大阪府在日外国人施策に関する指針

更新日:平成21年8月5日

大阪府在日外国人施策に関する指針

 

□はじめに

    大阪府では、「大阪府国際化推進基本指針」を平成4(1992)年に策定した。この指針は、大阪が持つ国際機能の一層の向上を図り、世界都市として大きく発展するため、国際交流の分野で府自ら率先して取り組むべき課題や、府民や関係機関との協力のあり方等を明らかにしたものである。

 大阪府では、この指針に掲げる「異文化を理解するこころの豊かな人々の集う都市大阪の実現」という基本目標に沿って、「国籍や民族を問わずすべての人々が、同じ人間として尊重しあい、違いを認めあって共生していく地域社会づくりなど、いわゆる“内なる国際化”」を推進してきた。

 具体的には、就職差別や入居差別の解消に向けた冊子やパンフレット、ビデオ等の作成による啓発の充実をはじめ、多言語での相談・広報といった改善を図る一方、国際的な人権基準に沿った制度改正について、国に対する要望を行うなどの取り組みを行ってきている。

 今後、地域の国際化が一層進展し、ますます多くの外国人が大阪で暮らすことが予想される中、すべての人の人権が大切にされるとともに、言葉や文化、習慣の違いを認めあえる、在日外国人(注1)にとっても快適で暮らしやすい都市として、大阪を発展させていくことが、一層重要な課題となっている。

 このため、大阪府として在日外国人に対する施策を総合的に推進していくことが要請されている。

 こうした中、平成14(2002)年3月、大阪府在日外国人問題有識者会議(注2)(以下「有識者会議」という。)から、在日外国人に対する施策を総合的に推進していくための「大阪府における在日外国人施策に関する指針について」の提言がなされた。

 大阪府では、この提言を踏まえ、「大阪府在日外国人施策に関する指針」を策定し、「すべての人が、人間の尊厳と人権を尊重し、国籍、民族等の違いを認めあい、ともに暮らすことのできる共生社会の実現」に向け、在日外国人施策を推進する。

第1 大阪府における在日外国人の状況

1 外国人登録者数

 大阪は、難波津の昔から世界に開かれたわが国の玄関口として、多くの人やモノを受け入れ、また、様々な知識や技術を取り入れながら産業・文化の先進地域として、人々をひきつけてきた。特に、アジア地域との深いつながりを持ち、府域には、多数の外国人が生活している。

 平成13(2001)年12月31日現在の外国人登録の状況を見ると、大阪府には146カ国約21万人の外国人が居住している。これは、府民の約40人に1人が外国人という計算になり、その人数や都道府県人口に占める割合は東京都に次いで多く、全国でもトップの水準にある。

 このうち、歴史的な経緯(注3)を有する韓国籍・朝鮮籍の人々は、大阪府に居住する外国人の約4分の3に相当する約16万人であり、日本に居住する韓国籍・朝鮮籍の人々の約4分の1を占めている。

 また、平成2(1990)年の「出入国管理及び難民認定法を改正する法律」の施行を契機として、同年からの3年間にブラジル、ペルー国籍の人々が急激に増加したほか、平成2(1990)年から平成13(2001)年にかけて中国籍の人々が倍増している。

2 在日外国人の人権をめぐる国内外の動向

 国際連合においては、世界人権宣言の採択以降、その精神を具体化する人権関連の諸条約が採択され国際的な人権基準が形成されるなど、人権尊重が時代の潮流となっている。

 こうした流れに沿って、国内においても、国際人権規約や人種差別撤廃条約等の批准を契機にすべての人の人権尊重に向けた様々な取り組みが進められている。

 また、地域の国際化が一層進展する中、様々な国籍を持つ外国人が大阪で暮らすようになっており、大阪を外国人にとっても安心して生活できる都市として発展させていくことが求められている。

 こうした国内外における人権尊重の機運や地域における国際化の進展の下で、国籍、民族等にかかわらず、ともに地域社会の一員としてお互いを支えあう共生社会の実現への期待が高まっている。

 (1)国における動き

 国では、平成12(2000)年12月に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が成立した。この法律では、国籍、民族等による不当な差別事象の発生などの人権侵害の現状や人権擁護に関する内外の情勢に鑑み、人権教育及び人権啓発に関する施策の推進について、国、地方公共団体、国民の責務を明らかにしている。

