人権学習シリーズ みえない力 参加体験型学習(ワークショップ)を進めるために/4.プログラムを進めるにあたっての心がけ

更新日:平成28年2月12日

参加体験型学習(ワークショップ)を進めるために

4.プログラムを進めるにあたっての心がけ

(1)安心してチャレンジできる場づくり
 参加者が自分の意見を出したり、活動したりしやすくするためには、参加者が「この場では自分を出していいんだ」と思えるように「安全」な環境をつくることが重要です。
 環境づくりの一つとして、学習をしていく際のルールを決めることが有効です。参加者から提案してもらいながらつくる、といったようにアクティビティとしてプログラムに組み入れる方法もありますし、ファシリテーターが提案して承認をもらう方法もあります。
 また、学習の見通しを伝えたり、参加者どうしが知り合う機会を設けるなども必要です。
 
(2)時には適度な葛藤も
 一人ひとりを尊重することは大事ですが、学習が「癒しの場」だけで終わっては、学びを社会における実際の行動へとつなげることにはなりません。参加者が、相手と自分との違いを見つけたり、それを主張する場合、時には居心地の悪さや不安を感じるかもしれません。しかし、現実の生活で問題を解決しようとすると、「受容」だけなく、「対立」と向き合う姿勢とスキルがないと問題は解決しません。
 ファシリテーターは、場の安全確保を前提に、目標に向けて適切な課題=ハードルを設定し、ハードルをクリアしようとする試みを促し、ともに学びをつくり出すことこそが大切なのです。
 
(3)「正しい」答えよりプロセスを大切に
 人権問題についてさまざまな状況がある現実の中では、学習によってすぐ答えがみつかるとは限りません。また参加体験型学習は、一つしかない正解を知る場ではありません。明確な答えをみつけられなくても、それを一緒に考えて取り組んだ経過(プロセス)や、その過程で自分をみつめる時間が大切なのです。
 学習の答えは、参加した人の数だけあります。そこで出された多くの人の知識や経験、大切な事柄、そして人とのつながりが、これから人権に取り組む上での財産になるでしょう。
 
(4)何を発言するかは自分で決めることのできる場に
 参加体験型だからといって、必ず発言しなければならないわけではありません。
 自分を見つめた結果を人に伝えるか伝えないかは、本人が決めることです。特に人権啓発・教育では自己決定が大切なポイントですから、学習の中でもそういった配慮が必要です。
 また、参加者の中にはこれまで差別や暴力を受けた経験があるなど、つらい経験をした人が少なからずいるでしょう。つらい気持ちのままで無理に参加しなくてもいいこと、できる範囲で参加することをすすめます。
 また、確固とした信念を持っていて、ほかの人の意見を聞かない人がいたら、その信念を認めながら、他の人の意見も聞いてみるよう働きかけます。ファシリテーターは、このような人もいる可能性があることをあらかじめ念頭においておいたほうがよいでしょう。
 
(5)聞いているだけの人や話し続ける人が生まれない仕掛けを
 参加者の中には、話し始めると止まらなくなる人がよくいます。その時は、ファシリテーターがある程度、一人が話す時間の目安を示しておくことが有効です。また「ほかの人はどうですか」などと声をかけて、話し合いに介入することも必要です。
 1グループの人数が6人をこえると「聞いているだけ」や「話し続ける人」が生まれやすくなります。話し合いへの参加が均等になる人数である4人で1グループをつくるなどの工夫もしてみるとよいでしょう。
 また、全体の人数は肉声で声が聞こえる程度の20人から30人が適しているでしょう。参加人数が多くなればなるほど、緊張感や構えができてしまい、自分を見つめ相手を大事にするコミュニケーションの実践は難しくなります。
 
(6)参加者のもとへでかけよう
 グループ内でのコミュニケーションに気を配るためにも、ファシリテーターはグループの間を歩き回ったほうがよいでしょう。そうすることで、次の学習の進行についての情報収集や、グループ内のコミュニケーションのアンバランスさへの指摘、議論を深める助けなどの助言をすることができます。
 そのときには、一つのグループに集中するのではなく全体を見渡すことが必要です。全体を見渡すために適しているグループ数は、5から7グループ程度でしょう。
 
(7)気になる発言は個人のものからみんなの課題へ
 学習では、参加者一人ひとりの発言にある「気づき(疑問なども含む)」をみんなの課題として取り上げます。問題解決のために一般的な課題として話し合いの材料にすることで、学習で傍観者を生まず、内容も豊かなものになります。
 
(8)差別的な発言や非難する発言には
 人権問題を扱う学習の中では、時には差別につながるような発言が出たり、非難をするような発言が出たりします。その時も答えを急がず、他の参加者からの意見を出してもらいながら、参加者とともに考えていきます。プログラムの予定を変更して、その発言についての意見交換に時間をかけることも必要でしょう。
 しかし、あまりにも過度な発言であったり、意見交換をする時間がないときは、ファシリテーターの考えをきっちり説明したいものです。
 
(9)最後は必ず「現実」とつなげる
 参加体験型学習が「楽しかった」という感想だけで終わることなく、学んだ内容が参加者の実生活をよりよくする一助になるためにも、学習活動の展開の最後に「現実」とつなげる要素を必ず入れることが大切です。「学習活動で体験したことを社会におきかえるとどのように考えられるか」「感じたことや、気づいたことをもとに、これからできることは何か」といった問いかけは不可欠です。
 このことが、参加者に「学びの場への参加」から「社会への参加」を促すことにつながるのです。
 
(10)学習を通し、実社会の課題解決をめざす
 参加体験型学習は、自らと社会をふりかえるという学習プロセスを大切にします。
 学習の中では、思いがけない反応や受け入れがたい意見も出てくることがあります。出てきた現象だけを見て学習を進めるのではなく、その背景に何があるかまで思いを馳せ、尊重することが大切です。
 学習の場は非日常であるかもしれませんが、決して現実と切り離されているわけではありません。学びの場に参加する経験を通して実際の社会にかかわり、課題を解決していくことが学習の学びであることを忘れずに取り組むことが、学習後の生活を変えていく力となるのです。

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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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