第3 意見

更新日:平成28年10月17日

少子・高齢化や社会経済活動のグローバル化等の中で、府民ニーズは複雑・多様化、高度化しており、生活の安全・安心の確保や地域経済の活性化を図る上で、行政サービスの一層の充実が求められている。
こうした中で、府政執行の重要な担い手である職員には、中長期的な視野をも併せ持ちながら、行政サービスの充実に意欲的に努めることが求められる一方で、職員が府民のために安心して職務に精励でき、その職責を果たすことができる給与、勤務条件が人事委員会勧告の実施を通じて整備される必要がある。
本委員会は、中立的かつ専門的な人事機関として、これまで、職員の給与、勤務条件が社会一般の情勢に適応するよう、様々な観点から意見を申し述べてきたところである。
本委員会としては、給与を含めた適切な措置により、職員の意欲・能力の一層の向上を図ることはもとより、仕事と家庭の両立支援制度の充実や長時間労働の是正等、働き方改革を積極的に推進していくことなどの観点から、以下のとおり意見を申し述べるものである。

1 給与制度について

(1) 職員給与のあり方

人事委員会の勧告制度は、憲法で保障された労働基本権の制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した給与を確保する機能を有するものであり、職員の給与は、法律上の給与決定の原則(情勢適応の原則、均衡の原則等)に沿って適切に措置されるべきものである。
しかしながら、任命権者においては、本委員会が平成27年10月に行った職員の給与に関する勧告について、当面の厳しい財政状況等を総合的に勘案したとして、特別給等に関する勧告のみを実施し、民間との給与較差に基づく給料表等の改定の勧告を実施しなかった。
また、平成26年10月に行った職員の給与に関する勧告においても、本委員会が求めた給与制度の総合的見直しに伴う経過措置を実施しなかった。

こうした取扱いについて、本委員会は、平成27年の給料表等改定勧告の不実施に関し、平成28年2月定例府議会における議会からの意見聴取に対して、十分説明責任を果たされる必要があるとの意見を提出したところであるが、あらためて人事委員会の給与勧告の意義、位置づけを確認しておきたい。
人事委員会制度は、地方公務員について、憲法で保障された労働基本権の制約に係る合憲性の根拠となる代替措置として位置づけられるものであり、とりわけ給与勧告は、職員の生活を維持するための措置として、人事委員会制度の中でも最も重要なものである。
そして、地方公務員法のもとで、かかる代替措置の実効性は、中立的かつ専門的機関である人事委員会が職員の給与に関する勧告を行い、任命権者と議会がこれを最大限に尊重するというプロセスにより、担保されている。

したがって、かかる給与勧告が尊重されることなく、その本来の機能を果たし得ないと評価される場合は、職員の労働基本権の代替措置としての機能を果たしたものとは言えないものであり、裁判例においても、かかる場合は、その機能を回復させるための争議行為が許容される余地があるとされているところである。
職員の生計を支える職員給与は、義務的経費であり、危機的な状況にない限り、厳しい財政状況下においても、予算上適切に措置される必要がある。
平成27年の給与勧告の取扱いについて、本委員会としては、その後の状況変化等も含め、このような観点からの説明責任を十分果たされる必要があると考えるところである。
やむを得ない極めて異例の措置の範囲を超えて給与の抑制措置を行うことは、現行制度上容認されていない点を強く指摘しておく。

(2) 管理職給与等のあり方

府民ニーズが複雑・多様化、高度化する中で、管理職については、迅速・的確に課題解決にあたるなど、高いマネジメント能力が求められており、その果たすべき役割は大きい。また、組織活性化の観点からは、厳しい諸状況下であっても、職員が自己研鑽を重ね、将来、管理職を目指そうという風土の醸成が重要である。
本府では、平成23年度の「大阪府版公務員制度改革」において、部長級、次長級の給料を定額化したが、その趣旨は、職務給の原則によること及び管理職としての職責の重要性を意識づけることにあった。

