第4章 施策の推進方策 明るく活力ある高齢社会を築いていくためには、高齢者がいつまでも生きがいをもって元気に暮らせる環境づくりを推進するとともに、高齢者が必要なときに必要なところで、必要な医療・介護等のサービスを受けながら、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、介護、医療、見守り、住まい等の総合的な体制(地域ケア体制)を確立する必要があります。 このため、府では、「利用者本位のサービス提供の推進」、「地域におけるケア体制の推進」、「高齢者の安心ある暮らしの実現」、「健康寿命の延伸に向けた施策の推進」、「生活困難な高齢者のための施設整備の推進」、「高齢者の尊厳への配慮」、「介護保険制度運営に関する支援・助言」を柱に高齢者保健福祉施策を積極的に推進します。 第1節 利用者本位のサービス提供の推進 介護保険をはじめとする高齢者保健福祉サービスについて、制度の周知を徹底するとともに、利用者本位の視点に立って高齢者のニーズを的確に把握し、高齢者が主体的に安心して必要なサービスを利用できる質の高いサービス提供に向けた環境づくりを推進します。 第1項 利用者支援の推進 (1)制度周知等の推進 1広報の充実 サービスを必要とする高齢者が確実にサービスを利用することができ、また、自らの選択により適切な介護サービスを利用するためには、制度の趣旨や仕組み、サービスの利用手続き、介護サービス事業者に関する情報などを、的確にわかりやすく届けることが重要です。 そのため、府では、制度発足以前から市町村とともに、パンフレットをはじめ広報誌やホームページなどを活用して、様々な広報活動を行っています。 平成19年度に実施した「高齢者の生活実態及び介護サービス等に対する意識に関する調査」報告書によれば、介護保険制度について、「知っている」又「聞いたことはあるが、内容までは知らない。」と回答した人を合わせると92.7%になりますが、この2つの回答の中で介護(予防)サービスの利用手続を知っている人は44.3%と半数以下にとどまっています。今後は、利用方法など高齢者にとって必要な情報をよりわかりやすく、効果的に伝えていく必要があります。 そのため、制度変更や運営上の課題、ニーズに対応した各種情報について更なる広報を積極的に展開するとともに、パンフレットの作成に当たっては、点字化・音声化・外国語への翻訳やふりがななど、障がい者や在日外国人、非識字者等コミュニケーションや情報入手に支援を要する高齢者に配慮した広報を推進します。 また、地域包括支援センター、老人介護支援センターなど住民に身近な機関が中心となって、民生委員、自治会、町内会等様々な社会資源と連携して、きめ細かな広報活動を行うよう、市町村に働きかけます。 2ワムネット等を活用したサービス情報の提供 利用者がニーズに応じて介護サービス事業者を選択できるよう独立行政法人 福祉医療機構が運用する福祉保健医療情報ネットワークシステム(WAMNET:ワムネット)を活用し、介護サービス事業者の情報を的確に提供できるように努めます。 (福祉保健医療情報ネットワークシステム) インターネット上に存在するWAMNETの公開サーバーに、利用者、サービス事業者、行政機関や公益団体からの情報を集約し、情報を容易に入手することができます。 インターネットURL、http://www.wam.go.jp/ なお、墨字ではイラストで記載しています。 3低所得のかたへの配慮 介護保険制度では、低所得の方が必要なサービスを受けることができるよう、利用者の負担額(1割)が限度額を超える場合に支給される「高額介護サービス費」や施設サービス等での食費・居住費(滞在費)を軽減する「特定入所者介護サービス費」などの制度が設けられています。 これらの制度を利用するには、利用者からの申請が必要になっているため、市町村と連携しながらより一層の制度周知に努めます。 (2)適正な要介護認定の推進  要介護認定事務が適正に実施されるためには、認定調査を受けるかたの心身の状態を正確に把握することが重要です。 認定調査においては、調査対象者本人から状態についての十分な説明を聞くとともに、認知症や障がいのあるかたなど高齢者一人ひとりの状態をより正確に反映させることができるよう、調査対象者の日頃の状態や障がいによる生活面での困難を的確に説明できる者の同席を求める取組みを市町村とともに引き続き推進します。 また、障がい等があることによって通常よりコミュニケーションに時間を要する場合や理解が困難な場合には、それを認定調査の特記事項に的確に記載するとともに、介護認定審査会においてその記載内容を審査・判定に正しく反映させることが重要です。こうした点を、介護認定審査会委員及び認定調査員に対する研修において周知し、市町村において公平・公正で適切な要介護認定が実施できるよう、引き続き支援します。 なお、適正な要介護認定の実施には、医療・保健・福祉の学識経験者で構成される介護認定審査会委員の選任に当たって、認知症高齢者や障がい特性等に関する知識・経験に留意することも重要です。市町村に対して、このような視点の重要性の周知に努めます。 (平成19年度介護認定審査会委員・認定調査員研修の状況) 1介護認定審査会委員研修について、研修名称、受講者数、内容の順に記載。 介護認定審査会委員研修(新任研修)、624名、要介護認定基準及び要支援認定基準の考えかた・介護認定審査会の運営手順 等 介護認定審査会会長会議、70名、介護保険制度の運営状況について 等 介護認定審査会合議体の長会議、355名、介護保険制度の運営状況について、審査判定事例の検討 等 2認定調査員研修について、研修名称、対象者、受講者数、内容の順に記載。 認定調査員研修(新規研修)、新たに調査に従事する者、1177名、認知症高齢者の人権と理解について・認定調査の実施方法について 認定調査員研修(現任研修)、指導的立場にある調査員、81名、認知症高齢者と家族の現状について・認知症高齢者の理解について・グループワーク     (3)相談・苦情解決体制の充実 1相談援助体制の充実 ア 身近な相談窓口の設置 介護サービスを利用しやすくするためには、介護保険制度における要介護認定やサービス利用の手続き、サービスの内容について、利用者が、できるだけ身近なところで気軽に相談できる窓口が必要です。 このため、地域包括支援センターをはじめ、老人介護支援センター、保健センター、隣保館、老人福祉センター等のほか、社会福祉協議会や民生委員、医療機関、薬局(健康介護まちかど相談薬局)等地域の関係機関や団体、さらには住民の自主的な活動などの活用や連携といった取組が地域の実情に応じて実施されるよう、市町村に対する適切な助言に努めます。 イ 相談援助活動の充実 利用者のサービスに対する満足度を高めるために、サービス提供の場を訪れ、利用者の疑問、要望を事業者等に伝えるなど利用者と事業者の橋渡しを行う「介護相談員派遣等事業」を促進するとともに、市町村や関係団体と連携して、養成研修や現任研修の充実を図ることにより、介護相談員の資質の向上に取り組みます。 また、地域包括支援センターなどの相談窓口においては、様々な課題を抱える利用者が円滑にサービスを利用でき、自らの意思に基づき利用するサービスを選べるよう援助し、サービス利用についての不安を取り除くとともに、コミュニケーション面での手助けを行うなど、市町村と連携し援助機能の充実を図ります。 2苦情解決体制の充実 ア 関係機関の連携 介護サービスに関する苦情に迅速かつ適切に対応し、その解決を図ることは、利用者の権利擁護に不可欠であるだけでなく、サービスの質的な向上と円滑な制度運営にもつながります。 このため、介護保険制度の利用に関する苦情については、市町村が苦情解決の第一次的窓口として苦情全般に対応し、市町村で解決できないものや市町村域を超えた広域的な苦情については、国民健康保険団体連合会が対応します。さらにサービス事業者*が市町村や国民健康保険団体連合会の指導に従わない場合や人権侵害など悪質な事例については、府が市町村等と連携しながら、指定の効力停止や取消しも視野に入れて厳正に対応します。 また、府では国民健康保険団体連合会がサービス事業者に対し適切な調査指導を行えるよう支援するとともに、利用者から寄せられた苦情を集約・分析し、その結果を市町村へ情報提供するほか、介護支援専門員の研修等において活用します。 さらに、社会福祉法に基づく福祉サービスに関する苦情解決機関として大阪府社会福祉協議会に設置する「運営適正化委員会」とも連携を図り、苦情解決体制の充実を図ります。 (注釈)サービス事業者とは、「居宅サービス事業者」、「居宅介護支援事業者」、「介護予防サービス事業者」及び「介護保険施設」をさす。以下同じ。 イ サービス事業者における苦情解決体制の強化 サービス事業者に寄せられた苦情については、当該事業者が利用者の立場に立って迅速かつ適切に対応するとともに、苦情解決責任者や第三者委員の設置等苦情解決体制を整備するよう指導します。 また、苦情に対応する際の指針として作成した「介護保険制度における苦情・相談処理業務要領」(平成18年3月改訂)の活用を促進します。 (苦情解決体制における関係機関の役割) 苦情相談窓口となる市町村は利用者やその家族から受けた苦情や相談に対して、国保連合会や大阪府と連携しながら、サービス事業者に調査指導等を行い、事業者からの報告を受けた上で利用者や家族へ説明を行います。 また、市町村は地域密着型サービス事業者、地域密着型介護予防サービス事業者、介護予防支援事業者への指定取消等も行うことができます。 オンブズパーソン的機能を持つ国保連合会は、利用者や家族からの苦情申し立てに対して、市町村や大阪府と連携しながら、サービス事業者に調査指導等を行い、事業者からの報告を受けた上で利用者や家族へ処理結果を通知します。 大阪府は市町村や国保連合会からの通知や連絡を受け、サービス事業者に対し、調査・指導・指定取消等を行います。 大阪府介護保険審査会は、利用者や家族からの審査請求に対して、裁決を行います。 居宅介護支援事業者や介護予防支援事業者は利用者からの苦情相談に対して、国保連合会に対する苦情申立支援や、サービス事業者との連絡調整を行います。 (4)高齢障がい者等へのサービス提供  高齢障がい者等が自らの意思で個々の障がい程度や状況にあったサービスを選択できるようにするため、障がい種別による特性や障がい者一人ひとりの状況に応じ、きめ細やかな配慮がなされ、適切なサービスが提供されるよう努めます。 サービスに関する情報の提供に当たっては、点字版・音声版(録音テープなど)やふりがなを付した広報用パンフレットの作成・活用に努めるとともに、民生委員等による訪問型の相談活動を促進し、情報提供はもとより障がい者等が気軽に相談や支援を受けられるように努めます。 また、ハンセン病回復者やその家族の方々が、自ら地域や行政に支援を求めやすいように、支援団体等と連携して、相談や支援に努めます。 認定調査の実施に当たっては、調査対象者の日頃の状態を正確に反映させるため、本人等の希望に応じて、家族や知人、日頃の状態や障がいによる生活面での困難を的確に説明できる者が同席するとともに、コミュニケーションを確保するため、手話通訳、要約筆記、盲ろう者通訳・介助、さらには筆談の利用などにより、調査員に対する意思の伝達を手助けする取組みを推進します。 加えて、医療との関わりが深い難病患者や精神障がい者及びハンセン病回復者等については、本人等の要請に応じて府保健所職員や市町村の担当職員や関係者が認定調査時に同席するほか、ケアプラン作成やサービス提供に際して助言する等技術的な支援を行います。 さらに、認定審査会委員、認定調査員、介護支援専門員等に対しては、「障がい者の介護保険利用について」を活用して、高齢障がい者が介護保険を利用する際の配慮事項等に関する研修を充実させるとともに、認定調査項目からだけでは確認しにくい知覚麻痺や変形などのハンセン病後遺症など様々な疾病や後遺症についての理解も深めるなど、高齢障がい者の相談等に適切に対応するよう努めます。 サービス事業者等や介護従事者に対しては、「障がいのある方への配慮事項」を記載したガイドブックを作成・活用して、介護サービス事業者の指導や研修等様々な機会において、一人ひとりの障がいの状態に配慮し、障がい者の立場に立った適切なサービス提供がなされるよう指導します。 なお、移動支援事業や手話通訳者派遣事業等の障がい固有のニーズに基づくサービスについては、障がい者施策から必要なサービスを適切に提供します。 (5)在日外国人へのサービス提供 在日外国人高齢者には、言語や食事、生活習慣の違いなどから介護サービスをはじめとする各種サービスに関する情報が十分に行き届かなかったり、必要なサービスを必ずしも適切に利用できていないといった状況も見受けられます。 このため、サービスに関する情報等の周知に当たっては、外国語への翻訳やふりがなを付した広報用パンフレットの作成・活用に努めます。 併せて、民生委員等による訪問型の相談活動を促進し、情報提供はもとより在日外国人高齢者が気軽に相談や支援を受けられるように努めます。 