(4) ワーク・ライフ・バランス サンフランシスコ市労働局

更新日:平成21年8月5日

4 調査テーマ別の調査内容

(4) ワーク・ライフ・バランス

サンフランシスコ市労働局

レポート担当

今井 豊 議員

と   き

平成19年11月8日(木曜日)

と こ ろ

サンフランシスコ市労働局

応接者

サンフランシスコ市労働局
                   グレッグ・アジー氏ほか

調査目的

日本では、今後、人口減少社会となるなか、長時間労働など働き方の様々な問題を解消しワーク・ライフ・バランス(仕事と家庭生活の調和)を実現することが、今後の持続的な経済成長には重要だとされている。
 アメリカでは、2003年上院議会による「ワーク・ライフ・バランスに関する決議」で「仕事と生活の対立を減らすことは国の重要課題」と宣言するとともに、毎年10月を「仕事と家庭の国民月間」として、啓発活動を行ってきた。アメリカ国内において労働施策の先進的なサンフランシスコ市におけるワーク・ライフ・バランスへの支援策等について調査し、大阪府の今後の施策を考える上での参考とする。

 

1 サンフランシスコ市の概要                                                                                                                                                                                               

 サンフランシスコ市の起源は、1776年のスペイン人の入植にあり、その後、ゴールドラッシュにより人口が急増した。天然の良港を擁する米国西海岸最大の商工業、港湾都市で、面積は122平方キロメートル、人口は約79万8千人(2006年、カリフォルニア州政府推計)である。

 花と坂と霧の都として、坂道を走るケーブルカーやゴールデンゲートブリッジなどの風景でもなじみ深い街であるが、ロサンゼルスと共にカリフォルニア経済、金融、工業の中心地として知られ、大規模なダウンタウンが形成されている。シリコンバレー等に近いこともあり、IT系の企業も多い。

 日本やアジアとの交易の中心地でもあり、市民構成も多様で日系人も多い。

 2  アメリカにおけるワーク・ライフ・バランス支援                                                                                                                     

  アメリカでは、1980年代後半から企業においての人材不足が生じたため、優秀な女性の能力を活用する必要に迫られた。当初は主に働く母親を対象とした保育サポートを中心とする支援策の導入からスタートしたが、1990年代に入ってから、労働者の要求に応え、保育サポート以外にも、介護サポート、自己啓発学習のための学費補助、心身の健康維持の支援など、社員全体の私生活に配慮した制度が導入された。

  しかしながら、1990年代後半になると、社員は制度の利用がキャリアにマイナスに働くことを懸念して敬遠し、経営者もこれは企業のコスト増につながると判断し、有効に機能していないことがわかった。一方で、不況によるリストラで社員のストレスは増大した。

  その後、ワーク・ライフ・バランスについても単なるプログラムの導入にとどまらず、仕事のあり方そのものを見直すアプローチがとられるようになった。

  現在のワーク・ライフ・バランスの支援施策は多岐にわたっているが、フレックスタイム制、テレ・コミュート(ITを利用した在宅勤務)、ジョブ・シェアリング(2人以上の労働者が一つのフルタイムの仕事を分担)などの勤務形態に柔軟性をもたせるプログラムが中核的なものとなっている。

画像です。観光スポットとしても有名な市役所庁舎
観光スポットとしても有名な市役所庁舎

画像です。貸切パーティーを行うこともある市庁舎1階ロビー
貸切パーティーを行うこともある市庁舎1階ロビー

3 サンフランシスコ市の労働政策における新たな取り組みについて                                                                                                                        

  ワーク・ライフ・バランス促進や、従業員が安心して働くことができる環境づくりのため、サンフランシスコ市では、以下の3つの新しい法律を制定した。有給の病気休暇に関する法律、健康保険に関する法律、最低賃金に関する法律の3つである。

 (1)有給の病気休暇に関する法律について

 2007年の2月から、パートタイム労働者やアルバイト等を含めたすべての労働者の病気休暇に対して給与の支払いが課せられることとなった。サンフランシスコは、全米で病欠有給休暇の法律を定めた初めての都市であるが、他の市や州で検討中のところも多いということである。

