◇官から民へ
国や地方自治体における財政状況が厳しさを増す一方で、住民ニーズの高度化や多様化が
進んでおり、今後、各地域において財政支出の効率化を図りつつ、住民サービスの向上を目指
していくことが求められている。このような要請に応えていくためには、これまで行政が独占して
きた公共サービスに民間の専門的なノウハウやスケールメリット、業務運営の柔軟性、創意工
夫を生かしていくことが不可欠である。
(注)こういったことから、近年、国や地方自治体においては、政策や事業の検討を行う際にPPPの
視点が重要視されている。
官から民への流れそのものは、多くの先進国でみられた公的部門の肥大化及び効率性低下
や財政赤字の拡大等を背景として、1980年代以降、各国で始まっていたものである。90年代後
半以降は、民営化について単純に権限を移転する手法以外にも、事業・施設の権限を官が持ち
つつ、運営面を民に委託、あるいは開放したり、官民協働による事業運営(PPP)が行われるなど、
多様な手法がとられるようになってきた。
最近では、これまでの取組みで得られた豊富な経験を活かし、官民の役割分担を適切に進め
つつ、効率的で質の高い公共サービスの提供を行おうとする取組が見られるようになってきた。
依然として存在する財政赤字への対応として経費削減圧力が強いものの、公共サービスの受益
者である府民の立場に立ち、よりよいサービスを効率的に提供するために、いかに民間部門を活
用すべきかという視点が重要となっている。
(注) PPP(Public Private Partnership)とは、1990年代後半に欧米で普及しはじめた概念で、公共セクターの
直営業務の民間委託(アウトソーシングや公設民営)、公共事業への民間資金の導入(PFI)のほか、
独立行政法人化、民営化を含む幅広い考え方であり、各国で若干の相違はあるものの、基本的には
「官と民が協力して公共サービスを民間に開放すること」とされている。80年代に英国で提唱されたNPM
(New Public Management)端を発しているといわれている。
◇国の取組み
国においては、小泉内閣発足後、2001年(平成13年)4月に、「総合規制改革会議」を設置し、
内閣総理大臣の諮問に応じ、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革に
関する基本的事項について総合的に調査審議が進められた。
総合規制改革会議(平成13年4月から平成16年3月)終了以降も規制改革をより一層推進する
ため、2004年(平成16年)4月、内閣総理大臣の諮問に応じ、民間有識者13名から構成される
「規制改革・民間開放推進会議」を内閣府に設置、2005年(平成17年)11月までの間に5回会合
が開催され、「規制改革・民間開放推進のための基本方針」を決定している。
さらに、平成18年5月26日には、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律案」
いわゆる市場化テスト法が成立するなど、「行政改革の重要方針」で定める改革の着実な実施に
向けた取組が一層加速している。
◇先駆的な取組み
大阪府では1997年(平成9年)に策定した「行政改革推進計画(1998年度版)」において「公民
の役割分担に関する基本指針」を定め、民間への委託により業務の効率性の向上や高度で専門
的なサービスの提供が期待できるものについては積極的に民間委託を進める方針を打ち出した。
翌年には、アウトソーシングも視野において「外部委託に係る指針」を策定し、委託化を推進してきた。
1999年(平成11年)9月の「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法
律(PFII法)」施行を踏まえ、2002年(平成14年)2月、大阪府としての「PFI検討指針」を作成し、P
FI導入の取組みを開始した。2000年(平成12年)以降は、府有建築物の設備について、民間の資
金・ノウハウを活用して省エネルギー化の改修をしたうえで、それによる光熱水費の削減分で改修
工事にかかる経費を償還し、残余を府と事業者の利益とする、民間資金活用型のESCO事業の取
組みも進めてきた。
また、2004年(平成16年)4月には、総務事務の手続をIT化し、加えてシェアードサービスの手
法を取り入れて総務事務の抜本的な改革を行った「総務サービスセンター」を稼動した。
そのほか、2000年(平成12年)からはじめられている、道路や河川の地域の団体による清掃美
