平成17年度 大阪府教育委員会委託事業 学校評価に関する実践的研究 「学校評価実証校支援プロジェクト」 学校教育自己診断ハンドブック 〜活用の手引き〜 大阪教育大学 目 次 ・「元気な学校づくり」を支援するために ……………………………………………… @ ・学校教育自己診断と学校協議会について ……………………………………………… B ・手引きの構成 ……………………………………………………………………………… C 第T部 学校教育自己診断の活用 1.学校教育自己診断の目的づくり …………………………………………… 2 2.学校教育自己診断の方法を定める ………………………………………… 4 3.診断票の項目づくり ………………………………………………………… 7 4.診断結果の集計と分析 ……………………………………………………… 10 第U部 学校協議会の開発実践 5.学校協議会の目的づくり …………………………………………………… 14 6.学校協議会の組織・運営方式を定める …………………………………… 16 7.学校協議会の実施と発展 …………………………………………………… 18 第V部 学校教育自己診断に基づく学校改善 8.評価に基づく改善計画の策定 ……………………………………………… 22 【コラム:教職員参加に基づく課題把握と改善計画策定】 ……………… 24 9.保護者等への診断結果公表 ………………………………………………… 26 10.学校の活性化を推進する多様なサポート ………………………………… 28 資料 ・「学校教育自己診断実施要項」 ……………………………………………… 32 ・「府立学校における学校評議会の設置・運営の指針」 …………………… 33 ・「大阪府立高等学校等の管理運営に関する規則(抜粋)」 ……………… 35 ・学校評価システムを考える参考となる主要な文献の紹介 ………………… 36 ・各都道府県の学校自己評価システムや学校経営計画の取り組み ………… 41 ・実証校一覧 ……………………………………………………………………… 48 「元気な学校づくり」を支援するために 学校を診断・評価することが必要不可欠な時代に入ってきた。大阪府においては学校教 育自己診断と学校協議会を連携させて、自己評価や外部評価を進めていくことになってい る。府立学校においては、学校教育自己診断は平成14年から、学校協議会は平成15年 から全面実施された。学校で実施され、活用されるに従って、学校教育自己診断の意義と 可能性が認識されてきた。それとともに、学校教育自己診断の実施や学校改善に向けた取 り組みにおいて、実践指針や手引きがあると有り難いとの声が聞かれるようになった。こ のハンドブックは、学校が自己診断を効果的に取り組み、学校改善につなげていくことを 願って、作成したものである。 このハンドブックは、大阪教育大学(スクールリーダー・プロジェクト:SLP)が大 阪府教育委員会の委託事業として作成に当たった。大学の研究者が、学校現場の先生方の ニーズを受け止めながら、大阪府教育委員会の担当指導主事と打ち合わせを重ねて作り上 げたものである。研究者としての専門的知識、教育政策担当者としての政策的判断、学校 教職員の実践的知見をバランス良く盛り込むことを大事にした。 この大阪府教育委員会受託事業「学校評価実証校支援プロジェクト」が生まれてきた背 景には、大阪教育大学と大阪府教育委員会が平成14年以降多様な形態・事業を通して連 携協力を推進してきたことがある。大阪教育大学スクールリーダー・プロジェクト(SLP)は、その一環として、スクールサポート事業とスクールリーダー教育事業を次のよう に多様に取り組んできた。 (1)スクールリーダー・フォーラム(SLF)、年1〜2回の開催 (2)スクールリーダー・セミナー(SLS)、夏期集中講座 (3)「学校評価実証校」支援プロジェクト スクールリーダー・フォーラムはこれまで5回開催されたが、第1回は「学校教育自己 診断を実践する―学校を開く試み」をテーマとし、第2回は「学校を開く・学校を診断す る―学校協議会と学校教育自己診断を連関させて」をテーマとしていた。この取組を発展 させる形で立ち上げられたのが、「学校評価実証校支援プロジェクト」である。大阪府教 育委員会と大阪教育大学が一体となって、各学校が学校教育自己診断に取り組む道筋に関 わり、その取組を検討し、よりよいものを創るために「学びの場」を設けたのである。2004 年度は9校、2005年度10校が自主的に応募し、1年間を通して取組を重ねていった。 こうした取組を踏まえて、学校を支援するためにこのハンドブックづくりに取り組んだ。 研究者と指導主事が、学校現場の声を受け止めつつ、学校教育自己診断を活用するための 知恵と知見をまとめた。先生方が活用しやすく、いつでも手にとって参考とできるよう、 関係者がアイデアを出し合いながら、様々な創意工夫を行った。全体は10のSectionか らなり、各Sectionごとに、ポイント、ケース(実践事例)、困った時のヒント、ひと言 アドバイスなど設けられている。先生方に大いに活用していただきたい。 このハンドブックは、随時改訂を施してグレードアップして行きたいと考えている。そ のために、使用上良かった点や気づいた点を是非ご教示いただきたい。 今後とも、学校を支援することを軸に、大学と教育委員会の連携が深まることを期待し て巻頭の挨拶に代えたい。 平成18年3月7日 大阪教育大学スクールリーダー・プロジェクト委員長 大阪教育大学教授 大 脇 康 弘 学校教育自己診断と学校協議会について (1) 学校教育自己診断とは? 学校の教育活動が児童生徒の実態や保護者の学校教育に対するニーズ等に対応している かどうかについて、学校自らが診断票(診断基準)に基づいて学校教育計画の達成度を点検 し、学校教育改善のための方策を明らかにするものです。 (2) 学校協議会とは? ○ 学校協議会は、保護者や地域住民等の意向を把握し学校運営に反映させることにより 学校運営改善を図る目的で設置する学校支援組織です。 ○ 学校協議会は、文部科学省が提唱する「学校評議員」が一堂に会して協議する会議と 同趣旨のものです。 ※ 趣旨や目的については、「学校教育自己診断実施要項」「府立学校における学校協議 会の設置・運営の指針」を参照してください。   手引きの構成 p.1-2p.3-5p.6-8p.13-14p.9-11p.23-24p.15-16p.21-22p.17-19p.25-26p.27-281.学校教育自己診断の目的づくり  ・自校の組織状態を把握する  ・自校の自己診断の目的を定める 2.学校教育自己診断の方法を定める  ・実施時期・対象者  ・回収率を高める 3.診断票の項目づくり  ・自校の目的に合わせた診断票の   質問項目・構成  ・重点項目の設定 4.診断結果の集計と分析  ・調査の実施の工夫  ・集計・分析の技法 8.評価に基づく改善計画の策定  ・課題の把握  ・改善計画の具体化  ・教職員の参加の工夫 9.保護者等への評価結果公表  ・公表の範囲と方法  ・「学校だより」や回覧板の活用  ・インターネット利用 5.学校協議会の目的づくり  ・学校協議会の活用目的を明確にする  ・学校協議会の位置付けを明確にする 6.学校協議会の組織・運営方法を定める  ・委員の選任  ・開催時期  ・議事の選定 コラム.教職員参加に基づく課題把握      と改善計画策定  ・文科省「学校組織マネジメント研修」  ・府内中学校の実践 10.学校の活性化を推進する多様なサポート  ・独自の創意工夫で学校改善の取組をさらに発展させる  ・校外との研究協議や情報交換の場を設ける  ・学校の活性化を推進するプロジェクト 7.学校協議会の実施と発展  ・学校協議会との共通理解  ・取組の組織化  ・学校協議会情報の発信 次のPDCAサイクルに続く… 第T部 学校教育自己診断の活用 Section 1 学校教育自己診断の目的づくり この段階でのワーク ・学校教育自己診断を行う目的(何のために行うのか、診断から学校が何を得るか)を 明確にします。 ・診断の目的を定めることに先んじて、学校の状態を把握します。 ・診断の目的の持ち方について、適切な形で教職員が参加できる体制を作ります。 1.学校教育自己診断の目的づくりのポイント @「自己診断」で何を知ろうとするのかを、はっきりさせる。 ・学校教育自己診断は、学校改善のために行うことは言うまでもありません。しかし、 そのために各学校が何を知る必要があるのかについては、置かれている状況により、 様々な目的(ねらい)が考えられます。 ・例えば「教育活動について点検する(課題探し)」「一年間取り組んだ特定の改善活 動の満足度を調べる(成果の検証)」「評価項目を通じて学校の取り組みを理解して もらう(啓発)」などのねらいがあり得ます。 ・一連の作業の最初に、以上のような診断のねらいを確定させることが、「柔軟に(府 版診断票の)診断項目を再編できる」大阪府の学校教育自己診断の強みを引き出すこ とになりますし(Section3参照)、評価を徒労に終わらせないポイントになります。 A学校の現在の状態を把握する。 ・診断のねらいを作成するためには、現在の学校の状態を自覚することが大事です。 定期的に教職員も児童生徒(保護者)も流動する学校は、その組織状態は常に一定で はなく、「教職員間の目線あわせ(ウチ固め)が必要な段階」「保護者・地域に学校 の方針を理解してもらう(ソト開き)段階」のように流動しています。 ・例えば「ウチ固め」が必要な時期に、保護者の啓発・協力依頼をねらいとする診断を 行うと、診断が逆に保護者の不信感を高めてしまう可能性もあります。診断に先立ち 学校の状態がどうかを把握し、現状を一歩前に進めるねらいを定めることが重要です。 B目的についての共通理解を図る。 ・学校教育自己診断が学校改善に向けて有効に活用されるには、関係者の間でその目的 が十分に共有されるかどうかも重要なポイントです。そのため、診断の目的づくりの 段階から多くの教職員の参加を促す必要があります。 ・現在の学校では各教職員が抱える校務も多いですが、学校内に「診断」の組織を立ち上 げるか、既存の分掌を活用して@Aの診断の目的を共有する機会を設定することが求 められます。このような機会の設定は、診断が「管理職が義務でやるもの」ではなく「教 職員の問題意識も . 汲み上げる重要な機会」であることを示す意義もあるといえます。 ・もちろん、学校の状態によっては、教職員に改善の必要性を強く示すために、どうし ても最初に校長が強く実施を働きかけなければならない場合もあり得ます。 2.各学校における目的づくりの工夫 ケース1:学校の課題探しとウチ固めを目的においた活用事例 診断目的を明確に持ち、それを診断の使い方に生かせたケースにA中学校がある。 平成12年にX校長がA中学校に着任したとき、いくつかの学級の経営が難しく、教員集団も学年・教 科ごとの分化傾向があった。そのため、X校長は学校の現状と課題を教員に目線あわせしてもらう機会 として、診断を活用することとした。 校長はその意図から、初年度だけは教職員のみの診断(大阪府版をそのまま活用)とする代わりに、 その結果校長が気に留めた項目について、学年会・教科会に自ら出向き徹底的に議論してもらい、校内 で共有できる「目指す生徒像」とそれに向けた重点改善項目(教科横断型の授業研究の立ち上げ)を教 職員に発案してもらった。 このようなウチ固めを先行させて、二年次以降診断対象を生徒・保護者に拡大し、学校全体としての 改善姿勢を先に示し、その評価を受ける形で診断を運用した。保護者の意見は学校の姿勢を理解するも のが多く、当初の診断目的の設定とその徹底が、同校の前進に機能した形となった。 ケース2:保護者の啓発とソト開きを目的においた活用事例 B小学校も同様に、目的を明確化することで診断活用の幅を広げたケースと言える。 B小学校では数年間診断を実施してきており、診断結果で保護者の不満の多かった通知表の改訂を即 座に行うなど、Check-Actionの取り組みも積み上げていた。 そうした活動を通じてB小学校では教員の共通理解も高まってきたが、共通理解が高まれば高まるほ ど、学校でできることには一定の限界があり、帰宅後の家庭・地域の支援も子どもの豊かな学力の育成 のために必要であると考えるようになった。 そうした思いもあり、同校では平成14年度の診断より、診断に保護者の啓発の目的を加えることとし た。この場合、同校では保護者調査票に、従来の府版をベースとした項目に加えて、「子どものノート ・プリントをよく見る」などの保護者の行動についての項目を追加した。同校では診断終了後、学校便 りでこの保護者項目の結果も紹介しながら、学校として求めたい保護者の協力(学校との連携)をアピ ールできた。 3.ひと言アドバイス ・診断の目的設定と教職員の参加の方法:本章で見た通り、学校教育自己診断のねらい を妥当なものとするためにも教職員の参加は大事なカギとなります。このような教職 員の参加を促す方法として、民間企業で取り入れられている「オフサイト・ミーティ ング」が参考になります。