 また、人権擁護推進審議会は、平成13(2001)年5月に「人権救済制度の在り方について」答申を行った。その中で、外国人に関しては、雇用における差別的取扱い、商品・サービス・施設の提供等における差別的取扱い、嫌がらせ、差別表現等の人権侵害の現状を指摘している。答申では、人権侵害の被害者を救済するための機関である「人権委員会」(仮称)を設置し、相談、あっせん、指導等の簡易な救済制度に加え、調査、調停、仲裁、勧告・公表、訴訟援助等を行う積極的な救済制度を提案した。これを受けて、現在、人権擁護法案が審議されているところである。

(2)府における動き

 大阪府では、平成12(2000)年12月に大阪府総合計画審議会からの答申を受けて、 「大阪の再生・元気倍増プラン大阪21世紀の総合計画」を策定した。

 この計画では、今後の大阪づくりの基本となる考え方として、誰もがお互いの人権を尊重し支えあう「共生の視点」などを踏まえ、「一人ひとりが自分の可能性を最大限に発揮して、自分の夢を実現できる社会」を目指すべき大阪の将来像の一つに掲げており、外国人の人権が尊重され、いきいきと個性や能力を発揮できる社会づくりを進めることとしている。

 また、平成13(2001)年3月に大阪府人権施策推進審議会からの答申を受けて、「大阪府人権施策推進基本方針」を策定した。その中で外国人に関する取り組むべき課題として、就労における差別や入居差別などの問題や、差別を回避するために、その意に反して本名ではなく日本名(通名)で生活せざるをえない在日韓国・朝鮮人もいるといった問題を指摘するとともに、人権意識の高揚を図るための施策や人権擁護に資する施策などの基本方向を定めている。

 さらに、「人権教育のための国連10年大阪府行動計画」の一層の普及・浸透と、人権という普遍的文化の確立に向けて、「人権教育のための国連10年大阪府後期行動計画」を平成13(2001)年3月に策定した。その中で、「内なる国際化」を推進し、多様な文化、習慣、価値観を尊重するとともに、違いを認め合いアイデンティティを保ちながら共生する社会の形成が重要としている。

3 在日外国人施策に関する取組みと課題

 大阪府では、先に述べたように、平成4(1992)年に策定した「大阪府国際化推進基本指針」に基づき、人権意識、暮らし、医療・保健・福祉、教育、府政参画など様々な分野において、「国籍や民族を問わず違いを認めあって共生していく地域社会づくり」に努めている。また、その推進にあたっては、有識者会議における議論を踏まえ、推進体制として設置した在日外国人問題庁内連絡会議(以下「庁内連絡会議」という。)を活用し、全庁的に施策の推進に努めている。

 しかしながら、在日外国人をめぐる現状を照らし合わせて見ると、「ともに暮らすことができる共生社会の実現」のためには、 次のような課題がある。

(1)人権意識にかかわる分野

 大阪府では、府民が在日外国人の課題に関する理解を深めるため、ビデオやリーフレットの作成、シンポジウムの開催などの啓発活動を推進している。

 また、就職の機会均等と公正な採用を図るため、毎年6月を就職差別撤廃月間と定めその周知に努めるとともに、公正採用選考人権啓発推進員制度の普及に努めるなど、事業主等への啓発を行ってきたほか、平成11(1999)年度実施の職員採用試験から受験資格における国籍条項を知事部局の全ての職種で撤廃した。

 賃貸住宅への入居等に関しては、不動産取引にかかわる人権問題の相談窓口を設置するとともに、業界に対する人権研修や啓発リーフレットなどを通じた啓発に努めている。

 しかしながら、民間企業への就職や賃貸住宅への入居等に際して、国籍、民族等の違いを理由とした採用拒否や入居拒否の事例がみられるなど、外国人に対する偏見や差別意識が見受けられる。

 府域では、在日外国人学校の児童・生徒への嫌がらせや暴言・暴行などの事象が発生したほか、就職に際し、採用面接時に本人の適性とは無関係の国籍等にかかわる質問が行われたり、日本名(通名)の使用を求められるなどの事例や外国人への差別落書きなどの事例が報告されている。