 具体的には、30時間の労働につき、1時間の有給の病気休暇を保障しなくてはならず、フルタイムの従業員であれば、1年に9日間の有給病気休暇を取ることができるというものである。大企業で働く従業員や公務員などは法施行前から取得可能であったが、この法律により、新たに、民間で働く従業員約10万人が有給病気休暇の取得の対象となった。

 この制度のユニークな所は、自分の病気、家族の病気のために取得するだけでなく、例えば独身者が、家族関係のない他人(ボーフレンド・ガールフレンド等)の病気のために取得することも可能であるという点である。

 なお、男性のための出産休暇があるか質問したところ、国レベルの法律で、50人以上の企業の従業員の場合、男女とも、出産時や里子をもらう場合でも、無給休暇をとる権利があるとのこと。

 (2)健康保険に関する法律について

 企業では20名以上、非営利団体(NPO)では50名以上の規模であれば、健康保険の導入が義務付けられる法律が2008年1月から施行された。      

 従業員の健康保険にかかる費用をいくら会社が支払うかは、その従業員の労働時間によって違う。この制度の実効性は、市への報告や市による監査によって担保する。

 なお、日本と違うのは、アメリカでは国民健康保険制度はなく、企業の健康保険制度を利用できる人たちがいる一方で、そうでない人は民間の保険会社が提供するものに加入をする、という点である。担当者の方は、全米ベースの健康保険制度がないというのは問題であると思っており、日本にあるのはすばらしいことだと述べておられた。

(3) 最低賃金に関する法律について

 最低賃金制度は従来からあるものであるが、サンフランシスコ市が遵守されているかをチェックする新しい法律が、2007年2月から施行された。市と契約を結んでいる企業(全業種が対象)が最低賃金を遵守しているかどうか、市がチェックしていくというものである。遵守されていない場合、市が支払いを拒否することができ、かつ既に支払ったお金につき返還の訴訟を起こすことができる。

 市としては、担当のスタッフが15名しかいないので、労働者側からの苦情が出てからの対応となっているのが現状であり、企業へ行ってチェックするまでは行えていない。

 実際に労働者からの相談を受けて企業側に問題があると認められ、市として対応したケースは、2007年2月以降で、18件程度であるとのこと。

サンフランシスコ市役所のリーフレット

サンフランシスコ市役所のリーフレット1

サンフランシスコ市役所のリーフレット2

4 サンフランシスコ市における最低賃金について                                                                                                                             

 最低賃金(1時間当たり)については、労働者側の活動家幹部から提案された法律に基づくものであり、(市長を選ぶ)有権者が間接的に決めていることになる。なお、業種や雇用形態等による差はない。

 改定については、関係する委員会で科学的根拠やインフレ率等を参考に決定している。

 サンフランシスコ市の最低賃金は、州よりも国よりも高い設定(市>州>国)になっている。

 なお、サンフランシスコ市での年間の労働時間の上限は、フルタイムで2080時間、週40時間であるとのこと。

  ●サンフランシスコ市:9.14ドル/時間(H20.1.1から 9.36ドル/時間)

 ●カルフォルニア州 :7.75H20.1.1から 8.00ドル/時間)

 ●連 邦 政 府  :5.85ドル/時間(H20.1.1現在)

  サンフランシスコ市は、全米でも生活費が高い方で、これでも十分ではないが、反面、人件費という点で、事業を行うにもコストがかかることになる。市民は受け入れているが、最低賃金が高いことによって、事業者・経営者が他の都市に逃げてしまわないかが懸念されており、これらのバランスをとる政策が必要である、ということであった。

  ちなみに、カルフォルニア州立大学による研究では、最低賃金を他の都市よりも高く設定していることは、経済的影響を与えないという結果を出しており、一方、病気有給休暇についてはまだ日が浅いため、現時点では、このような研究はなされていないそうである。

質疑風景2

質疑風景

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議会事務局 総務課 

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