本委員会は、これまで、課長級給料についてもその定額化の検討を求めてきたが、任命権者においては、課長級は相当数が配置され、在級年数も長いこと、また、年齢幅が比較的広く、職務・職責に多様性があることなどから、その実施が見送られているところである。一方、職員の年齢構成の状況も踏まえつつ、組織や職制・職階のあり方などについて、将来の大阪府を見据えた検討を進められているところである。このため、現時点において課長級給料の定額化のみを先行して実施することが難しい状況にあることに鑑み、併せて課長級給料の定額化も含めて、管理職給与のあり方について検討することを求めるものである。
また、本府では、これまで、財政事情を考慮し、緊急避難的な措置として、様々な職員給与の減額措置等がとられてきており、管理職手当については、平成9年度から現時点においてもなお減額措置が継続されている。
任命権者においては、やむを得ずこうした減額措置を講ずる場合であっても、緊急避難的な特例措置であることについて、十分留意されるべきであり、本委員会としては、その取扱いについて再考を求めるものである。

(3) 再任用職員の給与  

平成28年の「民調」において、公的年金が全く支給されないこととなる60歳の再雇用者の4月分の給与額を調査したところ、民間企業の再雇用者の大部分を占める係員級(再雇用後)と本府の主事級の再任用職員の月例給与は、民間が22.9万円、本府は24.2万円であった。国と比較して府内データ数は限られているものの、本府が民間を上回っている状況も見られたところである。

(資66頁:第16表その3)

本府においては、これまで再任用職員の給料月額については、再任用職員以外の職員の給料月額の改定に準じて改定を行ってきたところであり、本年も同様の考え方により、引下げを勧告した。

再任用職員には、定年前と同等の能力発揮等が期待されるほか、これまで培ったノウハウを組織内に継承していくことが求められており、職務・職責に相応しい給与水準のあり方が重要な検討課題である。
平成28年の人事院勧告においては、再任用職員の給与について、「民間企業の再雇用者の給与の動向、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行っていくこととする」とされているところであり、本委員会においても、再任用職員の給与水準や給与制度等について、引き続き、国の動向を注視するとともに、民間における対応状況、本府における実情等も十分考慮して、検討を行っていくこととする。
なお、人事院勧告では、再任用職員の勤勉手当について、勤務実績を支給額に、より反映し得るよう勤勉手当の支給月数の引上げ分の一部を用いて、「優秀」の成績区分適用者の成績率を「良好(標準)」適用者の成績率よりも一定程度高く設定することとしているが、本府の再任用職員の勤勉手当については、既に人事評価結果に基づき、勤務実績を支給額に反映しているところである。

(4) 昇給制度

ア 55歳を超える職員の昇給抑制

国においては、民間企業の状況を踏まえ、50歳台後半層における給与水準の上昇をより抑制するための昇給制度の見直しが平成26年1月から実施されており、他の都道府県においても国の見直しの趣旨を踏まえ、順次、制度見直しが実施されている。
本府においては、人事評価結果が下位区分の職員の昇給号給数を一定抑制しながら、「良好(標準)」以上の区分の昇給幅を一律にするという独自の制度を設けているため、本委員会としては、その独自の制度を前提としつつ、55歳を超える職員の昇給抑制について、国に準じた見直しが必要であるとの考えを示してきたところである。
今後、国と比較して昇給カーブのフラット化が図られている状況を勘案しつつ、国、他の都道府県及び民間の動向も踏まえ、55歳を超える職員の昇給抑制のあり方について検討する必要がある。

