人権問題に関する府民意識調査報告書(分析編) 大阪人権意識 7.人権問題に対する意識と行動<視点5>

更新日:2023年2月3日

人権問題に関する府民意識調査検討会委員
神戸学院大学文学部教授 神原文子

7.人権問題に対する意識と行動<視点5>

 人権問題について高い意識を持っている人が、例えば、差別発言があった時に行動に移すことができているのかどうかを検討します。
 表7-1は、誰かが同和地区の人に対する差別的な発言をした時の態度(問17)と、「排除問題意識」、「体罰問題意識」、「人権推進支持意識」、「被差別責任否定意識」、「差別容認否定意識」、「結婚排除否定意識」、「反忌避意識」、「反集団優遇イメージ」、「人権交流イメージ」との関連をみたものです。

表7-1 誰かが差別的な発言をした時の態度と人権意識 

だれかが差別的な

 

排除問題

体罰問題

人権推進

被差別責任

差別容認

結婚排除

反忌避

反集団優遇

人権交流

発言をした時

意識

意識

支持意識

否定意識

否定意識

否定意識

意識

イメージ

イメージ

問17(1)差別的な発言があったことを指摘して、差別について話し合う平均値

3.4

2.5

4.0

3.1

3.7

12.7

3.5

2.5

3.2

度数

75

78

78

77

78

77

74

75

76

標準偏差

0.6

1.0

0.8

1.1

1.1

1.5

1.2

0.9

0.9

 問17(2)表立って指摘はしないが、差別はいけない ことを何とか伝えようとする平均値

3.2

2.3

4.1

3.0

3.6

12.4

3.2

2.5

3.2

度数

242

247

237

239

240

239

236

234

233

標準偏差

0.5

0.9

0.7

1.0

0.8

1.6

1.0

0.8

0.7

問17(4)ほかの話題に転換するよう努力する平均値

3.0

2.3

3.7

2.7

3.3

12.2

2.8

2.4

2.9

度数

123

125

125

122

123

129

124

116

120

標準偏差

0.6

0.8

0.8

0.9

0.9

1.7

1.0

0.9

0.8

問17(5)何もせずに黙っている平均値

2.9

2.4

3.7

2.8

3.2

12.1

2.5

2.4

2.9

度数

133

134

123

123

123

121

125

128

126

標準偏差

0.6

0.9

0.8

0.9

0.9

1.8

1.0

0.8

0.7

問17(3)表向き話をあわせて 相づちを打ったり、自分も差別的な言葉を口にしたりしてしまう平均値

2.7

2.3

3.7

2.6

2.9

11.6

2.5

2.3

3.1

度数

24

25

22

23

23

22

23

20

21

標準偏差

0.7

1.0

0.8

0.8

0.8

1.8

0.9

0.9

0.8


注:太文字は、「誰かが差別的な発言をした時の態度」として「あてはまる」とする回答者と「あてはまらない」とする回答者とで人権意識度に有意差がある場合を指す。

  「排除問題意識」、「人権推進支持意識」、「被差別責任否定意識」、「差別容認否定意識」、「結婚排除否定意識」、「反忌避意識」、「人権交流イメージ」が高いほど、差別的な発言に対し積極的な態度を取ることがわかります。他方、「表向き話をあわせて相づちを打ったり、自分も差別的な言葉を口にしたりしてしまう」という人は、そうでない人よりも「排除問題意識」、「差別容認否定意識」、「結婚排除否定意識」が統計的に有意に低いことがわかります。 

【知見】
○「排除問題意識」、「人権推進支持意識」、「被差別責任否定意識」、「差別容認否定意識」、「結婚排除否定意識」、「反忌避意識」、「人権交流イメージ」が高いほど、誰かが差別的な発言をした時に積極的な態度を取る傾向にある。
○誰かが差別的な発言をした時の態度は人権意識の高さと関連し、人権意識の高い人ほど「差別的な発言があったことを指摘して、差別について話し合う」、「表立って指摘はしないが、差別はいけないことを何とか伝えようとする」傾向にある。他方、「表向き話をあわせて相づちを打ったり、自分も差別的な言葉を口にしたりしてしまう」という人は、そうでない人よりも「排除問題意識」、「差別容認否定意識」、「結婚排除否定意識」が低い傾向にある。
 

 また、これらの人権意識の中で、積極的な態度につながる傾向の高い意識は何かを探るために、誰かが差別的な発言をした時の態度を「従属変数」とし、これらの人権意識尺度を「独立変数」として「重回帰分析」を行ったところ、表7-2の結果を得ました。なお、「従属変数」は、上記の知見に基づき、選択肢の順序を換えた「順序変数」として用いています。

表7-2 誰かが差別的発言をした時の態度の「重回帰分析」

非標準化係数

標準化係数

モデル

B

標準誤差

ベータ

t

有意確率

5

(定数)

5.001

.311

16.106

.000

反忌避意識

-.198

.049

-.197

-4.028

.000

排除問題意識

-.301

.090

-.169

-3.340

.001

差別容認否定意識

-.172

.063

-.139

-2.741

.006

体罰問題意識

.127

.057

.100

2.213

.027

人権推進支持意識

-.134

.067

-.096

-1.991

.047

1.従属変数:問17 誰かが差別的な発言をした時

 「重回帰分析」における決定係数R2=.166と、説明力は高くありませんが※、ベータ値の絶対値の大きさにより、「反忌避意識」、「排除問題意識」、「差別容認否定意識」、「体罰問題意識」、「人権推進支持意識」の順に、差別的な発言に対する積極的な態度に影響していることがわかります。
ただし、「体罰問題意識」については、低い人ほど、「誰かが差別的発言をした時」に積極的な態度をとる傾向が高いという結果となっています。すなわち、様々な人権意識の高い人が、「体罰問題意識」も高いとは限らないことが要因であると解釈できます。
※1に近付くほど「当てはまりが良い」と判断されます。

【知見】
○差別的な発言に対する積極的な態度については、「反忌避意識」、「排除問題意識」、「差別容認否定意識」、「体罰問題意識」、「人権推進支持意識」の順に影響力が強い。ただし、「体罰問題意識」については、低い人ほど、積極的な態度をとる傾向が高い。



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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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