資料3    障害者差別解消法の解説(第7条・第8条)   障害を理由とする差別の禁止  行政機関等は,その事務又は事業を行うに当たり、  1 障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。  2 障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。  事業者は、その事業を行うに当たり、  1 障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。  2 障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。   定義  行政機関等…国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人(※)  ※ 地方公営企業及び公営企業型地方独立行政法人を除く。  事業者…商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人(※)を除く。)  ※ 地方公営企業及び公営企業型地方独立行政法人は事業者として扱われる。  社会的障壁…障害がある者にとって日常生活は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの  ※ 障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は,当該障害者と社会の在り方との関係によって生するという,いわゆる「社会モデル」に基づく障害者の概念を踏まえたもの   留意事項  事業者ではない一般私人の行為や個人の思想・言論は,本法の対象外。啓発活動を通じて対応。  雇用分野については,障害者雇用促進法(第183回国会にて改正法が成立)により具体的な措置を規定する。  ※ 国家公務員や地方公務員の雇用関係に関して,国家公務員法や地方公務員法等の規定によるとの前提の下,障害者雇用促進法の適用が除外されている事項については,本法においても同様の整理。    障害者差別解消法の解説(第7条・第8条(・第12条))   障害を理由とする差別の禁止(続き)  (不当な差別的取扱い)  例えば,障害者であることのみを理由として,正当な理由なく,障害者に対する商品やサービスの提供を拒否するような場合をいい,実際の場面においてある行為が不当な差別的取扱いに該当するかは,状況に応じて個々の事案毎に判断されることとなる。なお,当該取扱いについて,正当な理由が存在する場合には,本法により禁止される不当な差別的取扱いには該当しない。  (社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(合理的配慮))  「合理的配慮」とは,障害者が日常生活や社会生活において受ける制限をもたらす原因となる社会的な障壁を取り除くため,個々の障害者に対して,社会的障壁の除去を必要とする旨の意思の表明があった場合において,個別の状況に応じて講じられるべき措置であり,典型的な例としては,例えば,乗り物への乗車に当たっての職員等による手助けや,筆談・読上げ等の障害特性に応じたコミュニケーション手段による対応,段差の解消のための渡し板の提供等が考えられる。  「意思の表明」は,個別具体的な場面において,社会的障壁の除去の実施に関する配慮を必要としている状況にあることを、言語(手話も含む。)その他の意思疎通のための手段により伝えることを指し,知的障害等により本人が自ら意思を表明することが困難な場合には、その家族等が本人を補佐して意思の表明をする場合も、解釈上含み得る。  なお,合理的配慮の実施に伴う負担が過重である場合には,本法に基づく義務は生じない。   違反に対する対応  主務大臣は,事業者に対し,特に必要があると認める場合(例えば,ある事業者が障害者に対し,本法に違反する行為を繰り返し行っており,当該事業者による自主的な改善を期待することが困難な場合等。),報告徴収,助言・指導,勧告を行うことが可能。  ※ 報告徴収が求められた際,報告をしなかった場合,又は虚偽の報告を行った場合には過料あり。  行政機関等により本法に違反する行為が行われた場合には,例えば,行政不服審査法に基づく不服申立て(当該行為が行政処分に当たる場合等)や行政機関等の内部における服務規律確保のための仕組みや行政相談等の仕組みにより是正が図られることとなる。  本法に違反する行為自体について罰則が存在するわけではない。また,本法の私法上の効果については,民法等の一般規定に従い,個々の事案に応じて判断されることとなる。    障害者差別解消法の解説(第14条〜第16条)   相談及び紛争の防止等のための体制の整備  第十四条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。  【趣旨】障害を理由とする差別の解消を効果的に推進するため,障害者等からの相談に応じ,紛争の防止や解決を図ることができるよう必要な体制整備に努めることとするもの。  障害者に関する既存の相談窓口等(必ずしも差別に関する相談を行っていないものを含む)  福祉事務所,地方公共団体の担当部局,保健所、教育委員会,法務局・地方法務局,都道府県労働局,公共職業安定所(ハローワーク),児童相談所、基幹相談支援センター,都道府県障害者権利擁護センター,市町村障害者虐待防止センター等   啓発活動  第十五条 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。 【趣旨】障害を理由とする差別の解消を効果的に推進するため,国民の関心と理解を得るために必要な啓発活動を行うもの。なお,障害者関連施設の立地に関し,住民の同意を要件とする等の他の施設にはない特別な措置を行わない他,本条の趣旨を踏まえ,障害者に対する住民の理解を得るために必要な啓発活動を行うことが適当。   情報の収集、整理及び提供  第十六条 国は、障害を理由とする差別を解消するための取組に資するよう、国内外における障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集、整理及び提供を行うものとする。  【趣旨】国内外の障害を理由とする差別に関する具体的な事例や差別の解消に関する取組等の情報を収集・公表し,本法の適切な運用に活かすこと等を目的とするもの。    障害者差別解消法の解説(第17条〜第20条)   障害者差別解消支援地域協議会  趣旨・目的  障害者が行政機関に対して差別に関する相談等を行うに当たり,どの機関がどのような権限を有しているかは必ずしも明らかではなく,また,相談等を受ける機関としても,当該機関だけでは対応できない可能性。  このため,国及び地方公共団体の機関において,障害者差別解消支援地域協議会を組織することで,地域において障害を理由とする差別に関する相談や紛争の防止・解決等を推進するためのネットワークを構築。  これにより,いわゆる「制度の谷間」や「たらいまわし」が生じない体制の構築や地域全体での相談・紛争解決機能の向上が図られることを期待。  ※法律上,協議会の設置は各地方公共団体の判断となっており,必置とはされていない。   組織・運営のイメージ(以下アからウの機関がネットワークを作っているイメージ図)  ア 国の機関(地方支分部局等):××支部、○○局、△△事務所  イ 地方公共団体の機関:保健所、担当部局、福祉事務所  ウ NPO法人(1号構成員)、学識経験者(2号構成員)、事業者A(3号構成員)、事業者B(17条2項の構成員)  協議会においては, 1 必要な情報の交換,2 障害者からの相談及び相談事例を踏まえた差別解消のための取組に関する協議,を行う。各構成機関等は,協議の結果に基づき,当該相談事例を踏まえ,差別解消のための取組を実施。  協議会の構成は,地域の実情等を踏まえ,各協議会において判断。また,協議会の庶務は,協議会を構成する地方公共団体において処理。  ※協議会は必ずしも条例設置である必要はない。