これは、特にテーマは定めず、自由な進行で参加者が思っ ていることを語り合う場(「気楽にまじめな話をする場」)と捉えられ、参加者が自 己や組織の抱える課題に気づき、その解決に向けた方策を考えていくことを促進する ものです。自己診断のねらいや見通しを持つためには、公式性の強い会議よりもこの ような設定の方がよいかもしれません。(参考:柴田昌治『なぜ会社は変われないの か』日本経済新聞社、1998年など) Section 2 学校教育自己診断の方法を定める この段階でのワーク ・学校教育自己診断の方法を決めます。 ・Section1で定めた自校の自己診断の目的に基づいて、適切な実施の対象や時期を定め ます。 ・同時に、(特に保護者の)診断票の回収率を高める手だても検討します。 1.方法を定める際のポイント @自己診断の目的を達成するために最適な実施対象を考える。 ・府版「診断票」は管理職・教職員用、保護者用、児童生徒用が用意されています。そ れは、大阪府の学校教育自己診断が、この4者の意識差の確認を通じて学校が改善活 動を積み上げ、共通理解を作り上げやすいように設計されているためです。 ・しかし、この診断票は、全てを必ず利用しなければならないというわけではありませ ん。どのような目的を定めたか(Section1参照)により、教職員・保護者・生徒すべ て、教職員だけ、特定の学年の児童生徒だけ等、様々な実施対象が考えられます。安 易に対象を制限してしまうのは問題ですが、学校の明確な意図(ねらい)に基づき対 象を決める(そして実施過程でそのねらいを徹底する)ことは、診断の実効性を高め ることにつながるでしょう。 A自己診断の目的を達成するために最適な実施時期を考える。 ・自己診断をどの時期に実施するかも目的によって異なってきます。一般的には学校評 価については年度末に実施することが多いとききます。しかし、自己診断については 定めた目的によっては年度途中に実施した方が良い場合もあります。さらには年度内 複数回の実施も考えられます。 ・一般的に、各学校では年度末に教育活動の反省を行う慣行がありますが、4月に定期 異動があることから、反省が次年度につながりにくいという課題もありました。学校 教育自己診断においては、校内に新しい「診断−改善」のサイクルとその体制を実現 することが重要です。診断の実施時期、分析時期をいつにするかについても、このこ とを念頭に設定する必要があるでしょう。 B回収率(保護者)を高める工夫も考える。 ・せっかくの診断も、特に保護者の回収率が上がらないと信頼性が低下する恐れがあり ます。実施時期を考える場合、回収率を高める工夫も同時に考えるとよいでしょう。 ・工夫の仕方としては、児童生徒を介して渡してもらう方法のほか、「保護者懇談会時 に直接手渡しで依頼」など、いくつか考えられます。 2.各学校における方法を定める際の工夫 ケース1:目的に応じた診断の対象設定の工夫 Section1で紹介したA中学校は、対象設定の工夫が見られるケースでもある。 同校では初年次「教職員」、二年目「教職員+一部の保護者」、三年目「教職員+保護者+生徒」のよ うに対象を拡大した。それは、同校の自己診断は当初が「教職員間の共通認識(目指す生徒像と重点改 善活動の明確化)」、その後「保護者への発信と理解獲得」に移行したためといえる。 同校の場合二年目までは校内での話し合いを徹底し、対象を保護者に広げた後は診断後の保護者(希 望者)説明会を実施しており、決して安直に対象者を絞っているわけでないことがうかがえる。 ケース2:診断の対象を「地域」に広げた活用事例 C高等学校は、「地域」も診断対象に含めた興味深いケースである。 少子化の中他校と同様に生徒募集に課題を抱えていた同校は、学校改善の柱を「地域に根ざした学校 づくり」(地域資源を活用した総合的な学習の実施や中高・高大連携)に定め、改善を進めていた。し かし、高等学校における「地域に根ざした学校づくり」は実践例も少なく、その成果の検証が同校の課 題となった。 この場合同校は、学校協議会での協議の他、診断の対象に「地域」(通学区域内の中学校の教職員及 び保護者・地域代表者350名ほど)を加えて、自校の学校づくりについての率直な診断を受け、その後 の改善活動の検討材料とした。 ケース3:児童を診断の対象に加える際の工夫 小学校で児童を診断の対象に加えることについては、どの学年まで下ろすかを含めて思案する学校も 多いと考えられる。この点D小学校では、児童により適正な評価をしてもらうために、一年間を通じて 平素の教育活動の中に自己評価や相互評価を行う機会を多く組み込み、児童の評価能力を向上させる工 夫を取り入れた(児童の診断実施は1月)。さらに、同校では児童対象の診断実施に先んじて、「児童 の自己教育力」や「目指す教職員像(学級経営のもち方を中心に)」を項目を立ててリスト化し、その 実現についての校内研修を積み重ねるなど教職員の共通認識を高め、児童の評価を受け止めやすくする 工夫も行った。 3.困ったときのヒント ・診断の実施時期の選択は、やはり難しい課題です。例えば、新しい「診断−改善」の サイクルとそのための校内体制(教職員の分析体制)を整備するために年度途中の2 学期に診断を実施した場合、その年度から初めて実施された内容(二期制など)につ いては、(判断の材料が出そろっていないため)判断が難しくなるジレンマが生じま す。これは両立が難しいので、やはり学校の方で診断の目的(何を得るかの優先順位) を予め決めておくことが重要となります。 4.ひと言アドバイス ・学校教育自己診断を年度途中に行った場合、年度内に改善が可能な項目がある場合も あります。これについては、学校教育全体の診断ではなく、改善項目を中心とした簡 単な診断を年度内にもう一度行ってもよいかもしれません。その診断は、単なる活動 評価としての意味だけではなく、「改善に対する学校の姿勢」を内外にアピールし、 理解や協力を取りつける機会にもなり得ます。 ・学校教育自己診断の実施にあたり、特に管理職に大事にしてもらいたいことは、従来 の単年度主義重視の経営慣行にならないよう留意してほしいということです。例え校 長の異動があっても、前年度の診断とその分析が適切に行われているなら、その結果 (分析検討内容も含む)は次年度の活動に反映されなければなりません。そのことに 留意して引き継ぎすることが大切です。 Section 3 診断票の項目づくり この段階でのワーク ・校長・教職員・生徒・保護者用の実際の診断票を作成します。 ・Section 1 で定めた自校の診断実施目的に基づいて、府版の質問項目や構成を適切な ものに修正加筆します。 ・項目作成にあたり、学校で特に重視したい項目など、後の分析に向けて診断票に生命 を吹き込む(自校なりのこだわりをもつ)工夫も検討します。 1.診断票項目づくりのポイント @「診断票」がもつ多様な性格を理解し、使いこなす。 ・診断表の作成は、自己診断の実施プロセスの中でも最も重要な作業になります。 ・診断票は一般に、保護者や生徒の教育活動への満足度を測り、教職員が自校教育の課 題を把握しやすくするものです。しかし、診断票の意義はそれだけに留まりません。 ・例えば、診断票の項目設定を通じては、次のような意味を持たせることも可能になり ます(下記の括弧内は、想定される診断票の項目設定)。 a)学校の教育活動のどの部分に強み・弱みがあるかを確認する(府版そのままの使用) b)学校の重点取り組み(改善)項目の成果を確認する(府版に項目追加) c)保護者・生徒の意識を調べたり協力を引き出す材料を得る(府版に項目追加) ・Section2までに検討した、学校の現状や診断の目的(ねらい)にそって、適切な内容 の診断票を作成することで、学校評価を「外部からチェックされるだけの評価」から、 「診断を通じた新しい学校づくり」に高めていくことができます。 A診断票の診断項目を設定する(大阪府版診断票を適切に活用する)。 ・大阪府の学校教育自己診断のポイントは、府教育委員会が各学校で修正加筆可能な診 断票府版を準備していることです。この診断票には、次のような「強み」があります。 a)学校の教育活動全般に万遍なく項目編成されており、取組みの濃淡を確認しやすい。 b)教職員用・保護者用・生徒用で類似の質問項目があり、意識差を確認しやすい。 c)全体に項目の尺度がそろえられているため、集計・図表化が比較的行いやすい。 ・総じて、自己評価の最初の段階(教職員間で課題意識の共有化を図り、改善計画を 策定する目的)に最も適した項目内容といえます。 ・ただし、以上の「強み」をもつ裏返しとして、何年か同じ設問で診断を続けた場合、 回答結果が一定化する傾向があることが実践校の率直な印象としてあるようです。 ・この点大阪府の学校教育自己診断では、府版診断票を自由に再編できるようになって いるため、学校の改善活動の成果を問いたい場合や、学校の教育活動が教職員や子ど もの行動にどう影響したかを詳細に検討したい場合には、項目追加・修正などの工夫 で自校のニーズに適した診断票を作成するとよいでしょう。 B診断票に「生命」を吹き込む。 ・自己診断は、設定した質問項目に対象者が回答し、客観的な数値に基づき学校の教育 活動の濃淡を見極める(分析する)という、本質的に冷静な作業です。 ・しかし、学校の診断票の作り方や使い方によっては、自己診断は学校の思いを保護者 に伝え協力を得るコミュニケーションの手段として使うことも可能になります。 ・例えば、次のような「診断票に生命を吹き込む」工夫をしておくと、分析やその公表 がより生産的なものとなると考えられます。 a)この項目だけは肯定度100%を目指したい、という設問項目を予め特定しておく b)回答の尺度(府版は4件法)に、「わからない」も加え、それは学校としての情報公 開の方法を見直すための情報として受け止める 2.各学校における診断票作成の工夫 ケース1:学校の改善活動を診断票に加えた活用事例 E小学校は、学校の改善活動を診断項目に加えた典型的なケースといえる。 同校では数年来、地域の学習資源を活用した体験機会の充実化を同校の特色づくりの取り組みとして きたが、その成果が果たしてどうであるかの検証が課題とされた。 そのため、同校では「農業体験」「福祉教育」「10分間読書」の重点改善活動を府版診断票に加える こととした。その場合、児童用には「自らの行動が変化したか」、保護者用には「その活動が子どもの 豊かな心を育てているか」、教職員用には保護者用の視点とともに「指導の体制が十分であるか」の視 点から設問項目を設定し、自校の教育活動がどこまでできていて、何が不十分かがわかるようにした。 このような診断項目策定の工夫は、学校の取り組み成果を検証するだけでなく、学校の意図を保護者 に発信する方法にもなり得ると考えられる。 なお、このような診断項目作成(一つの取り組みを多角的な観点で診断)の方法は、最近の福岡県な どが特徴的に研究開発している方法といえる(後掲資料参照)。 ケース2:保護者の意識を問う設問を追加した活用事例 Section1で紹介したB小学校は、診断票に保護者の学校との連携意識を問う設問を追加した典型的なケ ースである。具体的には、同校は次のような項目を追加した。 ・学校の教育方針や活動内容について関心がある ・学校の教育方針や活動内容について理解しよう と努めている ・学校との意思疎通をきめ細かく行っている ・通知表はよく見ている ・授業参 観等にはよく参加する ・文書・事務連絡は良く読んでいる ・PTA活動に積極的に参加している ・担任の教育方針を理解している ・子どもの学校での生活を知っている ・子どものノート・プリ ントをよく見る このような設問は、自己診断の趣旨と照らしてどうかとの見方もあり得るが、同校では他の質問項目 は府版を基盤に作っており、それまでの自己評価で一定校内の目線あわせができている前提で、子ども の学びをより充実させるために診断機会を利用する(これから家庭との連携を深めるために、予め家庭 の意識を問いたい)という意図を明確にしている。そのため、こうした診断票の使い方も一つの示唆的 なケースといえる。 ケース3:自校独自の診断項目を開発した活用事例 F高等学校は、診断票府版にない独自の診断項目を作成した関心深い事例である。 同校では、自己評価のための校内組織が中心となり、調査対象者の一部に診断テーマについて自由記 述方式による事前アンケート(サンプル調査)を行い、その回答結果から回答者の興味・関心が高い要 素を抽出した。そのうえで、特に同校が課題視していた新教育課程対応の取り組みや時間数の配分に関 わって、より的確な評価項目作成や質問文・選択肢の作成を進めた。これは、自校なりのねらいに基づ いて、改善に必要なデータを得るための診断票をつくる、という学校自己評価の趣旨に沿う事例といえ る。 ケース4:学年ごとの診断項目を作成した活用事例 G中学校は、平成17年度から、上のB小学校と同様の保護者質問項目の追加とともに、学年ごとの質 問項目を加えた。この場合、それぞれの学年で重点を置いている活動を設問化してもらうこととした( 各学年4問)。