 他府県では、外国人の入店拒否や公衆浴場での入場拒否の事例も報告されているところである。

 また、外国人労働者が、賃金や労働時間の点で日本人に比べて相対的に不利な立場に置かれたり、賃金未払いや長時間労働等の問題も発生している。

 こうした状況をなくすためには、偏見や差別意識をなくすことが重要であり、あらゆる機会を通じて、府民への教育・啓発の取組みを積極的に進めることにより、人権の平等な享有に関する教育や啓発を強化するとともに、交流の場を通し、多様な文化、習慣を持った外国人と日本人との相互理解を促進していく必要がある。

  (2)暮らしにかかわる分野

 日本語の習得が十分でないため、暮らしにかかわる各種サービスが受けにくかったり、困ったことがおきた場合の相談機関がわからないなど、在日外国人が日常の生活を送るうえでの不安は少なくない。

 このような不安を解消するためには、情報提供や相談窓口の充実のほか、日本語学習機会を提供することが求められている。

 大阪府では、平成5(1993)年に開設した「大阪府外国人相談コーナー」において、英語、韓国・朝鮮語(注4)、中国語、ポルトガル語、スペイン語、フィリピノ語、タイ語の7カ国語で相談を受け付けているほか、多言語FM放送において、英語、韓国・朝鮮語、中国語、スペイン語の4カ国語で府政情報や生活関連情報を放送するとともに、大阪府ホームページにおいて、英語、韓国・朝鮮語、中国語の3カ国語で行政情報の提供に努めている。

 今後、情報提供にあたっては、刊行物等の多言語化に努め在日外国人の利便性を考えた配布を行うとともに、主要な公共施設、ターミナルでの案内表記や道路案内標識の整備なども推進して、在日外国人が暮らしやすい環境を整える必要がある。

 また、「大阪府外国人相談コーナー」の一層の周知と相談内容の多様化への対応を図るとともに、他の相談窓口においては、多言語化に対応するため同コーナーとの連携を強化する必要がある。

  (3)医療・保健・福祉にかかわる分野

 在日外国人が、健康で安心して暮らしていくためには、医療、保健、福祉サービスを容易に受けることができる環境づくりが求められている。

 特に、病気になった際どこの医療機関へ行けばよいかがわからない場合があり、きめ細やかな医療・保健サービス情報は欠かせない。

 このような観点から、大阪府では、外国語のわかる診療機関、医療相談機関等の医療情報を多言語によるガイドブックや英語によるホームページで提供しているほか、多言語による感染症予防のための保健情報の提供に努めている。

 しかしながら、医療保険がなくて高額の医療費が払えないなどの理由から、外国人がなかなか医療機関へ行けないという問題がある。また、医療保障制度が適用されない外国人が治療を受けた際に生じた未収医療費について、平成8(1996)年度より救命救急センターに対して、その一部を補助する制度が創設されたが、それ以外の病院等は対象外とされている。   

 また、福祉サービスについては、歴史的経緯を有する在日韓国・朝鮮人高齢者を中心に、広報等による情報が十分行き渡らなかったり、言葉や食事、生活習慣の違いなどから、サービスの利用が難しい状況も見受けられる。

 さらに、在日外国人高齢者・障がい者の中には、国民年金制度創設時の国籍条項により制度的に年金の受給資格が得られなかった人(注5)がおり、所要の救済措置が求められるところである。                                       

(4)教育にかかわる分野

 在日外国人教育については、自己の文化、言語、伝統にふれる機会を提供し、在日外国人の児童・生徒が自らの誇りや自覚を高め、本名を使用できるような環境の醸成に努めるとともに、新たに渡日した児童・生徒に対する日本語指導を充実するなど、児童・生徒が将来の進路を自ら選択し自己実現を図ることができるよう指導する必要がある。

 また、国際化が進展する中、異なる文化の理解を進めるとともに、コミュニケーション能力を高める教育を一層推進することが求められている。そのためにも、地域の外国人と出会い、異文化に直接触れる機会や海外の児童・生徒との交流機会の充実等を図る必要がある。

 このような観点から、大阪府では昭和63(1988)年に「在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針」を、平成11(1999)年には、人権教育を総合的に推進するための「人権教育基本方針・人権教育推進プラン」を策定したところである。また、平成2(1990)年から3年間に府立高校の各学区に1校づつ国際教養科を設置したり、府立学校における海外修学旅行を実施しているほか、平成13(2001)年度から府立高校の入学者選抜において「中国・帰国生徒及び外国人生徒入学者選抜」の実施等の在日外国人教育の推進など、様々な国際理解教育を実施している。