イ 人事評価結果の昇給への反映

人事評価における勤務実績の給与反映について、本委員会は、相対評価制度が導入される以前の平成22年12月の「独自給料表の導入等に関する報告及び勧告」等において、短期的な評価を短期的な影響に止め、長期に影響が及ぶ昇給は、下位評価の昇給号給数を一定抑制しながら、「良好(標準)」以上の上位評価を同一の昇給号給数とする一方、勤勉手当への反映を現状よりもメリハリあるものにすることによって、より一層適正で公平な人事評価とすることが必要である旨の考え方を示した。
その後、職員基本条例を踏まえ、一般行政部門に属する職員について、平成25年度から相対評価が本格的に実施され、平成29年1月の昇給からは、制度の趣旨をより一層踏まえたものとするため、相対評価結果が下位区分(第四区分、第五区分)の職員について、昇給号給数を引き下げることとしたところである。この結果、絶対評価がBの職員のうち、相対評価結果が下位区分(第四区分、第五区分)の職員についても、当該相対評価結果により昇給号給数が一定抑制されることとなる。
こうした中で、現行の昇給抑制のあり方について、人事評価制度の目的により適ったものとなるよう、引き続き、検討することが求められる。


2 職員の意欲・能力向上につながる人事制度

(1) 人事評価制度

本府では、職員基本条例を踏まえ、相対評価に基づく人事評価制度が、一般行政部門に属する職員について平成25年度から本格的に実施された。この間、任命権者においては、絶対評価結果と相対評価結果の逆転現象をできる限り解消することや、相対評価時の補正手法の明確化、また、知事表彰や懲戒処分等に関する客観的な評価基準を設定することなどの改善を行ってきた。
一方、平成27年度実施の人事評価制度に関する職員アンケート調査等による検証結果(平成28年8月)によれば、相対評価結果について納得できたとする職員が59.9%であり、前年の54.5%を上回っており、制度として、一定程度、定着しつつあると総括されている。しかしながら、調査対象の約4人に1人が人事評価制度によって執務意欲を低下させている等、現行の人事評価制度が制度目的である「執務意欲の向上」や「職員の奮起や切磋琢磨」へとつながっていない状況にある。
現在の人事評価制度が所期の効果を発揮し得ていないことに関しては、約60%の評価者が相対評価結果について十分説明できなかったとしていることなど、制度そのものについての理解が得られていないことが挙げられるが、その原因は、相対評価により、絶対評価結果よりも下位区分に評価される現象を生じさせていることにあると言える。

例えば、現行制度では、職員基本条例において、相対評価の第四区分が10%、第五区分が5%の分布割合と規定されているところであるが、絶対評価においてC、Dと評価される職員が第四区分、第五区分の分布割合に比して少ない実情にあることから、絶対評価におけるBの職員を相対評価において第四区分、第五区分に当てはめざるを得ない状況になっている。絶対評価におけるBの職員は全職員の69.8%を占めているが、そのうち19.4%が相対評価において下位区分(第四区分、第五区分)とされており、活躍が期待される数多くの職員に不安感を与えかねない状況は、組織の活力の維持、向上の観点から、看過し得るものではない。
本委員会としては、職員の人事評価については絶対評価が基本であると考えるが、その上で、部署間の調整あるいは評価結果の給与等への反映等の観点から、相対化の仕組みを設けることがあり得るとしても、相当数の職員に絶対評価と相対評価の結果の乖離が生じている現状は、職員の理解と信頼が得られる制度とは言い得ないと思われる。
かかる相対化を行う場合は、職員の理解が得られるよう評価手法の改善に努める必要があるとともに、相対評価における評価区分の分布割合を柔軟化する運用、あるいはそのための制度設計の見直しが検討されるべきであると考える。

(2) 有為な人材の確保

人口減少社会、少子・高齢化を迎える中で、有為な人材の確保は厳しい競争環境が続くと予測される。社会情勢が大きく変動する中で、将来にわたって質の高い行政サービスを提供していくためには、強い意志、チャレンジ精神、自律型の行動特性などを持った有為な人材を安定的、継続的に確保することが必要である。
近年、民間企業の採用意欲が高まる中、本府の採用数が増加傾向にあることも相まって、採用試験の競争倍率は低下傾向にあり、また、有為な人材の確保については民間企業との間だけでなく、国、地方公共団体間でも激化している。
有為な人材の確保には、まず、多くの人に採用試験を受験してもらうことが重要である。そのためには、府民の理解のもと、適切な勤務条件や勤務環境を整えるとともに、国、他の地方公共団体、民間企業との比較において、やりがい、魅力ある職場であることや、仕事を通じて組織の中で自らが成長できる可能性を有していること等を、様々な媒体を通じて積極的・効果的に発信し、受験意欲を喚起することも必要である。特に、一部の技術職においては競争倍率が低く、人材確保に向けたさらなる取組みが必要である。