具体的には、各学年ごとの「少人数授業」「授業評価」の取り組み、1学年の「TT」「 出張プログラム」、2学年の「職場体験」、3学年「進路指導」などが設問化された。 この各学年ごとの診断項目の設定は、きめの細かさを求める学校の意図をアピールすると同時に、学 年団の教員間での当事者意識(自分たちが評価に主体的に参加しているとの意識)を高める上で大きな ポイントがあるといえる。 3.困ったときのヒント ・大阪府の学校教育自己診断は、各学校での意図で府版診断項目を柔軟に再編できます が、保護者対象調査の場合、回収率を高めるためにも、仮に項目追加するなら他の項 目を精選する(平たく言えばA4版1頁に収める)ことが現実的に必要と考える学校 は多いと思います。ただ、このとき校内の精選の議論で、本当は学校にとって重要な 項目まで「精選」してしまい、診断票が形骸化するケースがまれにあります。 ・診断票の作成と関わって悩ましい点のもう一つは、「記名式」「無記名」のどちらに するかの選択です。記名式では、自由記述を含め回答が無難になりがちで改善の資料 となりにくい、逆に無記名だと度を超した要望や個人批判も生じうることが指摘され ています。改善資料を得るためならば、やはり無記名式が望ましいですが、学校の現 状把握に基づいて決定されるべきですし、無記名式の場合、組織改善の趣旨に照らし てどの程度の意見まで吸い上げるか、管理職が防波堤を作ることも必要でしょう。 4.ひと言アドバイス ・診断票の作成方法は、およそ各都道府県ごとに大きな違いがあります。福岡県などの 「特色ある取り組みを中心にした多面的な診断票づくり」の方法、広島県などの「数 値目標の設定とその達成度の評価」で項目設定する方法、などです。それぞれ特徴を 持っており、大阪府の公立学校でも、そうした他県の方法を全部模倣することにはな らなくても、「意図から学ぶ」点は多くあります。これらの情報は『教育委員会月報』 等の刊行物で手近に知ることができますので、研究するとよいでしょう。 Section 4 診断結果の集計と分析 この段階でのワーク ・回収された診断票の集計と分析を行います。 ・Section 1 ・ 2 で定めた自己診断の目的や実施方法に基づいて、適切な集計・分析の 方法を考えます。 ・集計・分析に可能な限り教職員の参加を組み込む手だてを検討します。 1.集計・分析のポイント @集計・分析にできるだけ多くの教職員の参加を工夫する。 ・診断票の実際の集計・分析プロセスも、診断票の設定と同じく自己診断の実効性を高 める重要なポイントです。 ・回収された診断票の集計・分析には、できるだけ多くの教職員が何らかの形での関わ るように工夫したいところです。校長・教頭先生や時間的に余裕のある一部の教職員 で集計することは可能ですが、「自分の担任学級の児童(保護者)だけ集計」など、 教職員に一定の努力を求めることも考える必要はあります。それらにより、問題状況 を共有する、自己診断に対する教職員の意識を高める、多面的なデータの解釈が可能 になる等の効果が期待できるからです。いずれにしても、評価の努力が後に学校にど のような実りをもたらすか、展望を示して協力を求めることが、特に管理職に必要で す。 ・診断結果の分析にあたっては、学校全体としての体制づくりも必要になるでしょう。 診断結果を図表化して職員会議にかけても、意見が出にくかったり、意見が拡散する 可能性もあります。職員会議とは別の委員会・研究会方式での全校的な診断結果分析 の体制づくりの工夫も必要です。特に、主任等ミドルリーダーの牽引が求められます。 A集計方法・技術を工夫する。 ・この前提に立って、集計の手間を省く工夫はあってしかるべきです。例えば、どの教 職員でも簡単に打ち込める集計プログラムを予め用意しておくことがあり得ますし、 現在は集計は比較的安価で外注することもできるようです。 ・ただ、技術面の工夫を図るとしても「このソフトを使って打ち込みながら、自分たち の学級の傾向をつかんでほしい」「集計は外注するから、自クラスの傾向だけは把握 してほしい」など、一定の意図をもってそれを進めることが重要といえます。 B学校の教育目標や課題意識等に則して診断結果を解釈する。 ・診断結果の分析をどのように進めたらよいかも、各学校で悩むポイントでしょう。 ・自己診断は自校の学校改善のために行うのですから、データの解釈は何よりも学校の 置かれている状況を考慮して行わなければなりません。外部にデータを提示して意見 を求めることにも意義はありますが、まずは自分たちで解釈する必要があります。 ・この場合、Section3で触れた「重視したい項目」がある場合、その項目がなぜその結 果になったか分析することで、分析の議論の質が高まる可能性があります。 ・なお、分析の過程で、作成した項目の細かい文言について、教職員・保護者・生徒の 文言理解にばらつきがある場合もあるでしょう(例えば「楽しい」の文言をどう理解 するか、ある設問に二つの意味が含まれていて、回答者はどちらで受け止めたか、な ど)。その疑問については、次年度の質問項目作成にフィードバックし、自校が本当 に聞きたいことに沿った文言になるよう修正する必要があります。 2.各学校における集計・分析の工夫 ケース1:教員が集計に参加する手だての工夫 教員が実際の集計・分析プロセスに参加する方法としては、次のようなものがある。 例えば、H高等学校の場合は、各担任に自クラスの生徒・保護者分の集計を課し、そこで考えたこと や問題に感じたことを一、二点に絞って全体会で報告するように依頼し、担任の集計から生まれた思い を学校全体として汲み上げるという持ち方をしている。 あるいは、Section2で取り上げたD小学校の場合は、診断にあわせて学級経営の在り方についてリス ト化し、全教職員での学級経営改善の校内研修を積み上げてきたため、自己診断に際してもその取り組 みの一環として、各教員が自己の学級の状態を集計・分析し、今後の改善策(リポート)を提出するこ とも求めました。 いずれのケースも、教員はまず自らの学級のデータを集中的に分析することで、学校全体のデータの 動きまで関心を広げていくことになる。 ケース2:校内での分析体制構築の工夫 多岐に及ぶ診断項目の結果を適切に集約・分析する校内体制づくりは、実際論としてはかなり難しく 各学校の工夫が求められるポイントといえる。I中学校では、管理職と限られたメンバーの校内組織を 設定したとしても実効性のある分析は難しいのではないかという疑問から、学校の各分掌(授業改革・ 人権教育等5つ)に、関連する項目に的を絞った分析をするよう求め、なるべく教職員全員が参加する ような工夫を試みた。この方式は、各分掌ごとにレベルの高い改善策を策定することによる校内の改善 意識涵養に役だったほか、各分掌をとりまとめる(そして学校経営の視野から他分掌との調整をする) ミドルリーダーの力量形成にもつながる意義があったと同校では評価している。 ケース3:学校の文脈に即した分析方法の工夫 学校の文脈に即した分析の持ち方として参考になるのがJ小学校のケースといえる。同校は、児童用 の設問「学校へ行くことが楽しい」の肯定度を100%にすることが本校の最優先ポイントとの考えをも っていた。この項目の肯定度は78%とかなりの高率であったが、教職員はこの評価を問題視(残り22%の子どもを重く見るべき)した。 同校では、他の設問項目について、肯定評価と否定評価した児童の意識差がどうであるかクロス集計 を行い、こだわりを持った分析をした。その結果、「学校に行くのが楽しい」を否定評価した児童は、 体験学習の機会の評価について肯定評価した児童より極端に肯定度が低く、それは「授業がわかりやす い」「学校に行くのが楽しい」の評価の差にもつながっている、との仮説をデータから立てることがで きた。同校では、その後児童全員が参加できる体験活動の持ち方を重点的に研究することとなった。 3.困ったときのヒント ・診断結果の分析方法のうち、各学校が間違いやすいことの一つが、診断結果を安直に 学校協議会の議論に委ねてしまうことです。確かに、大阪府は学校協議会と学校教育 自己診断を関連させて、制度の実効性を高めることを意図しています。しかし、それ は学校で分析できていない診断結果を代わりに学校協議会に分析してもらうことを意 味するのではありません。学校協議会のメンバーの多くは、教職員と同様、急にデー タを提示されても即座に意見が出せるものではありませんし(大量のデータを目前に 当惑されるケースもあります)、仮に意見が出るとしても拡散的なものになる可能性 があります。まず学校側の見解を示したり、特に意見を聞きたい項目を予め示すなど の会の持ち方が重要です。 4.ひと言アドバイス ・学校教育自己診断の診断票作成や集計については、いくつかの省力化の工夫があるよ うです。現在は比較的安価で集計の外注もできますし、同窓会等にマークリーダーを 寄贈してもらい集計時間を減らしている学校もあります。 ・あるいは、慶応義塾大学のコミュニティ・マネジメント・リサーチチームでは、IT技 術の利用を基盤にして、学校側に調査技法のノウハウが少なくても、診断目的の設定、 項目作成、集計プロセスを容易に組み立てることができるシステム(SQSシステム) の事業化を進めています。このような大学等が開発している支援システムの利用は各 学校だけの一存では決めにくい部分もありますが、知っておくとよい点であるといえ るでしょう。 第U部 学校協議会の開発実践 Section 5 学校協議会の目的づくり この段階でのワーク ・ 学校協議会を開催する目的を明確にします。 ・ 何のために学校協議会を開催するのか、学校改善に向けてそれに何を期待するのか 等、学校協議会の位置付けを各学校の実情に応じて明確にしておきます。 1.学校協議会の目的づくりのポイント @ 学校協議会にどのような役割を期待するのか(位置づけ)を明確にする。 ・学校協議会は学校改善のために設置されることは言うまでもありません。しかし、そ のために各学校が学校協議会に何を期待するのかについては、学校が置かれている状 況などにより、様々な事柄が考えられます。 ・学校協議会における設置の目的は、「府立学校における学校協議会の設置・運営の 指針」に記載されている三点があります。(1.保護者や地域住民の意向を把握し、 学校運営に反映させる。2.教職員の意識改革を進め、学校運営と学校教育活動の 改善を図る。3.学校教育活動に対する保護者・地域住民からの協力を求めるため の、組織的・恒常的な協議の場とする。) ・そのことを踏まえて、自分の学校では学校協議会をどのように位置づけるか、その 役割をはっきりさせておくことが大切です。 A 開催の目的を明確にする。 ・次に、それぞれの学校の教育目標や、年度ごとの目標などに照らして、学校協議会開 催の目的を明確にします。 ・長期的な目的、年度ごとの目的、開催回ごとの目的など予め設定しておくことは重要 です。(もちろん、開催をする課程で目的が変更されるということは在り得ます。しか し、最初から無目的に開催するのでは、学校改善につながらないばかりか、校内に疲 労感や多忙感だけが残ることともなりかねません。) B 目的についての共通理解を図る。 ・学校協議会を有効に機能させるためには、@、Aで述べた位置づけや目的について、 管理職や担当者ではなく、できる限り、教職員間での共通理解を図ることが必要です。 ・そのためには、学校協議会の役割や位置づけ、目的などについて、それぞれの学校内 でていねいな議論を積み上げることが必要です。 ・また、学校協議会の委員、保護者等との共通理解も大切です。 ・ただし、このような目的の共有化は時間を要することもあります。その場合は、焦ら ずに、一つずつ積み上げることです。時間がかかって遠回りのように見えても、積み 上げの課程は、学校協議会を活性化するための土台となります。 2.各学校における目的づくりの工夫 ケース1:…具体的な目的に応じて委員を人選したケース A中学校では、年度ごとに具体的な課題を設定して、学校協議会を開催し、委員の人選もそれにそっ て決定することとした。例えばある年度は、学力向上の取組みについて協議するため、委員についても 他校種の教職員や学識経験者、保護者等を人選した。次年度は、修学旅行を工夫することを課題とし、 旅行会社の方等も委員に人選して、修学旅行プランについて協議した。 ケース2:明確な目的の設定が成果につながったケース A高等学校での事例は、目的を明確にして運営したことが、成果につながった例である。この学校で は、「生徒の視点に立った教育の展開」を学校協議会のテーマとして設定した。そこで、運営について もテーマに合わせて、例えば、協議会メンバーと生徒会役員の生徒との話し合いの場を設けたり、協議 会委員の授業見学を実現したりするといった工夫をした。そのことによって、適切な提言を得ることが でき、またその後も「生徒による授業評価」を継続的に実施するなど、教職員も含めた、教育活動の活 性化につながっている。 3.困った時のヒント ・目的が定まらないときには、校内の児童・生徒の実態―現状や課題に立ち帰ることが、 具体的な目標設定の鍵となります。