人権学習シリーズ あたりまえの根っこ あなたが大切にする 人としての中心軸は?/資料3「同和問題のこと」

更新日:2016年2月15日

「あなたが大切にする 人としての中心軸は?」(めやす90分)

資料3「同和問題のこと」

同和問題とこれまでの取り組み
 明治時代になって、封建社会の身分制度は廃止されました。しかし、武士、農民、町人とは別の身分とされていた人たちが居住した地域の出身・在住であることだけを理由に、現在でも嫌われたり、避けられたりするという問題が続いています。これが同和問題で、日本だけにある人権問題です。
 身分制度が廃止されたとき、十分な対策がとられなかったため、その後も差別意識が残されました。
 1965(昭和40)年に出された国の同和対策審議会の答申は、同和問題を居住権や教育権などの基本的人権が保障されていない問題であると示しました。
 この答申を受けて、財政上の特別措置を講じるための法律が定められ、地域の住宅や道路など著しく劣っていた生活環境を改善する事業等が、1969(昭和44)年から2002(平成14)年までの33年間にわたり実施されてきた結果、かつての同和地区の状況は大幅に改善されました。

同和問題の現状
 2010(平成22)年度に実施した「人権問題に関する府民意識調査」によると、同和地区や同和地区の人に対する差別意識が今も残っているかどうかについて、53.5%の人が「差別意識は薄まりつつあるが、まだ残っている」と考えており、「差別意識はいまもあまり変わらず残っている」、「差別意識はさらに強くなっている」とあわせると、67.0%の人が差別意識はいまも残っていると考えています。
 また、住宅を選ぶ際に、避けると思うまたはどちらかといえば避けると思うと回答した人は、「同和地区の地域内」が55.0%、「小学校区が同和地区と同じ区域内」が42.9%となるなど、差別意識の解消が十分に進んでいないことも明らかになりました。
 同和問題を解決するためには、わたしたち一人ひとりが自分自身の問題として考えていくこと、すなわち、まわりに合わせて自らの態度を決めるのではなく、同和問題を十分理解し、生まれた場所や住んでいる場所を理由にした差別を許さないという考えを、自らの行動に結び付けていくことが必要です。

大阪府では
 財政上の特別措置を講じるための法律が失効した2002(平成14)年度からは、2001(平成13)年の大阪府同和対策審議会答申に基づき、「部落差別を解消し、すべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現をめざして、周辺地域と一体となったコミュニティの形成を図る」ことを基本目標とし、特別措置としての同和対策事業は終了し、一般施策により同和問題の解決に取り組むとともに、2008(平成20)年の大阪府同和問題解決推進審議会の提言を踏まえ、府民の信頼と理解のもとで、同和問題解決に向けた効果的な取組みを推進しているところです。

部落差別調査の規制
 1975(昭和50)年以降、同和地区の名称や所在地、戸数、主な職業などを記載した書籍「部落地名総鑑」が売買され、結婚などの身元調査用に興信所で使用されたり、就職者の身元調査用に企業などが購入したりする事件が発覚し、大きな社会問題になりました。
 これを契機に、大阪府では、1985(昭和60)年に「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」を定め、興信所・探偵社業者に対して法的規制を行うこととなりました。
 この条例は、同和地区に居住していることや過去に居住していたことなどを理由として結婚に反対したり、婚約を破棄したりする結婚差別や採用試験において不利な取扱いをしたり、採用しなかったりする就職差別等の発生を防止し、府民の基本的人権の擁護に資することを目的としています。条例では、
○府民は、部落差別を引き起こすおそれのある調査の依頼等をしない
○興信所・探偵社業者は、部落差別につながる調査や報告等を行わない
○大阪府は、国・市町村と協力して、条例の目的達成のために必要な啓発をする

と、府民、興信所・探偵社業者及び大阪府それぞれの役割を定めています。
 しかしながら、2007(平成19)年、府内のリサーチ会社が同和地区の所在地等を調査・報告している事実が判明しました。このような差別につながる土地調査を防止するため、これまでの興信所・探偵社業者に加え、新たに「土地調査等」を行う者を規制の対象とし、2011(平成23)年に条例を一部改正しました(同年10月1日施行)。
○「土地調査等(府の区域内の土地の取引に関連して自己の営業のために土地に関する事項を調査し、又は報告)」を行う者は部落差別につながる土地調査や報告等を行わない
などの規定を追加し、違反した場合は、知事が勧告や事実の公表ができることとしています。

戸籍謄本等不正入手・身元調査事件への対応
 2005(平成17)年以降、戸籍謄本等の不正入手事件が次々と明らかになりました。また、部落地名総鑑が大阪市内の興信所において発見されるなど、不正入手された戸籍謄本等が差別身元調査に使用されているのではないかと危惧されるような状況が生じています。
 大阪府では、こうした状況を踏まえ、2006(平成18)年3月に「大阪府戸籍謄本等不正入手・身元調査事件対策本部」を設置し、事件の真相究明並びに再発防止策等の取組みを行っています。
 また、2009(平成21)年度より戸籍謄本等を第三者が取得した場合に、事前登録した本人に交付事実を通知する本人通知制度の導入が府内市町村で進んでおり、2012(平成24)年8月末日現在、府内36市町村で導入されています。
 この制度の導入により、委任状の偽造などによる住民票等の不正取得の早期発見につながり、個人情報の不正利用防止や事実関係の究明の一助になります。また、本人に交付事実を通知することで不正請求が発覚する可能性があるため、不正請求自体を抑止する効果も期待されます。

本人通知制度の主な流れ

人権情報ガイド「ゆまにてなにわ」vol .27より


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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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