認定調査の実施に当たっても、調査に不安を抱くかたが自らの意思を調査員に正確に伝えられるよう、本人の希望に応じて家族や知人等が認定調査に同席し、心身の状態についての説明や調査員に対する意思の伝達を手助けする取組みを市町村とともに引き続き推進します。 加えて、サービス事業者に対しても、指導や研修等様々な機会を活用し、在日外国人の置かれている状況等について十分な理解を促し、利用者の立場に立った適切なサービス提供が図られるよう指導します。 (6)不服申立ての審査(介護保険審査会) 要介護認定や保険料賦課等市町村等が行った処分に対し、不服がある場合は、大阪府介護保険審査会に審査請求を行うことができます。 1要介護認定に関する審査請求 保健・医療・福祉等に専門的知識を有する委員3人1組で構成する合議体を設置し、認定調査に疑義がある場合は、専門調査員による調査を行ったうえで審理・裁決を行います。 2保険料の賦課等要介護認定以外の処分に関する審査請求  被保険者代表、保険者代表、法律等の専門家のそれぞれ3名の審査会委員で構成する合議体を設置し、審理・裁決します。 また、法律上の問題を審理するために小委員会を設置し、審理の迅速化を図ります。 (審査請求の手続き) 1保険者(市町村等)から被保険者に対して、要介護認定、保険料等の処分を通知する 2被保険者(府民)から大阪府介護保険審査会(大阪府健康福祉部高齢介護室介護支援課)へ審査請求を行う 3大阪府介護保険審査会から保険者へ審査請求受理通知を行う 4保険者から大阪府介護保険審査会へ資料等を提供する 5要介護認定処分については、公益代表合議体により、要介護認定以外の処分については、三者代表合議体により審理を行う 6大阪府介護保険審査会から保険者及び被保険者へ裁決結果を通知する 第2項 サービスの質の向上 (1)介護サービス情報の公表 介護サービスの質の向上と利用者の適切な事業所選択に資するため、平成18年4月から「介護情報のサービスの公表」が義務化されたことに伴い、大阪府地域福祉推進財団を介護サービス情報公表センターに、大阪府社会福祉協議会など5団体を調査機関に指定し、事業者が現に提供しているサービス内容等の情報を適切に公表します。   (2)サービスの質の評価 利用者が安心してサービス事業者を選択することができるようにサービス事業者がサービスの質の評価を自ら厳正に行い、その結果を適切に開示するよう指導します。 また、サービスの質の向上を促し、併せてサービスの質に関する情報を利用者に提供するため、府において福祉サービス第三者評価の実施機関を認証するとともに、「福祉サービス第三者評価システム推進支援会議・大阪」と連携し、第三者評価事業を推進します。 認知症高齢者グループホーム及び小規模多機能型居宅介護事業所における外部評価については、市町村と連携し推進します。 (3)サービス事業者への指導・助言 サービス事業者が利用者の意思を尊重し、常に利用者の立場に立った適切なサービスを提供するよう指導に努めます。 サービス事業者の法令遵守等の業務管理体制整備を促進するとともに、人員や運営等に関し、厚生労働省で定める基準に従わずに事業を行っていると認められるサービス事業者については、期限を定めて基準を遵守するよう勧告し、勧告に従わなかった場合は、その公表や勧告に係る措置についての命令を行います。 また、指定基準に関する重大な違反や人権侵害、不正請求等が疑われるなど、悪質なサービス事業者に対しては監査を実施し、指定の効力停止や取消しも視野に入れ、厳正に対処します。 さらに、府と同様に立入権限を有する市町村・広域連合との連携強化を図り、より適正な行政処分等の権限行使に努めます。 なお、介護事故に関しては未然防止の徹底を図ることはもとより、あらかじめ事故防止マニュアルを作成し、万一事故が発生した場合には家族等や市町村への連絡を速やかに行うとともに再発防止策の取組み等について適切に対応するよう指導します。 1居宅介護支援事業者・居宅サービス事業者・介護予防サービス事業者への指導 居宅介護支援事業者、居宅サービス事業者及び介護予防サービス事業者を指定する際に研修を実施し、利用者の人権の尊重やプライバシーの保護、サービス提供拒否の禁止等サービス提供における留意事項の周知を図ります。 既指定の事業者に対して、法令等の基準の遵守や利用者本位の適切なサービス提供を行うよう集団指導、実地指導等を効果的に実施します。特に営利法人の運営する居宅サービス事業所には、計画的に指導監査を実施します。   2介護保険施設への指導 介護保険施設に対しては、市町村と連携し、集団指導、実地指導等を実施します。 また、介護保険施設の施設種別の特色を活かし、利用者本位のサービス提供など、適切な施設運営が図られることを目的として作成した「介護保険施設運営マニュアル」(平成17年1月改訂)及び「介護保険施設利用者の生活支援のありかたに関するガイドライン」(平成17年1月改訂)の活用を徹底します。 (サービス事業者に対する指導方法) 集団指導と実施指導による。 集団指導とは指導の対象となるサービス事業者に講習等の方法により行う指導 実地指導とは事業所や施設に赴き、職員に面談しながら行う指導 (平成19年度の居宅介護支援事業者・居宅サービス事業者に対する指導実績) 集団指導について (注釈)同一所在地に複数の事業所を併設している事業者については、一つの事業所が代表として参加している。 居宅介護支援事業者、2554事業所(居宅サービス事業者への指導と合同実施したもの)、2670事業所(新規居宅介護支援事業者のみを対象に実施したもの) 居宅サービス事業者、5115事業所(居宅介護支援事業者への指導と合同実施したもの) 実地指導について 居宅介護支援事業者、296事業所 居宅サービス事業者、1833事業所 (平成19年度の介護保険施設に対する指導実績) 集団指導 指定介護老人福祉施設、334 介護老人保健施設、182 指定介護療養型医療施設、107 実地指導 指定介護老人福祉施設、69 介護老人保健施設、33 指定介護療養型医療施設、29 (注釈)指定介護老人福祉施設334か所のうち、堺市に所在する30か所及び介護老人保健施設182か所のうち、大阪市、堺市、東大阪市、高槻市に所在する91か所については、各市が実地指導を行っている。 3介護保険施設等における感染症対策の促進 高齢者は感染防御免疫力の低下等によって、健康な人では軽症ですむような感染症でも重症化したり、通常は感染症を起こさない細菌等によっても感染症を起こす危険があります。 特に、高齢者が集団で生活する施設においては感染症が急激に広がる危険性があるため、特別養護老人ホーム等の施設に対し、給食衛生管理と感染症対策を柱とする「社会福祉施設等における感染症及び食中毒対策マニュアル 施設編」(平成18年5月)を配布するとともに、集団指導等において、感染症胃腸炎の発生・まん延防止対策の徹底に取り組んでいます。 実地指導の際には、感染症予防に必要な措置を講じているか確認するとともに、同マニュアルが活用され、感染症の予防と発生時の適切な対応が図られるよう指導します。 4指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の入所選考指針の運用 国が定めた「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」では、「指定介護老人福祉施設サービスを受ける必要性の高い高齢者から優先的に入所できるように努めなければならない。」とされています。 このため、市町村や施設関係者と共同で策定した「大阪府指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)入所選考指針」(平成15年1月)に基づき、入所の必要性の高い高齢者が優先的に入所できるよう、適正な入所選考の確保を指導します。 (4)介護支援専門員(ケアマネジャー)への支援 平成18年4月の介護保険制度改正により、介護支援専門員の資質・専門性の向上を図るため、更新制度が導入され、主任介護支援専門員制度も創設されました。介護支援専門員を取り巻く研修制度(スキルアップから義務化)、研修体系(更新制度の導入等)は大きく様変わりしています。 介護支援専門員がその資質を維持・向上していくためには、国・府・市町村及び関係団体等が連携して、それぞれの役割のもと、様々な方策をとる必要があり、府では、次の取組みを行います。 改正された制度内容の更なる周知 指定研修実施機関との協議及び指導を通じ、各種研修内容の充実 研修機会の十分な確保及び受講案内等情報提供の充実 総合的な問い合わせ窓口や各種申請及び介護支援専門員証の交付手続きなどをワンストップサービスで受け付けることによる、介護支援専門員の利便性、効率化の向上     第3項 居宅サービス基盤の充実 介護を必要とする状態となったときにサービスを安心して利用できるようにするためには、サービス基盤が整っていることが重要です。 また、必要とするサービスについて利用者の選択の幅を広げるため、多様な事業者が参入できる環境を整えることも必要です。 このため、引き続き多様な事業者の指定、更新を円滑に行うことによってサービス事業者の充実に努めます。 (1)居宅サービス事業の振興 居宅サービス基盤の充実を図るためには、事業者が適切な事業運営を行うことが必要です。 このため、次のような取組みを行い、居宅サービス事業の振興に努めます。 1自律的・安定的な運営に向けた支援 利用者の多様なニーズに応え、またサービスを適切に提供する事業者を確保するためには、事業者が自律的かつ安定的な運営を確保できるように支援する必要があります。 府では「介護保険事業者支援センター」を設置し、情報提供、セミナーの開催等の事業を展開します。 (大阪府介護保険事業者支援センターの概要) 設置場所、大阪市中央区谷町5丁目(財団法人 大阪府地域福祉推進財団内) 事業内容 1情報提供事業 介護保険制度の浸透、定着と安定的な運営を目的として、利用者の多様なニーズに応じた適切な介護サービスの提供を確保するため、事業者向けのホームページを設け、介護保険関連情報の提供やメールマガジンの発行 2研修事業 事業所の管理者や従業者を対象としたサービスの質の向上に資するセミナー等の開催 2事業者相互の連携促進 利用者のニーズに即して適切なサービスを提供する体制を確保するためには、事業者が相互に連携・協力してサービス提供に当たることが必要です。 府では市町村ごとに設置されている「事業者連絡会」の活動を支援する「大阪府市町村介護保険事業者連絡会合同会議」の運営を通じて、サービス提供に関する協議や情報交換、事例検討等を行い、事業者相互の連携促進に努めます。   (大阪府市町村介護保険事業者連絡会合同会議の概要) 目的 府内各市町村に設置される介護保険事業者連絡会が相互に連携し、介護保険事業者のサービス計画策定、サービス提供に関する協議、情報交換、事例検討等によって事業者の適切な事業運営を確保するとともに介護保険事業の振興を図り、もって大阪府内における介護保険制度の円滑な運営に資することを目的として設置 活動 各市町村介護保険事業者連絡会における課題の集約と検討 各市町村介護保険事業者連絡会において検討された事項の情報提供(交換) 事業者の適切な事業運営の確保や介護保険事業の振興に関する課題の検討 介護保険制度関係(保険外の関連制度を含む)の情報伝達 その他市町村連絡会が連携して取り組むことが効果的な事項についての協議 構成 市町村介護保険事業者連絡会の運営事務局 大阪府健康福祉部地域福祉推進室 (2)地域の実情に応じたサービス提供 居宅サービス基盤には、知事が指定する居宅サービス事業者のほか法人格のないNPOやボランティア等が市町村単位でサービス提供を行う「基準該当サービス」があります。 基準該当サービスを採用するかどうかは市町村が判断するところですが、地域の実情に応じて、基盤整備の方策として適切な運用が図られるよう市町村に対する助言に努めます。   (3)健康福祉産業の振興 ユニバーサル・デザイン及び健康福祉関連機器等の開発に際しての技術・デザイン面での企業への開発指導・相談の支援を行うなど高齢者の豊かな生活を支える健康福祉産業の振興に努めます。 第4項 人材の養成・確保 府民の介護ニーズに応えるため、公・民の連携を図りながらサービスの提供に不可欠な人材の養成・確保を進めます。 人材の養成に当たっては、利用者本位の質の高いサービスが確保されるよう専門性を高めるとともに人権の尊重を基軸とした高い倫理性の確立に努めます。 (1)人材の養成 1介護支援専門員(ケアマネジャー)の養成 介護支援専門員は、利用者にとって最適なケアプランを作成し、適切なサービスを利用できるようサービス事業者等との調整を行うなど介護保険制度の運営において重要な役割を担っていることから、利用者の立場に立ったケアマネジメントを行うことのできる高い専門性と人権意識が要求されています。 このため、介護支援専門員の継続的な養成、資質・専門性の向上が図られるよう、介護支援専門員を養成する「実務研修」をはじめ、資格更新のために修了が義務づけられた「更新研修」、包括的・継続的ケアマネジメントを担う人材を養成する「主任介護支援専門員研修」等の研修を体系的に実施します。 