 今後、すぐれた実践事例や研究成果について交流できるよう、学校間で情報交換のためのネットワークづくりが求められているところである。

 なお、外国人学校については、その振興を図るため一定の支援を行っているが、学校教育法上各種学校と位置づけられていることから国庫補助制度がないことや、卒業生に国立大学等の受験資格が認められていないなどの課題がある。

  (5)府政参画にかかわる分野

 様々な文化的、歴史的背景を持った住民である在日外国人の意見を府政に反映することが求められており、大阪府においては、在日外国人にかかわる諸課題及び本府が取り組むべき方策について幅広く意見を求めるため有識者会議を設置し、在日外国人施策の推進に努めている。また、近年、関係する審議会等への外国人委員の参画に取り組んできているところである。

 今後も、審議会等の委員の選任にあたっては、審議会等の設置目的を踏まえ、在日外国人を含めた幅広い人材の登用に努める必要がある。

 また、府政に関する世論調査については、平成12(2000)年から在日外国人も調査対象としている。さらに、近年、社会的な関心が高まっている地方参政権については、国において法案が審議されているところである。

第2 施策推進の目標と視点

 世界人権宣言では、その第1条で「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利について平等である。」とうたっており、この理念を広く社会において実現することが求められている。また、「大阪府人権尊重の社会づくり条例」にもうたわれているように、人権尊重の機運が国際的にも高まる中、大阪が世界都市として発展していくためにも、私たち一人ひとりが命の尊さや人間の尊厳を認識し、すべての人の人権が尊重される豊かな社会を実現することが今こそ必要とされている。

 在日外国人を含むすべての人の人権が尊重され、その個性と能力を発揮できる豊かな社会の実現を図ることが、ひいては世界都市大阪を実現させていくことになる。

 このような観点から、次の目標と視点に立って、施策を総合的に推進する。

1 目標

すべての人が、人間の尊厳と人権を尊重し、国籍、民族等の違いを認めあい、ともに暮らすことのできる共生社会の実現

2 視点

(1)人権尊重の社会づくり

 現在、世界的に人権の尊重を共通の行動基準とし、人権が保障される国際社会を目指した取り組みが進められている。憲法の定める基本的人権の尊重や国際人権規約・人種差別撤廃条約などの国際的な人権基準を地域に定着させることにより、在日外国人に対する偏見や差別意識をなくし、すべての人の人権が尊重される社会づくりを推進する。

(2)個々の文化を保持しながら共生できる社会づくり

 すべての人は、人間として皆同じ人権を有しており、一人ひとりがかけがえのない存在である。このことを認識し、国籍、民族等の違いを互いに認めあい、多様な文化、価値観を尊重しあうことにより、個々の文化を保持しながら、その個性や能力を発揮し、共生できる社会づくりを推進する。 

(3)地域社会の住民として安心して暮らせる社会づくり

 暮らしやすく、活動しやすい、安心できる環境が整備されることにより、誰もがそれぞれの個性や能力を活かして、自己実現を達成することが可能となる。在日外国人の人権やアイデンティティが尊重され、在日外国人が地域社会の住民のひとりとして、安心して暮らすことのできる社会づくりを推進する。

第3 基本方向と推進方策

1 人権尊重意識の高揚と啓発の充実  

《基本方向》

 国籍、民族等の違いによる様々な偏見や差別意識をなくすため、人権尊重意識の高揚を図るとともに、異なる文化、習慣等に対する理解を促進するため、普及啓発活動の一層の充実を図る。

 また、在日外国人の文化や伝統・習慣について、誰もが触れ、理解できる機会の提供に努める。

《推進方策》

(1)府民啓発の充実・相互理解の促進

 すべての人に対する人権尊重の意識に満ちた社会づくりに向け、総合的な人権啓発冊子や外国人問題啓発ビデオなど、様々な媒体を用いて、在日外国人が直面する問題を広く府民に啓発する。

 啓発にあたっては、市町村との連携を図るなど効果的に進めるとともに、行政からの啓発だけでなく、共生社会の実現を目指して活動している府民、NPO(注6)、企業などとの連携により広がりのある啓発を推進する。