また、本府においては、民間企業志望者にもより受験しやすい制度とするため、平成27年度から一部の採用試験において、民間企業の採用試験でも広く利用されている総合能力試験を1次試験で実施するとともに、論文試験においては従来の見識分野の出題に加え、法律・経済分野も選択可能にすることで、専門知識を有する受験者層の受験拡大を図るなどの制度改革を行ったところである。
かかる採用試験の実施方法が、受験者の能力や適性を的確に判定し、採用後、行政の第一線で期待される役割を果たし得る人材を確保することとなっているかについて、任命権者と協力して研究・検証し、必要に応じ試験制度や人材育成のあり方について所要の改善を図っていく必要がある。

(3) 管理職の公募

管理職である部長、学校長等は、幅広いマネジメント能力が求められるとともに、本府の行政・教育行政全般の実情にも精通し、経験に裏づけられた実務関係能力が必要とされる重要な職である。複雑・多様化、高度化した府民ニーズへの対応が求められる時代にあっては、これまでの考え方にこだわることなく、府民の視点で業務を遂行していくことが重要であり、こうした意味で、管理職に適した人材を庁内外を問わず幅広く公募により求めることは有用である。
任命権者においては、これまでの課題も踏まえ、選考方法など運用についての改善等に努められてきたところである。
一般行政部門においては、平成26年に「公募制度のあり方検討チーム」の報告書が取りまとめられ、外部人材の登用に際しては、当該人材に求められる役割と適性の合致を見極め、その職責を果たし得る優秀な人材の登用に努めることとされた。
また、学校長の公募においても、マネジメント力と教育に対する情熱を持ち、民間企業等で培われた柔軟な発想、企画力を学校経営にいかせる人材を登用する観点から選考方法が改善されたところである。

一方、府政の実務の大半を担うのは内部職員であり、これら内部職員の府政における知識、経験、ノウハウは、府民ニーズに応えていく上で十二分に活用されるべき貴重な財産である。内部職員の管理職への積極的な登用は、職員のモチベーションの向上の観点からも重要である。
今後ともこれまでの経過や課題を踏まえた上で、適材適所の観点から庁内外の優秀な人材が登用され、一層の組織の活性化や教育環境の充実につなげていくことが求められる。
なお、他の地方公共団体や民間企業の異なる価値観に触れ、優れたノウハウを取り込むことなどにより組織の活性化を図ることは有意義であり、人材交流についても引き続き取り組まれることが期待される。

(4) 高齢期職員の能力活用

高齢期職員の雇用については、公的年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられていく途上にあり、雇用と年金の接続への対応に加え、労働力確保、生きがいづくりなどの社会的な要請や、本府の組織活性化の観点を踏まえて取り組むべき課題である。平成28年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」においては、高齢者の就労促進について、人口が減少する中でわが国の成長力を確保していくためにも、高齢者の就業率を高めていくことが重要であるとされている。公務員においても、高齢職員の能力や経験をより一層活用していくことが重要であり、公務の運営状況や民間の状況などを踏まえ、必要な措置が検討される状況にある。
こうした中で、本府においても高齢期職員が公務内外を問わず、これまで培われた能力と経験を十分に発揮できる環境づくりや支援を積極的に行っていくことが求められている。
公務内における再任用制度については、人材の有効活用、ノウハウの継承の観点からも、引き続き効果的に運用する必要がある。