さらに、府では、「実務研修」において、国の示す標準カリキュラムに加え、独自の科目を取り入れ、研修内容の充実に努めています。また、平成22年度以降の「主任介護支援専門員研修」においては、独自の研修プログラムの修了を受講要件のひとつとするなど、今後とも、これらの研修をはじめ、新たに実施する研修においても、それぞれの研修の目的に応じ、介護支援専門員の専門性を高めることができるよう、関係団体と連携を図りながら、その内容の充実を図り、高齢者一人ひとりの状況に応じた支援が行える介護支援専門員の養成に努めます。 (介護支援専門員の養成状況) 以下は、平成10年度(第1回)から平成19年度(第10回)までの実務研修受講試験合格者数と介護支援専門員登録者数について、1年ごとに記載。単位はにん。 実務研修受講試験合格者数、6216、4513、3073、2340、2168、2734、3102、2808、2346、2709、 合計、3万2009 介護支援専門員登録者数、6141、4481、3058、2349、2155、2712、3056、2816、2294、2620、 合計、3万1683 (大阪府介護支援専門員資格登録簿搭載者数及び介護支援専門員数) 平成20年7月31日時点 大阪府介護支援専門員資格登録簿搭載者数、3万1525人 そのうち介護支援専門員数(介護支援専門員証の交付を受けたもの)、2万9588人               (参考条文) 介護保険法第7条第5項、この法律において「介護支援専門員」とは、(中略)第69条の7第1項の介護支援専門員証の交付を受けたものをいう。 (現任研修の状況) 現任研修修了者数 平成12年度、1902人 平成13年度、2174人 平成14年度、2641人 平成15年度、2794人 平成16年度、3494人 平成17年度、4745人 平成18年度、4841人 平成19年度、3851人 平成20年度、未実施 更新研修修了者数 平成19年度、1170人 平成20年度、実施中。 主任介護支援専門員の養成状況 修了者数 平成18年度、175人 平成19年度、201人 平成20年度、216名 (注釈1)修了者数は、現任研修修了者数の内数。 (注釈2)平成20年度は、研修中のため、受講者数であり、修了者数は、未定。 平成18年度からの研修内容 現任者向け研修 実務従事者基礎研修 就業後1年未満の者を対象に、一定の実務を経験した後に、実務従事者としての必要な技術・技能の研鑽を図ることで、実務能力の向上を図ることを目的とする。 専門研修 一定の実務経験をもとに、必要に応じた専門知識・技能の修得を図ることにより、その専門性を高め、介護支援専門員の資質向上を図ることを目的とする。 就業後6ヶ月以上の者を対象とする課程1と就業後3年以上の者を対象とする課程2がある。 主任介護支援専門員研修 介護支援専門員の業務に関し、十分な知識と経験を有する者を対象に、介護保険サービスや他の保健・医療・福祉サービスを提供する者との連絡調整、他の介護支援専門員に対する助言・指導などケアマネジメントが適切かつ円滑に提供されるために必要な知識及び技術を修得することを目的とする。 更新研修 介護支援専門員証の有効期限が1年以内に満了する者を対象に、介護支援専門員証に有効期限が付され、更新時に研修の受講を課すことにより、定期的な研修の機会を確保し、介護支援専門員として必要な知識及び技術の向上を図り、専門職としての能力の保持・向上を図ることを目的とする。 2介護職員の養成 利用者本位の質の高いサービスが提供されるよう、指定事業者による養成研修の適正な実施を指導・監督し、研修事業の質の確保に努めます。 また、訪問介護員をはじめとする介護職員の継続的な資質向上に努めます。 3保健・医療・福祉人材の養成支援 高齢者保健福祉施策を推進するためには、保健師、看護師、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士等の人材の養成・確保が不可欠です。 保健師、看護師、社会福祉士、介護福祉士等の養成支援に努めます。 社会福祉施設・事業所従事職員の資質向上(社会的要請への対応やスキルアップ等)が図られるよう、大阪社会福祉研修センター等関係機関との連携により、研修を実施します。 また、人材養成のための講習の充実をはじめ関係団体が実施する研修事業や養成施設の教員に対する講習会等への支援に努めます。 (人材養成の現状) 平成20年4月現在の府内の施設 保健師養成施設1校、40名 助産師養成施設 5校、100名 看護師養成施設56校、3213名 准看護師養成施設12校、740名 歯科衛生士養成施設11校、880名 理学療法士養成施設、23校、1310名 作業療法士養成施設、14校、620名 大学等福祉系コース、21校、2450名 社会福祉士養成施設、5校、955名 介護福祉士養成施設、21校、1238名 精神保健福祉士養成施設、7校、600名 (2)就業の促進 福祉の現場で従事する人材の確保を図るため、大阪府福祉人材センターにおいて無料職業紹介や求人説明会を行うほか、福祉の仕事や資格・就職について相談・助言、啓発事業を行います。 また、質の高い人材を確保できるよう公共職業安定所やナースセンター等の関係機関と連携を図りながら、就業促進に努めます。 (福祉人材センターの概要) 設置場所、大阪市中央区中寺(大阪社会福祉指導センター内) 主な事業内容、福祉人材無料職業紹介事業、求人求職者向けセミナー等の開催、民間社会福祉施設合同求人説明会、広報啓発事業 (3)府立介護情報・研修センターの運営  府立介護情報・研修センターにおいては、良質な介護サービスを提供することができる人材の育成を行うとともに、高齢者にかかる介護知識・技術及び福祉用具・住宅改修の普及を図り、市町村では対応困難な事例への専門相談を行います。 第2節 地域におけるケア体制の推進 高齢者が家庭や住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるようにするため、地域における高齢者の生活を支える介護、医療、住まい等の総合的なケア体制(地域ケア体制)を整備していくことが求められています。 地域ケア体制の整備にあたっては、地域包括支援センターが中心となって、介護・医療・住まいそれぞれのサービスを提供するコミュニティソーシャルワーカー等関係機関及び地域住民、NPO、ボランティア等の団体が密接に連携することにより、様々な課題を抱える地域の高齢者に対して、それぞれの状態に応じ、必要なときに必要なところで、必要なサービスが円滑かつ適切に提供される体制づくりが必要です。 このため、様々な高齢期を支えるうえで必要なサービスの総合的な提供体制の構築に努めます。 第1項 福祉サービスの推進 (1)在宅の要支援者へのサービス 1地域支援事業(任意事業)等の実施  介護相談員の活動支援など、高齢者が住み慣れた地域で継続して生活することが可能となるサービスを、地域の実情に応じて提供する市町村を支援します。 2街かどデイハウス支援事業の実施  街かどデイハウスは、地域での高齢者の自立生活を支え、地域の身近な介護予防や地域住民の福祉活動の拠点など多様な役割が期待されることから、街かどデイハウスを運営する民間非営利団体等を市町村とともに支援します。 (2)養護・軽費老人ホームでの介護サービスの提供 養護老人ホームは、環境上等の理由から居宅での生活が困難なかたが市町村の措置により入所する施設で、高齢者の入所者が自立した日常生活を営み、社会的活動に参加するために必要な指導及び訓練その他の援助を行うことを目的とした施設です。 また、軽費老人ホームは、無料又は低額な料金で、身体機能の低下等により自立した日常生活を営むことについて不安があると認められるかたであって、家族による援助を受けることが困難なかたを入所させ、食事の提供、入浴等の準備、相談及び援助など、日常生活上必要な便宜を提供する施設です。 これらの施設入所者の介護ニーズに対応するため、介護保険サービスが利用できるようになりました。本府では、養護老人ホームについては、@要介護認定を受けた入所者が個々の居宅サービス事業者と契約を結び、そのサービスを利用すること、A施設が特定施設入居者生活介護の指定を受け、要介護認定等を受けた入所者と契約を結んだ上で、外部のサービス事業者にサービス提供を委託すること、また、軽費老人ホームについては、こうした方法に加え、施設が特定施設入居者生活介護の指定を受け、施設職員が介護サービスを提供すること、いずれかの方法で、入所者の多様なニーズに対応できる施設となるよう、支援します。 なお、軽費老人ホームの名称については、平成20年6月1日施行の「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」により、従来の軽費老人ホームA型・B型が「経過的軽費老人ホーム」、従来のケアハウスが「軽費老人ホーム」と名称が変更されています。 第2項 地域包括支援センターと地域における社会資源の充実 (1)地域支援事業の効果的な推進 高齢者が住み慣れた地域で、その人らしく尊厳ある生活を続けることができるように、介護、保健、医療、福祉などの必要なサービスが切れ目なく提供される地域包括ケアの推進が重要であり、その中核機関である地域包括支援センターの役割がより一層重要となっています。 包括的支援事業 地域住民の保健医療の向上と福祉の増進を包括的に支援するため市町村に設置されている地域包括支援センターが本来機能を十分に発揮できるよう、現場のニーズや職員の経験等に即した研修の実施、相互の経験交流の機会の確保に努めます。 また、市町村とともに地域包括支援センターが抱える課題への支援方策の検討を通して、総合相談事業をはじめとした4事業が適切に実施されるよう支援していきます。 さらに、府の広報媒体を活用して、地域包括支援センターの周知を図り、高齢者やその家族が気軽に相談できるよう努めていきます。   (地域包括支援センター設置数) 平成18年4月、133ヶ所 平成19年4月、141ヶ所 平成20年4月、146ヶ所 (2)地域に密着したサービスの一層の推進 認知症高齢者や一人暮らし高齢者が増加しているなか、こうした方々の介護が必要となっても住み慣れた地域の中で24時間安心して生活できるようにするためには、地域の特性に応じたきめ細やかなサービスを提供する体制が整っていることが重要です。 このため、平成18年度に創設された小規模多機能型居宅介護などの地域密着型サービスを充実させることにより、高齢者が住み慣れた地域で継続して生活できるよう、市町村の実施する認知症介護に携わる職員に対する研修に関する支援等を行うとともに、市町村に対して「地域介護・福祉空間整備等交付金」の活用等サービス提供基盤の整備に関する情報提供や助言等に努めます。 併せて、地域密着型サービスの適切な提供が確保されるよう、市町村に対して地域密着型サービス事業者の指定や指導の実施方法についての技術的な支援を行います。 (地域密着型サービスの特徴) 1市町村長が地域密着型サービス事業者の指定、指導監督権限を有する。 2原則として、当該市町村の被保険者のみがサービスを利用することができる。 3認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護については、市町村及び日常生活圏域ごとの必要利用定員総数を介護保険事業計画に定め、これを超える場合には市町村長は指定をしないことができる。 4地域の実情に応じた弾力的な基準・報酬設定ができる。 (注釈)日常生活圏域とは、地域密着型サービスを中心とした介護基盤の整備を考えていくうえでの基本となる圏域。市町村が地理的条件、人口、交通事情その他社会的条件、介護サービスを提供するための施設の整備状況等を総合的に勘案して定める。 (地域密着型サービスの種類) 1夜間対応型訪問介護 2認知症対応型通所介護 3小規模多機能型居宅介護 4認知症対応型共同生活介護 5地域密着型特定施設入居者生活介護 6地域密着型介護老人福祉施設 7介護予防認知症対応型通所介護 8介護予防小規模多機能型居宅介護 9介護予防認知症対応型共同生活介護 (3)地域福祉の推進 地域生活支援を実現するためには、幅広い住民の参画を得ながら、社会福祉協議会、社会福祉法人、自治会、NPO・ボランティア団体等地域の福祉活動を担う様々な団体が連携し、高齢者等支援を必要とするかたの様々な生活課題に対する日常的な支援活動を展開する必要があります。また、その展開に当たっては地域の既存資源を活用し、高齢者等にできるだけ身近なところで支援が提供されることが望まれます。 このため、概ね中学校区という身近な地域において、支援を必要とするかたへの見守り・発見、相談、適切なサービスへのつなぎといった機能を担う「コミュニティソーシャルワーカー」の配置を進める市町村(指定都市・中核市を除く)に対し支援するとともに、大阪府社会福祉協議会や老人福祉施設が実施する「社会貢献事業」と連携するなど、地域における支援体制の整備に努めます。 また、「大阪府地域福祉支援計画」との緊密な連携のもと、引き続き市町村の地域福祉計画策定とその推進に向けた取組みを支援するとともに、府民の地域福祉活動への参加やその活動の支援に努めます。 (4)身近な相談体制の構築  高齢者が様々な生活課題を抱えたときに、身近なところで容易に総合的な相談ができる体制づくりが必要です。 このため、地域包括支援センターを中心として、老人介護支援センター、保健センター、保健所、隣保館、老人福祉センター等のほか、社会福祉協議会や民生委員、老人福祉施設、医療機関、薬局(健康介護まちかど相談薬局)等地域の関係機関や団体、さらには住民の自主的な活動などといった地域資源と密接に連携し、各市町村において、高齢者が身近なところで気軽に相談できる体制を構築できるよう、府保健所における各種専門相談も活用しながら、市町村への適切な助言に努めます。 相談窓口では、相談に当たり高齢者が抱えて不安を取り除くとともに、コミュニケーションの支援が必要な高齢者等には、きめ細かく対応するなど市町村と連携しながら相談体制の充実に努めます。 1ネットワークの形成とワンストップ機能の確保 地域包括支援センターを中心として、老人介護支援センター、保健センター、隣保館、老人福祉センター、府保健所、いきいきネット相談支援センター(コミュニティソーシャルワーカー)等の関係機関が連携し、各機関のサービス情報の共有化を図ることにより、相談者が幅広い情報を身近な場所で容易に入手できるようにするとともに、家庭環境等も含め高齢者を取り巻く様々な生活課題に即して適切な対応を行う機関への橋渡しをするワンストップサービス機能の促進に努めます。 2訪問型相談活動の促進 支援を必要とする高齢者が相談を適切に受けられるよう、きめ細かな制度周知やサービス情報の提供を促進するとともに、一人暮らし高齢者等に対しては、民生委員、隣保館の総合生活相談員、介護相談員等が高齢者を訪問し、高齢者のニーズを把握するいわゆる訪問型の相談活動を促進します。 (5)かかりつけ機能の強化 1在宅医療の確保 住み慣れた家庭や地域において生活するため在宅医療を希望する患者は増大し、多様化するものと考えられます。自宅で療養する人がニーズに合ったかかりつけ医を選択できるよう在宅医療に関する医療機能の情報公開を進めるとともに、訪問看護に従事する看護師の資質向上を図るための研修会等を実施し在宅医療の推進に努めてまいります。 2在宅寝たきり高齢者等に対する訪問歯科診療の促進 高齢者にとって、歯の喪失等による口腔機能の低下は、誤嚥性肺炎の発症、低栄養等の要因となっていることから、地域の関係団体等との連携のもとはちまるにいまる運動を推進し、はちまるにいまる達成者20%以上を目指します。 また、寝たきり高齢者等の歯周疾患、う蝕(むし歯)、義歯(入れ歯)の不適合等を改善することにより、健康の維持・回復のみならず、寝たきりや認知症の進行の防止、生活の質の向上が期待されることから、在宅の寝たきり高齢者等の訪問歯科診療、口腔の健康管理を担う「かかりつけ歯科医」機能の普及を促進するとともに保健・医療機関相互の連携・確保を図ります。 また、大阪府歯科医師会が実施するポータブル診療機器整備に対する支援を継続することにより、「かかりつけ歯科医」による訪問歯科診療の普及と定着を促進します。 3かかりつけ薬局の普及 患者が調剤により医薬品供給を受ける際、おくすり手帳などを活用した相互作用や薬の重複に関するチェックを行うとともに、医薬品等の供給拠点として、医薬品等に係る情報提供を行い、地域医療に貢献するために「かかりつけ薬局(薬剤師)」の普及を図ります。 第3項 地域における支援ネットワークの発展強化 (1)医療と介護の連携強化 高齢者が住み慣れた地域で生活の継続ができるよう支援していくためには、医療と介護が連携したサービス提供が求められており、特に入院による急性期の治療・リハビリテーションから、退院後の在宅療養に円滑に移行し、途切れることなく一貫して適切な医療・介護サービスが提供される体制の充実を図ることが必要です。 そのため、在宅医療を担う病院・診療所や特別養護老人ホーム・介護老人保健施設などの介護保険施設、訪問看護事業所、在宅介護サービス事業所などがそれぞれの役割や機能を分担し、在宅療養を支援する役割を果たすよう努めていきます。 また、急性期・回復期・維持期の一貫したリハビリテーション体制づくりに向け地域連携クリティカルパスの導入促進を図っていきます。 また、高齢者の生活を支える地域包括ケアを推進するため、地域包括支援センターの総合相談をはじめとした4事業を核として、医療・介護・見守りなどのサービスを提供する関係機関等が連携することにより、必要な医療・介護等のサービスが提供されるようを支援していきます。 (2)認知症高齢者とその家族等への支援 認知症の進行に応じて、地域において認知症高齢者やその家族等へ必要なサー ビスが継続的に提供される体制づくりを進めることで、認知症高齢者等ができる限り自立した生活をおくることができるよう支援します。 1地域の見守り力の向上 認知症サポーター100万人キャラバンと連動しながら、地域において認知症高齢者やその家族を見守り、支援する人(認知症サポーター)の養成を促進します。 また、市町村や地域包括支援センターを中心に、関係機関と連携した徘徊高齢者の見守りネットワークの構築を促進します。 2相談支援体制の整備 地域包括支援センターが認知症高齢者やその家族等からの相談に的確に対応できるよう支援に努めるとともに、府保健所におけるこころの健康相談等により、認知症に関する相談に対応します。 3地域医療支援体制の構築 認知症高齢者の早期発見・早期対応を図るため、地域包括支援センターと認知症疾患医療センターが連携して、認知症サポート医や地域の医療機関等との地域における支援体制の構築を促進します。 4認知症介護の質の向上と人材育成 介護支援専門員をはじめとする高齢者介護の実務者等に対する認知症高齢者の介護に関する実践的な研修の実施やケアマネジメントの技術支援を通じ、認知症高齢者に対する介護技術と介護サービスの向上に努めます。 5地域密着型サービスの地域連携の促進 認知症高齢者グループホームなどの地域密着型サービスにおける地域連携の先進的な取組の情報発信等を通じて、その促進に努めます。 また、地域密着型サービス事業所の職員等に対し、認知症介護実践者研修等の受講促進に努めます。 6地域ネットワークの構築 医療・福祉分野のサービス等の提供に加え、住民・多様な社会資源の参加を通じて、地域の中で生活を「面的」に支える仕組みづくりを進めるため、地域包括支援センターを中心とした地域支援ネットワーク構築を促進します。 (3)ハンセン病回復者とその家族等への支援 ハンセン病回復者の平均年齢はすでに78歳を超えており、必要な高齢者保健福祉サービスを享受できるようにすることが重要です。 このため、ハンセン病回復者やその家族に必要な医療・介護等のサービスが提供され、安心して生活をおくることが出来るよう、支援に努めます。 1専門医療の提供 居住地に近い所で、安心して専門医療を受けることが出来るように、医療機関との調整に努めます。 2相談支援体制の充実 安心して相談が出来るように、関係機関との連携を一層充実し、きめ細かな相談と支援に努めます。 3ニーズに応じた福祉サービスの提供 後遺症を理解した上で、個々のニーズに応じて安心して利用してもらえる福祉サービスを受けることが出来るように、関係機関との連携やコーディネート機能の充実に努めます。 (4)地域における高齢者虐待防止ネットワークの構築 市町村が中心となって高齢者の保護や養護者の支援のために地域包括支援センターや関係機関等との連携協力体制を軸とする高齢者虐待防止ネットワークの構築し、高齢者や養護者・家族に対する多面的な支援がより一層進められるよう、高齢者虐待事案への介入支援や実務者への研修等の実施を通じて支援していきます。 第4項 災害時における高齢者への支援 平成7年1月に発生した阪神淡路大震災など、近年発生した一連の地震や台風、豪雨といった災害に際して、高齢者の安否確認が迅速に行われなかったり、一人暮らしや夫婦二人きりの高齢者が逃げ遅れるなどの被害が多数発生しています。避難生活における必要な福祉サービスの提供も大きな課題です。 また、多くの高齢者が生活・利用する介護保険施設等においては日頃からの防災対策が求められるとともに、災害時には福祉避難所としての役割が期待されています。 こうしたことから、府では、平成17年6月に、介護保険施設等が地震防災対策を進めるための指針となる「介護保険施設等における地震防災対策マニュアル作成の推進について」を作成し、施設の自主的な取組みを促進しているところです。 さらに、平成19年3月に作成した『市町村における「災害時要援護者支援プラン」作成指針』に基づき、高齢者等の災害時要援護者の把握や避難誘導、避難生活の支援など、要援護者一人ひとりに対する支援体制が整備されるよう市町村の支援に努めます。 第5項 見守りサービスの確保 一人暮らしや夫婦のみ世帯等の高齢者が増加している状況を踏まえ、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、熱中症などの予防に関する周知や、安否確認や緊急時の対応、生活相談等の見守り体制の確保、日常生活における状態の変化の把握、専門機関との連携など、地域におけるセーフティネットの構築に向けた取組みを促進する必要があります。 このため、市町村と連携し、地域包括支援センターが中心となって、大阪府社会福祉協議会及び老人福祉施設が実施する「社会貢献事業」との連携や市町村におけるコミュニティソーシャルワーカーの配置、医療機関、家族、近隣住民、小地域ネットワーク活動、自治会、社会福祉協議会、NPO、ボランティア、民間サービス等地域における多様な主体の福祉活動への参加を推進し、地域の実情に応じた高齢者を見守る仕組みづくりを促進します。 (見守り訪問などの高齢者セーフティネット活動への支援) 高齢者セーフティネットの構築のため、地域包括支援センターを中心として、老人介護支援センター、保健センター、民生委員等が連携し、保健・医療・福祉に携わる機関や地域福祉活動を行うNPO・ボランティア団体等の協力も得ながら高齢者の生活課題をきめ細かく把握し、社会的支援を要する高齢者の継続的な見守りや安否確認の仕組みづくりを促進します。 また、一人暮らし等の在宅の高齢者が住み慣れた地域で安心して住み続けられるよう、小学校区単位で行う小地域ネットワーク活動等地域の住民の参加と協力による支え合い、助け合い活動等を行う市町村に必要な支援を行います。 第6項 学校における福祉教育の推進 「地域に根ざした豊かな福祉のこころを育めるように」子どもたちの成長発達の過程で人とのふれあい(実体験)を通して、一人ひとりが高齢者福祉や障がい者福祉をはじめ社会福祉について理解と関心を持つようにするとともに、将来の社会福祉(特に介護や看護等)を担う人づくりをも視野にいれた福祉教育を推進します。 (1)小・中学校における福祉教育の推進 各教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間を通じて福祉に関する基礎的な学習を進めるとともに、地域の高齢者や障がい者の学校行事への招待、高齢者施設や障がい者施設等福祉施設への訪問、支援学校との交流等福祉・ボランティア教育を推進します。 また、小・中学校の教員に対し福祉やボランティアに関する研修を実施し、実践交流や識者による講演等を通じて教員の福祉教育に関わる資質の向上に努めます。 (2)高等学校における福祉教育の推進 1福祉教育の充実 あらゆる教育活動において、福祉に関する学習を展開するとともに、福祉に関する科目の設定、高齢者・障がい者福祉施設等での体験学習やボランティア活動などの取組みを推進します。平成11年3月に策定した「学校外における学修の単位認定に係る指針」に基づき、生徒のボランティア活動への参加を奨励します。 また、高等学校の教員に対し、福祉やボランティアに関する研修を実施し、福祉施設での介護体験実習等を通じて教員の福祉教育に関わる資質の向上に努めます。 2これからの社会福祉を支える人づくり 特色ある高校づくりの一環として、社会福祉の増進に寄与する能力と態度を育成するため、府立高等学校に福祉に関する系列を有する総合学科や福祉に関するコース等を設置し、豊かな福祉の心を育てるとともに、将来、介護福祉士や訪問介護員等の資格取得をめざすための基礎的な学習活動を推進します。 