 また、府民が、在日韓国・朝鮮人をはじめ、在日外国人の歴史、文化、言語、習慣等を理解する機会が重要であり、相互理解を深めるため、文化、スポーツなど様々な交流事業の推進に努める。

(2)住宅入居にかかわる啓発等の充実

 生活の基盤となる住居についての権利は、国際人権規約及び人種差別撤廃条約で保障されており、入居差別の解消を図るため、啓発冊子の配布や研修の実施等による宅地建物取引業者、賃貸住宅経営者などへの啓発に努める。また、国や関係機関と連携しながら入居機会の制約の解消に向けた方策を検討する。

 入居差別にかかわるトラブル・相談に対して、業界で自主的に迅速な解決が図られるよう指導するとともに、業界団体、市町村等とも連携を図りながら、不動産取引相談コーナーをはじめとする様々な相談機能を活用されるよう努める。

(3)雇用にかかわる啓発等の充実

 就職にあたって、国籍、民族等の違いを理由に差別されることがないよう、就職差別撤廃月間に集中的な啓発を行うとともに、企業啓発団体への働きかけ、「公正採用選考人権啓発推進員」の活用などにより、企業内部における人権意識の高揚のための取り組みを促す。

 また、解雇や賃金問題等、雇用にかかわる様々な問題に対応するため、国や関係機関と連携した労働相談が必要であり、併せて労働基準法、最低賃金法といったすべての労働者に適用される労働関係法規の知識について啓発に努める。

 さらに、人種、民族等による雇用差別を禁じたILO111号条約を早期批准し、関係する国内法を整備するよう、引き続き国に要望する。

(4)外国人登録法の改正に向けた国への要望

 外国人登録証明書の常時携帯義務など在日外国人に過重な負担を与えている外国人登録法について、人権尊重の視点に立って抜本的な改正がなされるよう、市町村等と連携して、引き続き国に要望する。

2 暮らし情報の提供と相談機能の充実

《基本方向》

 在日外国人にとっても暮らしやすく、活動しやすい環境づくりを進めるため、生活情報の提供や相談機能充実を図るとともに、主要な公共施設やターミナルでの外国語等による案内表記の整備を促進する。また、地域における日本語学習機会の提供を促進するため、市町村やNPO等と連携を強化する。

《推進方策》

(1)生活情報提供の充実

 医療、保健、福祉、就労、防災、住まい等の必要な情報について、刊行物の多言語化による情報提供を推進するとともに、国、市町村、NPO等と連携して、暮らしに関する情報のきめ細かな提供に努める。

 また、情報提供の充実を図るため、多言語FM放送による行政情報提供のほか、大阪府ホームページについて、在日外国人のニーズも見極めながら、外国語版ページの充実や多言語化を検討する。

 さらに、在日外国人の国籍の多様化に対応し、外国語による効果的な情報提供を図るため、市町村や大阪府多言語情報提供推進協議会(注7)と連携するなど外国語による情報提供を進める。

(2)案内標識の整備

 府関係施設案内標識は、国際統一ピクトグラム(注8)や外国語併記により、誰にでもわかりやすい案内に努めるとともに、ローマ字・英語を併記した道路案内標識の整備を進める。

 また、府有施設以外の不特定多数が利用する主な駅や公共施設などの設置者に対しても、わかりやすい案内標識が整備されるよう、働きかける。

(3)相談機能の充実

 「大阪府外国人相談コーナー」などの各種相談窓口や、関係機関と連携して行う「1日インフォメーションサービス」の取り組みを進めるほか、国、市町村、NPO等による各種相談窓口について広く周知に努める。

 また、国、市町村、NPO等と相互連携を強化するとともに、研修の充実により職員の資質向上を図る。

(4)日本語学習機会の情報提供等

 身近な地域の日本語教室、日本語教材等にかかわる情報を、関係機関によるネットワークを通じて収集し、ホームページやリーフレット等による情報提供に努める。

 また、識字・日本語教室の指導者や教室の企画・運営を行うコーディネーターを養成する手法について、市町村やNPO等が設置する日本語教室等へ提供に努める。

3 安心のための医療・保健・福祉サービス体制の充実

《基本方向》

 在日外国人が、健康で安心して暮らしていくため、医療や保健、福祉面での情報提供を進めるとともに、安心してサービスを受けることができる体制づくりを推進する。

《推進方策》

(1)健康に暮らすための体制の充実

 多言語による医療情報冊子と併せ、大阪府ホームページ内の「外国人のための医療情報ガイド」の活用を図るとともに、医療相談事業を行っている民間機関とも連携して、外国人が医療機関を利用するための情報提供に努める。