化活動であるアドプト活動、2004年(平成16年)からは「野菜たっぷりコンビニ弁当」の監修をはじ
め、「食育」の取組みを企業とともに進めている。
◇大阪版PPP改革
こうした取組みを進める過程において、2004年(平成16年)9月に、「大阪版PPP改革」の推進を
打ち出した。「公共サービスは行政だけが担うもの」という思い込みから脱却し、今求められる公益
とは何かを見極め、それを満たすために、行政は企画・調整、監視・評価などコーディネーターの役
割を果たし、最適主体により最適サービスを提供することが、豊かで持続可能な地域社会を実現さ
せるという理念のもとに、企業を公益実現の新たなパートナーとしてとらえ、「民のまち」大阪がこれ
まで取り組んできた先駆的事例を踏まえながら、新たな官民協働モデルの確立を目指すものであ
る。
PPPは官業の民間開放という側面が強調され、市場化テストやPFIを指す概念として使われるこ
とが多い。しかしながら、大阪府では民間との協働という幅広い視点で捉え、民間開放だけでなく、
アドプト活動などの府民との協働や、民間のノウハウの導入など、官民の協働により行政サービス
の質的向上や効率化を推進する取組みを「大阪版PPP改革」と銘打って推進している。
2005年(平成17年)4月からは、広告事業の展開や指定管理者制度の導入、市場化テストの検
討など官民協働による取組みを進めてきたところであるが、今後とも、大阪が再生し、発展していく
ためには、自治体はもとより、住民・地域全体がそれぞれの責任を果たしながら、自らの発想と力
で大阪再生を果たしていくことが大切である。
このため、公共サービスの様々な担い手における役割分担を進め、共に連携を図りながら、最適
主体が最適サービスを提供する「新たな『公』」の実現をめざした官民協働の取組みを一層推進し、
地域のことは地域が責任をもって自ら考え、行動する、「地域主権型の府政」運営に取り組んでいく。
… 新たな「公」の実現のために … |
(1)様々な手法を活用した、府民サービスへの民間の参入機会拡大 |
(2)競争原理を活用した、府民サービスの質の向上と効率化 |
(3)民間の経営感覚による府政改革(職員の意識改革) |
(4)人口減少期に対応したスリムで効率的な組織体制の確立 |
大阪府においては、便宜上、官民協働について、以下のような類型に整理し、庁内における認識の統一を図り、取組みを一層推進していくこととする。
(1)民間開放
定 義 | 本府が担うべき事業について、その業務の全部又は一部を民間に委ねる取組み。 なお、府民に対する最終責任は本府が負う。 |
効 果 | ・公共サービスに競争原理を導入することによる質の向上と効率化 ・民間ビジネスチャンスの拡大 |
事業例 | ・指定管理者制度 ・PFI事業 ・業務の民間開放(総務サービス・センター、パスポートセンター等) ・大阪版市場化テスト |
定 義 | 本府が独自の行政サービスとして実施してきた事業、あるいは今後実施しようとする事業で、民間企業やNPO団体、府民等と共に協働・連携する取組み。 なお、事業の責任は関係者間で協議し、明確にしておく必要がある。(必ずしも府が最終責任を負うものではない。) |
効 果 | ・民間の社会貢献の拡大 ・府政への民間・府民の参加意識の醸成 ・地域のニーズに応じたサービスの実現(地域主権の確立) |
事業例 | ・住民・地域との協働(アドプト・プログラム、食品表示ウォッチャー) ・NPOとの協働(大阪NPOプラザの管理・運営) ・企業等との協働 (野菜たっぷりコンビに弁当などの食育事業の推進) ・新たな市場の開拓 (健康サービス産業の基盤づくり、ロボット産業の拠点形成) |
(3)民間活力(ノウハウ・資金)活用
定 義 | 府の施策及び組織運営に、民間のノウハウや資金、人材を活用する取組み。 |
効 果 | ・民間ノウハウを活かした職員の意識改革、府政改革 ・府政運営の効率化(歳出予算の削減) なお、民間に単に資金を出資してもらうのではなく、民間ノウハウを 活用したり、資金提供者とWIN-WINの関係を構築 |
事業例 | ・民間手法の導入(民間人材の登用、民間派遣研修、外部アドバイザー) ・広告の掲載(パスポートセンター、ホームページなどへの広告掲載) ・ESCO事業 ・企業等との協働による歩道橋リフレッシュ ・民間PET診療所の誘致 ・独立行政法人 ・ネット公売 |
このページの作成所属
財務部 行政経営課 企画調整グループ
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