府立高等学校における「福祉」に関するコース等の設置状況 福祉に関する系列を有する総合学科を設置している府立高校 千里青雲高等学校(健康) 能勢高等学校(人間・福祉) 柴島高等学校(福祉) 芦間高等学校(生活と健康) 八尾北高等学校(福祉ネットワーク) 今宮高等学校(生命科学) 松原高等学校(地域福祉) 堺東高等学校(医療・看護) 貝塚高等学校(人と共生) 佐野工科高等学校 (ていじせい)(多文化共生) 福祉に関するエリアを有する普通科総合選択制の府立高校 北摂つばさ高等学校(保育・福祉) 福井高等学校(福祉ヒューマニティー) 門真なみはや高等学校(福祉) 枚方なぎさ高等学校(生活・地域) 八尾翠翔高等学校(看護医療) かわち野高等学校(生活・福祉) 西成高等学校(福祉・介護) みどり清朋高等学校(保育・福祉) 金剛高等学校(生活文化) 成美高等学校(福祉こども) 日根野高等学校(人間環境探求) 緑風冠高等学校(人間・教育) 東淀川高等学校(H21から、教育・発達) 福祉に関するコースを設置している府立高校 阿武野高等学校(福祉専門コース) 池島高等学校(福祉専門コース) 平野高等学校(人間専門コース) 岬高等学校(ライフデザインコース) 福祉に関するワールドを有する多部制単位制の府立高校 箕面東高等学校(福祉・スポーツ) 上記以外で福祉に関する科目を開設する府立高校 池田北、吹田、鳥飼、茨田、野崎、勝山、布施北、八尾、堺西、伯太、佐野、泉鳥取、泉南、枚岡樟風、槻の木、長吉、咲洲、桃谷、成城、東住吉総合、和泉総合、西野田工科、城東工科、藤井寺工科(定)、桜塚(定)、三国丘(定)、今宮工科(定) 第3節 高齢者の安心ある暮らしの実現 高齢者や障がい者をはじめ誰もが自由に安心してまちへ出かけ、就業意欲に応じ働き続け、安全で快適に暮らせる安心ある暮らしを実現します。 第1項 福祉のまちづくりの推進 (1)福祉のまちづくり条例に基づく高齢者等に配慮した福祉整備の推進 福祉のまちづくり条例を「高齢者、障害者等の移動等の円滑化に関する法律(バリアフリー法)」に基づく適合義務を中心とした条例に再編し、的確に運用するとともに、全ての人々が自らの意思で移動でき、社会参加できるまちづくりを、府民の総意として進めます 特に、ユニバーサルデザインの考え方も踏まえ、誰もが利用しやすい施設の整備や維持管理を事業者等が自らの責務と理解して取り組むよう、情報提供や啓発・助言等を行い、一層積極的なまちづくりを促進します。 (2)大阪府福祉のまちづくり推進委員会の運営 福祉のまちづくり条例を実効あるものとするため、平成6年に「大阪府福祉のまちづくり推進委員会」を設置し、福祉のまちづくりの推進方策の検討や関連諸事業等の進行管理を行っています。 今後とも、この委員会において広く意見を聴きながら、福祉のまちづくりの一層の推進に努めます。 (3)移動の円滑化の促進 1バリアフリー法に基づく基本構想作成の促進 「高齢者、身体障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)に基づき、一定規模の駅(1日の利用者数が5,000人以上等)などの旅客施設を中心とした地区において、駅など旅客施設、周辺の道路、駅前広場、公園等のバリアフリー化を重点的かつ一体的に推進し、高齢者・障がい者等の移動等の円滑化を確保するため、基本構想を作成する市町村に対し、作成の進めかた・事業手法・補助制度等の情報提供や助言指導を行い、基本構想作成を促進します。 2鉄道駅舎エレベーター整備の促進 バリアフリー法に基づく基本方針を受け、市町村が基本構想を作成した重点整備地区内の既存鉄道駅舎に、エレベーターを整備する鉄道事業者等に対して事業費の一部を補助し、駅舎のバリアフリー化を他事業とも分担しながら促進します。 3リフト付き福祉タクシーの利用促進 「大阪福祉タクシー運営連絡協議会」や「大阪福祉タクシー総合配車センター」の事業を通じて、リフト付き福祉タクシーの利用促進のための広報・啓発事業や乗務員研修事業への支援に努めます。 4福祉有償運送の推進 高齢者や障がい者をはじめとする移動制約者の地域における移動手段を確保し、その社会参加を図るため、NPO等の非営利法人が実施する「福祉有償運送」の円滑な推進に努めます。 (4)交通安全施設等整備事業の推進 安全で快適な歩行空間を拡大するため、歩道、自転車歩行者道の整備や歩道の有効幅員(2m以上)の確保、段差解消等を推進します。 特に、バリアフリー法に基づき基本構想に位置づけられた道路を優先してバリアフリー化を実施します。 (5)府有建築物の福祉整備の推進  府有建築物の新築・建替に当たっては、福祉のまちづくり条例に合致するよう整備します。 また、不特定多数の府民が利用する既存府有施設について、条例に沿った福祉整備を推進します。 (6)府営公園の整備・利用促進 1府営公園の整備 高齢者や障がい者をはじめあらゆる人々の利用に配慮した府営公園として、改修整備を図ります。 2ボランティアによる府営公園利用の促進 高齢者や障がい者をはじめあらゆる人が府営公園を利用し、楽しめるよう「ヒーリングガーデナークラブ」(車いすを押したり視覚障がい者を誘導し、案内するなどのサポートを行う公園ボランティア)の支援を進めます。 第2項 高齢者の居住ニーズに対応した住宅の整備 「大阪府高齢者・障がい者住宅計画」(計画期間、平成18年度から平成27年度) に基づき、高齢者や障がい者が住み慣れた地域で、安心、安全、快適に暮らせる住まいとまちづくりの実現を目指しています。 今後とも、福祉施策と住宅施策との連携を一層緊密にし、民間賃貸住宅市場において適切な規模構造等の賃貸住宅を確保することが困難な高齢者等に対して、地域住宅交付金制度などを活用し、既存ストックの有効活用を図りつつ、公的賃貸住宅の供給を促進するとともに、情報提供を通じて民間賃貸住宅への円滑な入居を支援します。 (1)バリアフリー化された公営住宅の供給 公営住宅の新築・建替に当たっては、住戸内、共用部分、屋外アプローチの段差解消及び手すりの設置等バリアフリー化を行うとともに可能な限りエレベーターを設置します。 府営住宅では、建替に当たって高齢者等をはじめ誰もが住みやすいよう段差の解消、手すりの設置、介助に必要なスペースの確保等バリアフリー化した「あいあい住宅」を標準設計として、今後も引き続き供給します。 (2)シルバーハウジングの供給 公営住宅では、高齢者世帯が地域社会の中で自立し、安全かつ快適な生活を営めるよう、市町村の総合的な高齢者施策に基づき住宅施策と福祉施策との連携により、市町村が派遣する生活援助員が日常生活の相談や安否確認を行うとともに、緊急通報システム等高齢者に配慮した設備を有するシルバーハウジングの供給を推進します。 (シルバーハウジングの緊急通報システム例) 昼間 入居者が生活援助員執務室へ緊急通報を行い、生活援助員が対応を行います。 生活援助員不在時や夜間 入居者が福祉施設へ緊急通報を行い、施設が対応を行います。 生活援助員(ライフサポートアドバイザー) 入居者の自立した生活を助けるために生活援助員を派遣し、同じ団地内にある執務室で生活相談、安否の確認、一時的な家事援助、緊急時の対応、関係機関への連絡、生活関連情報の提供等を行います。 緊急通報システム 各住宅の居室、便所、浴室に緊急通報用の押しボタンを設置し、ボタンを押すと昼間は生活援助員が、夜間と生活援助員不在時は近接の福祉施設等が対応します。 (3)車いす常用者世帯向け住宅の供給 「大阪府高齢者・障がい者住宅計画」に基づき、平成18年度から10年間の公営住宅における車いす常用者世帯向け住宅の供給目標戸数を900戸とします。 府営住宅においては、設備・仕様等を入居者の身体特性に応じて設計するハーフメイド方式のMAI(マイ)ハウスを供給するとともに既設住宅の空家においてスロープの設置や浴室・便所の改修等を行う車いす常用者世帯向け改善を実施します。  また、市町営住宅についても車いす常用者世帯のための住宅の供給を促進します。 (4)高齢者向け改善等既設公営住宅における整備・改善の推進 既設の公営住宅において住戸内の段差解消や浴室、便所の手すりの設置等を行うとともに、屋外においても住棟アプローチや主要な通路の段差について、手すりの設置やスロープ、階段の整備等を行うなどバリアフリー化を推進します。 また、既設のエレベーターのない中層公営住宅においてエレベーターの設置を推進します。 (5)公営住宅の適切な募集 公営住宅の入居の募集に当たっては、高齢者や障がい者、母子家庭、ハンセン病療養所入所者等の世帯特性に配慮し、優先枠等を設定して入居しやすくなるようにします。 府営住宅では、募集戸数の6割を高齢者や障がい者、母子家庭、ハンセン病療養所入所者等の福祉世帯向けのために確保します。 特に高齢者(親世帯)と子世帯とが近くに住むことを希望する場合の「親子近居向け募集」をはじめ「シルバーハウジング募集」、「車いす常用者世帯向け住宅募集」、「高齢者向け改善住宅募集」等住戸の種類と入居者の特性に応じた募集を実施します。 (6)公営住宅の福祉施策と連携した入居者対応 公営住宅では福祉的配慮が必要な世帯が増加しているため、集会所や団らん室などを活用し、自治会活動への支援や周辺地域も含めた団地内コミュニティの増進を図るとともに福祉、介護等の関係部局との適切な役割分担のもと連携を強化します。 また、府営住宅では高齢者がお互いに交流し、助け合い、生きがいのある自立した生活ができるよう既設集会所の改修等を行い、ふれあい喫茶や健康相談コーナー等を設けた「ふれあいリビング」の整備を推進します。 (7)借上げ型公営住宅の供給促進 民間事業者が建設し、住戸内、共用部分、屋外アプローチの段差解消及び手すりの設置等バリアフリー化を行った住宅等を地方公共団体が地域の実情に合わせて借り上げる「借上げ公営住宅」の供給を促進します。  (8)住宅改造に対する支援 高齢者・障がい者の個別の状況に適切に対応した住宅改造を促進するため、福祉・医療・介護の知識を有し住宅改造の相談に応じることのできる建築技術者の養成及び活用を図ります。 (9)大阪府民間賃貸住宅建設資金利子補給制度の推進 住宅金融支援機構の融資制度を利用して、賃貸住宅を建設する者で、住戸内の段差がない構造にするなど府の条件を満たす者に対して利子補給を行い、高齢者に配慮した民間賃貸住宅のストック形成を図ります。 (10)「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づく諸制度の推進  平成13年度に施行された「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、高齢者が住みよい環境整備を推進します。 1高齢者円滑入居賃貸住宅の登録・閲覧制度 民間の賃貸住宅市場においては、家賃不払い、病気、事故等に対する不安感等により、貸し手が高齢者の入居を拒否することが多くあることから、高齢であることを理由に入居を拒否することのない賃貸住宅(高齢者円滑入居賃貸住宅)を登録し、その登録情報を広く提供します。 また、高齢者円滑入居賃貸住宅のうち、専ら高齢者世帯を賃借人とする賃貸住宅(高齢者専用賃貸住宅)について、より詳細な情報の登録・提供を行います。 登録された賃貸住宅については、高齢者居住支援センターが行う家賃債務保証を受けることができます。 2高齢者向け優良賃貸住宅の供給促進 高齢者の安全で、安定した居住環境の確保を図るため、土地所有者等が建設する高齢者に配慮した設備仕様と緊急通報サービスの提供等一定の条件を満たした賃貸住宅に対し、建設費の一部や家賃減額に要する費用を補助し、高齢者の所得に応じた家賃で入居できる「高齢者向け優良賃貸住宅」の供給を図ります。   (高齢者向け優良賃貸住宅制度の概要) ア 対象 1高齢者単身世帯(60歳以上) 2高齢者夫婦世帯(夫婦のいずれかが60歳以上) 3高齢者親族世帯(世帯全員が60歳以上) 4月額所得48万7000円以下(平成19年度供給計画認定住宅より) イ 供給及び管理方式 供給は、民間土地所有者や住宅供給公社等が整備する 管理方式は住宅供給公社や社会福祉法人、医療法人、民間法人等による管理受託、直接管理方式又は一括借上方式 ウ 管理期間 10年以上(最長20年) エ 住宅の規模 5戸以上。住戸専用面積は35u(単身者を対象として計画する場合は30u)以上で、人数に応じた適切な規模 オ住宅の基準 バリアフリー、手すり、緊急通報設備の設置等高齢者等に配慮した設計、設備とすること カ 整備費補助 補助対象は、住宅共用部分整備費、共同施設整備費、加齢対応構造等整備費。補助額は上記対象額の3分の2。 キ 家賃対策補助 補助対象は、家賃の減額に要する費用。補助額は入居者の所得に応じて定めた額。    3終身建物賃貸借制度 バリアフリー化された住宅を高齢者に終身にわたって賃貸する事業を行う場合に府又は政令指定都市、中核市の認可を受けることにより、賃貸借契約において賃借人が死亡したときに契約を終了する旨を定めることができます。   4高齢者自らによる持家のバリアフリー化の促進 自宅をバリアフリー改修する場合の住宅金融支援機構融資について、元金を死亡時に一括償還する方法によることができる高齢者向け返済特例制度の周知を図ります。 (11)あんしん賃貸住宅等の登録 高齢者等が民間住宅へ円滑に入居できるよう、市町村や宅地建物取引業者等と連携し、入居を拒まない民間賃貸住宅(あんしん賃貸住宅)等を登録し、情報提供を行います。 (大阪府高齢者・障がい者住宅計画) ア計画目的 高齢者・障がい者の住まいとまちづくりに関する総合的な施策を推進するための基本となる計画 イ計画期間 平成18年度から平成27年度までの10年間 ウ施策推進の基本的な考えかた 「高齢者・障がい者が住み慣れた地域で安心、安全、快適に暮らせる住まいとまちづくり」の実現を目指し、以下の点を踏まえて施策を推進します。 