 また、日本語の習得が十分でない外国人が、安心して病院で治療を受けられるよう、府立の病院において、通訳ボランティアの活用を図る。併せて、外国語による感染症予防など保健情報の提供を推進するとともに、NPO等と連携して、保健相談への対応能力の向上を図る。

(2)福祉サービスの利用促進

 福祉サービスに関する外国語版パンフレットを作成して周知を図るなど、関係機関と連携した効果的な情報提供に努める。

 また、異なる文化的背景、習慣を持つ外国人が少しでも福祉サービスを利用しやすくするように関係機関と連携して介護サービス事業者や福祉施設職員等への啓発・研修の充実に努める。

(3)法制度の改善等の国への要望

 外国人の未収医療費にかかる医療機関への補助制度について、救命救急センター以外の医療機関にも必要な措置を講じるよう、引き続き国に要望する。

 また、制度的に国民年金の受給資格が得られなかった在日外国人の高齢者や障がい者への所要の救済措置の実施についても、引き続き国に要望する。

4 国際理解教育・在日外国人教育の充実

《基本方向》

 国際理解教育については、国際化が進展し、国際的な相互依存関係がますます深まる中、諸外国の異なる文化への理解を進めるとともに、コミュニケーション能力を高める教育を推進する。

 また、在日外国人教育については、「国際人権規約」及び「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」をはじめ、大阪府の「人権教育基本方針・人権教育推進プラン」等の趣旨に基づき、異なる文化、習慣、価値観等を持った児童・生徒が、互いに違いを認めあい、本人のアイデンティティを保ちながら自己実現を図ることができるよう、ともに生きることのできる教育を進める。

 さらに、在日韓国・朝鮮人の児童・生徒については、これまでの歴史的経緯を踏まえ、課外の自主活動を活用して歴史・文化等について学習できる環境を醸成する。

《推進方策》

(1)コミュニケーション能力の育成と国際理解教育の充実

 地域や児童・生徒の実態に応じて、総合的な学習の時間等を活用して国際理解教育を推進するとともに、相互理解を深めるコミュニケーション能力を育成するため、外国語指導助手(注9)や海外留学生ボランティア等の活用を図る。

 また、国際理解教育を進めるため、国の委嘱事業などのこれまでの取り組みや教育センター等の研究成果を広め、指導内容、指導方法等について共通理解を深めるほか、必要な資料や教材などを活用した研修等の取り組みを進める。

 さらに、保育所や幼稚園職員に対して、子どもがお互いを思いやり、共に生きる力を育む視点に立った研修を行うことにより、子どもの豊かな人権感覚の形成に努める。 

(2)交流機会の拡充

 異文化に直接触れ理解を深めるため、海外修学旅行を活用するなど海外の児童・生徒との交流を奨励するとともに、インターネットの活用等による教科学習や部活動などを通じ海外の児童・生徒との交流機会を拡充する。

 また、外国人学校との交流など地域の外国人との交流機会を拡充する。

(3)在日外国人教育の充実

 在日外国人教育については、これまでの経験と成果を生かし、蓄積されてきたノウハウ等の活用を図りつつ、指導内容・指導方法等を工夫改善するよう努めるとともに、在日韓国・朝鮮人児童・生徒については、課外の自主活動(民族学級等)などを通じて、歴史、文化、言語等について学習できる環境の醸成に努める。

 また、在日外国人児童・生徒が、自らの誇りや自覚を高め、本名を使用できるよう環境の醸成に努めるとともに、将来の進路を自ら選択し、自己を実現し得るよう、関係諸機関と連携しながら適切な指導に努めるなど、進路指導の充実を図る。

 とりわけ、在日韓国・朝鮮人児童・生徒については、「在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針」に基づき指導に努める。

