○大阪府安全なまちづくり条例第26条第1項及び第2項の規定の解釈及び運用に関する基準

平成14年4月18日

大阪府公安委員会告示第45号

大阪府安全なまちづくり条例(平成14年大阪府条例第1号。以下「条例」という。)第26条第3項の規定により、同条第1項及び第2項の規定の解釈及び運用に関する基準を次のように定める。

大阪府安全なまちづくり条例第26条第1項及び第2項の規定の解釈及び運用に関する基準

(平31公委告示27・改称)

第1 趣旨

大阪府内においては、近年、鉄パイプ、バット等棒状の凶器を使用した強盗、傷害事件等が多発している。これらの犯罪は、鉄パイプ等という凶器の性質上、人の身体に重大な危害を及ぼすことが多く、府民の安全な社会生活を脅かしており、このような犯罪から府民の生命及び身体を守るためには、正当な理由のない鉄パイプ等の携帯を禁止する必要がある。

鉄パイプ等の正当な理由のない携帯を規制する法令としては、軽犯罪法(昭和23年法律第39号)があり、同法第1条第2号では正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を「隠して携帯すること」を規制しているが、「隠して携帯すること」が要件であるため、人を襲撃する等といった強盗、傷害等の犯罪を犯す目的で鉄パイプ等を携帯していても、公然と手に持っている場合や、乗用車の助手席や後部座席に単に置いている場合には、「隠して携帯する」という要件に当たらないため、人に危害を加える危険性は同じであるにもかかわらず、同法違反には該当せず許される行為とされている。

そこで、鉄パイプ等を「隠して携帯すること」に当たらない場合についても、業務、スポーツ等その本来の用途に従い使用し、又は運搬する場合その他社会通念上正当な理由があると認められる場合を除き鉄パイプ等を携帯することを条例で禁止することにより、多発する鉄パイプ等を使用した犯罪による被害を防止し、府民が安全で安心して暮らせる社会の実現を目指すものである。

第2 解釈及び運用の基準

1 規制の対象

規制の対象となる、正当な理由のない携帯が許されないものは、「鉄パイプ、バット、木刀、ゴルフクラブ、角材その他これらに類する棒状の器具であって、人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるおそれのあるものとして公安委員会規則で定めるもの」(以下「鉄パイプ等」という。)である。

条例第26条第1項に明示されている鉄パイプ、バット、木刀、ゴルフクラブ及び角材以外の公安委員会規則で定めるものとは、大阪府安全なまちづくり条例施行規則(平成14年大阪府公安委員会規則第9号)第5条において、「(1)レンチ、(2)バール、(3)スパナ、(4)やり状に先端部をとがらせた竹の棒、(5)金属製の棒(伸縮式のものを含む。)、こん棒その他これらに類する硬度及び重量を有するもの(第1号から第3号までに掲げるものを除く。)」と規定されている。伸縮式の金属製の棒には、例えば、特殊警棒が当たる。また、「これらに類する硬度及び重量を有するもの」とは、社会通念に照らし、人の視覚上直ちに危険を感じさせるに足りるもので、使用された場合には通常人の身体に重大な害を加え得るものであることを要し、例えば、金属製又は木製の棒と同程度の硬度及び重量を有する合成樹脂の塩化ビニール管、プラスチック管等が該当する。

一方、棒状の器具であっても、プラスチック製の子ども用のバット、剣道の竹刀、竹ざお(やり状に先端をとがらせた竹の棒を除く。)、ステッキ、傘等は含まれない。

なお、鎖、チェーン、ぬんちゃく、メリケンサック等は、棒状の器具に該当しないことから、条例の規制の対象とはならないが、これらを正当な理由なく隠して携帯すれば軽犯罪法違反となることがある。

2 規制場所

鉄パイプ等を正当な理由なく携帯してはならない場所(以下「規制場所」という。)は、「道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他公衆が出入りすることができる場所」又は「汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他公衆が利用することができる乗物」であり、いわゆる公共の場所又は公共の乗物である。これらの場所・乗物は、有償であると無償であるとを問わず、不特定多数の者が自由に出入りあるいは利用することができる状態であることが必要であり、条例第26条第1項に明示されている場所・乗物のほか、例えば、営業時間帯の百貨店及びスーパーマーケット、ホテルのロビー、ケーブルカー等が挙げられる。

しかし、公衆が自由に出入りし、又は利用することができない場所・乗物は規制場所とはならないため、特定の者しか利用しない住居、工場の敷地、タクシー等は該当しない。また、学校、保育所等の施設については、通常は、教師、生徒等の学校、保育所等の関係者以外の者の立入りが禁止されているので、一般には、規制場所とはならないが、例えば、休日等に学校開放日等を設けて広く一般人の立入り又は利用を認めている場合には、「公衆が自由に出入りすることができる場所」となるので、規制場所となる。これに対し、映画館、百貨店等概念上は規制場所に当たる場合であっても、営業時間帯以外の時間帯の映画館、百貨店等は、一般に、条例の規制場所には当たらない。

3 規制の対象となる携帯の態様

(1) 携帯の意義

「携帯」とは、一般に、日常生活を営む自宅又は居室以外の場所において直接手に持ち、又は身体に帯びる等直ちにこれを使用し得る状態で身辺に置くことをいう。例えば、直接手に持ち、又は身につけている場合、かばん、紙袋等に入れて持参する場合はもとより、乗用車の助手席、後部座席又はトランクに積み込んで車を運転する場合も「携帯」に当たる。