(注意;その前提として、学校として目指すべき児 童・生徒の像が明確であることも大切です。学校教育自己診断や学校協議会との関係 だけでなく、日常的に自校の児童・生徒の実態について、教職員間で充分に議論し、 課題の共有化を図ることは欠かしてはならないことです。) 4.ひと言アドバイス ・目的が明確でない場合、学校教育自己診断に関する議論を学校協議会のテーマとす ることは有効な手段です。 ・学校教育自己診断の結果には、保護者や児童・生徒など、学校に関わる沢山の人の 意見が反映されていますから、殆どの場合、学校にとって重要な改善すべき課題が 含まれています。学校教育自己診断結果に、学校協議会の目的設定についてのヒン トがあります。 Section 6 学校協議会の組織・運営方式を定める この段階でのワーク 学校協議会の運営方法を定めます。 ・ 学校ごとに「設置要項」を定めます。 ・ Section 5 で定めた学校協議会の目的に基づいて、委員の人選を行うとともに、適 切な運営の方法や時期を定めます。 ・ 事務局を定め、委員の人選を行います。 ・ 学校協議会で協議する年間のテーマを定めます。 ・ 年間に実施する学校協議会の回数を定めます。 ・ その上で、各回ごとの協議テーマを設定します。 1.組織・運営方式を定める際のポイント @ 「設置要項」など、必要な事項を定める。 ・初めて学校協議会を学校に設置するときには、「設置要項」をはじめとする様々な必 要事項を決める必要があります。次年度からは、それを踏まえながらも、運営上見直 しを図る必要がないかどうか、十分検討して、「設置要項」を定める必要があります。 A 事務局を定める。 ・学校協議会の事務局を定め、学校組織の中に位置づけることは重要です。また、事務 局の人選についても、後の運営が組織的に行われることを目指して、学校ごとに適切 に行うことが重要です。 B 学校協議会の目的に合った委員を選出する。 ・委員の人選は、学校協議会の方向性を左右しかねない重要な事柄ですが、実際にどう すべきかは学校協議会の目的との関係で異なってきます。 ・基本的には、学校の課題について幅広い視野から意見や提言が受けられるように、広 く学校外の人材を確保する、ということが必要です。 ・また、可能な限り人物本位で選任することも重要です。 (参考―「府立学校における学校協議会の設置・運営の指針」) C 学校側が学校協議会に関して十分な準備をしておく。 ・学校協議会委員の時間を無駄にしないためにも、会議を短時間で密度の濃いものにす る必要があります。そのため、話し合う事柄、意見を求める事柄について予め学校側 で議論のポイントを明確にしておいたり、場合によっては分科会方式を取り入れる等 運営上の工夫が必要です。 2.各学校における運営方法の工夫 ケース1:委員による授業見学を取り入れたケース… B高等学校では、授業改善を大きな目的とし、毎回学校協議会の委員に1〜2時間の授業を見てい ただいた後に、会議を開催することとしている。特にそのことにより、委員の一人ひとりが授業の様子 についてよく把握し、子どもたちの姿を踏まえての具体的な意見交換ができるようになった。 ケース2:分科会形式を取り入れたケース C高等学校では、具体の提言を得るために委員の発言回数を増やすことが必要と考えた。しかし、一 回の会議の時間は委員の都合等により、2時間程度に限られており、学校からの説明やまとめの時間を とることを考えれば、一人の委員の発言時間は平均しても10分ぐらいしか確保できない。そこで、会 議の途中に分科会の形式を取り入れた結果、委員の発言回数が多くなり、活性化につながった。 3.困った時のヒント ・管理職や担当者などだけで、運営するのではなく、学校組織内で分担して運営の工 夫をしたり、運営そのものについても学校協議会の委員から意見を聞いたりする場 合があってもよいでしょう。 ・校種を問わず、府内には各学校の工夫事例が沢山あります。ホームページなどから、 他校の実践例を知ることは、ヒントにつながります。 ・つまり、困った時は、内に問い、外にアンテナを張ることです。 4.ひと言アドバイス ・学校協議会を、教職員の共通認識のもとに運営していくためには、校内の丁寧な議 論の積み上げという地道な作業は欠かせません。 ・一方で、多くの教職員が積極的に関わる地盤として、事務局等に関わってもらう等 の工夫も必要です。 ・他校の工夫、また他校種の学校の工夫は思いがけないヒントになります。取組みを 軸としたネットワークづくりが必要でしょう。 Section 7 学校協議会の実施と発展 この段階でのワーク 学校協議会を実施し、それを学校改善へとつなげていきます。 ・ Section 5 で定めた学校協議会の目的に基づいて、関係者に必要なフィードバック を行い、学校改善に向けての共通理解を図ります。 ・ 学校協議会委員の、学校「応援団」としての取組みを組織します。 ・ 学校協議会についての情報等を、適切な方法と内容を工夫して発信します。 1.学校協議会の実施と発展のポイント @ 学校協議会委員に適切な情報提供を行う。 ・学校協議会の委員は学校内部のことを熟知しているわけではありません。そのため、 学校改善にとって有益で的確な意見を出してもらうためには、適切な情報を委員に提 供しなければなりません。 ・場合によっては、実際に授業や学校行事を見てもらう等、学校を知っていただく機会 を設けることも必要です。 ・また、学校教育自己診断の結果等の情報を提示するときには、資料を渡したことで、 「情報を提示した」というように思ってしまわないことが大切です。どの部分につい て知ってほしいか、伝える手段と内容を工夫しなければなりません。 A 学校教育自己診断の結果について協議する。 ・学校協議会は学校改善の手段として位置づけられますが、学校教育自己診断の分析結 果を提示して意見等を求める等、学校教育自己診断と関連を持って運営することで、 学校教育の課題が明確になりやすく、学校協議会における議論を有効にすることがで きます。 B 学校協議会を学校「応援団」にする。 ・学校協議会の委員には、様々な方がおられると思います。委員の職業や専門性、地域 の中での役割などを生かして、学校教育活動の適切な場面で協力を依頼することは、 学校にとっても、委員にとっても様々なメリットが考えられます。 ・また、学校協議会の委員お一人お一人を軸に、更に多くの地域からの応援団を得ると いった視点も重要です。 ・折角、委員になっていただいたのですから、充分に生かす方策を学校として工夫した いものです。 C 学校協議会の協議内容をフィードバックする。 ・学校改善は管理職と学校協議会だけでできるものではありません。教職員はもとより、 保護者や地域社会等の協力が必須となります。そのため、これら様々な関係者間で情 報が共有されている必要があります。 ・目的と照らし合わせて、誰にどんな情報を何時発信するのか、明確な目的を持った情 報発信が必要です。それによって情報発信の手段も決まります。例えば、学校協議会 の場を公開として沢山の参加者を得たい場合は、開催前の情報発信が重要です。また 学校協議会での協議結果を保護者に広く伝えたい場合は、開催後に、保護者に一番伝 わりやすい方法で情報発信することが必要でしょう。 2.学校協議会の実施と発展の工夫 ケース1:「公開学校協議会」により成果につなげたケース A小学校では、「公開学校協議会」を実施しており、全ての教職員が参加して、シンポジウム形式で 開催している。教職員が直接委員の声を聞くことで、一人ひとりの外部の声に真摯に耳を傾けようとい う姿勢、改善に向けて取り組もうという姿勢につながっている。また学校協議会の委員も教職員全員を 目の前にすることで、よい発言をすれば学校に響くだろうという気持ちを持って発言している。課題や 改善提案が具体的になるばかりでなく、学校運営改善の協力者として、学校も学校協議会委員も変わり 始めている。 ケース2:メーリングリストによる情報共有化の工夫 E高等学校では、学校協議会の協議やその他の学校情報について、メーリングリストを利用して保護 者に伝えるシステムを作った。タイムリーに情報を提供することができ、保護者からも好評である。学 校行事への積極的な参加などにつながっている。 ケース3:情報誌回覧で協力者を拡大したケース F高等学校では、情報誌をつくり、学校周辺地域に回覧している。さらに、学校協議会委員につなぎ 役になっていただき、地域の様々な人々から、クラブ活動や学校行事など学校運営に関わって協力して もらえるようになった。 3.困った時のヒント ・情報発信をどうするか、ホームページ作成をどうするか、悩んだ挙句、とうとう時 期を逸してしまう場合があります。 ・誰に対して、どんな情報を、どんな目的で発信するのかで学校としてできることを 考えることが、情報発信の前提です。闇雲にとにかくホームページに情報を掲載し さえすればよい、という考えではなく、速さを優先するのか、緻密さを優先するの か、適切な情報を適切な方法で、負担にならないやり方で発信するシステムづくり が大切です。 4.ひと言アドバイス ・学校協議会の発展は、双方向的なものです。教職員、児童・生徒、保護者、学校協 議会委員のそれぞれが、それぞれにメリットを得られるような仕掛けづくりは、学 校を活性化させる推進力になります。 ・理想を持ち、夢のある学校運営をするのは素晴らしいことなのですが、一度にあま り完璧なものを望むと、逆に全く手をつけられなくなったりする場合もあります。 できることから、無理なく、多くの人を巻き込んで、まず着手することが大切です。 ・情報発信の場はホームページだけではありません。Section9も参考にして、 有効な手段でアクションにつながる情報発信を工夫します。 第V部 学校教育自己診断に基づく学校改善 Section 8 評価に基づく改善計画の策定 この段階でのワーク ・Section 7 までの自己診断の結果や学校協議会での議論等を手がかりとして、どこに 問題があるのかを的確に把握します。 ・問題点を改善するための計画を、できる限り具体的な形で策定します。 ・改善計画において、いつまでに何をなすべきか等を明確にします。 1.改善計画づくりのポイント @学校改善と自己診断・学校協議会との関係を明確にする。 ・学校改善にしても、自己診断・学校協議会にしてもPDCA(マネジメント・サイクル) 上に位置づけられるものです。したがって、自己診断や学校協議会から出てきたデー タや提言等をもとにして、そこから浮かび上がってくる問題を的確に把握したうえで、 学校改善計画を作成する必要があります。 A改善計画の策定にできるだけ多くの教職員が参加する。 ・改善計画は、当然ながら後に全教職員によって実行に移されるものです。そのため、 より効果的でスムースな計画実施を期するためにも、計画策定の段階からできるだけ 多くの教職員が参加し、一丸となって実行する体制の基盤づくりが求められます。 B必要に応じて数値化した目標を定める。 ・学校の改善計画を策定するにあたって、目標を明確にするために、必要に応じて数値 化することも考えられます。ただし、数値目標に馴染むものとそうでないものとがあ るので、どの目標を数値化すべきか(すべきでないか)を的確に判断しなければなり ません。 2.各学校における改善計画策定の工夫 ケース1:リーダーシップとボトムアップの組み合わせ A校では、ある校内委員会に対し、校長が教職員を巻き込んでの改善計画の策定を助言した。これを 受けた当該校内委員会は、様々な各校務分掌組織に働きかけた。これを受けて各組織は、それぞれの担 当箇所について自己診断結果を分析して改善案を作成した。最終的には全教員が何らかの形で関わるこ とによって改善計画が策定・実行された。 ケース2:学校の重点目標を優先した改善計画の策定 B校では、学校の重点目標として、数年にわたり「分かる授業づくり」に取り組んでいたことから、 授業改善を学校改善の中心課題とした。そして、学校教育自己診断の授業に関する項目を特に重点的に 分析し、公開授業の拡充、校内研修体制の強化などの改善計画を策定した。 ケース3:数値目標の設定 C校では遅刻者の多さが課題の1つであったので、その半減を数値目標として設定した。そのため、 教員が朝に校門に立つ、授業開始時間直前の登校風景を保護者に視察してもらって協力を仰ぐ等の対策 を取り、目標をほぼ達成した。 3.困った時のヒント 自己診断の結果や、学校協議会での議論から、学校に課題が山積していることが分かっ た…、ということもあります。そのような場合に、全てを一度に解決しようとせず、優先 順位を付けて、より重要度の高い課題、より緊急度の高い課題に重点的に取り組むような 改善計画を立てることも検討してみて下さい。学校が備えている人的・物的資源には限り があります。全面的な大改革計画を実行して成功すればそれに越したことはありませんが、 限界を越えた計画であったために全てが中途半端に終わったというのでは、かえって困る わけです。 4.ひと言アドバイス 改善計画は策定して終わりではありません。実行して終わりでもありません。