで、ヘイトスピーチ問題に取り組む大阪全体としての一体感を作ることができるのではないか。このまま個別の自治体の動きを国に任せていくというのはどうかと思うので、一度ご検討をいただきたい。
○委員からのご意見は、府が把握している状況と異なる。ヘイトスピーチ解消法の施行を受けて、府内市町村に対して(解消法制定後に)ヘイトスピーチが行われているかどうか確認したところ、大阪市以外の一部の市で、法制定前に行われたとの報告があったが、ヘイトスピーチかどうか疑わしいとのことだった。また、個人が(ゲリラ的に)ヘイトスピーチかどうか分からない形でやっているところもあるが、具体的な事例は聞いていない。
また、条例を具体的に検討しているかどうかについても確認したが、該当は無かった。仰るとおり、例えば10の市町村で条例を制定して、大阪府が放っておくのはどうかと思うが、委員のところに、(市町村条例の)情報はあるのか。
●私が審議会の議長を務めている自治体で、そのような話が出ている。
○ヘイトスピーチの規制については、表現の自由の問題があるので、国に対して法律で対応することを要望し、ようやく法が制定されたところだが、いわゆる理念法である。大阪府で罰則を科すような、あるいは大阪市の条例に類するものを作ることができるかどうかについて、法律の運用状況が明らかに伝わってこないため難しい。地方公共団体の努力義務も規定されているが、法律の制定過程で、我々に一切情報提供も相談もなく、法律施行後に説明会が1回あったのみ。法の運用や地方公共団体に何を求めるのかというのが判然としないため、もう少し状況を見定めないと次のステップに進みにくい。
●大阪市の条例のような定義を定めて、これがヘイトスピーチだからどうというのではなく、むしろ佐藤委員が報告されたような、企業に対するインセンティブや市町村の傘となって支援するものであれば良いと思って発言したもの。
●佐藤委員の報告を受けて、日本はボランティアに依存しすぎていると思う。例えば、定住外国人への日本語支援は、ほとんどボランティアが担っている。医療サービスでもボランティアの医療通訳に依存しているが、高度な通訳である医療通訳をボランティアに任せるのはいかがなものか。また、これからインバウンドが増えていく中、観光サービスをボランティアガイドに任せることも懸念するところ。大阪府として医療通訳や日本語支援をボランティアに頼ることがスタンダードになってしまいがちだと思うので、その依存からの脱却が課題。
●ボランティアへの依存と非常勤職員への依存という問題について、過去に見聞きした限りでは、イギリスやオーストラリアでは、非常勤職員の手当が日本に比べると桁違いに多い。例えば非常勤で通訳に従事する人や、学校で外国籍児童に対して通訳の補助をする非常勤職員は、週に3回くらいの勤務で月15万円ほどが支給される。
予算的に充分な手当があるか、あるいはボランティアや非常勤職員であれば、その活動に対してプロフェッショナルとして評価しないと人も集まらない。やはり枠組みとしての条例が必要だが、とにかく予算がない。
例えば、人種差別についても女性差別に対する取組についても、予算がないと実際に人が集まらないと言い切ってもいい。非常勤の先生が歴史を知らない問題については、歴史と人権教育を合体させた冊子等を大阪府でも作っていいと思う。例えば神奈川県等のように、冊子を作ったら履修しなければいけないというようなことが大事。また、子どもだけではなく保護者等にも研修する機会を設けることは大事なので、そのような取組を推進していただきたい。
●多文化共生について、日本では多文化共生を進めることにより、新しいものを生み出すという発想がない。私が所属する大学は外国語大学なので、高校、中学も含めて様々な国際科を設置しているが、外国人と交流をしたい、視野を広げたいと希望している学生が多数在籍しているので、多くの国際人を育成していきたい。
関西には外国籍あるいは元外国籍の優秀な人材が多数いる。日本人は彼らをどのように活かすのかを真剣に考えていない。こうした人材を取り入れながら、経済の活性化につなげることも有識者会議で提言いただきたい。
●私たちフィリピン人は、日本で多くの課題を抱えているが、フィリピン人のネットワークがないため、日本、特に関西で課題を訴えることが困難。
例えば、多くのフィリピン人の子供達は学校で差別を経験している。特に日本人は、フィリピン人は「エンターテイナー」という固定観念を持っている。かつて私の子供達も学校でいじめを受けていたため、本名を名乗らずクリスチャンネームを使うことによって、いじめを免れることができた。
今年から来年にかけて、日本に在住するフィリピン人の子供達の課題について調査することを考えている。私たちの子供達が、「エンターテイナー」という固定観念に起因する差別の被害者であることを日本に訴えたい。
