人権学習シリーズ 同じをこえて その「ちがい」は何のため? 女性専用車両で考える特別な措置/解説資料(コラム)

更新日:平成28年2月12日

コラム 地下鉄御堂筋事件

性暴力を許さない女の会

事件の概要
 
1988年11月、夜の大阪市営地下鉄御堂筋線の電車内で、二人組の痴漢に対し、勇気を出して注意した女性が「逆恨み」に遭い、その犯人たちに脅されて引き回された末、マンションの建設現場で強かんされるという「地下鉄御堂筋事件」が起こりました。女性は警察での事情聴取で「周りの人は怖がってジロジロ見るだけで、声を出してもし誰も来てくれなかったら、今度は何をされるかわからないと思った」と助けを求められなかった胸の内を話していました。
 裁判では、被告の二人組に対して懲役4年が求刑され、3年6カ月の判決が下されました。被害者の恐怖と、事件が残すつめあとを考えると、あまりに短い刑期としか言えませんでした。

事件を契機にした取り組み
 「地下鉄御堂筋事件」の記事が世に出てすぐ、事件に対する激しい憤りと、痴漢に注意した女性がその報復として強かんされたことで、これを許したら性暴力に「NO」という声を上げられなくなるという、強い危機感を持った女性達が集まりました。「私たちに何かできないか」と考え「性暴力を許さない女の会」を発足し、事件の翌月に大阪市交通局に要望書を提出しました。
 
 同会が要望した内容は、「1.性暴力をなくすよう、車内広告やアナウンスなどで積極的なPR活動をする、2.性暴力を誘発するようなポスターなどを掲示しない、3.駅員(できれば女性)を増員し、女性の性暴力被害を防ぐと共に、被害があった場合は迅速な対応を行う」の3点でした。
 しかしながら、交通局の対応は、この事件を機に発足している「小暴力対策委員会」の見解を示すのみであり、具体的には「1.巡視や見回りの強化、2.女性に気をつけるよう自衛手段をとるよう協力を求める」のみでした。
 
 同会は他の関西私鉄各社にも同じ要望書を送付し、返答を求めたところ「性を前面に出したくないので、迷惑行為はやめましょうというキャンペーンにしている」などの回答が返ってきました。この回答には、実際に痴漢に苦しめられている女性が多いにも関わらず、それを見て見ぬふりをする鉄道会社の姿勢が表れていました。また、翌年に大阪府警と関西鉄道協会が制作した「痴漢行為にあったら、勇気を出して大きな声を出しましょう」という趣旨のポスターは、同会の主張である「女に注意を呼びかけるのではなく、男に痴漢をやめろと呼びかけるべき」と全く相いれず、性暴力を行う男性に甘い社会を浮き彫りにしました。
 
 それからも活動は継続され、5年後の93年、同会は「セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる」と協力して「STOP痴漢アンケート」を実施し、交通局や私鉄各社への働きかけを行いました。そんな中で、社会的な機運も強まり、大阪の鉄道警察隊がようやく痴漢対策に力を入れるようになってきました。その結果、「痴漢アカン」という、加害者に対するメッセージの含まれた初のポスターや、電車での車内放送なども実現するようになり、2000年以降には女性専用車両の導入が始まりました。
 
そして今
―暴力と痴漢行為は犯罪です。追放に向けてお客様のご協力をお願いします―
 朝の通勤途中、女性専用車両に揺られているとこんなアナウンスが聞こえてきて、社会の移り変わりを実感しました。しかし一方で、「痴漢にあったら声を出せ」と言われてきた女性たちが声をあげ始めると、今度は「冤罪事件」の増加。彼女たちへの新たな非難が始まりました。また、女性専用車両も「痴漢をなくす為の積極的な取組み」というより、対処療法でしかありません。
 
 痴漢加害者と被害者、何十年にも渡ってそれを生み出し続ける日本社会。ポスターや女性専用車両を作って胸をなでおろすのではなく、真の解決の為には一体どうすればよいのか、何がベストなのかを考え続けないといけません。難しい問題ではありますが、それを考え始めることが積極的な解決を模索する第一歩ではないでしょうか。

コラム 地下鉄御堂筋事件(印刷用) [PDFファイル/383KB]

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府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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