策定して 実行した結果がどうであったかを見極めることを忘れてはいけません。すなわち、改善計 画についても自己診断が必要なのです。 成果が期待されたほどでなければ、その後に向けて計画の練り直しが必要ということに なりますが、逆に一定の成果が得られたのであれば、策定や実行のノウハウが別の改善計 画に応用することもできます。また、必要に応じて途中経過のチェックも行うと良いでし ょう。 【コラム:教職員参加に基づく課題把握と改善計画策定】 評価に基づく改善計画の策定に関連する事柄として、文部科学省の「学校組織マネジメ ント研修」と大阪府内のX中学校の実践を紹介しておきます。前者については、その研修 プログラムにおいて課題把握から学校改善へという内容が含まれています。後者は、学校 の課題を把握して、教職員の参加を促進しながら、それを学校改善へと結び付けてようと している実践例です。いずれも、とりわけSection 8 のワークを行う際の参考になります。 1.学校組織マネジメント研修 学校改善に関して、文部科学省では「学校組織マネジメント研修」のカリキュラムの開 発を行っている。これは「学校運営の改善のため、これからの学校には、校長のリーダー シップの下で教職員が協働しながら個々の得意分野を生かして学校経営に参画するなど組 織として力を発揮することが求められている」との認識から、「国において学校に組織マ ネジメントの発想を導入するためのモデルとなる研修カリキュラム等を開発し、教育委員 会等における教員等に対する学校組織マネジメント研修への取組を促進すること」をめざ すものである(同省ホームページより)。 そのために、平成14年6月に「マネジメント研修カリキュラム等開発会議」を設置し、 @校長、教頭、主任クラスを対象とした学校組織マネジメント研修のカリキュラムを開発 し、A各教育委員会において実施する組織マネジメント研修への支援方策等について検討 し、Bすべての教職員を対象としたカリキュラムの開発を進めている。 このうち、@に関しては、「学校組織マネジメント研修−これからの校長・教頭等の ために−」として平成16年3月にモデル・カリキュラムが出されている。その構成は 以下に示すとおりであるが、Section 8 との関係でいえば、主として第3章・第4章が課 題把握に、第5章・第6章が改善計画の策定と大きく関係している。また、学校経営診断 研究会の「学校経営診断カード」とその活用法についても紹介されている(第4章末)。 第1章 オリエンテーション 第2章 学校を取り巻く環境と組織マネジメントの必要性 第3章 特色ある学校づくりに向けての課題整理 第4章 学校を取り巻く環境分析と対策の検討 第5章 学校経営のビジョンづくり 第6章 学校組織開発の展開 なお、上記のモデル・カリキュラムについて、は以下のアドレスにてダウンロードが可 能である。 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/025/houkoku/04051201.pdf 2.X中学校の実践例 (1)課題把握 X中学校は、地域と協働する教育機関として貢献することを重要目標としており、元々 学校と地域の関係は良好であった。しかし、より一層地域に開かれ、信頼される学校づく りをめざすため、各種評価を活用した学校改善に取り組んでいる。そこでは、学校教育自 己診断、学校協議会、学習状況調査が主として活用されている。学校教育自己診断につい ては、設問をアレンジして実施している。 (2)教職員の参加 学校教育自己診断の分析にあたっては、管理職だけで行うことを避け、校内の各種委員 会で関係項目の分析を行った。そのような方式がとられたのは、各委員会の専門的観点か ら質の高い分析と改善策の策定を期したことに加えて、できるだけ多くの教職員がその過 程に携わることでスクールリーダーとしての力量を形成することをめざしたからでもあ る。実際に、これらの過程を通して教職員の意識が高まり、学校教育目標を考慮した改善 策が多く提示された。 (3)地域・家庭との関係強化〜学校改善に向けて〜 自己診断や調査などの様々なデータから得られた分析結果の1つは、「X中学校生徒の 学力は高いが、自ら積極的に学ぶという意識が弱い」というものであった。そして、この 課題をホームページや学校だより等で積極的に公開し、家庭や地域に協力を呼びかけてい る。地域に関しては、地域行事への生徒達の積極的な参加を促すとともに、教職員も地域 の懇談会等に積極的に参加している。家庭に関しては、電話連絡や家庭訪問等、日常的な 意思疎通を充実させており、これらの点が高く評価されていることも、自己診断のデータ から明らかになっている。 (4)年度途中の改善 X中学校では年度末の総括に基づく次年度へ向けての改善策の形成けでなく、可能な事 柄については年度途中であっても随時改善を図っている。例えば、授業研究の方法を改善 して、日常的に実効的な授業改善が行われるような工夫も行われている。 参考文献:「常に“仕事の意義を見つめる”教師たち」『月刊 悠』2005年5月号 (ぎょうせい)26〜27頁。 Section 9 保護者等への診断結果公表 この段階でのワーク ・保護者等に対する診断結果の公表の仕方を考えます。 ・各校において実施した自己診断の結果を、どこまで公表するか、どのような形で公表 するかを、各校の実情を考慮しながら検討します。 ・想定されている公表の対象者に結果を伝達するのに、適切な手段を検討します。 1.診断結果公表のポイント @学校で分析・検討したうえで公表する。 ・診断結果はできるだけ多く公表することが望ましいのですが、基礎データをそのまま 公開することがベストとは限りません。学校の実情を知らない人が見た場合に数値デ ータ等について誤解が生じることもあります。得られたデータに対する学校の解釈や 問題に対する改善策を合わせて公表する等の工夫が必要になります。また、自由記述 欄などにおける個人的な内容については、特に慎重に取り扱わなければなりません。 A多様な手段によって公表する。 ・評価結果の公表は関係者の多様性を考慮して、できるだけ多様な手段によって行うこ とが望まれます。例えば、PTA総会での報告、学校通信の発行、地域の掲示板の活用 などが考えられます。また、学校のホームページに掲載する場合には、双方向性を確 保することも可能です。 2.各学校における診断結果公表の工夫 ケース1:情報の精選と学校の見解表明 A校では、診断結果を公表する際に、個人名が上がっているなど、ごく一部にのみ関係する事柄につ いては公表しない原則を定めた。また、数量的なデータの公表についても、適宜学校側の注釈を付ける −例えば、数値の低い項目でも前回調査と比べると向上が見られる、複数の解釈が可能で今後さらに 検討する必要がある、など−ことにし、診断結果をめぐる誤解ができるだけ生じないようにした。 ※教職員に対する公表の際にも、個人攻撃的な内容については公表せず、管理職が個別に伝達して事 実確認等に努めた事例もある。 ケース2:地域に向けての発信 B校では、これまでも保護者に対しては「学校通信」(仮称)を発行して情報提供に努めていたが、 保護者以外の地域住民にも学校の実情を知ってもらいたいと考えた。そこで、地域向けの「学校便り」 (仮称)を新たに作成して、町内会の協力を得て回覧板で回してもらい、地域の学校に対する理解を図 った。 ケース3:学校マニフェスト C校では、学校教育自己診断の結果にもとづき学校マニフェストを策定した。保護者に公表するとと もにHP上にも公開し、学校協議会において各学期毎に評価を受けている。 ケース4:学校側の返答を示す D校は、保護者向けの「学校通信」(仮称)で自己診断の結果を公表した。その際に、学校に対する いっそうの関心を喚起するために、自由記述欄に書かれた意見に対する学校の返答を付した。 その結 果、学校に対する保護者の積極的な姿勢が見られるようになった。 ケース5:携帯電話の活用 E校では保護者の学校に対する関心が低かった。調査したところ、保護者の大半は携帯電話を有して いることが分かった。そこで、携帯電話用のホームページを作成して、保護者間の学校情報の共有を促 進したところ、アクセスも増えて学校に対する関心が高まったので、ホームページ上で診断結果を公表 することについて検討を開始した。 3.困った時のヒント 学校教育自己診断の結果をホームページ上で公表し、それに対する意見をE-mail等で募 集することもできます。これは学校と学校外の双方向的コミュニケーションという点では 望ましいことです。しかし、実際にやってみると反応がなかったり、逆に反応が多すぎて 対応に苦慮することも起こったりします。 前者については、公表の手段・方法を再検討することが必要かもしれません。後者のよ うな状況になった場合は、担当する教職員の負担も考慮して、1つ1つの意見にその都度 個別に答えるのではなく、ホームページ上で定期的にまとめて回答を行う等の工夫が必要 になります。 4.ひと言アドバイス 自己診断の結果の公表については、それをどの程度行うか、どうやって行うかは、当然 ながら各学校が置かれている状況によって異なってきます。したがって、各学校で自らに 手段・方法を検討した上で、適切な形で公表を行うことになります。 また、自己診断結果の公表を前向きに捉えることも必要です。つまり、それは「学校の ことを知ってもらう良い機会」と考えることです。保護者や地域は案外学校の実情を知ら ないことも多いのです。課題がある場合には改善策とセットで提示するといったちょっと した工夫を交えて、学校が積極的にアピールすることも必要です。そのためにも自己診断 の目的の明確化や、その丁寧な分析がやはり重要になってきます。 Section 10 学校の活性化を推進する多様なサポート この段階でのワーク ・各校の学校改善の取り組みを、さらに発展させます。 ・この手引きをもとに各学校で様々な工夫をして学校改善に取り組んだうえで、さらに 各学校の創意により、いっそうの学校の活性化に取り組みます。 ・校内での議論にとどまらず、学校間の研究協議や情報交換も積極的に行います。 ・発展的な活動を行うにあたって、必要に応じて関連する諸活動やその方法論を参考に します。 1.大阪府におけるこれまでの学校改善関連プロジェクト 各学校が取り組んできた学校改善をさらに発展させるにあたって、大阪府教育委員会や 大阪教育大学を中心に取り組まれてきた諸プロジェクトの中から、参考になると思われる ものを以下にいくつか紹介します。 (1)スクールリーダー・フォーラム これは大阪教育大学・大阪府教育委員会合同プロジェクトとして、スクールサポートを 目的に立ち上げられたもので、学校関係者の実践的な研究交流を促す場となっています。 具体的には、@学校づくりの諸課題について自校の実践を報告する、A学校・大学・行政 が同じテーブルで対等の立場で研究協議を行う、Bその成果を報告書として刊行する、と いう活動を行ってきました。 (2)スクールリーダー・セミナー これは、スクールリーダー教育としての短期集中型セミナーです。@学校づくりの政策 と実践の学習、A学校改革校の実践報告、B文献講読や講話づくり等の実際的ワーク、な どを内容としています。現在これは内容を発展・充実させて、大阪教育大学大学院・実践 学校教育専攻の授業科目「大阪の学校づくり」となっており、授業公開もされています。 (3)「学校評価実証校」支援プロジェクト これは、大阪教育大学・大阪府教育委員会連携事業であり、学校教育自己診断や学校協 議会を活用した学校改善を支援するためのプロジェクトです。校種を越えて学校間で互い に学び合う場として、@各校が実践を持ち寄って報告し、Aワークショップを行って課題 に対する理解を深め、B情報を共有して自校の課題解決へのヒントを得ることにより、学 校改善に資するための方途を相互に協力しながら探究してきました。このプロジェクトの 成果がこの「手引き」に活かされています。 2.諸プロジェクトの方法論の活用 上に示したプロジェクトの方法論は、発展的な学校改善の方途を探究する際に参考にな ります。その要点は以下の2点です。 (1)学習の拠点づくり 各プロジェクト自体がそうですが、学びのハードウエアとして、学校改善に向けての学 びの場を組織しています。 (2)互いに学びあう 学習の場面において、学びのソフトウエアとして相互学習を取り入れ、互いの実践事例 を持ち寄って紹介し、参加者全員で研究協議しています。その際に、以下の事柄に留意し ています。 @成功事例だけでなく、上手くいかないことについても紹介する(本音を語る)。 ⇒上手くいかないケースから学ぶことも多い。 A各校の情報を共有することで、共通する課題を認識する。 ⇒その後の情報交換が容易になる。自校の状況を相対化して認識できる。 B他校の実践(上手くいかなかった事例も含めて)から、自校の改善へのヒントを探る。 ⇒他校の実践を聞くことで、新たなアイディアが浮かぶことも多い。 3.各学校・地域での取り組みに向けてのアドバイス 以上に示してきたことを参考に、より良い学校改善に向けての学習を組織してみてはい かがでしょうか。