なお、鉄パイプ等を車の後部座席に毛布等にくるんで隠している場合やトランクに積み込んで隠している場合、鉄パイプ等をコートやかばんの中に隠す場合等、鉄パイプ等を正当な理由なく「隠して携帯」している場合には、軽犯罪法第1条第2号違反ともなる。

(2) 携帯に「正当な理由」があると認められる場合

鉄パイプ、バット、ゴルフクラブ等について、業務に使用する場合やスポーツに使用する場合等「その本来の用途に従い使用し、又は運搬する場合その他社会通念上正当な理由があると認められる場合」に携帯が許されるのは当然である。

具体的には、鉄パイプや角材を建築現場に搬入するために持ち運ぶ場合、バットやゴルフクラブを販売店で購入し家まで持ち帰る場合、バットやゴルフクラブを野球やゴルフの試合、素振り等の練習をするために持ち運ぶ場合等は、「正当な理由」があると認められる場合に当たる。

なお、ゴルフの試合を終えた後乗用車のトランクにゴルフクラブを入れて帰宅し、翌日ゴルフクラブをトランクに入れていることを忘れたまま、会社に出勤するため乗用車を走行させた場合等は、そのことのみを理由として条例違反となるものではない。

(3) 携帯に「正当な理由」があると認められない場合

人を襲う、脅すあるいは物を壊す等の犯罪を行う目的や、けんかになった場合に使う目的等、社会通念上鉄パイプ等を携帯することが相当と認められない場合には、「正当な理由」があるとは認められず、そのような場合に鉄パイプ等を携帯することは、条例違反となる。例えば、暴走族が人を襲い、又は脅すために二輪車や乗用車に鉄パイプ等を積み込んで走行する場合、強制性交等、路上強盗、恐喝等の犯罪を犯す目的で鉄パイプ等を手に持ち、あるいは乗用車に積み込んでうろつく場合、小学校の周辺や児童公園、繁華街等で子どもや通行人を襲うため鉄パイプ等を手にうろつく場合等は「正当な理由」があると認められない場合に該当する。

また、例えば、暴走族が対立するグループに備えてそれに対抗するため鉄パイプ等を乗用車に積み込んで走行する場合や、けんかになったときに備えて鉄パイプ等を携帯する場合等いわゆる「護身用」に携帯する場合は、一般に、「正当な理由」があると認められる場合には当たらない。

4 運用上の留意事項

鉄パイプ等を携帯している者について、「正当な理由」があると明らかに認められる場合、例えば、野球やゴルフの試合・練習をするためにバットやゴルフクラブを携帯していると認められる場合や建築現場に搬入するために建築資材である鉄パイプや角材を携帯していると認められる場合等には、原則として警察官は職務質問をすることはない。

一方、例えば、小学校や児童公園の付近で鉄パイプ等を手にしてうろついている者を発見した場合、「小学校の通学路に鉄パイプ等を手にうろついている男がいる」との110番通報を受け、それらしい者を発見した場合、鉄パイプ等を所持している暴走族を発見した場合、夜間に公園や駅の周辺で鉄パイプ等を携帯してたむろしている者を発見した場合、「乗用車に乗った男が鉄パイプで他の通行車両を威嚇しながらはいかいしている」との110番通報を受け、発見時には鉄パイプ等は見当たらなかったが当該乗用車内に鉄パイプ等を隠して携帯していると疑われる場合等には、原則として警察官は事情を聞くこととなる。

質問を行うに際しては、鉄パイプ等の携帯に「正当な理由」があるかどうかについて主に尋ねることとなるが、特に、バット及びゴルフクラブは、「その本来の用途に従い使用し、又は運搬する場合」の携帯であることが他の器具に比べて多いと考えられることから、これらを携帯する者について「正当な理由」があるかどうかについて警察官が判断を行う場合には、特に慎重に確認を行うものである(条例第26条第2項参照)

また、鉄パイプ等の携帯に正当な理由があると認められない場合はもとより、正当な理由があると認められる場合であっても、携帯している者が酩酊めいていしている場合、他人とけんかをした直後でそのまま放置すれば鉄パイプ等を使用して再びその者とけんかをする危険性があると認められる場合等、周囲の事情から合理的に判断して他人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれがあると認められる場合には、条例第26条第5項に基づいて、警察官は、府民の生命及び身体を守るため鉄パイプ等の提出を求めて一時保管する場合がある。

なお、刃物について同様の規制をしている銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年法律第6号)の運用に関し、警察官が、酩酊めいていしてナイフを携帯していた男からナイフを提出させて一時保管せず帰宅させた後、その男がナイフで他人を傷つけ重傷を負わせた事案に関し、ナイフを提出させて一時保管しなかった警察官の措置について違法であるとした裁判例がある(最高裁昭和57年1月19日第三小法廷判決)

(平30公委告示66・平31公委告示27・一部改正)

改正文(平成30年公委告示第66号)

平成30年6月5日から実施する。

改正文(平成31年公委告示第27号)

平成31年6月1日から実施する。

大阪府安全なまちづくり条例第26条第1項及び第2項の規定の解釈及び運用に関する基準

平成14年4月18日 公安委員会告示第45号

(令和元年6月1日施行)

体系情報
第5編 生/第6章 安全なまちづくり
沿革情報
平成14年4月18日 公安委員会告示第45号
平成30年6月5日 公安委員会告示第66号
平成31年3月27日 公安委員会告示第27号