平成27年の勧告においては、職員定数や人員構成の状況を踏まえつつ、再任用職員を定年前の職員と共に府政を担う一員として、より一層活用する観点から、管理職への登用も含め、職域の拡大を図り、その能力と経験をいかせるようにすることが必要との考えを示したところであるが、一般行政部門においては、再任用職員を管理職として採用するための選考が平成28年度に実施されたところである。
今後とも、再任用職員の活用について、国や民間の動向等をも踏まえつつ、一層の職域拡大を図るなど、さらなる取組みが求められるところである。
公務外の再就職については、任命権者において、平成28年度から人材バンクの運用を一部見直し、登録職員と求人企業・団体等の間で、直接、面接希望申出や登録職員への面接選考の通知を行うなど、制度の透明性を高めるとともに、手続の迅速化が図られている。
働きたいと願う高齢者の希望を叶え、生涯現役社会を実現するためにも、今後とも、高齢期職員が公務内外を問わず、その能力や経験を社会で十分に発揮できるよう、引き続き積極的な取組みを望むものである。

3 働きやすい勤務環境づくりの推進

「ワーク・ライフ・バランス」は、ワーク偏重の従来の価値観を転換し、ワークとライフのバランスが取れた新たな社会の実現を目指すものである。
 この理念を社会全体で共有し、その実現に向けた取組みを進めていくことにより、社会経済の持続的な発展と人々が豊かでそれぞれのライフステージに応じていきいきと暮らせる社会づくりが可能となる。
「ニッポン一億総活躍プラン」においては、誰もがその能力を発揮して活躍できる社会の実現に向けて、働き方改革等を進めていくことが社会全体として取り組むべき重要な課題とされている。
こうした中で、本府職員についても、長時間労働の解消や柔軟な働き方を実現し、育児、介護や家庭、地域、自己啓発等のための個人の時間を確保する、ワーク・ライフ・バランスの実現のための環境づくりが課題であり、その実現に向け任命権者の強力な取組みが必要である。こうした観点から、以下、意見を申し述べる。

(1) 勤務条件の改善等

ア 柔軟な働き方の実現

国においては、長時間労働を抑制し、働く人々のワーク・ライフ・バランスを実現するため、平成27年夏から「夏の生活スタイル変革(通称「ゆう活」)」を国民運動として展開するとともに、平成28年4月からは、近年のワーク・ライフ・バランスに対する意識の高まり、働き方に対するニーズの多様化の状況等を踏まえ、原則として全ての国家公務員を対象に、より柔軟な働き方を可能とするフレックスタイム制を拡充したところである。
また、公務におけるテレワークの推進について、テレワークを社会全体へと波及すべく、政府全体としての取組みが進められているところである。
少子・高齢化の中で、女性職員や高齢期職員の活躍が期待されており、そのためにも、長時間労働の是正のほか多様で柔軟な働き方を構築していくことが重要である。
任命権者においては、本府の実情、組織の現状等を踏まえ、ワーク・ライフ・バランスの実現を目指す観点からも、職員の働き方としてどのような態様が必要であるかを検証し、そのための新たな仕組みづくりを含めた具体的な取組みが求められる。

イ 仕事と家庭の両立支援の充実

平成28年の人事院勧告においては、民間労働法制の改正内容に即した見直しを行うことが適当であるとされ、介護休暇の分割取得を可能にすること、介護のために勤務時間の一部を勤務しないことを承認できるよう措置することなどに言及されている。
本府においては、延長された次世代育成支援対策推進法に基づく特定事業主行動計画を平成27年4月に策定し、仕事と子育てを両立できる環境づくりを推進しているところである。また、育児や介護を行う職員に対しては、これまでも育児短時間勤務制度の導入、短期の介護休暇の新設、さらに平成28年度からは、男性の育児参加休暇の取得期間の拡大などの取組みも行われている。