学校内で学習の場を設けることももちろん有意義ですが、学校間で共同 して学ぶことで、より大きな成果が期待できます。学校間で学習の場を組織する際に、例 えば、以下のような方式が考えられます。 @共通課題を有する学校、同じような状況にある学校間で組織する。 ⇒解決したい課題が既に明確な場合には、効率的な研究協議や情報交換がしやすい。 A近隣の学校で、校種を越えて組織する。 ⇒地域的な課題を共有しやすい。また、校種の壁を越えることで、新たな連携が生ま れたり、全く違った視点で課題を捉えなおしたりすることもできる。 B学校以外の関係者(指導主事、大学研究者、学校協議会委員など)も交えて組織する。 ⇒政策的観点、理論的背景など、学校外からの視点を組み込むことで、新たな視点で 課題を捉えなおすこともできる。 もちろんこれらはあくまでも例であって、これらを組合せてみたり、全く別の方式で実 施することもできます。例えば、学校協議会にオブザーバーとして相互訪問したり、学校 教育自己診断の分析作業を一部協力したりすることで、実践に即した研究協議に資するこ とも考えられます。 資 料 学校教育自己診断実施要項 平成11年7月9日 平成12年6月28日一部改正 平成13年8月29日一部改正 平成14年5月9日一部改正 平成17年7月1日一部改正 大阪府教育委員会 〔1〕趣旨 ○ 学校教育自己診断は、学校教育活動が児童生徒の実態や保護者・地域住民の学校教育 に対するニーズ等に対応しているかどうかについて、学校自らが診断票(診断基準) に基づいて学校教育計画の達成度を点検し、学校教育活動の改善のための方策を明ら かにするものである。 ○ 学校教育自己診断は、学校が主体的に実施するものである。 ○ 学校教育自己診断は、管理職・教職員だけが行うものではなく、児童生徒、保護者に も協力を求め、様々な立場からより客観的に行われるものである。 〔2〕目的 ○ 継続した診断活動を通して、校長のリーダーシップと全教職員の共通理解のもと、学 校教育目標の達成を目指して学校組織と教育活動を活性化する。 ○ 学校自らが自校の教育を点検する姿勢を明らかにすることによって、保護者や地域住 民に理解され、支持される開かれた学校づくりをすすめる。 ○ 診断活動を積み重ねるとともに、学校が積極的に家庭や地域社会に情報を提供するこ とによって、家庭・地域社会と一体となった、学校教育の在り方や家庭・地域社会の 役割について話し合うための場づくりを目指す。 ○ 学校教育の改善のための課題を明らかにすることによって、教育行政の課題を明らか にする。 〔3〕実施方法 @ 学校教育自己診断を実施する府立学校は大阪府教育委員会にその旨を連絡する。ま た、小・中学校については、市町村教育委員会を通じて大阪府教育委員会にその旨を 連絡する。 【問い合わせ先】 府立高等学校及び市町村教育委員会 <大阪府教育委員会事務局 教育振興室高等学校課 教育振興グループあて> 府立盲・聾・養護学校 <大阪府教育委員会事務局 教育振興室障害教育課 盲聾養護学校グループあて> A 実施校は大阪府教育委員会が提供する診断票を基に、診断内容・方法等について検討 する。(学校教育自己診断票の種類は校長・教職員・児童生徒・保護者用の4種類) B 実施校は必要に応じ校内に「学校教育自己診断委員会」を設ける。 A 実施校は診断票の配付・回収・集計・考察を行う。 府立学校における学校協議会の設置・運営の指針 「学校協議会」の設置・運営の基本的な考え方(府立高校) 1.学校協議会の設置 (趣旨・目的) (1)保護者や地域住民の意向を把握し、学校運 営に反映させる。 (2)教職員の意識改革を進め、学校運営と学校 教育活動の改善を図る。 (3)学校教育活動に対する保護者・地域住民か らの協力を求めるための、組織的・恒常的な 協議の場とする。 (規程の整備) 各学校は、自校の教育目標、教育計画、生 徒地域の実態を踏まえ「学校協議会設置要 項」を作成し各学校毎に協議会を設置する。 (役割) (1)校長の求める事項について協議する。 (2)各学校が学校の自主性・自律性を確保しつ つ、責任をもって学校教育活動の改善や特色 づくりに役立てられる、意見交換や提言を行 う。 (1)学校協議会設置の趣旨・目的 ○学校においては、保護者や地域住民の意向を把握し、学校運営に反映させ ることにより、教職員の意識改革を一層進め、学校運営と学校教育活動の 改善を図ることが求められている。そのため、開かれた学校づくりの推進 が重要な課題となっている。 ○学校教育活動に対する保護者・地域住民からの協力を求めるためには、学 校運営の透明化を高め、その説明責任を果たすことを通じ、学校に対する 理解と信頼を得る必要があり、そのため各学校に組織的・恒常的な協議の 場として学校協議会を整備することが求められている。 ○その際、学校改善について適切な意見や提言を受けるためには、校長及び 教職員が自ら学校運営の点検を行い、加えて児童・生徒や保護者からも評 価を得ることを内容とする「学校教育自己診断」結果を積極的に活用する こととする。 (2)学校協議会設置に必要な規程の整備 ○学校協議会は、各学校毎に設置する。 ○学校協議会を設置する学校は、学校協議会の設置及び運営を円滑に進める ため、府教育委員会が示す「設置・運営の基本的な考え方」に基づき、教 育目標、教育計画、生徒や地域の実態を踏まえながら「学校協議会設置要 項」をはじめ必要な事項を定める。 (3)学校協議会の役割 ○校長の求める事項について協議し、学校改善のための意見交換や提言を行 う。 ○各学校が学校の自主性・自律性を確保しつつ、責任をもって学校教育活動 の改善や特色づくりに役立てられるよう、意見交換や提言を行う。 ○各学校が「学校教育自己診断」診断結果を学校運営の改善に反映させられ るよう、意見交換や提言を行う。 (委員の構成と役割) (1)委員の人選にあたっては、自校の課題につ いて幅広い視野から意見・提言が受けられる よう、広く学校外の人材を確保する (2)柔軟な選任規程を設け、自らの異動後に次 期校長が裁量を発揮し易くなるよう配慮し ておく。 (3)委員は可能な限り人物本位で選任すること とし、関係機関、団体の長などの充て職が多 数とならないように配慮し各分野からバラ ンスよく選任するとともに男女の一方の性 に偏らないようにする。 (4)当該学校の教職員、児童生徒の選任はその 趣旨から適当でない。 (5)委員は校長の求めに応じて、学校を支援す る立場から積極的な意見発表や提言を行う。 (6)委員は、個人情報等職務上知り得た情報に 関する趣旨義務を負う。 (委員の委嘱と任期) (1)校長が委員を委嘱し、府教育委員会に報告 する。 (2)委員の任期は原則1年とし再任を妨げない が固定化防止に努める。 (協議事項) (1)校長の求めに応じて学校運営全般について 協議する。 (2)学校教育自己診断の診断結果及び分析、並 びにこれに伴う学校運営改善方策を中心的 な事項とする。 (3)校長は協議事項の趣旨及び内容について、 教職員の理解の徹底に努める。 (4)学校評価の反映として学校教育自己診断を 積極的に活用する。 (4)委員 〔役割〕 ○委員は、学校運営全般に関して、学校改善を進める立場から積極的に協議 に参加し、意見や提言のとりまとめに協力する。 ・委員には、公教育に関わる者としての見識と学校教育を充実しようとす る自覚が必要である。 ・委員は、校長の求めに応じて、学校を支援する立場から積極的な意見発 表や提言を行う。 ○委員は、個人情報等職務上知り得た情報に関する守秘義務を負う。 ・校長は、委員を委嘱する際、委員として知り得た個人情報等に関し守秘 義務があることについて説明し、理解を求める。 ・校長は、学校教育の現状と課題、自校の実態等について協議会委員の理 解が深まるよう務める。 〔委員構成〕 ○委員の委嘱に当たっては、自校の課題について幅広い視野から意見・提言 が受けられるよう、広く学校外の人材を確保する。 ・学校協議会は、学校の外部から学校運営に関する意見・提言を求めるも のであるため、教職員が委員の意見を聴く機会を設けることが望まし い。 ・生徒は委員としないが、生徒が、学校協議会に対し直接意見等を表明す る場と機会を設ける工夫を図ることが望ましい。 ・PTAは全保護者を対象とする唯一の組織という観点から、関係者を委 員とすることにより、PTA活動との連絡連携を図る必要がある。 ・自由な立場からの幅広い協議が求められるため、委員は可能な限り人物 本位で選任することとし、関係機関、団体の長などの充て職が多数とな らないように配慮するとともに、各分野からのバランスある選任が必要 である。 ・委員の男女比率や年齢構成について配慮する。 ・公募により委員を委嘱する場合には、選考規程を設けるなど開かれた選 考を工夫する必要がある。 〔委嘱〕 ○校長が委員を委嘱し、府教育委員会に報告する。委員数は、実効ある協議 とするために一定の範囲内に留めることが望ましい。 ○府教育委員会は、委員に対し交通費実費程度等の謝礼を支給する。 〔任期〕 ○委員の任期は原則1年とし再任を妨げないが、最長年限を規程するなど委 員の固定化の防止に努める。 ・委嘱期間内において、委員に特別な事情が生じた場合は、校長は任期満 了前に委員の辞任許可及び解任をすることができる。 ・委嘱期間内に委員に欠員が生じた場合は、委員を補充することができる こととし、その任期は、前任者の残任期間とする。 (5)協議事項 ○校長の求めに応じて学校運営全般について協議する。特に学校教育自己診 断の診断結果及び分析、並びにこれに伴う学校運営改善方策を中心的な事 項とする。 ・校長は協議事項の趣旨及び内容について、教職員の理解の徹底に努める。 ・校長は協議会において具体的な意見や提言が出されるよう、説明責任を 果たすとともに、適切な情報提供に努める。 2.協議会の運営 (1)会長は委員の互選により選出する。 (2)会長は校長の求めに応じ、協議会を招集す る。 (3)会長は、委員から出された意見をとりまと め、校長に提言する。 (4)校長及び教職員は協議会運営の事務局を担 い、校長は事務局機能を校務分掌に位置付け る。 (5)協議会委員に授業参観や、学校行事への参 加を働きかけ、学校の実情を理解してもらえ る機会を設ける。 (6)外部意見(協議会での意見)を教職員に直 接触れさせるため、教職員が協議会運営に参 画できる工夫をするとともに、協議会での意 見や提言を教職員に示す。 (7)協議会の協議内容を学校便りやPTA広報 誌等を通じて生徒・保護者に知らせるだけで なく意見や提言に基づく改善への取組や、学 校の見解を地域にも発信し、説明責任を果た す。 (8)協議の内容によっては、生徒の意見を求め るための場と機会を確保する。 (6)協議会の運営 ○会長は委員の互選により選出する。 ○会長は校長の求めに応じ、協議会を招集する。 ○会長は、委員から出された意見をとりまとめ、校長に提言する。 ・協議の内容に照らし、校長が必要と認める場合は、生徒の意見を求める ための場と機会を確保するよう努める。 ・必要に応じ、委員以外の関係者から意見を聴取する。 ○校長は、意見等を求めた事項について、委員の共通理解と協議の活性化に 資するため、必要に応じ説明を行うとともに意見を述べ、協議会運営の円 滑化に努める。 ・校長及び教職員は協議会運営の事務局を担い、校長は事務局機能を校務 分掌に位置つける。 ・事務局は、事前の資料配布や委員の意向の聴取などを行い、協議会の効 果的な運営に努める。 ・協議会から提出された意見や提言については、校長は学校内で責任をも って検討し、その検討結果を協議会及び生徒、保護者、地域に対して説 明する。 ○協議会の開催は公開を原則とするが、学校運営への支障やプライバシーの 侵害のおそれがある場合は、非公開とすることができる。 ・公開の対象は、学校教育の当事者である生徒、保護者はもとより地域住 民全体とするのが妥当である。 ・傍聴については、その手続き等を規定し、周知しておく必要がある。 ・学校は年度当初に年間実施計画を立案し、開催時期や協議内容などを保 護者、地域住民に周知しておくことが望ましい。 ・学校は、協議内容や提言等を保護者や地域社会に提供するため、情報提 供機能の充実に努める。 (教育委員会への報告) 校長は学校協議会の設置及び運営について 府教育委員会に報告する。 (7)府教育委員会への報告 ○校長は学校協議会の設置及び運営について府教育委員会に報告する。 協議を求めた事項及び委員が述べた意見や提言、学校運営に反映できた事 項等を記した 「府立○○学校学校協議会に係る報告書」とする。 ・年度当初(実施計画)、第1回目実施後及び年度末に、別に定める様式 により報告する。 (8)府教育委員会の役割 ○府教育委員会は学校協議会の活性化のために、各学校における事例の紹介 を行う等情報提供機能を充実する。 ○各校の協議会相互の実情を情報交換する場を設け、各校が相互に情報の収 集・発信を行えるようにする。 ○府教育委員会は、委員の委嘱や協議会の運営について、必要に応じて校長 に指導・助言を行う。 