 新たに渡日した児童・生徒については、日本語教育教材や教員研修の充実などを通じた日本語指導に努める。

 さらに、外国人学校の振興を図り、国庫補助制度の創設及び国立大学等の受験資格の改善等について、引き続き国に働きかける。

5 府政への参画促進

《基本方向》

 幅広い府民の意見を府政推進に生かしていくためには、多様な文化的背景や考え方を持つ在日外国人の意見も求める仕組みの整備に努める。

《推進方策》

 在日外国人にかかわる諸課題及び大阪府が取り組むべき方策について、幅広く意見を求めるため設置されている有識者会議を引き続き活用するとともに、審議会等の委員の選任にあたっては、審議会等の設置目的を踏まえ、在日外国人を含めた幅広い人材の登用に努めるほか、在日外国人も含め実施されている府政に関する世論調査などにより、在日外国人の意見を府政に反映させるよう努める。

 また、在日外国人が、地域社会の一員として、地方政治への意見反映ができるよう努める。


第4 推進体制の充実

1 庁内推進体制

 在日外国人施策を総合的に推進するため、庁内連絡会議や国際化施策推進会議などの活用を通して、関係部局の一層緊密な連携を進め、総合調整機能の充実を図る。

 また、誰もがお互いの人権を尊重し支えあう「共生の視点」を踏まえて業務を遂行できるよう、職員の在日外国人問題の理解と認識を深める。

 在日外国人施策の実施状況等については、庁内連絡会議において毎年取りまとめるとともに、各施策の推進にあたっては、必要に応じて実態把握に努める。さらに、それらの結果を有識者会議に報告するなど、同会議の機能の充実を図る。 

2 市町村・NPO等との連携

 府内の市町村においては、地域の実情に応じて、それぞれに外国人問題についての取り組みが進められている。また、近年、様々な分野において、NPO等との連携やボランティア活動が広がりをみせている。大阪府の在日外国人施策を推進するためには、このように住民にとって身近な市町村やNPO等の果たす役割は大きいと期待されることから、連携の充実を図る。 

3 国への働きかけ

 在日外国人の地位向上や権利擁護をはじめ、この指針の目標である「すべての人が、人間の尊厳と人権を尊重し、国籍、民族等の違いを認めあい、ともに暮らすことのできる共生社会の実現」を図るため、国際的な人権基準に沿った必要な国内的措置がなされるよう、引き続き国に要望する。

【注釈】

(注1)「在日外国人」

本指針では、定住生活を営んでいる外国人に限定される場合は「在日外国人」、限定されない場合は「外国人」という表現を使用している。 

(注2)「大阪府在日外国人問題有識者会議」

在日外国人に関わる諸課題及び本府が取り組むべき方策について、幅広く意見を求めるため平成4(1992)年に設置した会議のこと。

(注3)「歴史的な経緯」

過去の植民地支配により、多数の朝鮮の人々が日本に来ることを余儀なくされ、その中の多くの人々が軍需産業や建設作業などに従事させられた。今日の在日韓国・朝鮮人の多くは、戦後帰国できず、日本にとどまることになった人々とその子孫である。 

(注4)「韓国・朝鮮語」

大阪府では、大阪府外国人相談コーナー、多言語FM放送、大阪府ホームページなどにおいて、「ハングル」で周知している。

(注5)「制度的に年金の受給資格が得られなかった人」

昭和57(1982)年1月1日時点で20歳以上で既に障がいがあるか、あるいは昭和61(1986)年4月1日時点で60歳以上で年金の受給資格を得られなかったことにより、制度的に無年金になっている外国人の高齢者や障がい者のこと。

(注6)「NPO」

Nonprofit Organization(非営利組織)の略で、一般的には「営利を目的にしない民間組織」の総称。法人格をもつ組織(公益法人、特定非営利活動法人など)と、法人格をもたない組織(ボランティアグループなどの任意団体)がある。政府(行政)、営利組織(企業)と並ぶ第三のセクターと呼ばれている。

(注7)「大阪府多言語情報提供推進協議会」

大阪府、府内15市と大阪府国際交流財団で構成。在日外国人に生活に必要な情報を掲載したハンドブック「大阪生活必携」などを作成し、在日外国人への情報提供を行っている。 

(注8)「国際統一ピクトグラム」

道路標識と同じように、言語の異なる外国人にも理解できるようつくられた世界統一のサインのこと。

(使用例)

エスカレーター

エスカレーター

エレベーター

エレベーター

レストラン

レストラン

禁煙

禁煙

電話

電話

(注9)「外国語指導助手」

教育委員会や学校で、外国語担当指導主事や外国語担当教員等の補助を行う外国人教員のこと。

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画G

ここまで本文です。