しかしながら、一般行政部門における平成27年度の男性の育児休業取得率は1.6%と非常に低い状況にあり、また、年次有給休暇の使用状況を見ると、目標としている14日に対して平成27年は平均11日5時間であり、制度が十分活用されていない状況も見られる。
本委員会としては、仕事と家庭の両立支援が大きな社会的要請であるとの認識のもと、この方向性に沿ったさらなる制度の充実を図ることが重要であると考えるところである。このため、国家公務員との均衡の観点からも、人事院勧告に準じた取扱いを基本とし、任命権者において、今後、必要な措置が適切に講ぜられることを求めるものである。

(2) 時間外勤務の縮減

「ニッポン一億総活躍プラン」では、多様な働き方が可能となるよう、社会の発想や制度を大きく転換しなければならないとされ、長時間労働の是正など、働き方改革の方向が示されている。長時間労働の是正は喫緊の重要な課題である。
時間外勤務は本来、緊急かつ例外的なものに限られるものであり、法令において厳しい制限が課せられている。労働省告示「労働時間の延長の限度等に関する基準」においても、基本的には年間では360時間が時間外労働協定における上限基準とされているところであるが、「ニッポン一億総活躍プラン」において、当該協定における時間外労働規制のあり方についても再検討することとされているところである。
本府においては、ゆとり週間や定時退庁日の設定のほか、時間外勤務命令の上限規制の導入など、時間外勤務の縮減に向け、これまで様々な取組みが実施されてきた。さらに平成28年度からは一般行政部門において、新たに部局の状況に応じたモデル職場の設定など、時間外勤務を縮減する雰囲気づくりや意識改革にも取り組まれている。

しかしながら、様々な取組みの努力がなされているとは言え、長時間労働が常態化していると言わざるを得ない。一般行政部門における平成27年度の時間外勤務の実績は、年間360時間の上限規制を超える職員数が726人となり、平成26年度の688人から5.5%増加している。とりわけ、厚生労働省が示す過労死ラインとされている月80時間を超える時間外勤務を行った職員は396人に及び、平成26年度の390人から1.5%の増加となっている。生死にかかわる過労死ラインを超える時間外勤務者が多数かつ漸増の傾向にある状況を、もはや放置することは許されず、早急な対応が求められる。
時間外勤務は管理・監督者の事前命令によって行われることが基本である。管理・監督者は、看過し得ない過労死ラインを超える時間外勤務を含め、時間外勤務が常態化している現状の重大性を認識した上で、実態の把握、課題の抽出、目標及び対策の明示を行い、組織を挙げて全力を傾注して取り組み、その結果を次の対策にいかすことが重要である。
時間外勤務の縮減に向けては、全庁を挙げて取り組むことが肝要であり、任命権者において、メッセージの発出等も含め、より一層強力に取り組まれることを求めるものである。

(3) 女性職員の活躍推進

政府においては、「一億総活躍社会」を実現していく上で、女性の活躍は最も重要な鍵となるとし、平成27年の「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の成立や「第4次男女共同参画基本計画」の閣議決定など、全ての女性が輝く社会の実現に向けて取組みが進められている。
本府においては、かねてから女性の視点を施策にいかすとともに庁内の活性化を図る観点から、働きやすい職場環境づくりや幅広い分野への任用等により、女性職員の活躍推進の取組みがなされている。こうした中で、近年、とりわけ新規採用者の約半数を女性が占めるなど、女性職員の割合が上昇していくことが見込まれる。そのため、優秀な女性職員の管理職への登用を一層図っていく必要があるが、行政職における主査級昇任考査において、女性職員の受験率は男性職員の受験率を大きく下回る状態が続いており、女性職員の受験率の向上が女性職員の活躍推進に向けた課題の一つである。

任命権者が平成27年度に行った昇任意欲に関する職員意識調査によると、昇任を望まない理由について、特に女性職員は、「仕事とプライベートの両立が困難」「育児」「介護」といった家庭環境に関する回答が多くなっている。
こうした状況をも踏まえ、民間労働法制の改正内容に即した必要な措置を適切に講ずるとともに、主査級昇任考査の受験促進に向け、女性職員が管理職等責任ある立場で活躍できるよう、職場全体の意識改革と環境づくりなど、より一層組織的な取組みを進めていくことが必要である。