大阪府立高等学校等の管理運営に関する規則(抜粋) 学校協議会に関する規定の追加(平成15年4月1日施行) (学校協議会) 第二十二条の四 高等学校に、学校協議会を置く。 2 学校協議会は校長の求める事項について協議し、学校運営に関し意見交換や提言を行 う。 3 学校協議会の委員は、当該高等学校の職員以外の者で教育に関する理解及び識見を有 するもののうちから、校長が委嘱する。 ※第三十六条で、盲学校、聾学校及び養護学校に準用。 参考 学校教育法施行規則 第二十三条の三 小学校には、設置者の定めるところにより、学校評議員を置くことが できる。 2 学校評議員は、校長の求めに応じ、学校運営に関し意見を述べることができる。 3 学校評議員は、当該小学校の職員以外の者で教育に関する理解及び識見を有するもの のうちから、校長の推薦により、当該小学校の設置者が委嘱する。 ※第五十五条で、中学校に準用。 ※第六十五条で、高等学校に準用。 ※第七十三条の十六で、盲学校、聾学校及び養護学校に準用。 【学校評価システムを考える参考となる主要な文献の紹介】 ・長尾彰夫他編 『学校評価を共に創る』学事出版 2003年 ・八尾坂修 『現代の教育改革と学校の自己評価』ぎょうせい 2001年 ・木岡一明 『新しい学校評価と組織マネジメント』第一法規 2003年 ・西村文男・天笠茂・堀井啓幸 『新・学校評価の論理と実践』教育出版 2004年 ・大脇康弘・田村昌平 『学校を変える 授業を創る』学事出版 2002年 ・金子郁容 『学校評価』筑摩書房 2005年 ・高階玲治 『学校の自己点検・自己評価の進め方』教育開発研究所 2003年 『学校評価を共に創る―学校・教委・大学のコラボレーション―』 (長尾彰夫他編、学事出版2003年) 本書は、大阪府教育委員会と大阪教育大学の提携プロジェクトである「スクールリーダ ー・フォーラム」の取り組みの成果である。この「スクールリーダー・フォーラム」は、大 学、教育委員会、学校が交流し、連携していくことを目的にしている。その最初のフォー ラムのテーマとして「学校教育自己診断を実践する−学校を開く試み−」をあげ、その内 容をまとめたものが本書なのである。「スクールリーダー・フォーラム」の特徴と同じく、 本書でも研究者、教育委員会、現場の教職員、と様々な立場の人々が執筆している。それ ぞれの立場から今回のテーマである学校評価について意見が述べられており、大変面白く 読むことができる。 本書は4部構成になっているのだが、前半の1部、2部は学校評価及び学校教育自己診 断についての理論的考察が中心となっている。学校評価の在り方や政策上の位置、性格な どと共に、大阪府の学校づくり政策として学校教育自己診断がつくられるまでの過程や、 その目的や特徴、有効性などが書かれている。特に、学校教育自己診断に関しては、調査 結果なども使いながら説明されており、同府のシステムの特徴などが分かりやすく書かれ ている。 後半の3部、4部では、事例研究を通じた学校教育自己診断の検証が中心となっている。 特に3部では、「スクールリーダー・フォーラム」で実際に発表した学校の実践記録がま とめられており、本書の特徴の一つとも言える。実践記録は、小学校、中学校、高等学校 それぞれ2校ずつ収載されている。どの学校も、大変意欲的に自己診断に取り組んでおり、 診断結果を生かした学校経営を行なっている。そしてそれらの取り組みが詳細に記録され ているため、学校としての考え方や方針などを明瞭に読み取ることができる。 学校評価の実践事例として、まず最初に読み、参考にできるものであると考えられる。 『現代の教育改革と学校の自己評価』(八尾坂修著、ぎょうせい2001年) 本書は、学校の自己評価を中心テーマとして、関連する法律や答申、また海外の取り組 みなどを紹介している。また、学校評議員や人事考課、研修など、学校評価と関わりを持 ちうる制度についても、分かりやすくまとめてある。 本書の特徴はやはり、学校評価とその周辺テーマを数多く取り上げ、それらを簡明にま とめ、読者が現代学校改革の方向性をイメージできるようにしている点であろう。例えば 5章では学校評議員制度が取り上げられているが、そこでは東京や大阪、高知などの取り 組みが紹介され、外部評価や授業評価などの在り方についてまとめられている。さらに学 校評議員、学校自己評価への提言として、学校評価の目標を明確化し、周知徹底すること やアンケート実施時の設問の工夫の必要性、結果を受けての分かりやすいビジョンの具体 化など、一般的ではあるが実際的で具体的なものがいくつもあげられている。他にも、ア カウンタビリティや学校組織運営、人事考課、学校指導者のリーダーシップ、研修など、 学校評価実施において重要な要素となりうる事柄を取り上げ、その中での学校評価の生か し方を中心にまとめられている。 直接学校評価について書かれている部分は、3章と9章である。3章では、学校評価の 歴史を中心にまとめられている。学校評価は各学校の裁量の余地が大きい制度である。し たがって学校評価の歴史を知り、長い歴史を持ちながら学校に定着してこなかった要因な どを把握しておくことは、各学校に合い、定着していく学校評価を作り上げる上で重要な ことである。この点で、本書の3章は学校評価の歴史が端的にまとめられており、読みや すく分かりやすいものであると言える。また9章は、学校自己評価の実際の姿が書かれて いる。政府レベルの考えをまとめた上で、著者が直接関わったある小学校の取り組みを紹 介し、具体的な評価結果の特徴なども取り上げている。そして研究者から見たそこでの改 善点を紹介するなど、学校評価によって学校改善を行っていく際の視点の持ち方の参考と なる知見に満ちている。 『新しい学校評価と組織マネジメント−共・創・考・開を指向する学校経営』(木岡一明著、第一法 規出版2003年) 本書は、これまでの学校評価の歴史、理論の変遷、現在の取り組み、と学校評価の全体 像を捉えるのに適したものである。また、これまでの学校評価の取り組みや現在の学校現 場の状況を踏まえて、これからの学校評価の姿を見出している点でも、大変意義深いもの となっている。本書のサブタイトルにもなっている、「共・創・考・開を指向する学校経 営」という言葉は、著者の考え方を端的に表したものである。この「共・創・考・開を指 向する学校経営」を確立するために、学校評価を活用していくというのが著者の基本的な 考え方なのである。 第T部では、現在のように学校評価が取り組まれるようになった背景をまとめている。 特に、現在の教育改革の流れをまとめると共に、過去の学校評価史を分析し、その中から 問題点、継承すべき点などが見出され、それを現在に生かそうとしている。また学校評価 に関する調査結果も章を割いて載せられており、現在の学校評価、そして評価を取り巻く 学校経営制度改革の問題点を端的に指摘するなど、大変分かりやすいものとなっている。 後半の第U部では、筆者の考える新しい学校評価の姿が述べられている。筆者は学校組 織開発、学校経営改革の必要性を感じており、そのために学校評価を生かそうと考えてい る。第七章では「共・創・考・開を指向する学校経営」を確立するための、学校評価を創 っていく6つの視点が書かれている。これらの視点は順に「共・創・考・開」に絡めて説 明されている。例えば1つ目の視点「学校が組織体であるとの前提から自由になる」とい うものは、「共」と関わって、「先に協働関係があるのではなく、取組みを進めるなかで 学校が協働性を高めていくという展望が実際的である」と説明されている。このように筆 者は、これまでの学校評価実践の問題点と共に、現在の学校現場の特性をしっかりと捉え た上で、多くの学校で今、実行可能な学校評価像を描こうとしているのである。したがっ て、学校評価実践それだけではなく、学校評価を通した学校経営改革をデザインする上で、 本書は大変有効なものと言えるのである。 『新・学校評価の論理と実践』(西村文男・天笠茂・堀井啓幸著、教育出版2004年) 本書には、今日の学校評価が目指す方向性について、政府の答申や各地の実践などを使 いながら分かりやすく述べられている。特に、後半では全国各地の学校評価実践例がタイ プ別に数多く収載されており、事例集としても貴重なものである。また、本書の特徴とし て、外部評価の活用にかなりの比重が置かれていることがあげられる。学校評価において 外部評価は客観性確保のためにも大変重要な要素となる。外部評価の意義や方法などが分 かりやすくまとめられている点でもためになる本である。 本書はタイトルの通り、学校評価に関する論理と実践を、前半と後半に分けて解題して いる。前半には、学校評価に関する論理、特に外部評価の導入や活用を中心に書かれてい る。学校評価の論理については、教育活動や経営活動など、各対象についての評価方法の 反省点、評価設計の際の注意点などについて分かりやすく述べられている。また外部評価 については、@学校評価を機能させる、A学校と家庭・地域社会の連携を図る、B教職員 の資質能力の向上を促し、学校への信頼を高める、C教職員の意識改革を促す、という4 点の導入意義をあげ、その必要性を説いている。そして、外部評価者として教育委員会、 保護者、地域住民、学校評議員などを想定しながら、外部評価を含めた学校評価の進め方 を解説している。 後半では、学校評価の実践例が10事例あげられている。それぞれの事例に見出しがつけ られており、事例の特徴が分かりやすくなっている。各事例にある程度の紙幅が割かれて いるため、取組みの様子がしっかり分かるだけの分量で書かれていることも良い。各事例 の中では、実際にその学校が作成し、活用した印刷物などが掲載されており、取り組みが 具体的に記述されているため、大変参考にしやすくなっている。特徴的な見出しがつけら れていることと合わせて、読者が参考事例を見つけ、見本にすることを想定したような体 裁の工夫がなされていると受け止められる。 『学校を変える 授業を創る』(大脇康弘・田村昌平編著、学事出版2002年) 本書は、大阪府立今宮高等学校が総合学科へと改編し、学校改革に取り組んだ記録を、 学校評価及び授業評価の視点からまとめたものである。学校改革の過程を大変分かりやす い文章でまとめられており、とても読みやすいものとなっている。それは、内容の大半を 今宮高校の当時の教師が執筆していることが影響しているだろう。それぞれの教師が、自 分で工夫して行なった授業について執筆しているため、そこには生徒のみならず教師自身 の楽しさや手ごたえなどが感じられる。 本書は6章で構成されているのだが、筆者が「先ずは、第2章や第5章から目を通して、 今宮ワールドに触れて欲しい。」と述べているように、これらの章に、執筆された当時の 今宮総合学科の魅力が書かれている。また、本書の主要なテーマである学校改革、授業改 革について書かれた部分でもある。2章では総合学科に改編する前後の学校の動きを、当 時の校長が書いている。そこではさまざまな苦労も垣間見せながら、校長の学校改革に対 する熱意が強く感じられる。また5章では、当時の教師がそれぞれの授業の様子を書いて いる。今宮高校では、総合学科に改編される前から、「学校はどうあるべきか」について 検討しており、3つの柱を立てている。そして授業に関する部分では、「授業を創造する」 として一つの柱としている。その内容は「考えることを中心とした授業」「教科書のみに とらわれない授業」「体験を中心とした授業」「教科のわくを越えた授業」の4つである。 5章には、これらの内容を踏まえて、それぞれの教師が考え、工夫して行なった授業の様 子が数多く書かれている。 学校の取り組み、そしてそれぞれの授業、これらをしっかりと振り返り、反省点を見つ けることは、学校評価の基本的な部分である。本書は今宮高校の魅力的な取組みに目が行 きがちになるが、自らをしっかりと評価し、反省しようとしている姿勢に注目して読み取 りたいものである。 『学校評価−情報共有のデザインとツール−』(金子郁容編著、筑摩書房2005年) 本書は、金子郁容の学校評価に関する考え方がまとめられている理論書であると同時に、 具体的な運用の仕方や手順なども紹介されており、学校評価の手引きという側面をも持っ ている。その点で読者に配慮した、読みやすく、理解しやすいものと言える。 近年、学校評価は教育改革の主要なテーマの一つとなり、学校評価の存在についての認 識も広がってきている。そして現在の学校評価に関する考え方は、現在の教育改革の特徴 とも言えるのだが、教育界以外からの声による影響を色濃く受けている。同時に学校評価 論者の中にも、教育学者ではない者も現れてきた。その代表的な存在が、本書の筆者であ る金子郁容氏である。同氏は現代におけるコミュニティーの在り方などを研究する中で、 地域の住民らが中心となって学校をつくりあげる「コミュニティースクール」の有効性を 主張してきた。そして、学校をめぐるコミュニティーを活発化するための学校評価の姿を 本書で描いている。 金子は自身の考える学校評価を「コモンズ型学校評価」と名づけている。この学校評価 の特徴は、「オープン性」を重視している点である。