日本では、グリーンインフラの議論は始まったばかりで、その定義は一定ではありません。
下表はアメリカやヨーロッパ、日本の行政、学術会議、研究会で示されているグリーンインフラの定義です。
定義元 | 定義 | 引用元 |
米国環境保護局 | グリーンインフラは植生や土壌、自然のプロセスを用いて、水管理を行い、より健全な都市環境を創出する。市や州規模では、生息地の確保や洪水防止、大気質・水質の浄化をしてくれる自然エリアの寄せ集めのことを指す。近隣地や敷地といった規模では、水を吸収・貯留することにより自然を模倣した雨水管理システムのことを指す | 米国環境保護局ホームページ“What is Green Infrastructure?”(http://water.epa.gov/infrastructure/greeninfrastructure/gi_what.cfm、2016 年12 月9 日確認) |
欧州委員会 | 多様な生態系サービスを享受するためにデザインされ、管理されている自然環境・半自然環境エリア及びそのほかの環境要素(動植物、景観など)をつなぐ戦略的に考えられたネットワーク。 | European Commission(2013)EU Green Infrastructure Strategy,Communication from the Commission |
国土形成計画及び国土利用計画 | 社会資本整備、土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能(生物の生息・生育の場の提供、良好な景観形成、気温上昇の抑制等)を活用し、持続可能で魅力ある国土づくりや地域づくりを進めるもの。 | 国土交通省(2015a, 2015b)国土形成計画及び国土利用計画 |
社会資本整備重点計画 | 自然環境が有する多様な機能(生物の生息・生育の場の提供、良好な景観形成、気温上昇の抑制等)を積極的に活用して、地域の魅力・居住環境の向上や防災・減災等の多様な効果を得ようとするもの。 | 国土交通省(2015c)社会資本整備重点計画 |
日本学術会議 | 生態系インフラストラクチャーの英訳として、自然環境保全再生分科会が本提言において提案する新用語。広義のグリーンインフラから人工的な緑地/水域などによるインフラストラクチャーを除き、生態系(自然・半自然環境)を活かすもののみを指すものとして定義。すなわち、湿地(浅海域や水田を含む広義の湿地)や草原・森林など、自然域、半自然域の生態系を、多様な生態系サービス供給ポテンシャルを維持しうるよう、社会にとっての多義的空間として保全・再生・管理することを通じて実現するインフラストラクチャーの意。 | 日本学術会議統合生物学委員会・環境学委員会合同自然環境保全再生分科会(2014)復興・国土強靱化における生態系インフラストラクチャー活用のすすめ |
グリーンインフラ研究会 | 自然が持つ多様な機能を賢く利用することで、持続可能な社会と経済の発展に寄与するインフラや土地利用計画を、グリーンインフラと定義する。 | グリーンインフラ研究会ほか(2017)決定版!グリーンインフラ |
グリーンインフラが持つもの | グリーンインフラの持つ特徴、要件 |
特徴 | 【自然的特徴】 しなやか、多機能、統合的、ゆらぎ、不確実性、自律的な回復力、持続的、長持ち 【人工的特徴】 機能性、想定された条件下で目的機能の高発揮、規格化が可能、品質の管理が容易、寿命がある、基本的な技術の確立、導入直後に効果を発現する。 |
実施要件 | ・多様な主体による協働と地域コミュニティー主体による選択 ・持続可能(整備費・維持管理・モニタリング費を流域・地域ファンドとして当初から充当) ・横割り(分野横断) |
機能的要件 | ・多機能(平時・非常時における順応的な機能選択が可能) ・各地域の特性を踏まえ、多機能として「グリーンインフラが各区分域において果たす機能」のうち10以上の機能を含むこと。(規模の小さいものは5つ以上) |
グリーンインフラが果たす機能 | 各区分域が持つ機能 | グリーンインフラが果たす機能 | 各区分域が持つ機能 | ||||
都市域 | 農山村域 | 流域 | 都市域 | 農山村域 | 流域 | ||
治水 | ○ | ○ | ○ | 観光資源 | ○ | ○ | |
土砂災害防止 | ○ | ○ | ○ | 歴史文化機能の維持 | ○ | ○ | |
地震・津波減災 | ○ | ○ | ○ | 景観向上 | ○ | ○ | ○ |
大災害時の避難場 | ○ | ○ | 環境教育の場 | ○ | ○ | ○ | |
水源・地下水涵養 | ○ | ○ | ○ | レクリエーションの場 | ○ | ○ | ○ |
水質浄化 | ○ | ○ | ○ | 福祉の場 | ○ | ○ | ○ |
二酸化炭素固定 | ○ | ○ | 健康増進・治療の場 | ○ | ○ | ○ | |
都市気候の緩和 | ○ | コミュニティー維持 | ○ | ○ | |||
地域のための自然エネルギー供給 | ○ | ○ | 食料生産、一次産業の高付加価値化 | ○ | |||
資源循環 | ○ | ○ | ○ | 土砂供給 | ○ | ||
やさしい交通路 | ○ | 移動性の高い鳥類や魚類等の生息の場 | ○ | ||||
害虫抑制・受粉 | ○ | ○ | ※○印の部分が機能に対して各区分域が有していることを示す。 |
このページの作成所属
大阪都市計画局 計画推進室計画調整課 グランドデザイン推進グループ
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