「施設コンフリクトの解消と人権が尊重されたまちづくりに向けた大阪府の基本方針」 府、市町村、関係者との連携 福祉、医療の地域単位(圏域)における取り組みとの連携 エ推進する施策 高齢者・障がい者の居住の安定 高齢者・障がい者の居住ニーズに対応した住宅の整備 住まいのバリアフリー化 福祉のまちづくり オ高齢者・障がい者向け公的賃貸住宅の供給目標戸数 公的賃貸住宅の建設、改善及び空家の活用により、高齢者世帯や障がい者のいる世帯に対して供給する住宅の総戸数を10年間に3万5900戸見込むものとします。 公営住宅には、車いす常用者世帯向け住宅900戸を含みます。 第3項 雇用・就業対策の推進 高齢者が長年培ってきた知識・経験・技能等を活かし、労働を通じて社会に貢献するため、就業意欲に応じて働き続けられるよう、国や関係機関と連携しながら雇用・就業対策を推進します。 1高齢者の雇用・就業の確保 高齢者の雇用・就業の場を確保するため、事業主・府民に対する定年の引き上げ、継続雇用制度の普及啓発に努めるとともに、市町村や関係機関・団体との連携により、高齢者パワーを活用する機運の醸成を図ります。 特に10月を高年齢者雇用促進月間と定め、高年齢者の多様な雇用ニーズに対応する相談等のイベントを公共職業安定所等の合同就職面接会と同時開催するなど、高年齢者の雇用の促進を図ります。 また、「JOBプラザOSAKA」において、高齢者等の就職困難者を対象に、相談・カウンセリングから各種セミナー・就職支援情報の提供・職業紹介まで、きめ細やかな就職支援サービスの提供をワンストップで行うことにより、事業の推進を図ります。 2シルバー人材センター事業の促進 高齢者の能力を活かした就業機会を確保し、生きがいの充実と社会参加を促進するため、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づき設立されたシルバー人材センターの就業促進に向けた支援を図るとともに、シルバー人材センター連合に指定した(社)大阪府シルバー人材センター協議会の機能強化を図り、就業機会の拡大と就業率の向上を図ります。 (シルバー人材センターの概要) 国、都道府県、市町村から、シルバー人材センターは指導、育成を受けて、一般家庭や民間企業や官公庁に対して仕事の開拓を行います。シルバー人材センターに仕事が発注された場合は、会員申し込みを行った当該市町村に居住する概ね60歳以上の高齢者に仕事を提供し、報酬を支払います。 平成20年3月末現在のシルバー人材センター事業実績 会員数、5万2940人 平均年齢、68.9歳 設置状況、33市7町1村43団体 第4節 健康寿命の延伸に向けた施策の推進 高齢期を健やかに、また可能な限り自立して過ごせるよう、要支援・要介護状態になる前からの介護予防の取組みとともに、介護予防の基礎となる壮・中年期以前からの健康づくりや生活習慣病予防を推進します。 第1項 健康づくり・生活習慣病予防等の推進  (1)大阪府健康増進計画の推進 健やかな高齢期を過ごすためには、壮・中年期以前から脳卒中、心臓病等の生活習慣病の予防、早期発見、早期治療を図るとともに積極的な健康づくりを推進することが重要です。 府では平成13年8月に21世紀の国民健康づくり運動である「健康日本21」の理念を踏まえた「健康おおさか21」計画を策定しました。そして、平成17年度に実施した中間評価の結果を踏まえて、平成20年8月に、これまでの「健康おおさか21」の理念・運動目標・基本方針等を継承しつつ、メタボリックシンドロームの予防と改善のための目標項目を新たに加え、「大阪府健康増進計画」を策定しました。同計画に基づき、壮・中年期死亡の減少やいわゆる「健康寿命」(認知症や寝たきりにならない状態で生活できる期間)の延伸等を目指し、生活習慣病予防のため、7つの分野(栄養・食生活、運動・身体活動、休養・こころの健康づくり、たばこ対策、健康診査・事後指導の充実、歯と口の健康、アルコール対策)において府民の生活習慣改善に取り組んでいます。 また、平成13年7月に健康づくりの拠点施設としてオープンした府立健康科学センターにおいて、科学的・実践的な健康づくり技法の開発や普及、健康情報の発信、指導者養成の支援等を実施しています。 さらに、平成14年9月に設立した健康づくりに関連する団体等からなる「健康おおさか21推進府民会議」を健康づくり運動の推進母体として、府民の健康づくりに対する支援と気運の醸成を図るとともに、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会の実現を目指し、健康づくりに関する各種事業を推進していきます。 なお、市町村においても、市町村健康増進計画の推進に取り組んでいます。 (大阪府健康増進計画における7つの分野の行動方針) 1栄養・食生活の改善(野菜バリバリ朝食モリモリ) 府では、子どもの頃から健康的な生活習慣を身につけ、がんや心疾患などの生活習慣病を予防し、大阪府の健康指標を改善するため、「野菜バリバリ朝食モリモリ」を合言葉とした食育推進プロジェクトに取組んでいます。 2運動・身体活動の習慣化(歩いてスマート) 運動は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防など生活習慣病対策に大変有効ですが、平成17年度に実施した前計画の中間評価では、府民の日常生活における歩数は減少しています。そのため府は、府民の誰もが生涯を通じていつでもどこでも気軽に取組めるウォーキングを重点的に推進していきます。 3休養・こころの健康づくり(夜はグッスリ朝はさわやか) 十分な睡眠や休養は、うつ病などのこころの病気や生活習慣病(特に糖尿病・高血圧・肥満)など、体の病気の予防にも大変重要です。 府民一人ひとりが、睡眠や休養の重要性を認識し、また、ストレスに対する適切な対処ができるよう、府は、こころの健康づくりに関する事業の実施や情報提供の充実などに努めていきます。 さらに、社会問題となっている自殺を予防するため、大阪府自殺対策連絡協議会を中心に、総合的・効果的な自殺対策を推進していきます。   4たばこ対策の推進(たばこバイバイ) 喫煙は、肺がん等、多くのがんや虚血性心疾患、脳血管疾患などの疾患の主要な原因であり、早期死亡を引き起こす原因の中で避けることができる単一で最大のものとされています。 また、たばこの煙は、喫煙者本人のみならず、喫煙者の周囲の者に対しても、受動喫煙による肺がんや心筋梗塞などの危険因子となります。 このため、府は市町村や関係団体と連携し、府民の喫煙率の減少とたばこに関する健康影響の理解の向上に向けて、たばこ対策の取組をさらに強化していきます。 5健康診査・事後指導の充実(しっかり健診) (特定健康診査・特定保健指導) 平成20年4月から「高齢者の医療の確保に関する法律」により、40歳から74歳の被保険者・被扶養者を対象とする特定健康診査・特定保健指導が医療保険者に義務づけられました。一方、生活保護受給者に対する健診や、がん検診などについては、健康増進事業として引き続き市町村が実施しています。 これまでの健診・保健指導は、個別疾病の早期発見や早期治療が主な目的となっていたため、健診後の保健指導は、「要指導」の者に対して行われ、「要精検」や「要治療」となった者に対しては受診勧奨が行われました。しかし、健診の受診率が上がらなかったために早期発見や早期治療に十分つながらなかったと考えられます。 この度導入された特定健康診査・特定保健指導は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目し、特定健康診査により対象者を発見し、その要因となっている生活習慣を改善するための保健指導を行い、糖尿病等の有病者・予備群を減少させることを目的としています。 これにより、40歳から74歳までの人に対し、健康管理の基盤が強化され、健康格差の是正にもつながることが期待されます。 なお、特定保健指導はいわゆる肥満の人のみを対象としていますが、肥満でない人でも血圧が高めであるとか血糖値が高めで、近い将来、高血圧や糖尿病、脳血管疾患や虚血性心疾患になる危険性を有している人が相当数存在するものと想定されます。市町村は健康増進事業として、そういった人たちへの保健指導を実施し、府は技術的助言を行っていきます。 さらに、府は特定健康診査等について、人材育成や情報提供、特定保健指導用プログラムの開発に対する技術的助言などを通じ、医療保険者の取組を支援するとともに、地域・職域連携推進協議会を活用し、市町村や医療保険者等、関係者間の連携促進のための総合調整機能を担っていきます。 6歯と口の健康づくり(健康は歯から) 歯周病は、近年の研究成果により、全身の疾患との関係も明らかになってきており、例えば糖尿病は歯周病を悪化させ、歯周病は糖尿病や心臓血管疾患を悪化させるという、双方向の影響が指摘されています。また、高齢者では口腔機能の低下と低栄養や誤嚥性肺炎などとの関係が指摘されていることから、府民の健康づくりのためには、歯と口の健康づくりの推進が不可欠です。 7アルコール対策(飲酒は適度に) 多量飲酒(1日平均純アルコールで60g以上 例:ビール中瓶3本以上)は、肝障害や高血圧、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病の発症や進行を引き起こすとともに、がん発症の危険因子となります。また寝酒は、睡眠の質を低下させます。 かつては飲酒人口の大半が中年男性でした。しかし近年、飲酒者に未成年者、女性、高齢者の占める割合が高くなり、新たな問題が認められるようになっています。特に将来を担う未成年者の飲酒は、お酒が麻薬や覚せい剤依存の入口になる薬物にもなると言われていることから、わが国における飲酒問題の拡大に繋がる危惧があります。 そのため、子どもの頃からアルコールについての正しい知識を身につけることが重要であることから、府は学校や地域において飲酒防止教育を推進していきます。 さらに、多量飲酒はこころの健康や自殺とも密接に関係するため、「休養・こころの健康づくり」の分野での取組とともに、アルコール対策を推進していきます。 (7分野における重点化した目標値) 以下は、7つの分野の項目について、指標、現状値、平成24年目標値の順に記載。 1栄養・食生活の改善 脂肪エネルギー比率、27.4%、25%以下 野菜摂取量、261g、350g以上 朝食欠食(20歳代男性)、34.4%、15%以下 朝食欠食(30歳代男性)、24.5%、15%以下 2運動・身体活動の習慣化 日常生活における歩数(男性)、8078歩、1万歩 日常生活における歩数(女性)、6991歩、9000歩 運動習慣のある者の割合、34.1%、44.2%以上 3休養・こころの健康づくり 睡眠による休養が不足している者の割合、23.9%、21%以下 自殺者数、−、1500人以下 4たばこ対策の推進 喫煙する者の割合(男性)、44.2%、30%以下 喫煙する者の割合(女性)、13.6%、5%以下 5健康診査・事後指導の充実 胃がん検診、−、50.0% 子宮がん検診、−、50.0% 肺がん検診、−、50.0% 乳がん検診、−、50.0% 大腸がん検診、−、50.0% 6歯と口の健康づくり 80歳で20本以上の歯を有する人の割合、−、20%以上 60歳で24本以上の歯を有する人の割合、−、50%以上 7アルコール対策 多量飲酒者の割合(1日に純アルコール約60g以上)(男性)、6.7%、4.1%以下 多量飲酒者の割合(1日に純アルコール約60g以上)(女性)、1.3%、0.2%以下 (注釈)現状値出典は、大阪府民の健康・栄養状況(平成15から18年)   (2)がん対策の推進  大阪府において、がんは、昭和46年に、脳血管疾患を抜いて死因の第一位となって以来、現在まで死因の第一位を占め続け、年間約2万人余りの府民ががんにより亡くなっており、府民の生命、健康、生活にとって重大な脅威となっています。 平成19年4月に施行されたがん対策基本法に基づき、府では、平成20年8月、がん対策を大きく前進させるため「大阪府がん対策推進計画」を策定しました。同計画の今後10年間全体目標として、「がんによる死亡者の減少(がん年齢調整死亡率(75歳未満)の20%減少)」と「すべてのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の維持向上」の2項目を設定しており、たばこ対策などを通じた「がん予防の推進」、がん検診の充実等による「がんの早期発見」及びがん診療連携拠点病院の整備をはじめとした「がん医療の充実」の分野別施策の総合的な取組みにより全体目標の達成をめざします。 (3)地域保健対策の推進  1保健所の機能強化 保健所については、府、大阪市、堺市、高槻市、東大阪市がそれぞれ設置しています。 保健所においては、難病患者、感染症患者、認知症高齢者、精神障害者等の専門的なケアや指導を必要とするかたに対する支援をはじめ地域保健に関する調査研究、事業評価、さらには生活衛生や健康危機管理等地域保健の専門的、技術的、広域的拠点としての機能強化を図ります。 