(4) 健康管理・メンタルヘルス対策

労働安全衛生法においては、快適な職場環境の実現を通じて職場における労働者の安全と健康を確保することは事業者の責務とされている。職員の健康状態を把握し、適切な健康管理を行うことは、職員の公務能率を維持、向上させるための前提であり、管理・監督者は、日常的に職員の心身両面の健康状態に留意し、職員が安全な環境で健康に就業できるよう対策を講ずることが求められている。
本府においては、一般定期健康診断、特別健康診断、専門医や心理相談員によるストレス相談等の実施、職場復帰支援プログラムの整備による職場復帰に係るフォローアップ、メンタルヘルス講演会やセミナーの開催など様々な対策が進められている。
平成27年12月からは、労働安全衛生法の改正に伴い、医師、保健師等による労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)及びその結果に基づく医師による面接指導等を実施することが事業者に義務づけられたところであり、任命権者においては、平成28年度から、実施体制や実施方法等を定めたストレスチェック制度実施要綱等を策定し、運用を開始しているところである。

本府の一般行政部門における長期病休者数(30日以上)については、全国都道府県の中でも病休者の率が高く、こころの健康管理に関しては、全休業者数(7日以上)に占める精神疾患(疾病分類:精神及び行動の障害)を要因とする休業者数の割合は、約4割の水準で推移しているところであり、公務能率の維持、向上の観点からも対策の充実がより一層求められる。
任命権者においては、職員に対し、ストレスチェック制度の趣旨等を十分周知し、ストレスへの気づきを促すことが重要である。さらに、ストレスチェックの結果を所属ごとに集計・分析し、職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものを低減するよう努めることが必要である。これらを通じて、引き続き、メンタルヘルス対策の一連の取組みを継続的、計画的に進めることを求めるものである。

(5) ハラスメントの防止 

ハラスメントは、個人の尊厳を不当に傷つけ、その能力発揮を妨げるとともに、公務能率の低下を招き、組織に対する府民の信頼をも損ないかねないものである。このため、本委員会としては、これまでハラスメントのない職場環境づくりに向けて積極的な取組みを求めてきたところである。
職場におけるパワーハラスメントについては、その増加が社会的な問題として顕在化してきており、厚生労働省において「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第2版)」が平成28年7月に作成されたところである。
また、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)が改正され、平成29年1月以降、妊娠、出産、育児休業・介護休業等の取得等を理由とした、上司・同僚等による不適切な言動等の就業環境を害する行為を防止するために必要な措置を講ずることが事業主に義務づけられることとなっており、本府においても国や民間における措置内容を踏まえた取組みを行う必要がある。

さらに、厚生労働省告示「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(いわゆるセクハラ指針)が改正され、被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも同指針の対象となることが明記されたところであり、任命権者においては、これを踏まえ、適切に対応する必要がある。
本委員会が設置する職員総合相談センターでは、相談者の悩みに真摯に向き合い、問題解決に向けた助言等を行う体制を整えているほか、任命権者の要請によるハラスメント防止に向けた研修等への相談担当職員の派遣など、積極的な支援を行ってきたところである。こうした中で、職員総合相談センターに寄せられるハラスメントに関する相談は、少なくない状況にある。
任命権者においては、ハラスメント防止に向けた知事、教育長からのメッセージの発出や、部局長等を対象とする管理職研修、新任の課長級・課長補佐級に対する研修など、様々な取組みが行われているが、こうした状況を踏まえ、今後とも、ハラスメントのない職場環境づくりに向けて、ハラスメントを起こさないことが重大な責務であることを管理職に徹底するとともに、職員一人ひとりがハラスメントを許さないという価値観を共有するよう、引き続き積極的な取組みを推進する必要がある。