評価によって学校改善が促進される ためには、評価結果や評価実施のフォーマット、情報開示のルールなどが個々の学校を超 えてオープンとなることが必要となる。そしてこれらを一定範囲で共有し、また学校に関 わる人々で共有することで、コミュニティーの力による問題解決が図られると考えるので ある。 また本書の後半では、「コモンズ型学校評価」を実施するための手順が詳しく書かれて いる。具体的な取り組み事例をあげながら、地域のニーズを把握し、学校評価システムを 構築し、それを実施するまでの流れが、分かりやすく書かれている。特にパソコンやイン ターネットを活用して、できるだけ作業を簡略化する(慶應義塾大学研究チームによるSQS システムの開発)という、学校現場にとって一つのネックである作業の膨大さを解消しよ うとしている点で、大変価値のあるものと考えられる。 『学校の自己点検・自己評価の進め方−学校評価システムの確立と学校のアカウンタビリティ』 (高階玲治編集、教育開発研究所、2003年) 本書は、学校評価の持つ要素を数多く網羅し、それらをさまざまな研究者が論じている という点で、学校評価の手引書として大変有効なものであると言える。各学校でその学校 にあった学校評価を作り上げ、その中で各関係者がどのように動くのか、様々な評価領域 をどのように評価していくのか、というような具体的な事柄が解説されている。多くの著 者がそれぞれのアプローチで、具体的課題について執筆しているため、学校評価とは何か、 といった大きなテーマについて知るためには向かないかもしれないが、学校評価を実践す る際の数々の疑問に対応できるような細かなテーマが網羅されており、その点に本書の価 値がある。 2章では、学校評価の方法として、学校関係者がどのように学校評価に関わるかという ことを、さまざまな立場を取り上げて書かれている。校長のリーダーシップをはじめ、教 頭、教務主任、生徒指導主任、学年主任、学級担任というように、学校の実際の職階に応 じて、それぞれがどのように学校評価に関わっていくかが論じてられている。そして3章 では、評価領域についてまとめられているのだが、学校の教育目標、重点目標、教育課程 経営はもちろんのこと、国語や算数などの実際の教科、道徳や特別活動、また生徒指導、 進路指導などの生徒に関わる活動の一つ一つについてそこでの自己点検・自己評価の在り 方についてまとめられているのである。さらに職員会議や各種委員会、校内研修などにつ いても網羅しており、とにかくその項目の多さは大変なものがある。また最後の5章では、 小、中学校の学校評価の取り組み事例を紹介している。これらも具体的な実践スケジュー ルやアンケート項目を載せるなど、読者が参考にできるような構成となっている。全体を 通してこの手引書としての意識は感じられ、各学校が自分たちの取り組みの参考とできる ように書かれている本であり、その点では大変有効なものであると思う。 東京都教育委員会の学校評価 東京都では、学校の自律的改革を促進し、個性化・特色化を図るなど教育サービスの質を向上させるた めに学校評価を導入している。 一般的・抽象的な学校像ではなく、各学校の社会における存在意義や教育サービスにおいてアピールす べき部分を具体的かつ簡潔に「目指す学校」として示すことが求められている。また校長は、自身の在任 期間約3年から5年程度の目標と方策を策定し、3年後・5年後の到達イメージを明示した「目指す学校」 作りに向けた段階的な学校経営計画の策定を行うことを求められている。 【概要】 ○学校経営計画の自己評価を行う。 ○学校経営計画について、学校運営連絡協議会による外部評価を行う。 ○盲・ろう・養護学校については「東京都心身障害教育改善検討委員会」の討議内容も踏 まえ、「目指す学校」を明確にし、学校経営計画を策定する。 【例:学校経営計画イメージ図】 【出典】東京都教育委員会ホームページhttp://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/index.html 長野県教育委員会の学校評価 長野県では、現在までの学校評価の問題点として、「評価項目と評価の観点が必ずしも明確ではなかっ た。」「評価者が教職員に限られていて客観性に欠き、結果が保護者や地域に公表されていなかった。」 「反省が次年度の改善に十分生かされていない面があった。」などを挙げ、今後の評価のあり方として、 「毎年、確実に評価が機能し、評価が克服されていく、「学校自己評価システム」を作ることが必要」と しており、評価表に基づく学校評価を導入している。 【評価の概要】 標準的な評価システムであるPDCAサイクルに基づいて評価を行っている。 具体的な評価については、評価表を用いての評価を行っている(下図参照)。 【例:評価表】 【出典】長野県教育委員会ホームページhttp://www.nagano-c.ed.jp/kenkyoi/ 三重県教育委員会「学校経営品質」の取り組み 三重県では、平成12年度より全ての県立学校での学校自己評価とその評価結果の公表を推進していま す。平成16年度からは、学校自己評価をさらに発展させて、各学校が「目指す学校像」明確化とその実 現に向けた行動に取り組む手法として、三重県型「学校経営品質」を導入しています。 この三重県型「学校経営品質」は、「学校経営の改革方針」と「学校経営品質アセスメント」の二つの ツールで構成されています。「学校経営の改革方針」は、各学校が目指す学校像、重点目標、行動計画を 立案し、学校全体として実践・評価・改善(P-D-C-A)していくフレームワーク(行動のツール)を指し、 「学校経営品質アセスメント」は、そうした学校経営の総体を8つのカテゴリーの基準で自己点検・診断 し、自校の「強み」「弱み」を明らかにするフレームワーク(診断のツール)を指します。同県では、こ の二つのツールからなる学校経営品質を通じて、各学校での改善行動の具体化と、経営状況の診断に基づ く県民からの信頼獲得の両者の実現を丁寧に意図していると整理できます。 三重県型学校経営品質の全体像 学校経営品質の4つの基本理念 学習者本位(いつも学習者の視点に立って考え、行動すること) 教職員重視(教職員が仕事に創造性を発揮できるような環境づくり) 社会との調和(学校も社会の一員として、社会に貢献していくこと) 独自能力(各学校のもつ独自の強みを伸ばすこと) 経営品質アセスメントシートの診断項目例 (「学習者等の理解と対応」のカテゴリーの一部抜粋) 1.「学習者等」の現在及び将来にわたる要望・期待を、具体的に把握し明らかにしていますか。 2.「学習者等」から意見や苦情を積極的に述べてもらうため、対話の場づくりなど工夫を行っていま すか。 4.「学習者等」への情報提供を積極的に行うなど、信頼関係を高める取り組みを行っていますか。 5.「学習者等」が学校にどの程度満足しているのか(満足度)を定期的に把握していますか。 【出典】三重県教育委員会学校経営品質ウェブサイトhttp://www.pref.mie.jp/kyokai/hp/keihin/ 兵庫県教育委員会の学校評価 兵庫県では、「トライやる・ウィーク」に代表される特色ある取り組みを行っており、これらの取り組 みを期に、近年、県民が学校の取り組みに積極的に関わろうとする機運が高まっている。県民の意欲に対 して、学校は教育活動についての自己点検・自己評価を行い、結果を公表することによって、理解・協力 を得ることが不可欠であるという観点から、学校評価が導入されている。 【評価の概要】 1.各学校が学校評価シートを作成する。 2.目的・計画(PLAN)−実践(DO)−自己評価(CHECK1)−自己評価の結果の公表 と意見の聴取(CHECK2)−次年度への反映(ACTION)という一連の流れで行う。 3.CHECK2段階における公表・意見聴取対象は、保護者・地域・学校評議員等である。 【学校評価シートの内容】 ○学校教育目標・重点目標を各学校独自に設定。 ○学校運営・教育課程・課題教育の3領域についてそれぞれ、評価の観点・評価項目・実 践目標を設定。ABCDの4段階の評価を行う 【例:評価シートの記入方法】 【出典】兵庫県教育委員会ホームページhttp://www.hyogo-c.ed.jp/~board-bo/ 広島県教育委員会の学校評価 広島県では、開かれた学校づくりの推進について、学校評議員を積極的に導入、さらに、平成12年11 月に出された県政中期ビジョン「ひろしま夢未来宣言」において、「新たな『教育県ひろしま』の創造」 を県政の柱の一つとして位置付け、信頼される学校づくりや確かな学力の定着・向上、豊かな心をはぐく む教育の推進などをめざした取組みを積極的に進めている。 学校が保護者や地域住民の信頼に応え、家 庭や地域と一体となって教育活動を展開していくためには、学校は、学校の目標、活動状況、成果など教 育活動全般の情報を積極的に発信することにより、保護者や地域住民からの意見や要望に的確に応える必 要がある。そのためには,学校教育活動の過程や成果を明らかにすることができる学校評価システムを導 入することが有効であるという考えより、学校評価を導入している。 【評価の概要】 標準的な評価システムであるPDCAサイクルに基づいて評価を行っている。 東京都と同じく、広島県においても、校長は経営目標として、学校の目指すべき方向を示した中期経営 目標(3年程度)と中期経営目標を達成するための短期経営目標(年度)を設定する必要がある。 また、学校全体で学校評価に取り組む態勢づくりを行うために、校長が、学校評価計画の立案、学校評 価の実施及び集計並びに教育活動の改善につながる分析・考察を行う学校の内部組織である、学校評価委 員会を組織する(下図参照)。 【例:評価組織の概略図】 【出典】広島県教育委員会ホームページhttp://www.pref.hiroshima.jp/kyouiku/hotline/index.html 福岡県教育委員会の学校自己評価制度 福岡県では、県立学校振興計画審議会等の答申等に基づき、平成14年度の県立学校全校への導入を皮 切りに、学校自己評価制度の導入を推進しています。同県の学校自己評価制度のポイントは、各学校が評 価に先立ち各学校の重点教育目標を明確にした学校経営計画(経営ビジョン)を作成し、その中の具体的 取り組み方策を評価項目化し、自己評価・点検を実施していき、P−D−C−Aのサイクルを実質化させる ことにあります。 高等学校の場合の学校評価と関連づけられた学校経営計画の一例 実際の自己評価については、教職員、児童生徒(主に授業評価)、保護者、地域住民による評価を組み 合わせることが推奨されています。この場合、例えば教職員用の評価票の作成では、重点教育目標や具体 的方策を中心として、それらの取り組みを「教育活動面」「運営的側面」「環境的側面」の三側面を関連 づけて丁寧な活動評価ができる設問の作成を同県では推奨しています(福岡県教育委員会『学校自己評価 の手引』平成15年)。 関連化をはかった教職員用の評価票の一例 【出典】福岡県教育委員会『学校改善を目指して(学校自己評価の手引 小・中学校編)』平成15年。 同『高校教育の多様化と質の向上のために(学校自己評価の手引 高等学校編)』平成14年。 佐賀県教育委員会の学校評価 佐賀県においては、「評価結果が年度末の形式的な評価に終わっていること」「学校の教育目標や年度 の重点目標と評価項目のつながりが明確になっていない。評価項目と評価の観点が必ずしも明確でない。」 など、現行の学校評価には問題点が多数存在しており、改善方策として、今後、PDCAサイクルによって 学校評価のシステム化の必要性より、現在の評価システムを導入している。 【評価の概要】 ○校内組織として「学校評価委員会」を設置する。 ○「年間評価計画」を作成し、目標や具体的方策の保護者等への公表・意見聴取、評価の 実施、評価結果の公表・意見聴取等の、年間の見通しを立てる。 ○各校にて設定した「具体的な目標」について、対象者別アンケートを作成し段階評価を 行う。 【例:学校評価表の様式】 【出典】佐賀県教育委員会ホームページhttp://www.pref.saga.lg.jp/at-contents/kyouiku/kyouiku_index.htm 平成16年度学校運営改善のための学校評価に係る「実証校」一覧 小 学 校 高槻市立安岡寺小学校 河内長野市立川上小学校 大阪狭山市立西小学校 中 学 校 池田市立細河中学校 島本町立第一中学校 大東市立大東中学校 府 立 学 校 府立少路高等学校 府立大東高等学校 府立羽曳野養護学校 平成17年度学校運営改善のための学校評価に係る「実証校」一覧 小学校 寝屋川市立堀溝小学校 河内長野市立川上小学校 富田林市立新堂小学校 高石市立東羽衣小学校 中学校 池田市立池田中学校 八尾市立八尾中学校 松原市立第三中学校 府立学校 府立天王寺高等学校 府立大塚高等学校 府立富田林養護学校 学校教育自己診断ハンドブック 〜活用の手引き〜 編 著 者 大阪教育大学 発 行 日 平成18(2006)年3月31日