2府保健所の取組み  府保健所においては、地方独立行政法人大阪府立病院機構、府こころの健康総合センター、大阪難病医療情報センター等との連携を強化し、各種専門相談を通じて、専門的なケアや指導を必要とするかたに対する支援を行うとともに、市町村の高齢者保健福祉施策が円滑に推進されるよう高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の策定に当たっての助言をはじめ保健事業の評価や検診精度の分析、検証、市町村職員に対する研修等の技術支援に努めます。 3政令市・中核市保健所の取組み  市保健所においては、環境・食品衛生にかかる広域的・専門的な監視指導の実施や感染症対策、及び健康危機管理機能の充実に努めています。また、住民に身近な保健センターを中心に健康相談、健康教育等を行い、保健所と保健センターとの連携を図るなかで介護予防や子育て支援等の時代に即した保健事業、地域の保健・医療・福祉のネットワーク化の推進等地域特性に応じた事業を実施し、住民の生活の質(QOL)の向上を支援する施策を展開しています。 4市町村保健センターの取組み  市町村保健センターにおいては、さまざまな疾病から住民の健康を守るため、地域の健康課題の把握や生活習慣病対策、疾病の予防・早期発見に努めています。 また、各種予防接種や健康相談・健康教育、健康手帳の交付、がん検診、母子保健事業等を実施し、地域における健康づくりの拠点として、保健所や医療機関、地域包括支援センター等とさらに連携を図りながら住民の健康な生活を支援しています。 (4)食の安全安心の確保の推進 安全で安心な食生活は、全ての府民の願いです。とりわけ、高齢者にとって健やかに暮らすために充実した食生活は重要な役割を有しています。府では、府民の健康を守るため、関係者が共に協力して食の安全安心の確保に取り組むことを目指して、平成19年4月に「大阪府食の安全安心推進条例」を制定し、平成20年4月に「大阪府食の安全安心推進計画」を策定しました。同計画のもと、「生産から消費に至る各段階での食の安全性の確保」、「健康被害の未然防止や拡大防止に関する体制の整備」、「情報の収集及び提供」の3つの視点に大別し、食品等の生産から販売に至る一連の行程における監視指導体制の整備、リスクコミュニケーションの促進、食に起因する健康被害の発生防止と健康被害発生時の危害の拡大防止を図るための緊急時の体制の整備、食品等の安全性に関する最新の情報の収集及び提供などの施策に取り組みます。加えて、高齢者については、食中毒重症化の可能性が高いため、食中毒予防の観点から、重点的に注意喚起を行っていきます。 第2項 介護予防の効果的な推進 国においては、予防重視型システムへの転換を図るべく、平成18年4月に介護保険制度を抜本的に見直しました。府ではこれに基づいて、要支援・要介護状態になる前の段階から、統一的な体系のもと、連続的・効果的な介護予防サービスを提供する総合的なシステムの整備を進めます。 (1)地域支援事業の実施 総合的な介護予防システムの確立のため、平成18年度に「地域支援事業」が創設されました。 地域支援事業は、要支援、要介護状態になる前からの介護予防を推進するとともに、地域における包括的・継続的なマネジメント機能を強化する観点から、市町村が実施する事業であり、その事業内容は、大きく分けて次の3種類からなります。 1介護予防事業 介護予防のスクリーニング(介護予防サービスの対象者の選定)を実施するとともに、その結果を踏まえ、要支援・要介護になるおそれの高いかた等を対象に介護予防サービスを提供する事業です。介護予防事業には、特定高齢者を対象として介護予防特定高齢者施策とその他の高齢者を対象とした一般高齢者施策とがあります。 府は、介護予防事業の効果的な実施により、高齢者の介護予防と自立支援が図られるよう、平成18年度には「大阪府介護予防標準プログラム」を開発し、市町村への普及を図ってきました。今後とも、市町村支援のための体制整備や事業評価等により、市町村の取組みを支援します。 (介護予防事業の実績) 平成18年度から始まった介護予防事業の年度別実績は以下のとおり。 各年度の参加者数は、「介護予防事業実施報告書(厚生労働省調査)」において市町村から国に報告のあった実人数を記載している。 1特定高齢者候補者から参加にいたるまでの推移 以下は平成18年度の実績値、平成19年度の実績値について記載。 なお、墨字では棒グラフで記載しています。 平成18年度 特定高齢者候補者数、− 特定高齢者決定者数、6881人 特定高齢者参加者数、2053人  平成19年度 特定高齢者候補者数、7万5335人 特定高齢者決定者数、4万2779人 特定高齢者参加者数、6182人 2介護予防特定高齢者施策の実績 以下は平成18年度の実績値、平成19年度の実績値について記載。 なお、墨字では棒グラフで記載しています。 (注釈)同一人が複数の事業に重複参加している場合あり。そのため1から4までの合計と合計値が合わない。 1通所型運動器の機能向上事業、483人、3938人 2通所型栄養改善事業、107人、630人 3通所型口腔機能向上事業、232人、1297人 4その他、1371人、1722人 合計(特定高齢者参加実人数)1053人、6182人 訪問型介護予防事業、601人、294人 3介護予防一般高齢者施策の実績 以下は平成18年度の実績値、平成19年度の実績値について記載。 なお、墨字では棒グラフで記載しています。 あ介護予防普及啓発事業 平成18年度 講演会等、11万4360人 相談会等、1万5626人 その他、1万6213人 平成19年度 講演会等、16万9687人 相談会等、4万4129人 その他、1万1298人 い地域介護予防活動支援事業 平成18年度 ボランティア育成のための研修会等、2万1657人 その他、3万5922人 平成19年度 ボランティア育成のための研修会等、2万2538人 その他、5万8247人 4平成19年度介護予防事業の評価 あ特定高齢者の状況 以下は特定高齢者数について、65歳から69歳、70歳から74歳、75歳から79歳、80から84歳、85歳以上、合計の順に記載。単位はにん。 男性特定高齢者、3209、4322、3343、1894、841、1万3609 女性特定高齢者、7181、8765、6970、4069、2185、2万9170 男女の合計、1万0390、1万3087、1万0313、5963、3026、4万2779 イ介護予防事業参加状況 以下は、介護予防事業参加者数について、項目、参加実人数、参加延人数の順で記載。単位は、人。 通所型運動器の機能向上、3938、3万7491 通所型栄養改善、630、3820 通所型口腔機能向上、1297、6192 通所型閉じこもり等予防、1722、9796 訪問型介護予防事業、294、2万1928 合計、6476、7万9227 ウ特定高齢者からの要支援・要介護認定の状況 以下は、介護予防事業をうけた特定高齢者について、参加前特定高齢者年齢別人数、参加後の状況として参加後の維持又は改善の人数、要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5の人数、要介護認定者の合計の順で記載。単位は、人。 65から69歳、738、723、11、1、1、2、0、0、0、15 70から74歳、1202、1173、18、4、4、3、0、0、0、29 75から79歳、1174、1112、24、18、9、5、5、1、0、62 80から84歳、851、759、46、20、14、4、5、0、3、92 85歳以上、506、390、38、27、29、7、8、6、1、116 合計、4471、4157、137、70、57、21、18、7、4、314 2包括的支援事業 地域住民の保健医療の向上と福祉の増進を包括的に支援するため市町村に設置されている地域包括支援センターが本来機能を十分に発揮できるよう、現場のニーズや職員の経験等に即した研修の実施、相互の経験交流の機会の確保に努めます。また、市町村とともに地域包括支援センターが抱える課題への支援方策の検討を通して、総合相談事業をはじめとした4事業が適切に実施されるよう支援していきます。さらに、府の広報媒体を活用して、地域包括支援センターの周知を図り、高齢者やその家族が気軽に相談できるよう努めていきます。 3任意事業 介護給付等費用適正化事業、家族支援事業など、市町村が各地域の実情に応じつつ、法律の趣旨に反しない限り任意に実施することのできる事業です。事業実施について指導・助言を通じて支援します。 (2)予防給付の実施 状態の維持・改善の可能性がある要支援者を対象とする予防給付については、介護給付や地域支援事業に基づいて実施されるサービスとの整合性を保つ必要があるほか、利用者の状態に適応した方法で実施されることが重要です。 このため、指定介護予防支援事業所(地域包括支援センター)の職員やケアプラン作成の一部を受託する居宅介護支援事業所の介護支援専門員に対する研修の実施により適切なケアマネジメントの実施確保に努めます。 また、利用者に対しては、各種広報媒体を活用して予防給付に関する情報提供を行うとともに、市町村や大阪府国民健康保険団体連合会等関係機関との連携のもと、予防給付の利用に関する相談支援のための体制を整備します。 加えて、障がい者が予防給付を利用する場合には、特に障がいの状態に配慮して適切なサービスの選択と実施の確保が図られるよう、市町村との連携のもと介護予防サービス事業者に対する指導を行います。 さらに、市町村において介護予防の効果に関する分析と評価が適切に行われるよう、「介護予防評価専門部会」を通じ、介護予防事業の評価や評価のための手法の提供など、波及効果の高い事業を推進し、市町村に対する支援を行います。 第3項 シニアの社会参加への支援 (1)アクティブシニアがあふれる大阪構想事業の実施 これから高齢期を迎える方々も含めた高齢者層の、意欲あるシニア人材発掘、より積極的なシニア人材の養成、ボランティア等の地域社会活動の場への派遣までを総合的に展開します。シニアの自己実現と活力ある地域社会の実現のための元気高齢者の活躍支援を、第1〜第3ステージに体系化し、効果的な事業展開を図っていきます。学識経験者も交え、以下の事業の企画運営等や、シニアの社会参加活動支援策の企画検討を行います。 (第1ステージ(シニア人材の発掘)) 1アクティブシニア出前講座 中高年・シニア層のかたを対象に、「一生続けられるボランティア活動の魅力」をPRする講座として、企業や団体の求めに応じてNPOで活躍するシニアを講師として派遣します。 2シニアスタンバイ講座 NPO法人等の自主企画による講座・講演等について共催等のかたちで参画・支援する事業です。 地域でのシニアの社会活動を促進するとともに、地域社会でシニアの参画するNPO等と行政が連携・協働する契機となることをめざします。 3アクティブシニアフェア シニアがより積極的に第二の人生に取り組めるようPR、催しや講座を行い、社会参加・社会貢献や地域活動を動機づけるイベントをNPO、ボランティア団体や民間企業との協働で実施します。 (第2ステージ(シニア人材の養成)) 1大学連携セミナー 大阪府立大学等と連携したシニア向けの短期講座を開催します。 2高齢者向け講座 NPO等との協力により、自ら学び、自ら行動する21世紀にふさわしい「アクティブシニア」を養成する講座を実施します。 (第3ステージ(シニアの社会参加支援)) アクティブシニアネット シニアが地域社会での活躍の場を自ら探せるよう、シニアNPOやボランティアグループ、支援組織などを総合的に紹介するホームページを運営します。(開設:19年12月から) (2)老人クラブ活動への支援 老人クラブは、高齢者が自らの人生を健全で豊かなものにするための自主的な組織で、昭和25年に大阪で結成されて以来、全国に普及しました。 その活動は、レクリエーション活動、教養の向上、寝たきり高齢者等への友愛訪問等のボランティア活動、健康づくりに関する活動等高齢者の社会参加の促進に寄与しています。 また、今後の高齢社会にあって地域活動における重要な人材として、さらに大きな役割を担うものと期待されています。 このため、各地域の老人クラブの主体的な活動への支援を通じて、介護予防活動や、友愛訪問活動などの社会貢献活動が一層促進されるよう努めるとともに、大阪府老人クラブ連合会を通じ、老人クラブ活動の活性化に努めていきます。 (大阪府老人クラブ連合会 クラブ数等の推移) (注釈)平成20年度から堺市老人クラブ連合会が政令指定都市老人クラブ連合会として独立 平成17年度 老人クラブ数、4962 会員数、35万4478人 平成18年度 老人クラブ数、4948 会員数、35万2096人 平成19年度 老人クラブ数、4911 会員数、34万9596人 平成20年度 老人クラブ数、4086 会員数、23万5939人 (3)全国健康福祉祭(ねんりんピック)への派遣 健康と福祉に関する積極的かつ総合的な普及、啓発活動の展開を通じ、高齢者を中心とする国民の健康の保持・増進、社会参加、生きがいの高揚等を図り、ふれあいと活力のある長寿社会の形成を目指して、昭和63年度から始まったスポーツ、文化、健康、福祉等の総合的なイベントである全国健康福祉祭(愛称、ねんりんピック)に府選手団を派遣します。 (4)生涯学習の推進  生涯学習を推進するため、市町村や大学、他の生涯学習推進主体との連携を図りつつ、講座の開催やホームページへの学習情報の掲載などにより、生涯学習機会の提供に努めます。 (5)小地域ネットワーク活動等への支援 高齢者とボランティアスタッフ等が共同で軽作業や会食などを企画、運営しながら仲間づくりを行うサロン活動等の小地域ネットワーク活動など、地域の住民の参加と協力による支え合い、助け合い体制の整備を行う市町村に必要な支援を行います。 第5節 生活困難な高齢者のための施設整備の推進 第1項 施設整備の推進 高齢者が身体的な状態や家庭環境等により居宅で暮らすことが困難となった場合のセーフティネットとして老人福祉施設は重要な役割を担っています。 施設整備に当たっては、市町村と連携して、高齢者が住み慣れた身近な場所で、切れ目のないサービスを継続的に利用できるよう、地域密着型施設等の整備を促進するとともに、家庭的な環境のもとでケアを受けることができるよう、個室ユニットケア型施設の普及を進めます。 (1)高齢者のニーズに応じた施設サービスの提供 介護保険施設については、高齢者が心身の状況に応じて必要な施設を選択し入所できるよう、市町村が見込んだ必要量に基づき、日常生活圏域ごとあるいは、高齢者保健福祉圏域ごとに地域バランスを考慮した計画的な整備を進めるとともに、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、地域密着型施設を中心に、必要な施設の整備を推進します。 なお、養護老人ホームや経過的軽費老人ホームについては、既存施設の改築・改修に重点をおいた整備を進めるとともに、経過的軽費老人ホームから軽費老人ホームの移行に当たっては、安否確認や緊急時の対応など周辺にある同様の機能をもつシルバーハウジングなどの整備状況や利用状況を勘案し、必要に応じた整備を図ります。 (2)居住環境等に配慮した施設整備 環境の変化に影響を受けやすい認知症高齢者の特性に配慮し、認知症高齢者が尊厳を保ちながら、住み慣れた地域において、家庭的な雰囲気のもとで安心して暮らすことができる認知症高齢者グループホーム等の施設整備を市町村との連携のもとに進めます。 また、利用者一人ひとりの個性や生活リズムを尊重する個室ユニットケアは認知症高齢者のケアに有効な方策と考えられることから、介護保険施設における個室ユニットケア型施設の整備を進めます。 (3)安心して暮らし続けるための改築・改修の促進 老人福祉施設のうち、昭和56年以前の旧耐震基準に基づき建設され十分な強度をもたない施設を中心に、老朽化が著しい施設について、計画的に必要な改築・改修を推進します。 (4)施設の生活環境改善への取組み 入居者ができる限り在宅に近い居住環境のもとで安心して生活できるよう、施設の新規整備や老朽施設の建替え時等において、個室ユニットケア型施設としての整備を推進します。 第6節 高齢者の尊厳への配慮 人権尊重の理念のもと、介護が必要となっても、高齢者が自らの意思で暮らし、自己実現を図ることができるよう尊厳に配慮したケアを推進します。また、平成18年4月に施行された「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」の趣旨を踏まえ、高齢者虐待防止の取組みを推進します。 第1項 高齢者虐待防止の取組み推進 (1)高齢者虐待防止のための取組み 高齢者虐待防止法の趣旨を踏まえ、早期発見・早期対応をより一層推進するため、高齢者福祉関係者、関係団体はもとより、地域住民一人ひとりが高齢者虐待に関する正しい認識を持てるよう、知識・理解の普及・啓発を市町村とともに進めていきます。 また、通報・届出があった高齢者虐待事案に対して市町村が迅速かつ的確に対応できるよう、対応した高齢者虐待事案の自己点検・検証等を通じて、その対応力の向上ができるよう支援していきます。 さらに、支援困難な事案に対する相談・介入支援や広域的な支援、高齢者虐待防止に携わる専門職の育成や技術支援などにより、府内全ての高齢者虐待事案に市町村が適切に対応できるよう支援していきます。 (2)施設等における身体拘束ゼロに向けた取組み 身体拘束は、人の尊厳を傷つけ精神的苦痛を与えるとともに、時には身体機能の低下を及ぼす重大な行為であり、高齢者の生活の質を根本から損なう危険性を有しています。 高齢者の人権が尊重された利用者本位のより良いケアを実現するため、「大阪府高齢者虐待防止・身体拘束ゼロ推進会議(平成12〜18年度)や「身体拘束ゼロ大阪宣言」(平成15年2月)などの取組みを行い、平成18年4月の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」の制定施行を受け、平成19年3月、高齢者ケアに携わる者の資質の向上と身体拘束廃止への体制整備を柱とする「身体拘束ゼロのための行動計画」を策定して、全ての施設において主体的に取組まれるよう努めていきます。 今後とも、行動計画及び平成20年3月に策定した「身体拘束ゼロ推進マニュアル」の活用を徹底し、介護保険施設等の職員を対象とした研修事業を実施するなど、身体拘束ゼロに向けた取組みを進めるとともに、適時、その実施状況の把握等積極的な展開を図り、市町村や関係機関と連携しながら、施設等における身体拘束ゼロを目指した自主的な取組みを促し、支援します。 第2項 高齢者の孤立死防止 高齢化の進展に伴い一人暮らしや夫婦のみ世帯の高齢者が増加しており、加えて都市化の進展による地域コミュニティー機能の低下、隣近所との人間関係の希薄化などにより、高齢者の孤立死が年々増加しています。このため、市町村において、支援が必要な高齢者を発見し、専門職へのつなぎが円滑に行われるよう、高齢者の実態把握や地域の見守り体制、専門職との連携・協力体制づくりを促進します。 第3項 認知症高齢者対策の推進 高齢者人口の増加に伴い、認知症高齢者は今後も増加することが見込まれます。認知症高齢者が尊厳を保ちながら穏やかな生活をおくり、また家族も安心して社会生活が営めるよう次の取組みを推進します。 (1)認知症に対する理解の促進 認知症に対する偏見をなくし正しい理解が深まるよう、市町村等とともに広報紙やパンフレット、ホームページ等を活用して、認知症に関する知識の普及啓発に努めます。 また、全国で展開されている認知症サポーター100万人キャラバン事業と連携し、認知症の正しい理解の啓発に努めます。 (2)認知症介護の質の向上と人材育成 認知症高齢者に対する介護技術と介護サービスの向上を図るため、介護支援専門員をはじめとする高齢者介護の実務者等に対する認知症高齢者の介護に関する実践的研修が体系的に実施されるよう取組みます。 また、事業者指定基準において研修の受講が義務づけられている地域密着型サービス事業所の職員等については、各市町村において受講促進が図られるよう、研修の実施を支援します。 (3)地域支援ネットワークの構築 認知症高齢者の早期発見・早期対応を図るため、地域包括支援センターと認知症疾患医療センターが連携して、認知症サポート医や地域の医療機関等との地域における支援体制の構築を促進します。 また、地域包括支援センターが認知症高齢者やその家族等からの相談に的確に対応できるよう支援に努めるとともに、府保健所におけるこころの相談等により、認知症に関する相談に対応します。 さらに、医療・福祉分野のサービス等の提供に加え、住民・多様な社会資源の参加を通じて、地域の中で生活を「面的」に支える仕組みづくりを進めるため、地域包括支援センターを中心とした地域支援ネットワーク構築を促進します。 (4)大阪後見支援センターにおける相談事業の実施及び日常生活自立支援事業等の展開  「大阪後見支援センター(あいあいねっと)」において、自己の判断のみでは意思決定に支障がある認知症高齢者等の権利擁護に関わる相談について、地域包括支援センターをはじめとする地域の関係機関と連携して、適切に対応し、課題の解決に努めます。 また、認知症高齢者等の自立した生活を支援するため、福祉サービスなどの利用手続きにおける同行・代行等による援助や日常的な金銭管理サービス等を行う「日常生活自立支援事業」を実施する市町村社会福祉協議会等に対して契約締結に関する助言や専門員・生活支援員への研修等技術的な支援を行います。 さらに、「成年後見制度」の適切な利用が図られるよう、大阪弁護士会等関係機関と連携し、情報提供、啓発活動等を通して市町村における成年後見制度の利用促進に向けた取組みへの支援を行います。 (5)適切なサービス利用のための支援 認知症高齢者等が身体的・精神的に虐待等を受けている場合や意思能力が乏しく、かつ本人を代理する家族等がいないなど必要なサービスを受けられない状況にある場合は、特別養護老人ホームへの措置入所等市町村において適切な対応が行われるよう支援します。 (6)居住環境に配慮した施設整備 環境の変化に影響を受けやすい認知症高齢者の特性に配慮し、認知症高齢者が尊厳を保ちながら、住み慣れた地域において、家庭的な雰囲気のもとで安心して暮らすことができる認知症高齢者グループホーム等の施設整備を市町村との連携のもとに進めます。 また、利用者一人ひとりの個性や生活リズムを尊重する個室ユニットケアは認知症高齢者のケアに有効な方策と考えられることから、介護保険施設における個室ユニットケア型施設の整備を進めます。 第4項 ハンセン病問題についての理解の促進 ハンセン病回復者が尊厳を保ちながら、地域社会で安心して生活出来るよう、また、家族も安心して社会生活を営めるよう、機会あるごとに様々な世代に対して、過去の歴史や正しい知識の普及を図り、間違った知識に基づく差別や偏見を解消するための取組を推進します。 第5項 犯罪被害等の未然防止 犯罪による被害を防止するとともに犯罪を発生させない環境づくりに取り組む大阪府安全なまちづくり推進事業等において、高齢者をはじめ犯罪弱者に配慮した安全なまちづくりの意識啓発を推進します。  また、道路、公園等について、犯罪の防止に配慮した構造、設備等を有する施設の整備に努めます。 さらに、高齢者の消費者被害の未然防止・拡大防止を図るため、高齢者向け啓発資料の作成・配布、高齢者被害防止をテーマとした講座の設定、新聞・テレビ等マスメディアを通じた情報発信、さらには高齢者保健福祉月間(9月)における集中的取組み等啓発・情報提供事業を重点的に実施し、高齢者が自らの意思と知識で判断し、安心な消費生活をおくることができるよう高齢者のための消費生活学習の推進に努めます。 特に、昨今、社会問題化している詐欺まがいの利殖商法や架空請求などにかかる高齢者の消費者被害に対しては、消費生活相談窓口において被害を受けた高齢者からの苦情の申し出に対応し、随時、事業者とのあっせんを行い被害回復を図るとともに、被害を受けやすい高齢者の情報について消費生活部門と福祉部門が共有し、関係機関と連携して、被害の防止と拡大防止を図る仕組みづくりに努めます。 第7節 介護保険制度運営に関する支援・助言 第1項 介護保険制度運営に関する支援・助言 保険料の賦課、徴収、要介護認定だけでなく、サービスの内容や介護費用の観点からも保険給付の適正化が促進されるよう、保険者に対して助言・支援を行います。 また、市町村のブロック代表及び府の担当者等で構成される介護保険制度ワーキングや地域ごとに設置されている「ブロック会議」への参画等を通じて、制度運営に関する保険者共通の課題の的確な把握・解決に努め、必要に応じ国に提言・要望するなど、介護保険制度が円滑に運営されるよう、適切な支援に努めます。 第2項 介護給付適正化に向けた取組みへの支援 介護給付の適正化は、介護給付を必要とする受給者を適切に認定した上で、受給者が真に必要とするサービスを、事業者がルールに従って適切に提供するよう促すことを基本としています。不適正な給付を削減する一方で、利用者に対する適切な介護サービスを確保することにより、介護保険制度への信頼感を高めるとともに、介護給付費や介護保険料の増大を抑制することを通じて、持続可能な介護保険制度の構築に資するものです。 このような介護給付の適正化を効率的かつ円滑に進めるためには、国、府及び市町村が一体となって、地域の実情に応じた戦略的な取組みを進めていくことが重要です。 府では、国の「介護給付適正化計画に関する指針」を踏まえ平成20年3月に策定した「大阪府介護給付適正化計画」(指針)に基づき、市町村の取組みを促すことにより、一層の介護給付の適正化に取り組みます。 特に、次の6項目については重点的に取り組むこととし、市町村が策定した3ヵ年の実施計画(平成20年から22年)による取組みを支援するため、大阪府国民健康保険団体連合会と連携して、適正化研修会の開催や適正化マニュアルの作成等を実施します。 1認定状況調査チェック 2ケアプラン点検 3住宅改修の点検 4医療情報との突合 5縦覧点検 6介護給付費通知 第3項 財政安定化基金の設置運営 介護保険財政の安定化を図るために設置した「大阪府介護保険財政安定化基金」 を適正に管理・運営し、保険給付の増大等による保険者の財源不足に対して資金の 貸付を行うなど保険者の健全な財政運営の確保に努めます。