4 公務員制度をめぐる諸課題について

(1) 教職員を取り巻く諸情勢

学校においても、長時間労働の是正が喫緊かつ重要な課題である。教職員の長時間労働の解消を図ることにより、児童・生徒の学力向上や人格形成に教員の力が十分発揮できる環境づくりを進めることとなる。
文部科学省では、平成27年7月、「学校現場における業務改善のためのガイドライン」を策定し、業務改善の基本的な考え方や改善の方向性、留意すべきポイントが示された。また、平成28年6月には「次世代の学校指導体制にふさわしい教職員の在り方と業務改善のためのタスクフォース」の報告が取りまとめられ、休養日の設定の徹底をはじめとした部活動の運営の適正化や勤務時間管理の適正化の必要性等が示されている。

本府においても、「教職員の業務負担軽減に関する報告書」(平成25年3月)を取りまとめ、効率的な事務処理体制の整備、ICT化の推進など継続的な取組みを行ってきた。また、「長時間労働健康障がい防止委員会」を設置(平成27年8月)して、府立学校における長時間労働の実態把握や課題の洗い出しを行うとともに、府立学校校長、准校長、教頭に対し、時間外在校時間の縮減に関する適切なマネジメントのための指導がなされてきた。
しかしながら、教育委員会において出退勤時間の差として把握した平成27年度の教員の正規の勤務時間外における在校時間は、全府立学校で1人1月当たり平均29.2時間、特に高等学校の全日制課程では1人1月当たり平均33.4時間(いずれも校外での指導時間は含まない。)に及んでおり、平成26年度に比して増加傾向にある。とりわけ年間の時間外在校時間が800時間を超えている教員が約900人、そのうち1,000時間を超えている教員が約300人という状況にあるなど、教員の長時間労働が常態化しており、課題は深刻であると言わざるを得ない。
教員は通常の授業以外にも、課外の授業、部活動のほか、授業準備、生徒評価、生徒指導、保護者対応、各種事務作業等を担っているが、これらの業務は在校中に限らず校外や帰宅後にも及んでおり、これらの状況が長時間労働の実情の把握と解決を困難にしている現状にある。

教育委員会においては、従来の学校長を通じた対応によるだけでなく、自らの責任として教職員の現場の実情把握に努め、速やかに長時間労働の抜本的解決に向けた具体的な対応が求められることを強く指摘しておく。
また、教員定数の一部に定数内講師を配置し、産前産後休暇や育児休業等を取得した教員の代替としても講師を配置している。しかしながら、必要な講師が配置されず、当初の計画どおりに授業が実施されない事態は、たとえ件数が少なくとも当該学校の児童・生徒に及ぼす影響は大きく、教育委員会においては、引き続き、中長期的な観点も含めて適正な教員の配置に努めることが求められる。

(2) 非常勤職員の処遇

臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等のあり方については、平成28年5月から総務省による実態調査が実施されるとともに、同年7月に設置された有識者による研究会において検討が進められ、同年中に取りまとめられる予定である。
任命権者においては、平成28年4月、地方公務員法に定める特別職に位置づけてきた非常勤職員のうち、職務の内容が補助的・定型的であったり、勤務管理や業務遂行方法において労働者性の高い職にあっては、原則として、一般職へとその位置づけを変更し、必要な見直しが行われたところである。また、この間、一般職への位置づけ変更に合わせて、病気休暇の付与日数を10日以内から90日以内に拡充するなど、引き続き非常勤職員の勤務条件の整備が図られている。
効率的・効果的な行政サービスを提供する観点から、常勤職員と非常勤職員が共に組織を支える一員としてその能力を最大限に発揮することが必要である。
今後とも上記研究会の検討結果、国、他の都道府県の動向などにも留意しつつ、より一層適正な勤務条件の確保に努められ、非常勤職員が高い意欲を持って勤務することができるよう取り組まれることを求めるものである。

 

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人事委員会事務局 人事委員会事務局給与課 給与グループ

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