●佐藤委員の報告にあった企業のCSRの視点からの人権の促進に関連して、資料1-1の「大阪府在日外国人施策の実施状況」を見ると、例えばファミリーレストランと連携した啓発ステッカーのほか、京セラドームで配布するオリックス・バファローズのオフィシャルマガジンやJR大阪駅の電子看板におけるヘイトスピーチ解消に向けた啓発広告の掲出等がある。しかし、ただ「やりました」ではなく、府民を強く引きつける魅力のあるものができればと思う。広告代理店など専門家の手を借りることも手法の一つ。企業と連携して啓発に進めると予算の削減にもなり、よいのではないか。
●インターネット等から発信されている乱暴な情報が、「日本は今、外国人を受け入れない」というメッセージとして外国人に受け止められていることも聞いている。各(基礎)自治体、大阪府、国レベルでの取組において、「そうではない」ということ、「どのような社会を作っていきたいのか」というメッセージを、それぞれの施策ではっきり示していただきたい。
例えば、職場や学校における人種差別的な対応の問題があるが、ヘイトスピーチやヘイトクライムについて、オーストラリアの人権委員会では被害を受けた個人を支援する仕組みとして、個人からの訴えに基づいて、調停委員会で個別の事案について当事者を呼んで解決していくシステムを持っている。日本の司法制度等の中でも類似した制度があるかもしれないが、現実にはなかなか当事者が訴えることが難しい現状にある。このような制度についても、議論いただきたい。
●インターネットの問題について、これは人種差別の解消だけの問題ではなく、TwitterやInstagram等のネットサービスが持つ弊害である。この間、大学生がインターネットに投稿をして損害賠償を命じられた報道があったが、この問題について、学校教育の中で児童・生徒に対してどの程度取り組んでいるのか伺いたい。
インターネットのシステム自体を理解していない保護者もおり、家庭だけの問題とは言えない。インターネットの問題は、言い換えると使い方の問題なので、リテラシー教育を推進しないといけないのではないか。教育庁で取組があれば教えていただきたい。
○子どもたちのコミュニケーションの取り方に関しては、人権教育の他に様々な授業の中でのグループワークやテーマ学習においても、伝え方や聞き取り方を活発に学ぶことができるスタイルでの授業に取り組んでいる。
携帯電話等の情報端末の活用方法についても、主に市町村の担当者が、教職員への研修も含めて様々な啓発資料を使って指導している。また、各学校のPTAが主催する研修会において、保護者と一緒に子どもたちへの研修も実施されている。
インターネット情報の問題で、子どもたちが被害者になった場合は、大阪府警とも連携を取り、子どもの安全を保障していきながら、子どもたちに情報をどのように伝えていくのかについて学習を進めているところ。
●斎藤委員の話を聞いて、先ほど回答のあったインターネット調査会社を利用した意識調査も現代のネット時代に即したものかもしれないが、当事者による調査は非常に大切だと感じた。「当事者がそこに参加する」という観点から考えると、フィリピンのコミュニティだけではなく、今後様々なコミュニティでの調査が必要になる。何事にも当事者が参加し、意見を表明することは大事。
●大学でもネイティブで、調査に関して造詣が深い先生がおられるので、研究費をいただいた上で、対面調査やアンケート調査をできればと思う。この調査を叩き台として、大阪府でも定期的に外国籍住民を調査してほしい。例えば5年に1度でも、小規模でよいので実態把握をするのが大事。特にベトナム人が急増しているが、どのような問題を抱えているかを調査したほうがよいのではないか。
市町村の日本語教室の一部では人材が不足している。こうした現状の調査についても早く整備していただきたい。
また、大阪でいかに外国人関係の明るい話題を作れるか。例えば、鶴橋界隈で、旧正月等を利用し、在日韓国人や中国人等の外国籍住民や、彼らをバックアップするような団体を招待し、座談会を開くようなことができればと思う。
留学や仕事等で日本を訪れる外国人は年々増加しているが、施設の利用や観光地でのトラブル、災害・緊急時の安全の確保など課題は多様化している。この有識者会議の運営を抜本的に変える時期が来ているのではないか。人権を中心に、観光、教育、安全について、また、外国籍あるいは元外国籍住民の力を経済に活かすこと等、多様化する外国人課題に対応できるような会議にできるよう、検討していただきたい。
●男女共同参画社会に関する府民意識調査について、外国人住民を対象とした調査も行ったと回答があったが、ホームページには日本国籍の住民を対象とした調査結果しか掲載されておらず、外国人住民としては排除されたとしか思えなかった。なぜそうなったのかについて検証し、不十分だったところは認めていただき、今後良い形で変わっていくようにお願いしたい。また、実態調査においては、ジェンダーの視点も含めた統計を検討していただきたい。
以上
このページの作成所属
府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画グループ
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